週刊isologue(第41号)創業期ベンチャー企業の資本政策(基礎編)

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週刊isologue(イソログ)
                     2010.01.11(第41号)
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■創業期ベンチャー企業の資本政策を考える(基礎編)
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今週は、創業期ベンチャー企業の資本政策についてです。

いろいろ試行錯誤でやるしかないベンチャー企業の経営ですが、今までも何度か述べてきたとおり、資本政策だけは最初が肝心。ベンチャー企業の企業価値は後になるほど大きくなり、株主の「既得権」も複雑に絡まっていきますので、後になるほど修正が困難になるわけです。

へんな資本政策にしてしまった場合、創業者や従業員や投資家の「やる気」も失わせることになりかねません。
今回は、そうした重要な資本政策を具体的にどのように策定するのかを見てみたいと思います。

 

■資本政策表とは

「資本政策」というのは「どのような株主に、いくらの株価で、何株分の株式やストックオプションを割り当てるか」、つまり、資金調達や株式公開等を考慮して、必要な金額が調達できるか、公開時の持株比率は妥当な水準か?等を考慮する戦略や計画のことです。
資本政策というのは、その計画を表にしたもののことです。

 

なにはともあれ、実物を見ていただいた方がイメージがわくと思いますので、下記に例を掲げてみました。

 


201001111342.jpg
図表1.資本政策表の非常に簡単な例(クリックで拡大)

 

あまり最初からいろんな要素を書き込んでも頭がこんがらがると思いますので、あえてかなりシンプルな例にしてあります。
つまり、この例では役員や従業員にストックオプションも付与してませんし、資金調達を2回だけ行って上場までこぎ着けています。

また、資本政策表は財務諸表のように「こうでなければならない」といった特段のルールもありませんので、株式数や金額などの必要な要件が盛り込まれていれば、体裁はあまり気にしなくていいと思います。

この例に従って、どんなことを考慮しながら資本政策表を作るかについて考えてみます。
上記の設例の資本政策表を左から右に、時系列で見ていきます。

 

(1) 設立(2010年1月)

まず、この会社は2010年1月に設立されています。
このとき、この会社の社長のA氏、CTO(技術担当)のB氏、従業員のC氏がそれぞれ16,000株、2,000株、1000株分づつを出資しています。
株価は500円。
合計は2万株ですから、資本金は1000万円です。

つまり、このときの企業価値(株主価値)は、1000万円ということになります。

ここをスタート地点として、投資家から株式で資金を調達して、上場を目指すことを考えてみます。

ちなみに、資本政策表を作るにはまず、週刊isologue37号「ベンチャー企業の事業計画(初級編)」で書いたような事業計画書を先に作っておく必要があります。
つまり、事業計画書が作成されていれば、どのくらい投資が必要か、売上や利益がどう変化していくか、等が仮定されてますので、差し引き資金がいくら不足するかも見えてくるわけです。
(何も前提無しに、いきなり資本政策表を作れるわけではないということです。)

事業計画を立ててみたら、当初から利益がどんどん湧いて資金も不足しないという場合にはどうしたらいいでしょうか?
その場合はわざわざ株式での資金調達などしなくてもいいし、外部の株主からうるさいことを言われなくても済むわけです。

一方、外部から資本を入れて他人から口を出されない方が幸せとも限らない。
まったく外部の株主が入らない企業は、 ともすれば自分達の興味があることばかりを追求して、株主から見た企業価値の増大の方にはあまり神経が行かなくなることも往々にしてあります。
本来はもっと高いステージに登れたのに、自分たちがそこそこ裕福に食っていける程度で小さくまとまってしまうとしたら、社会的損失ということにもなりえます。

世の中にはのんびりやっていても生き残っていける業種や事業もあるでしょうが、IT系のように変化のスピードが早く、勝ち組と負け組がはっきり分かれてしまうような産業では、利益が出るのを待っているのでは遅すぎるかも知れません。「あるべき」成長をするためには、もしかしたら「利益が出ているほうがダメな状態」なのかも知れないわけです。

 

(2) 第1回第三者割当増資(2010年12月)

さて、事業計画を立てた結果、従業員を増やして投資もしないと他者との競争に勝てない危険があり、そのために1億円程度の資金を調達する必要があるということになったとします。

