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週刊isologue(イソログ)
2010.01.18(第42号)
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■創業期ベンチャー企業の資本政策を考える(実例編)
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先週に引き続き、創業期ベンチャーの資本政策について考えてみます。
今回は、必ずしも成功とは言えない実例が中心です。
■失敗例1:初期に投資家に株式を渡しすぎ
資本政策の最もよくある失敗例は、会社のフェイズがまだアーリーな段階で投資家に株式を渡し過ぎるケースです。
換言すると、調達する必要がある資金量に対して、企業価値評価が低すぎるケースということになります。
例えば、100万円の資本金で会社を設立してがんばって会社を運営していたら、半年後にVCなどの投資家から「企業価値2000万円で評価して資金を1000万円入れたい」という申し出があったとします。
こうなると、(2000万円の評価の会社に1000万円で、投資後の企業価値は3000万円になるわけですから)、その段階ですでに33%は外部の株主が持つことになってしまうわけです。
仮に、今後さらに9000万円くらい資金が必要だとしたら、その程度の企業価値評価では、創業者や安定株主の持株比率がさらに薄まり、結局、株式公開が困難な資本構成になってしまう可能性も高い。
前回は「企業価値評価が低いことが創業者にとって損になるとは限らない」という話をしましたが、逆に、投資家にとっても企業価値評価が高いことが損になるとは限りません。うまく上場できるならば、創業側にも投資家にも、双方win-winなメリットがあるはずです。
(1) 「20倍」はすごいか?
上記の例で「100万円で設立した会社が半年で20倍になった!」と思うと、ものすごく儲かった気がして、思わず「投資してください!」と言ってしまう人も多いと思います。
また、「もっと高く評価できませんか?」なんてことをいうと、投資家の方も、「半年で20倍もの評価をしてるんですよ?それ以上欲しいなんていったら頭がバブった経営者だと思われますよ。」てなことを言ったりします。
しかし、このケースでは、まず当初の資本金が非常に小さいということを考えるべきです。
100万円だから20倍ですが、資本金10万円だったら200倍ですが、もし上場を目指すのなら、この先、企業価値は何十億円、何百億円・・・と増やしていかないといけないわけで、その最初の10万円と100万円の差は誤差の範囲ともいえるあまりに小さいものなわけです。
日本の商法ではちょっと前まで、株式が1株5万円、株式会社の資本金は最低1000万円と決まっていました。
このため、株価が10万円なら「2倍」、20万円なら「4倍」といった言い方がされたり、「このフェーズで5倍は高いなあ」 といったことをおっしゃるVCの方もよくいました。
(20万円だと「4倍は高い!」と言っていた投資家が、株式を3分割して「6万円で」と言ったら、「それなら1.2倍だから妥当だ」と投資に応じたというケースも見た事があります。
分割前換算だと3×6=18万円だからほとんど価格は変わってないんですけどね。)
会社法になって資本金の下限もなくなり、株式分割も一般化しましたので、さすがに最近ではそういうことはあまりないと思いますが、資本金との倍率で考える人がまだいないとも限らないので、ご注意いただければと思います。
企業価値評価の回(第39号)でも述べたとおり、特に創業時のベンチャー企業は過去の価値などほとんど無いわけですから、「未来」で勝負するしかありません。
過去の数値に対する「倍率」は、(まったく関係ないとは申しませんが)、創業期のベンチャー企業の場合あまり本質的ではないと考えるべきだと思います。
(2) 億単位の資金が必要ではないか?
