あけましておめでとうございます。
一年の最初なので、昨年の記事を一覧する「総集編」をお届けします。
昨年のテーマは、
- 上場前後の資本政策(2016年第4四半期)
- ベンチャーの資本業務提携
- Snap(Snapchat)の資本政策
- 上場前後の資本政策(2017年第1四半期)
- 上場前後の資本政策(同種類株編)
- 上場前後の資本政策(2017年第1四半期、同種類株編)
- ストックオプションの「適正量」を考える
- 「オプションプール」とは何か?
- ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?
- VCはいかに株式を売却するか?
- 上場前後の資本政策(2017年第3第4四半期)
などでした。
特に、優先株時代の資本業務提携のコワさを検討した「ベンチャーの資本業務提携」に関するシリーズと、大量保有報告書から各VC等がどう上場後に売却をするかを分析した「VCはいかに株式を売却するか?」というシリーズは、「今までありそうでなかった情報」と、業界関係者にも、ご好評いただけたんじゃないかと思います。
詳細は、以下をご覧下さい。
(以下、リンクは「note」の週刊isologueの記事にリンクしています。)
これらのコンテンツは、法的助言や税務上のアドバイスを行うことを目的とするものではなく、財務(ファイナンス)的な観点などから、取り上げたテーマの性質を考えるためのものです。また英文に対応する日本語はあくまで参考であり、正確な翻訳とは限りません。文書を実際に解釈したり運用するにあたっては、弁護士、税理士等の専門家の意見を参考にしてください。
以下、一覧:
■総集編
(第404号)謹賀新年(2016年の「週刊isologue」総集編)
一年の最初の、昨年の記事を一覧する「総集編」です。
昨年のテーマは、
- 監査等委員会設置会社のIPO
- ストックオプション付与の適正量をデータ等から考えるシリーズ
- Series B以降の増資の条件交渉シリーズ(経営陣や投資家のインセンティブ等)
- 日本に「ユニコーン」が現れない理由(わけ)
(ベンチャーを取り巻く環境の課題の整理) - 日本版リストリクテッド・ストックのベンチャーへの応用上場前後の資本政策(2016年上半期+α)
- VCのビジネスモデル
- VCの組合契約書シリーズ
- VCの税務
- VCの投資(有価証券等)の評価
などでした。
この回は、昨年上半期の記事を一覧する「総集編」でした。
■上場前後の資本政策(2016年第4四半期)
2016年第4四半期にIPOした会社の資本政策についてです。
一昨年の第4四半期に上場したのは以下の企業でした。
(第405号)上場前後の資本政策(2016年第4四半期前編)
この回は11月上場分までの、
- キャピタル・アセット・プランニング
- KHネオケム
- マーキュリアインベストメント
- ユーザベース
- 九州旅客鉄道
- アイモバイル
- 岐阜造園
- バロックジャパンリミテッド
- フィル・カンパニー
- WASHハウス
- スタジオアタオ
- エルテス
- JMC
を取り上げました。
(第406号)上場前後の資本政策(2016年第4四半期後編)
「登記簿から見るユーザベースの優先株式の内容」(最新の登記簿が処理中で閲覧できなかったので、閉鎖登記簿(D種発行前)の内容です) と、12月上場企業以降の、
- イントラスト
- グッドコムアセット
- キャリアインデックス
- MS-Japan
- シンシア
- 日本モーゲージサービス
- 船場
- リネットジャパングループ
- イノベーション
- セグエグループ
- グレイステクノロジー
- エイトレッド
- フォーライフ
- ティビィシィ・スキヤツト
を取り上げました。
■ベンチャーの資本業務提携
ベンチャーが成長していく過程で、他の事業会社と組んで、そのチャネルや設備、知的財産などを活用させてもらう業務提携(事業提携)が行われることがあります。その際に、提携先の企業からベンチャーへ株式での出資が同時に行われることもあり、そのように業務提携と出資が同時に行われることを、資本業務提携と呼びます。
今まで、このメルマガや拙著(起業のファイナンス、起業のエクイティ・ファイナンス)では、ベンチャーキャピタル(VC)等の純投資家が投資をする場合を中心に、契約書や定款をどのように定めるかを検討してまいりました。
しかし、純投資のインセンティブがシンプル(企業価値の向上=キャピタルゲインの獲得)であるのに対して、事業提携の各当事者のインセンティブは、その事業の内容等によりますので、非常に千差万別で、そうしたインセンティブや契約条件をケース分けしても、ややこしすぎてケース分けし切ることは極めて困難です。このためもあってか、ベンチャーの資本業務提携を実務的・具体的かつ体系的に解説したものは、あまり見たことがありません。
ということで、意外にコワい(こともある)ベンチャーの資本業務提携について、いろいろな視点から考えてみました。
(第407号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第1回)
資本業務提携の全体像について俯瞰してみました。
- 資本業務提携のスペクトラム
- 出資比率、出資金額(株価)
- 投資される株式の種類と優先順位
- 契約の複雑さと条項
- 各要因間の関係と不確実性
- ベンチャー投資は「コントロール権」の処理が重要
- ベンチャー投資契約群は「将棋」に近い?