前記の設例では、このためにベンチャーキャピタルから1億円程度の資金を調達することを考えています。

企業価値をどう計算するかの概要については、週刊isologue(第39号)「創業期ベンチャー企業の企業価値評価」をお読みいただければと思いますが、ここでは投資直前(pre)で2億円の企業価値があるということで投資家が説得できるとします。

この場合、1株の価格(株価)は設立時の20倍の1万円になっています。
(企業価値を発行済株式数で割ったものが株価になります。)

資本政策表では、この株価で10,100株を発行し合計1億100万円出資してもらう計画です。
この結果、Xベンチャーキャピタルの持株比率は33.6%ということになります。

 

(3) 第2回第三者割当増資(2011年12月)

そのちょうど1年後にまた1.8億円の資金調達が必要になりそうだとします。

このケースでは、1株6万円で業務提携先Y社・Z社の2社からそれぞれ1000株づつ調達し、Xベンチャーキャピタルも自分の持株比率33.6%をキープするように1000株を追加投資してくれるものと想定しています。

ベンチャーキャピタルが投資をする際の投資契約で、自分の持株比率が薄まらないように追加で投資をできる条項を付けることが多いですが、この条項を希薄化防止条項(anti-dilution)と呼びます。通常、追加投資をするのは投資家側の「権利」であって、必ず投資しなければならない「義務」ではありません。

ここでは、順調に事業が拡大しているので、Xベンチャーキャピタルも追加してくれた、と想定しています。

この会社の業績が思ったように伸びず、上場も見込めないし会社の存続も危ぶまれるといった場合には、Xベンチャーキャピタルが必ず追加で資金を投資してくれるとは限りませんので、念のため。

また、このときの企業価値(pre)は18億円を見込んでおり、1株6万円で3000株で合計1.8億円の資金調達ということになっています。

この時点で社長のA氏の持株比率は50%を切ります。
ただし、役員のCTO B氏、従業員C氏を合わせると、まだ6割超の持株比率をキープしています。

 

(4) 株式上場(2015年12月)

この会社では、設立4年目の2015年12月に上場を目指す計画にしています。

このとき、一株あたり25万円で3,700株を発行して、9.25億円を調達(公募増資)、92億円の時価の会社になるという計画です。

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以上がこの資本政策表のざっとした説明です。
以下では、この資本政策表を作る際に、どのようなことを考える必要があるかについて考えてみます。

 

■どの程度の期間の計画を立てればいいか?

こうした資本政策表は、何年分くらい策定すればいいでしょうか?

ベンチャーというのは、たいてい将来の不確実性が高いことをやっているので、事業計画と同様、あまり10年、20年先のことまで書いても仕方がないと思います。そういう意味で5年程度の計画を立てればいいと思います。

また、ベンチャーキャピタルから投資を受ける場合、ファンドの期限も要考慮です。

ベンチャーキャピタルのファンドの期限は5年から10年程度で、7年くらいのものが多いのではないかと思います。

ベンチャーキャピタル側としては、ファンドの期限が来る前に上場やバイアウトなどでEXITしたいわけですから、(すでにファンドを作ってから数年経っていることもありますので)、ベンチャーキャピタルから資金を入れる際には、だいたい5年以内で上場・バイアウトなどのEXITができる見込みを持っていることが望ましいということになります。

 

■外部の投資家が何%くらい株式を持つのがいいのか?

「増資をする際に、ベンチャーキャピタルに何%渡すのがいいんですか?」という質問を非常によく受けます。

ベンチャービジネスの性質やステージ、規模にもよりますので、一般論としては「ケースバイケースです」とお答えするしかありません。

資本政策表を作る意味は、まさに、一般論ではなく事業計画など個別の要素も反映させた上で、

  • 必要となる資金がちゃんと調達できるか?(企業価値や株価は適正か?)
  • 上場後も安定した株主構成となるか?
  • 創業者や投資家の苦労に報いられるだけのキャピタルゲインは出るか?
  • 上場基準は満たしているか?