上場までに調達する必要がある資金量にもよります。
もし仮に、1000万円が今どうしても欲しい、1000万円だけ調達すれば、後は上場まで資金は一銭もいらない、というのであれば、もちろん上述のように2000万円で評価してもらって1000万円投資してもらい、33%の株式を投資家に差し上げてもいいかも知れません。
最近、特にネット系の企業などは、
- 「ムーアの法則」的にサーバなどの価格が低下したり、従量制的な料金で設備を利用できる「クラウド」が利用できるようになってきたりで、大きな設備投資が不要になり、
- Google Adwordsやアフィリエイトのサービスなど、手軽に収益を獲得する選択肢も増えて来た
等の理由から、初期投資がほとんど不要なベンチャー企業も増えています。
しかし、成長する企業に資金が必要になる要因は、まだまだゼロではありません。
例としてオフィスへの投資を考えてみましょう。
飲食や物販など店舗を利用するビジネスだったらもちろんですが、比較的設備投資のいらないIT系の事業でも最低限のオフィススペースは必要になります。
もしかしたら将来、「本社」といった大勢の人が働くスペースが存在せず、役職員全員がネットで繋がって自宅その他の好きな場所で仕事をしているといった業態の会社の上場が承認される時代がやってくるかも知れませんが、まだ当面は無理な気がします。
IT系の先端的な企業でも、
- 実際に集まって話し合わないと、事務的なことはともかく、新しいアイデアは出てこない
- フロアが2つに分かれただけで、それぞれのフロアで派閥ができてしまった(1分で行けるのに)
といった意見がよく聞かれます。
まだ当面は、「物理的な」オフィスは必要ではないかと思われます。
東京で起業して、上場時に役職員30人の会社になるケースを考えてみましょう。
賃料坪2万円のオフィスで、会議室も入れた一人当たりのスペース4坪、敷金10ヶ月分を要求されるとすると、それだけで2400万円(30人×4[坪/人]×2[万円/坪]×10ヶ月)の資金が必要になります。
業種にもよりますが、内装や机パソコンその他の設備投資、営業や人材確保などの先行投資を入れたら、余裕をもった調達資金は1億円単位になることも十分考えられます。
もし、事業計画を立てても、資金が上場までに1000万円しか要らないといった結果になったら、計算間違いや考え違い、漏れや抜けは無いか等、他の上場企業などのコスト構造なども参考にしながら、一度考え直してみた方がいいかも知れません。
ニッチで一人が食って行ければいい場合には収支は均衡していても、他との競争等で急成長する必要が生じて従業員を雇ったり宣伝費を掛けたりすると、とたんに資金が必要になることもあります。
もちろん、ものすごく優れたビジネスモデルで当初から利益が出て即金が入り、資金がほとんど不要ということが無いわけではありません。
(3) 上場時の時価総額はどのくらい必要か?
アーリーステージのベンチャー企業が企業価値を考える場合には「未来(のキャッシュフロー)」を考える必要があると第39号で申しましたが、資本政策も「未来」から逆算して考える必要があります。
創業者も投資家も関係者全員がハッピーになっている未来(例えば上場してさらに発展している未来の自社の姿)を想像してみましょう。
その時、時価総額はどのくらいになっているでしょうか?
また、社長や安定株主は何%くらい持株比率があるべきでしょうか?
- 現在、J-SOXや監査コストなど、上場維持コストも上がっていますので、それらを支払っても上場してメリットがあるかどうか、
- 機関投資家に株式を買ってもらえるかどうか、
等を考え合わせると、上場時の時価総額はできれば300億円から500億円程度は欲しいところです。
時価総額が300億円から500億円ということは、PER(株価収益率)が平均より高い「20倍」だとすると、年間の純利益が15億円から25億円ということになります。
もちろん、上場以降も利益の急成長が見込めるような事業であれば、もっと高いPERが付くかも知れません。
そうすれば、その分、利益が小さくても時価総額は付くことになります。
また、今後はゆっくりとしか成長しないと思われている事業であれば、PERはもっと低くなります。
そうすれば、同じ時価総額を獲得するのに、もっと 純利益が要求されることになります。
(4) 「好循環」に乗れる資本構成
投資家は、自分が株を買った企業には成長してもらいたいわけです。
企業は銀行から借入で資金を調達しても「冒険」はできませんので、リスクが高い領域に果敢に立ち向かって行くためには、株式でファイナンスできる余力が大きいほどいいことになります。