- 大局観とミクロな技術的検討の両方が必要
- ベンチャーに詳しい弁護士等のアドバイザーの必要性
- 持株比率と契約条件との関係
- シリコンバレーとの環境の違い
- 議決権の有無
- 比率が高すぎて投資家が付かない等のリスク
- 上場時以外でも議決権株式に転換する取り決めが行われていないか?
- 会社法上の拒否権
(第408号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第2回)
この回は、株主間契約等で定める拒否権を中心に取り上げました。
拒否権は、手を間違うと資本業務提携でベンチャーが一番詰みやすいところで、(将棋で言うと3手詰・5手詰といった)比較的初歩的なところです。
- 比率や額と、各種拒否権・事前承認事項
- 拒否権・事前承認事項とは
- 保有する比率と拒否権の発生
- そのラウンドでマイナーな出資の場合
- 比率はマイナーだけど、1つのラウンドで過半の投資をする場合
- 比率が大きい場合
- 株主間契約内の階層構造
- 株主間契約というハードル
- 事業会社のインセンティブと企業価値向上
(第409号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第3回)
この回は、残余財産優先分配権について考えました。
- 出資の額の大きさと残余財産優先分配権
- インセンティブの観点からの優先分配権の整理
- 経営陣とVCのみのインセンティブ関係(復習)
- 普通株式での投資
- 参加型優先株式での投資
- 非参加型優先株式での投資が日本で少ないわけ
- 事業会社の経営への寄与度・出資額と優先分配権の需給関係
(第410号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第4回)
この回は、残余財産優先分配権が実際のM&Aの際の分配に与える影響を考えました。
- 残余財産優先分配権の順位
- 最優先順位である場合
- 会社破綻時の清算とM&A時の「みなし清算」
- 回収見込みへの影響(ベンチャーに資金がない場合/潤沢にある場合)
- 優先株式の中で最劣後だが普通株式より優先する場合
- インセンティブの観点から考える
- 普通株式と同順位の場合
- 「折衷案」は機能するか?
(第411号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第5回)
資本業務提携の第5回目ですが、この回は「買収の一歩手前」としての観点から、資本業務提携を考えてみました。
- 「準M&A」としての資本業務提携
- M&Aに至らない理由
- PMI(Post Merger Integration)
- アドバイザーのインセンティブ
- 買収する側の経営者のインセンティブ
- 「不完備契約」性
(第412号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第6回)
この回は「先買権(さきがいけん)」について検討しました。
- 先買権(さきがいけん)とは
- 「先に知らせるくらい、いいんではない?」は正しいか?
- M&Aのプロセスと先買権行使のタイミング
- 買収慣れしている企業と、してない企業の「enforcement」の違い
- 「話が来た」段階で先買権が行使できるか?
- 「下限金額付き」の先買権行使の放棄は機能するか?
- 詳細条件が決定した段階での先買権を設定すればいいか?