等の観点を総合的にチェックするためのものだとも言えます。

 

といっても何らかのガイドラインは必要ですので、以下では、投資家の持株比率によって、会社法や会計基準などからどのような効果が生まれるのかについて見てみます。

(以下、発行する株式はすべて議決権がある株式であると想定しています。)

 

5割超 (50%超)

1人の投資家が5割を超える株式を持つと、株主総会の普通決議(309条1項)で必ず自分の思い通りに決めることができるようになります。
例えば、取締役や監査役などの役員を選任することができ、会社に役員を送り込んだり、役員会全員をその株主の思い通りに決めることも可能になりますので、会社の日常業務についてほとんどすべてのことを決定することができるようになってしまいます。

その株主が法人であれば、その法人の子会社になる、ということです。
社長の任期が満了したら、「次期からはあなたはもういらないよ」と言われても(別途、契約等で定めがある場合を除き)基本的には文句も言えません。

だから、1社に対して(または同じ意見になる可能性がある投資家の集団合計で)合計5割を超える比率の株式を渡すというのは、よくよく考えた方がいいということになります。

もちろん、今回の資金調達では5割を超えなくても、今後資金調達を繰り返していくと5割を超えてしまうという場合も同様です。
(もちろん、あまり口を出さずに安定株主になってもらえる場合など、5割超を外部の投資家にもたれるのが必ずしも悪いというわけではありませんので、念のため。)

 

3分の1超 (33.33…%超)

設例の第一回目の調達では、Xベンチャーキャピタルが33.6%(3分の1超)を保有することになってます。
この「3分の1」も、持株比率の大きな境目です。

日本の会社法上、会社の重要な方針、例えば、

  • 定款の変更(309条2項11号、466条)
  • 募集株式の事項の決定(309条2項5号、第199条第2項)
  • 会社法第5編の規定により総会決議を要する場合(309条2項12号)
    合併・会社分割、株式交換、株式移転
  • 事業の譲渡や譲受け等(309条2項11号、467条1項)
  • 資本金の額の減少(309条2項9号、447条1項)

などが、株主総会の「特別決議」(会社法第309条2項)が必要になる事項です。

特別決議は出席した当該株主の議決権の 3分の2以上の賛成を必要とする決議ですので、これらを実施する場合に3分の1超を持つ株主がいると、必ずその株主の了解を得ないと決定できません。つまり、その株主に「拒否権」が発生することになります。

つまり、定款記載事項である「社名(商号)」を変えたり、本店所在地を変えたりといったことから、株式を発行して資金調達するのにも、その株主の了承が必要になります。

また、会社がバイアウトされるのに必要な合併、事業譲渡なども、その株主の了承が必要になってくることになります。(その株主の意向に沿わないバイアウトだと、拒絶されることになってしまう。)

 

3分の2以上 (66.66…%以上)

逆に言えば、外部の株主に50%超を持たれていても、会社の創業者等が3分の1超を持っていれば、たとえ取締役は続けられないことになったとしても、株主として社名変更や増資や合併等に対する拒否権はあるわけです。

しかし、特定の投資家に議決権の3分の2以上を持たれてしまうと、もうそうした拒否権も使えないことになってしまいます。

 

出資者が上場企業の場合

他に、出資者が上場企業などの場合には、40%、20%、15%といった区切りも意味を持ち得ます。

連結決算をしなければならない基本は50%超ですが、40%以上でも、役員を送り込んでいたり経営の方針を決定する契約がある一定の場合等に連結する必要が出てきます。

また、20%以上は持分法適用になりますが、役員を送り込んでいたり経営の方針を決定する契約がある一定の場合には、15%以上で持分法適用になります。

(日本公認会計士協会「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する監査上の取扱い」等参照。)

 

すなわち、これらはいずれも投資してもらう会社の決算が出資する側の企業の決算に影響するものです。

このため、上場企業等にこれらの境界線を越えた投資をしてもらう場合には、投資を受けるベンチャー企業側でも、決算のための資料をスピーディに作成して株主に渡すことが求められたり、上場企業に準ずる内部統制が求められたりすることにもなり得ます。(ベンチャー企業の急成長期などには、そうしたことが重荷になる可能性があります。)

逆に、投資を受けるベンチャー側がそうした会計に関する体制がほとんどなく、上場企業の足をひっぱってしまう可能性がある場合には、上記のような比率を超えないような投資しか受けられないかも知れません。

 

投資契約も重要

以上で述べたのは、何も契約を結ばなくても、会社法や会計上の原則でそうした扱いになるものです。
しかし法律で決まっていなくても、投資を受ける際に締結する投資契約において、そうした義務や拒否権が定義されることもあります。

この場合にも、上記の会社法の原則等の水準の感覚を持っていると参考になるはずです。

例えば、20%しか出資しない株主が本来3分の1超を持っていないと得られないはずの合併や事業譲渡の拒否権を投資契約に盛り込もうというのであれば、他の条件によってはOKしてもいいかも知れませんが、5%しか出資しない株主が、そうした特別決議事項に関する拒否権を持つというのは、「ちょっと図々しい」ということになるかも知れません。

 

■創業者の持株比率は多いほどいいか?