時価総額が高く社長や安定株主の持分が高いほど、こうしたリスクの高い領域にチャレンジする余力も大きいということになります。
逆に、時価総額が低く、社長他の安定株主比率も低い会社だと、今後、株式で資金調達したり、合併や株式交換などの株式を使った買収で成長する余地は低いと見られがちです。
リスクが負えないということは、堅実な領域でコツコツと利益を出していかないといけないということですから、 そうすると将来キャッシュフローの予想も低く、株価も抑え気味になってしまいます。
上記で「300億円から500億円」という荒っぽい数字を述べましたが、もちろんそれだけないと上場基準をクリアできないということではありません。50億円以下の時価総額で上場してる企業も多いわけです。
しかし、他社が絶対真似できないような独自性の高い領域でコツコツ安定した業績を出して行ける自信があるのだったら、それで上場してもかまわないかも知れませんが、競争が激しく会社の中身を急速に変化させないと生き残れないことがわかっているのに、財務的なリスクを負えない体質で上場してしまったら、少なくともファイナンス的には打つ手が一つふさがれてしまうことになります。
(これも、もちろん利益が大量に出て、その範囲内で十分に施策が打てるということであれば、資金調達をする必要はないわけですが。)
しかし、今後も急成長していかないといけない競争環境にあるベンチャー企業は、ファイナンスの余力が無いと厳しいのではないかと思います。
また、IR(インベスター・リレーションシップ)力も関係してきます。
機関投資家や大企業などから信頼を得て安定して株式を持ってもらうには、それなりの「IR力」やCFOの力を必要とします。しかし、大企業のように、新卒で取った社員を長年教育して、優秀な財務マンに育て上げるといった時間は、ベンチャー企業には必ずしもありません。
優秀なCFOに転職して来てもらおうと思っても、利益があまり出ていない、時価総額も小さい、資本構成的にファイナンスをする余力に乏しいといった会社の財務の現状を見たら、優秀なCFOに転職してきてもらうのは、なかなか難しいことになります。(優秀なCFOであれば、そうした状況が理解できるし、自分が参画しても打つ手が無いのはわかりますので。)
上場は決して「ゴール」ではありません。
上場できても引き続き成長しなければ、結局、上場直後をピークに右下がりの株価になって、投資家にも迷惑をかけることになってしまいます。
(実際、そういったベンチャー企業が非常に多いのはご存知の通り。)
以上のように、創業者の比率が高く時価総額も高ければファイナンス上の余力も大きく、将来の期待が高まれば時価総額はもっと大きくなるという「ポジティブ・フィードバック」が働くことが考えられます。
もちろん、実体もないのに期待だけが膨らんだバブルを演出しなさいといったことを申し上げているわけではないですが、株価が高いことは以上のように「予言の自己実現」的な性質を持ち得ます。
こうした点を考えて、経営が「好循環」に入るような計画を立てるべきだと思います。
もちろん、理想的な計画を立てれば必ずその通りになるなんてことはありません。
しかし、最初から理想的な状態に到達できない絵を描いていたら、(特に資本政策の場合)それよりマシな状態になる可能性は極めて小さいと思います。
少なくとも最初は、上場後も好循環に乗れるような絵を描き、その成功した未来から遡って現在の資本政策を考える必要があると思います。
(5) VCが合理的とは限らない
ファイナンスにあまり詳しくない個人投資家はさておき、VCは「金融のプロ」なので、以上のようなことは百も承知のはずです。
しかし、日本のVCはサラリーマンで投資のノルマもあったりしますし、投資の件数も多いので、「企業価値は安ければ安い方がいい」という投資をしちゃうケースが多く散見されます。(もちろん、ちゃんと考えて投資されるVCもいらっしゃいます。)
ケースバイケースではありますが、もし上場を志向しており、1億円単位の資金調達が必要なら、少なくとも2億円とか3億円で評価してもらわないと、「好循環の絵」にするのはなかなか難しくなってくるはずです。
数千万円の評価しか受けられなかった場合には絶対にダメとは限りませんが、そうした場合には将来予想される展開を考えた場合に、ちゃんと「幸せな未来」の絵が描けるかどうかを、よほど注意深く検討する必要があるでしょう。
(6) バイアウトの場合
将来、他の企業に買収されることをEXIT(投資回収の出口)として考えているのであれば、将来の時価総額や安定株主比率が低くてもOKかも知れません。