- 事業会社側弁護士がテクニカルに納得する先買権の定義は難しい
- 投資家が保有する株式を譲渡する場合の先買権
- 経営陣が保有する株式を譲渡する場合の先買権
- 「事実上のM&A」になってしまう可能性
- 2階層の先買権の設計
- まとめ
(第413号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第7回)
この回は、
- 資本業務提携の交渉における情報の出し方
- 株式購入権
- 取締役やオブザーバーの派遣
- 情報受領権
- 売戻しの義務
- 提携する事業会社のインセンティブの整理
- 「ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと」とは?
等について考えてみました。
■Snap(Snapchat)の資本政策
Snapchatを運営するSnap, Incが上場しました。
米国のベンチャーでは、1株あたり、上場している普通株式(common stock)の10倍の議決権を持つ「dual class」はよくあるし、Google(Alphabet)も上場後に無議決権株を発行することにしましたが、Snapは上場する株式が全て無議決権株であり、上場時から、一般の株主に1つも議決権を渡さないというのはスゴいですね。
ということで、Snap, Inc.の資本政策について研究してみました。
(第414号)Snap(Snapchat)の資本政策(その1)
- 未上場時の資金調達の概要
- 投資家と役員の持株
- 発行する株式の概要
- 損益の状況
- 役員とガバナンス
(第415号)Snap(Snapchat)の資本政策(その2)
上場申請資料「S-1」に添付された上場前・上場後の定款(certificate of incorporation)についてです。
- 上場時の定款の取り扱いの日米差
- Snap社定款の上場前後での体裁の変更
- 「住所」はFacebookと同じ
- 「a corporation」と「corporations」
- 株式の種類の上場前後での変化
(第416号)Snap(Snapchat)の資本政策(その3)
この回は、上場申請資料「S-1」に添付された上場前の定款(certificate of incorporation)から、優先株式の優先配当権と議決権について見てみました。
- 当初発行価格(Original Issue Price)の謎
- 無償交付?によるClass A普通株(無議決権)の発行
- 「Series FP」の謎(配当編)
- 「Series FP」の謎(議決権編)
- Series C、D、E、F優先株に議決権なし!
- 各優先株の事前承認事項(拒否権)
- 各種類の株主による取締役の選任
- Series FP取締役の強権
(第417号)Snap(Snapchat)の資本政策(その4)
この回も、上場申請資料「S-1」に添付された上場前の定款(certificate of incorporation)から、上記の図のとおり、優先株に対して極めて変則的な優先分配権や議決権の設定をしている内容を見てみました。
- 清算・M&A時の分配権
- ミドルステージ以降の優先株に対する超「上から目線」な条件
- 議決権のない優先株
- 優先分配権のない優先株
- Series A-1とSeries Bの間に何があったのか?
- 優先株の普通株への任意の転換の禁止という一見不思議な規定
- Series FP優先株の普通株への転換(10議決権か1議決権か)
- Series FPを投資家に売却する場合の有利な条件とは
(第418号)Snap(Snapchat)の資本政策(その5)
この回は、いよいよ本題の(議決権種類株である)普通株の設計についてです。
- 用語の定義
- 「サンセット条項」
- サンセット条項発動時にClass A、B、Cに何が起こるのか?
- 「許容される譲渡」(Permitted Transfer)
- 普通株の配当受領権の不思議な定義
- 創業者死亡時にClass C普通株は残るのか?