それでは、創業者の持株比率はどの程度に設定するのがいいでしょうか?
創業者の持株比率は多ければ多いほど創業者にとって得でしょうか?

これも非常にシンプルな説例で見てみましょう。


201001110517.jpg
図表2. 創業者と外部の投資家の持株比率(その1)

 

上図の「ケースA」を見ると、創業者が80%、外部の投資家が20%の持株比率を持っています。

そして、「ケースB」では、創業者が55%、外部の投資家が45%を保有しています。

「創業者にとってこのどちらが得か?」と訊かれたら、「ケースA」の方が得に思えるのが普通ではないかと思います。

ところが、実際の株式の価値や企業価値は、株式数だけなく株価を掛けたものです。

下の図をご覧下さい。


201001110520.jpg
図表3. 創業者と外部の投資家の持株比率(その2)

 

この図の縦軸は持株数横軸が株価のイメージです。
つまり、この面積が企業価値やそれぞれの株主が保有する株式の価値を表しています。

そうすると「ケースA」では創業者が80%持っているのに対し、「ケースB'」では創業者は55%しか持っていませんが、株価を掛けた「面積(資産価値)」では「ケースB'」の創業者持分の方が大きいことがわかります。

つまり、外部の投資家の出資を受けるということは、その投資家が参加することによって企業価値が高まるかどうかも重要なのです。 

つまり、同じ1億円を調達するのに、「持株比率は20%で1億円出します」という投資家Fと、「1億円出すなら45%欲しい」という投資家Gがいたとしたら、単純に考えれば明らかに投資家Fの方が好条件です。

しかし、投資家Fはただお金を出してくれるだけで後は何もしてくれないが、投資家Gの方は戦略を考えたり人材や取引先を紹介してくれたり、いっしょになって企業価値を上げる努力をしてくれて企業価値が投資家Xより何倍にも上昇する・・・・ということであれば、投資家Gに投資をしてもらった方が得、ということにもなります。

換言すると、「創業者の度量」と「投資家の度量」のどちらが強いかによる、ということかも知れません。

 

もちろん、「ある投資家に投資をしてもらったら企業価値が増えるかどうか」なんて事前にはわかりません。

また、「うちが投資すると企業価値が上がるので持株比率は低くなっても結局得ですよ」というのは、ベンチャーキャピタルの交渉トークにもなるわけです。

ですから、その投資家が本当にどこまで何をやってくれるのかはよくよく考えた方がいいと思います。
VCがファンドの投資家から資金を集める際に「Key man clause(キーマン条項)」といったものを定めて、特定のパートナーがファンドの運営からはずれることを禁止している場合で、そのパートナーが直接担当してくれるといった場合ならともかく、大手VCのサラリーマンの担当者であれば、「この担当者センスがいいな」と思っていても、転勤や異動で担当をはずれてしまうかも知れません。

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また、「いい投資家がが出資してる方が上場時の時価総額が高くなる」とか、「あのVCが投資してるんだったら、イケてる企業なんだろう」という期待が働くことも考えられます。特にアメリカでは有名VCのブランドで期待が高まる度合いは強いかも知れません。

日本では、分散投資型のVCが多いこともあって、まだそこまでは行っていないかも知れませんが、実績のあるVCの投資が評価の参考になるかも知れません。

 

■単純にシリコンバレーの真似をすればいいわけではない

世界中を見回しても、やはりベンチャー企業やベンチャーキャピタルの投資が最も活発に行われているのはシリコンバレーを置いて他にはないわけで、日本のベンチャービジネスの実務もシリコンバレーの実務から大きな影響を受けています。

しかし、そのシリコンバレーの実務をすべてコピーしてくれば日本でも先進的なベンチャー実務になるかというと、必ずしもそうではないことに注意する必要があります。

 

(1) 持株比率と資本市場の構造

日本のベンチャー型の上場企業というのは「オーナー企業」的に、社長が5割超を持って上場する場合も多いかと思います。
これに対してシリコンバレーでは、創業者といっても公開時には10%を切る株式しか持っていないことも多いです。