ただし、日本のVCはバイアウトを前提としていないことも多いため、「上場は目指しません」と言ってしまうと、そもそも投資してくれるかどうかわかりません。従業員も「自分の会社が売られる」ということは、想定してないケースも多いと思います。
週刊isologue 第34号「ベンチャーのファイナンス(中級編)」でも述べたとおり、日本のVCは普通株式での投資がメインです。
この場合、上場に成功した場合にはともかく、バイアウトの場合には創業者だけが儲かり、VCはほとんど儲からないといったことにもなるため、バイアウトについてVCから反対があって実現しないことも想定されます。
(7) 個別の計画で検証が必要
以上はあくまでざっくりとしたモデルケースに基づくもので、具体的には「ケースバイケースです」としか言えません。
個別のケースの前提条件に従って、起業家が自分で事業計画書や資本政策表を作って検討する必要があります。
以下、他にも何ケースか失敗例を見てみましょう。
■失敗例2:誰が安定株主かを読み間違う
仲間数人で起業することになったとします。
例えば2人で起業した場合に、社長が6割、副社長が4割持ったとします。
ところが副社長が突然、「やっぱりオレ辞める」と言い出したとしたら、安定株主と思っていた4割は一気に不安定になってしまうわけです。
もちろん辞めても良好な関係が続く事もありますが、「けんか別れ」ということもありえるわけです。
このため、株主構成を考える場合には、それぞれの株主について「この株主が敵に回った場合でも大丈夫か?」ということをよく考える必要があるでしょう。
もちろんベンチャー企業なので、どんなに考えてもリスクは残ります。
仮に社長の持株比率が100%であれば、他の誰が辞めても資本政策的には安定ですが、社長がお亡くなりになるリスクだってあるわけです。
このため、頭をひねれば必ずリスクをゼロにできるわけではありませんが、それでも、注意深く考えておくと違いが出る場合も多いかと思います。
例えば別の例で、仲間3人で起業しようということになり、仲良く100万円づつ計300万円の資本金で会社を設立したとします。
ところがこのうち1人が会社を辞めたいと言い出したとします。
まだ、VC等からファイナンスを受けないうちなら、その辞める人の分を100万円程度の資金で買い取れる可能性もありますし、その程度の資金であれば、親戚等に借金したり会社で稼いだ資金を使えば、なんとかなる可能性も高いでしょう。
しかし、VCがこの企業の価値を3億円と評価して投資した後に、その一人が辞めたいと言い出したら、その3分の1の株式を買い戻すのに1億円もの資金が必要にもなってしまうわけです。
この規模になるとなかなか資金はポンとは集まりません。
「VCが全体で3億円と評価したのだったら、VCにその3分の1を1億円で引き取ってもらえば?」ということを思いつくかも知れませんが、VCはそうした既発行の株式を買い取るのは基本的にいい顔をしません。
なぜなら、VCは会社に成長してもらうために会社に資金を入れたいわけで、会社を辞めた人に1億円(弱)儲けさせたいわけではないからです。
残された2人の創業者も、自分達はまだ会社であくせく働いているのに、途中で辞めたヤツが1億円もらえるのでは、やる気も無くなるというものです。(もう一人も「俺も辞める」と言い出すかも知れない。)
このため、VC等から高い企業価値で資金調達をしようと考えるなら、その前に一度立ち止まって、自社の株主で将来的にも安定して株式を持ってもらえるのは誰か?ということをよく考えるべきです。
前述の通り、日本の株式市場では、上場する時に創業者を始めとする安定株主が過半数を持っているのが望ましいのですが、それは、その人たちが大金持ちになるためというより、「ファイナンスの余力」を生み出すためのバッファを抱えておく必要があるからであり、その株式は、法律上はもちろんその株主のものですが、ある意味、自由に売却して換金できる株式ではないわけです。
また、共同創業者でなくても、創業時に知人や親戚、エンジェルの個人投資家等から5%、10%といった小口の資金をちょっとづつ出してもらい、それらを合計すると40%、50%といった量になる、といったケースがあります。
こうした株主が上場後も安定して保有してもらえない人たちと考えられるのであれば、高い企業価値評価で投資してもらう前に、余力に応じて買い集めておかないと、時価上昇後に買い戻すことは非常に困難になります。