(第419号)Snap(Snapchat)の資本政策(その6)
この回は上場した瞬間に有効になる定款を、上場前定款と比較して見てみました。
- Class C普通株の発行
- 上場前定款と上場後定款の違い
■上場前後の資本政策(2017年第1四半期)
2017年第1四半期にIPOした会社の資本政策についてのシリーズです。
昨年の第1四半期に上場したのは以下の企業です。
(第420号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期前編)
- シャノン
- 安江工務店
- 日宣
- ユナイテッド&コレクティブ
- フュージョン
- レノバ
- ロコンド
(第421号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期中編)
- ピーバンドットコム
- ファイズ
- うるる
- ほぼ日
- ビーグリー
- ジャパンエレベーターサービスホールディングス
- インターネットインフィニティー
- 力の源ホールディングス
- フルテック
- マクロミル
- グリーンズ
- オロ
(第422号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期後編)
- ソレイジア・ファーマ
- ティーケーピー
- No.1
- ズーム
- オークネット
- スシローグローバルホールディングス
(第423号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期後編2)
- ユーザーローカル
- ネットマーケティング
- テモナ
- ウェーブロックホールディングス
- LIXILビバ
- 旅工房
- アセンテック
■上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編)
この回から、2017年第1四半期にIPOした会社のうち、種類株式を活用しているケースを深掘りしてみました。
(第424号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編1)
この回は、50億円以上の大型の調達をしてきたロコンドについて、設立時の登記簿までさかのぼって、分析しました。
- ロコンドの資本政策の概要
- 有価証券届出書に開示されている資本金等の推移
- 登記簿で見る資本金の推移
- 登記簿で見る種類別発行済株式数の推移
- 普通株式A、普通株式Bは「議決権種類株式」か?
- 設立初期の普通株式での増資と資本政策
- A種種類株式での増資は大幅なダウンラウンドか?
- 種類株主総会による強力な拒否権
- 現金による取得請求権
- 「ラチェット」による修正条項
(第425号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編2)
この回も、先週のロコンドの種類株式の続きです。
ネットでダウンロードした登記簿のpdfファイルは、ちゃんと文字情報がコピーできる仕様なので、変更前と変更後の種類株式に関する記載の比較を行なってみました。
- 1番目→2番目の種類株式の変更
- 2番目→3番目の種類株式の変更
- 3番目→4番目の種類株式の変更
- 取締役会設置会社・監査役会設置会社への変更
- タイポの修正?
- 種類株式別授権枠の変更
- B種優先株式の発行とその条件
(第426号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編3)
この回は、ロコンドの優先株式の続きと、「うるる」の優先株式、「ジャパンエレベーターサービスホールディングス」の「メザニン(社債)」型の優先株式について見てみました。
- ロコンドの優先株式から学ぶ、最初のファイナンスの重要性
- うるるの優先株式の株式分割に関する制約
- ジャパンエレベーターサービスホールディングスの「社債型」優先株式による資金調達
(第427号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編4)
この回からソレイジア・ファーマ社の「不思議な優先株」について、解読していきます。
- ソレイジア・ファーマの資本の概要
- 資本金等の推移
- 大株主の概要
- 設立の経緯
- 配当に関する拒否権
- 優先配当権が「メイン」
- 「譲渡事象」発生時の優先配当
- 直訳(誤訳)調のIPOの規定
- 残余財産優先分配権はアッサリ
- 無議決権の優先株式と議決権ありの普通株式の関係は?
- 取得請求権
- ちょっとコワい取得条項
- ナゾなバランス感覚の拒否権
(第428号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編5)
この回もソレイジア・ファーマ社の「不思議な優先株」についてです。
- B種優先株式の追加
- A種優先株主総会とB種優先株主総会の決議の関係
- A種優先株式とB種優先株式の優先分配権の関係
- 「コピペ」による冗長な株式の種類の定義とスッキリした定義
- 優先分配額の謎の増加
- なぜ定義がスッキリ整理されたのか?
- 「誤訳調」定義の修正
(第429号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編6)
この回もソレイジア・ファーマ社の優先株について、解読していきました。
前回は、港区に移転後の登記簿で、A種優先株式、B種優先株式の内容を見てみましたが、この回はさらにC種優先株式、D種優先株式の2種類の優先株式と、第1回から第10回までの転換社債の内容を見てみました。
- C種優先株式の定款への追加
- D種優先株式の定款への追加
- A種優先株式だけ転換係数が半分の謎
- 優先株式の種類別の優先・劣後関係(C種だけ劣後)
- 優先株式の種類別の拒否権の設定(A種・B種だけ拒否権あり)
- なぜ10回も転換社債を発行したのか?