このため、創業者の持株比率が低い方がシリコンバレー的で先進的でカッコイイかというと、日本ではそこは非常に慎重に考える必要があると思います。

 

下図は家計の資産構成の日米比較の図ですが、

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図表4.家計の資産構成の日米比較(2009年6月末)
(クリックで拡大。出所:日銀、資金循環の日米比較:2009年2Q)

 

この図の通り、アメリカでは個人が債券、投資信託、株式・出資金といった資産を持っていて直接大きなリスク負担をしていますし、年金などの機関投資家の層も非常に分厚くなっています。

これに対して日本は個人金融資産の量だけを見れば1400兆円と非常に大きいのですが、その55%は預金として銀行に流れ、そこから産業に資金が供給されています。

銀行は、元利を保証した預金で調達して薄い利鞘を乗せて企業等に貸付等をしており、大きなリスクを追うのは難しい性質の業態です。このため、日本の場合、社会全体がリスクが追えない「銀行っぽい」体質の度合いが強まってしまっていると考えられます。

では、未公開のベンチャーに投資されるリスクマネーが量的に不足しているかというと、そうでもありません。
未公開のベンチャーへの投資資金は、日本の場合たかだか1兆円程度であり、それでも多すぎるという見方もあるくらいです。つまり、個人金融資産と対比するとたかだか1400分の1に過ぎない。誤差程度の小さな金額です。

しかし、ベンチャーは上場してさらに資金を調達し、成長していかないといけません。
また、古くて立ち行かなくなった企業がどんどん退出してこそ、新しいベンチャーにもチャンスが巡って来るわけです。
国全体のリスクマネーの量が少ないということは、リスクマネーに関わる職業人の雇用量も少なくなるし、投資家の発言力も弱くなり、そうした新陳代謝も進まないことにもなります。

また、資本市場が相対的に小さいと、ベンチャー企業が上場した後にベンチャーキャピタルが株式を売却したものを代わりに拾い上げる年金等の機関投資家のパワーも相対的に弱くなることになります。
需給条件が悪ければ株価も付かないことになります。

このため、創業者や経営者も、自分で過半数といった大きなシェアを持って上場しないと怖いことになります。
ただしそのように安定株主対策が万全だと、投資家の言う事をあまり気にしなくてもいいので、実際にパフォーマンスもよくなくなって株価も上がらないという悪循環にもなっているかも知れません。

 

(2) プロ経営者の存在

もう一つは経営者になりうる人材の層の厚さの違いがあると思います。

アメリカは、他の会社を何社も経営してきた経験のある「プロの」経営者の層が非常に厚い。このため、創業者が永久に経営せずとも、他の優秀な経営者にバトンタッチすることも多いかと思います。

一方、日本でもそうした複数の企業を渡り歩いた「プロ」経営者も増えて来てはいますが、まだ大企業で終身雇用というパターンも多く、基本的にはかなりの年齢にならないと経営者としての経験を積むのは難しくなっています。

つまり、日本の創業者は経営を始めたら基本的には一生自分で経営に責任を負うつもりでいる必要があるでしょう。

そうなるとやはり、社長がある程度の比率を持ち続ける必要性は高くなるはずです。

最近のIT系を中心とするベンチャー企業の経営者には、「息子や孫の代にまで継がせたい」といったコテコテのオーナー企業的なノリの経営者は減って来ていると思いますが、さらに進んで、創業者が最初から会社を「売り物」として見たり愛情が無くてもいいかというと、そうではないと思います。

日本でパナソニック(松下)、ホンダ、トヨタなど、創業家が長い間経営に携わるケースは多いですし、アメリカのIT系企業ですら、マイクロソフトやインテル、アップル、グーグル、ヤフーなど創業者が長い間、経営に関わっている会社も多いかと思います。

もちろん、アメリカの場合でも持株比率が高いから経営に長期に関与しているというより、いい業績をあげ株主からの支持があるから経営に関与できているのだと思いますが、日本で経営に携わり続けるにはやはり一定の持株比率が必要でないかどうか・・・・統計的な検証もしていないので一般論としては何とも言えませんが、個別企業の事情も鑑みてよく考える必要があるように思えます。

 

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以上、資本政策表に基づいてどのようなことを考える必要があるか一通り見てみました。

次回は、失敗事例等もまじえて、資本政策について考えてみたいと思います。

 

(ではまた。)

 

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