(第431号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編7)
この回は、ソレイジア・ファーマ社の優先株の解読、最終回でした。
- 資本の変動の全貌と登記簿
- 登記簿上の発行済株式の総数並びに種類及び数の推移
- 登記簿上の資本金の額の推移
- 有価証券届出書の資本金等の推移
- まとめ(資本政策の全貌の表)
■上場前後の資本政策(2017年第2四半期、同種類株編)
この回から、2017年第2四半期にIPOした会社の資本政策について考えました。
昨年の第2四半期に上場したのは以下の企業です。
- ビーブレイクシステムズ
- ディーエムソリューションズ
- エコモット
- Fringe81
- ツナグ・ソリューションズ
- GameWith
- SYSホールディングス
- ソウルドアウト
(第433号)上場前後の資本政策(2017年第2四半期 種類株編)
2017年第2四半期にIPOした会社のうち、種類株式を活用しているケースを見てみました。
この回は、Fringe81のMBOと優先株式について。
ベンチャー(特にネット系)は、その成長の成否の大半が経営者の手腕にかかっていることがほとんどですが、同社の事例は、10%弱しかなかった代表者の持分を50%超に引き上げ、大きな経営の自由度とインセンティブを持ってもらうとともに、ストックオプションプールを確保し、増資の余力も持たせることで、企業価値を急速に成長させることに成功した好例と言えるのではないかと思います。
- 旧Fringe81の登記簿
- MBOの概要
- 新Fringe81の設立
- VCからの増資(A種優先株式)
- ユナイテッドのIRリリース
- 新旧Fringe81の「1:1」合併
- 資本金と資本準備金の増加ゼロの理由
- 増資直前の株式分割の理由
- A種・B種優先株式の内容
- C種優先株式の発行
- まとめ
(第434号)上場前後の資本政策(2017年第2四半期 種類株編2)
この回は、GameWithの優先株式の内容を見てみました。
- GameWithの概要
- 資本金等の推移
- 優先株式の内容(A種優先株式)
- 残余財産優先分配権の設定
- M&A時にどうなるか?(みなし清算と拒否権)
- 優先株式の内容(B種優先株式)
- ナゾの表記変更
■ストックオプションの「適正量」を考える
この仕事をしていると、「ストックオプションって、何%くらいが適正量なんですかね?」という質問をいただくことがよくあります。
ストックオプションは、「役職員に共に企業価値を上げる中長期的なインセンティブを持ってもらおう」という目的のものですので、付与する量は、
- 役職員が何人になるビジネスモデルなのか?(数百人規模?数万人規模?)
- 株式インセンティブをどのくらい付与すると、どのくらいやる気になってくれるのか(付与した場合に想定される企業価値の弾力性(elasticity))
- 事業の労働集約性、資本集約性、知識集約性
- ストックオプション以外のインセンティブ(現金の給与や賞与・歩合給、単なる生株、リストリクテッド・ストック、従業員持株会等)との効果の比較
- その産業・地域ごとの労働需給の逼迫度合い
- 役職員間の、持株比率のバランス
等、いろんな要因に左右され得ます。
シリコンバレーには年間数兆円規模の資金が投下されて、世界規模の人材の争奪戦が行われており、「給与が非常に高く、その上にカフェテリアでメシもタダなどの福利厚生もあって、ストックオプションをもらえるのも当たり前」という状態が普通のものとして浸透しています。日本でも、ベンチャーがいい人材を調達することはどの会社も苦労していますが、投下される資金量がまだ数十分の一ということもあり、中長期的なインセンティブであるストックオプションもさることながら、まずは転職前の生活を維持できるようにキャッシュの給与水準を上げる(もっと赤字を掘る)必要があるんじゃないの?というベンチャーも、まだまだ多いと思います。
過去の例をいくら見ても「適正な量」がわかるとは限りませんが、現状を踏まえずに一般論で適正な量を語っても仕方がありません。以前「週刊isologue 第354号)ストックオプションの「適正量」を考える(データ編)、第355号(VC比率編)で、2015年に上場した企業のストックオプションの比率のデータを見てみましたが、この回は、2016年から2017年上半期までに上場した企業のデータを整理するところまでをやってみたいと思います。
(上記の要因から考えると、「設立から何十年も経っている企業、ストックオプションの概念が到達していなかったり、雇用が逼迫していない地域や業種、銀行・鉄道など資本集約的な産業、MBOや子会社上場で、経営陣からしてほとんど株式を保有していない企業(つまり「ベンチャー」っぽくない企業)ほど、ストックオプションの比率は低」く、「創業からの年数が浅く、知識集約型のビジネスモデルで人材の需給が逼迫している領域で、従業員数が多く、創業メンバーが十分な比率の株式を持っている会社ほど、ストックオプションの量が多い」という仮説が成り立ちますが、実際はどうでしょうか?)
(第435号)ストックオプションの「適正量」を考える(2016-2017年上期)
- 2016年-2017年上期IPO企業の潜在株式割合データ
- 「潜在込み」に対する比率と「発行済」に対する比率
- 2016年-2017年上半期IPO企業の潜在株式割合データ
- 設立年数、潜在割合での並べ替え結果
(第436号)ストックオプションの「適正量」を考える(〜2017年上期 その2)
- 潜在割合が高いと時価総額が大きくなるか?
- 従業員数と潜在比率
- 日米の雇用環境の違いとストックオプション
- 資金調達とストックオプションのトレードオフ
- 「一人当たりストックオプション金額」と企業価値
(第437号)ストックオプションの「適正量」を考える(〜2017年上期その3)
この回は、「VCの保有する株式等の比率とストックオプションの比率は、何か関係があるか?」ということを考えてみました。
- 潜在株式割合とVCの比率のデータ一覧
- 同グラフ(2015年版と、〜2017年上期版)
■「オプションプール」とは何か?
上場した企業のストックオプションの量に関するデータも踏まえて、この回では、「オプションプールとは何なのか?」を考えてみました。
- オプションプール概観
- なぜ投資家はオプションプールを要求するのか?
- 創業者と投資家の利益相反
- シリコンバレーと日本の違い(序章)
- リードVCの存在とストックオプションの量
引き続き、「オプションプールとは何なのか?」「オプションプールによる株価のディスカウントは、どう考えればフェアなのか?」を考えてみました。
- 米国の契約におけるオプションプール
- タームシートにおける記載
- 契約書の中での記載
- 希薄化防止条項の適用除外
- 日米の雇用慣行の違い
- 日本の契約上のオプションプール
- 日米のガバナンスの差異
- オプションプール分が値引かれるのはフェアか?
- 日米のストックオプションの行使価格の設定
- 日本の税務
- 経済産業省のレポートの位置づけ
- 金融工学的に考えた時価
- 所得税基本通達から考える時価
- 「純資産等を斟酌」とは何か?
- 優先株式の株価の10分の1くらいはイケそう?
■ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?
この回から、ストックオプションの行使価格は、どのようにして、いくらに設定すればいいか?について事例から考えました。
(第440号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(上)
- 優先株式とSOを発行していた上場企業一覧
- アカツキの事例
(第441号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(中)
- アカツキの事例(再掲、要旨)
- ハイアス・アンド・カンパニーの事例
- ベガコーポレーションの事例
- リファインバースの事例
- ベイカレント・コンサルティングの事例
- G-FACTORYの事例
- どの企業が「攻めた」行使価格の設定にしているか?
(第442号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(下)
- KHネオケムの事例
- ユーザベースの事例
- JMCの事例
- グレイステクノロジーの事例
(第443号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(完)
- ロコンドの事例
- うるるの事例
- ソレイジア・ファーマの事例
- Fringe81の事例
- GameWithの事例
■VCはいかに株式を売却するか?
この回から、上場後、VCを始めとする投資家が、どのように株式を売却するのかを見てみました。
「米国では、上場後もVCは株式を保有し続けるのに、日本のVCは上場すると株をすぐに売ってしまう」といったことを時々耳にします。VCは資金を提供するだけではなく、その株式をいつかは売却して投資の回収をはかるのがお仕事なので、株式の売却自体は仕方がありませんが、その売却の「マナー」が実際どうなっているのかには大いに興味があります。
「米国では、上場後もVCは株式を保有し続けるのに、日本のVCは、上場すると株をすぐに売ってしまう」という言葉には、「米国のVCはイケてるが、日本のVCは根性がすわっとらん」といった意味が込められてることが多いと思います。
ただし、上場後の資本政策は(もちろん投資家の方針に影響されるところも大きいですが)マーケット全体の環境や、その企業の規模や資本構成、他の投資家の行動等、多様な要素が絡むと考えられますので、(上場前に比べればはるかに)、投資家単独ではままならない要素も多そうで、米国と日本の資本市場やベンチャー生態系の違いも考えていく必要がありそうです。
- 上場時の時価総額と流動性と機関投資家の参画
- 役員に残るかどうかとインサイダー取引規制
- 公募価格と初値問題
- 売却の実例となる企業は?
- ヨシムラ・フード・ホールディングスの実例(産業革新機構)
- アカツキの実例(グロービス)
- アグレ都市デザインの実例(みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル)
- フェニックスバイオの実例(京大ベンチャーNVCC1号、三菱UFJキャピタル他)
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 制度ロックアップ
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
- ウイルプラスホールディングスの事例(みずほキャピタル他)
- エボラブルアジアの事例(Fenox)
- PR TIMESの事例(GMCM)
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 報告の失念?
- 売却の戦略と体制
- オーバーアロットメントで分母が変わる
- 「特例報告」
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
- エディアのケース(オリックスキャピタル)
- ホープのケース(グロービス)
- ベガコーポレーションのケース(ジャフコ)
- リファインバースのケース(産業革新機構、三井住友海上キャピタル)
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
- ベイカレント・コンサルティングのケース(Sunrise Capital)
- バリューデザインのケース(NIFSMBC、CSK-VC)
- シルバーエッグ・テクノロジー(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ)
- G-FACTORYのケース(SMBC、DBJキャピタル、三菱UFJキャピタル)
- 立会外分売での売却
- ブロックトレード
- 「クロクロ取引」?
- 初値が初日か否かでの開示の違い
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
- キャピタル・アセット・プランニングのケース(オリックス、SXキャピタル)
- KHネオケムのケース(日本産業パートナーズ、ジャフコ!他)
- ユーザベースのケース(グロービス)
- WASHハウスのケース(JAIC-みやざき太陽1号、みやざき未来応援ファンド、ジャフコ他)
- エルテスのケース(産業革新機構)
- JMC(EEIクリーンテック他)
- 初日に初値が付かなかったのに、大量保有報告書提出しなくていいの?
- 東証一部直接上場大型案件の初値が公募割れになるのはなぜ?
- ファンドからファンドへの現物分配
- VCの処分を受け止める、レオス・キャピタルワークスの取得の事例
- 信託の活用とその影響
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
- 日本モーゲージサービスのケース(ティー・ハンズオンインベストメント)
- リネットジャパングループのケース(SBI、MIC)
- グレイステクノロジーのケース(SBIインキュベーション)
- シャノンのケース(WMパートナーズ、オリックス、サンブリッジ他)
- 日宣のケース(ジャフコ)
- ロコンドのケース(アント・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、ジャフコ)
- うるるのケース(ニッセイ・キャピタル)
- ビーグリーのケース(リサ・キャピタル・マネジメント)
- VCが役員を兼務している場合の売り方
- 主幹事証券がVCのグループ会社の場合の見え方
- VCが上場後も長期保有するのは「いいこと」なのか?
- 単元未満株買取請求
- 現物分配
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
- 力の源ホールディングスのケース(クールジャパン機構)
- マクロミルのケース(ベインキャピタル)
- スシローグローバルホールディングスのケース(外資ファンド)
- ユーザーローカルのケース(YJキャピタル、イーストベンチャーズ)
- ネットマーケティングのケース(モバイル・インターネットキャピタル)
- ウェーブロックホールディングスのケース(みずほキャピタルパートナーズ)
- アセンテックのケース(安田企業投資)
- エコモットのケース(北海道ベンチャーキャピタル)
- Fringe81のケース(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ)
- GameWithのケース(インキュベイトファンド、YJキャピタル、ジャフコ)
- VCの長期保有は善なのか悪なのか?
- 東証1部2部上場のケースと初値の騰落率
- 最後の報告の「スッキリ感」
- 公募・売出の概要
- 売却の概要
- 役員の就任状況
- 各社まとめ
■上場前後の資本政策(2017年第3第4四半期)
この回から、2017年第3四半期にIPOした会社の資本政策について見てみました。
昨年の第3四半期に上場したのは以下の企業です。
(第452号)上場前後の資本政策(2017年第3四半期その1)
- ソウルドアウト
- ユニフォームネクスト
- クロスフォー
- ジェイ・エス・ビー
- シェアリングテクノロジー
- トランザス
(第453号)上場前後の資本政策(2017年第3四半期その2)
- UUUM
- エスユーエス
- ウォンテッドリー
- ニーズウェル
- PKSHA Technology
- 壽屋
- ロードスターキャピタル
- 西本Wismettacホールディングス
(第454号)上場前後の資本政策(2017年第3四半期その3)
優先株などがあって資料のボリュームが多いのと、ベンチャーファイナンスの勉強になるのとで、この回では、マネーフォワードのみをじっくり取りあげました。
- 株主の概要
- ファイナンスの履歴(post、倍率)
- ファイナンスの注目ポイント
- 優先株の内容
- 「金額ベースのpari passu」の方がよかったのでは?
- 公募・売出の概要
- 売却の概要(ジャフコ)
(第455号)上場前後の資本政策(2017年第3第4四半期その4)
- テックポイント・インク
- ウェルビー
- 大阪油化工業
- MS&Consulting
- テンポイノベーション
- シルバーライフ
- SKIYAKI
- Casa
- シー・エス・ランバー
- サインポスト
- 幸和製作所
- クックビズ
- ポエック
- トレードワークス
昨年のコンテンツは以上です。
本年も、どうぞよろしくお願いいたします。<(_ _)>
以下、目次一覧:
(第404号)謹賀新年(2016年の「週刊isologue」総集編)
(第405号)上場前後の資本政策(2016年第4四半期前編)
(第406号)上場前後の資本政策(2016年第4四半期後編)
(第407号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第1回)
(第408号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第2回)
(第409号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第3回)
(第410号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第4回)
(第411号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第5回)
(第412号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第6回)
(第413号)ベンチャーの資本業務提携に必要な、たった一つのこと(第7回)
(第414号)Snap(Snapchat)の資本政策(その1)
(第415号)Snap(Snapchat)の資本政策(その2)
(第416号)Snap(Snapchat)の資本政策(その3)
(第417号)Snap(Snapchat)の資本政策(その4)
(第418号)Snap(Snapchat)の資本政策(その5)
(第419号)Snap(Snapchat)の資本政策(その6)
(第420号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期前編)
(第421号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期中編)
(第422号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期後編)
(第423号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期後編2)
(第424号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編1)
(第425号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編2)
(第426号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編3)
(第427号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編4)
(第428号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編5)
(第429号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編6)
(第431号)上場前後の資本政策(2017年第1四半期 種類株編7)
(第433号)上場前後の資本政策(2017年第2四半期 種類株編)
(第434号)上場前後の資本政策(2017年第2四半期 種類株編2)
(第435号)ストックオプションの「適正量」を考える(2016-2017年上期)
(第436号)ストックオプションの「適正量」を考える(〜2017年上期 その2)
(第437号)ストックオプションの「適正量」を考える(〜2017年上期その3)
(第440号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(上)
(第441号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(中)
(第442号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(下)
(第443号)ストックオプションの行使価格は、いかに設定すべきか?(完)
(第452号)上場前後の資本政策(2017年第3四半期その1)
(第453号)上場前後の資本政策(2017年第3四半期その2)
(第454号)上場前後の資本政策(2017年第3四半期その3)
(第455号)上場前後の資本政策(2017年第3第4四半期その4)
(ではまた。)
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