もちろん、リスクの高い創業時に投資をしてもらったわけなので、「原価で買い戻させてください」と言っても、投資家も「ふざけるな」ということになるでしょう。
御礼も込めて若干高値で買い取るとか、少量の株式は残して将来のキャピタルゲインの可能性を残しておくとか、基本的には全体がハッピーになるような方向でまとめる必要があります。(これも、そううまくいくケースばかりではないですが。)
■失敗例3:だらだら調達して、多数の株主に株式が分散する
これは、若い創業者というより、それなりの年齢で社会的地位があって交友関係も広い人が起業するパターンに多いのですが、創業や増資をする際に、友人その他の知り合いから、小口でたくさん資金を調達するケースがあります。
そこそこの年齢の創業者であれば、その友人知人もそれなりの資産があって「200万円や300万円だったら出すよ」ということも多い。
そういう人が20人も集まれば、4000万円とか6000万円といった結構な金額が集まることになります。
ところが、この小口の個人投資家は「エンジェル」といえば聞こえはいいですが、プロのVCが1社で4000万円とか6000万円出資する場合と異なり、必ずしも真剣度も高くないし、会社をモニタリングする能力も無いことが多いわけです。
一人一人の株主は発言力も弱く、会社の経営者もプレッシャーがかからないから、経営も緩みがち。お金がなくなると、また友人知人に資金を「無心」しにいくというパターンにもなります。そうしているうちに株主数も多くなってしまう。
株主数が多くなると、株主総会などの手間が大変になり、ベンチャー企業には負担が重くなっていきます。
しかも、株主が50名以上になると、金融商品取引法上、公募にならないように増資をするのが難しくなってきます。
(公募の場合、公認会計士の監査が必要な有価証券届出書を提出する必要が出るなど、負担がぐんと増えますので、未公開のベンチャーの場合には事実上不可能と思っておいた方がいいでしょう。)
また、全員が昔からの顔見知りであればまだしも、知人の紹介の人などが入って来ると、その人が「反社会的勢力」に関係していないかのチェックが難しくなってきます。
昨今、上場審査における「反社会的勢力」のチェックは非常に厳しくなっていますので、 誰か一人がそれに該当すると、上場できないことにもなります。また、誰でも参照できるオープンな「反社会勢力チェックリスト」といったものは存在しません。
(そんなものを作ったら、「なんでワシが反社会的勢力じゃ?」という怖い人が来るに決まっているからです。)
上場審査でも、「この株主Aさんが反社会的勢力なので、上場できません」と教えてくれるとは限りません。
「内部統制が十分でない」といった、他の要件を理由に落とされることも多いのではないかと思います。
いずれにせよ、日本の場合、株主数が増えたり、良く知らない株主が入ると、ろくなことにならないことが多いのです。
上場前は、株主は数名程度に抑えてコンパクトな運営ができるように心がけるべきだと思います。
(従業員に付与するストックオプションの人数は、従業員が退職したら行使ができないようになっていれば、別カウントでいいと思います。)
■失敗例4:大量のストックオプションを発行する
「失敗例1」のように、当初に大量の株式を発行し過ぎて、後から「これでは上場できない」等の資本政策のミスに気付くことがあります。
そこでよく取られるのが「ストックオプションを発行する」という手段。
創業者(社長)はお金を持っていないことも多いため、株主に頼み込んで、発行済株式数の数十%といった大量のストックオプション(新株予約権)を発行し、創業者(社長)の持分を確保するといったことが行われます。
投資家にしてみれば、将来、この会社が本当に成長するのであれば、ストックオプションを発行した分、自分達の持分が薄まってしまうということになるので、もちろんいい顔をするわけはありません。
しかし、あまりにも社長の持株比率が低いと、上場した後も安定した株価形成ができないといったことはわかりますので、しぶしぶ、これに応じることにもなります。
一方、発行済株式の4割といった大量のストックオプションが発行されていると、そのままでの上場は難しくなります。
主幹事証券が付いたとしても「上場前に社長がこのストックオプションを行使して株式に換えてください」といったことを言って来るはずです。
ところが、そのストックオプションを発行したのが、VCが投資して企業価値が4億円に上がった後だとすると、その4割で 1.6億円もの資金が行使のために必要になるわけです。
1000万円くらいなら「上場したら資金が入るので」と親戚を走り回って借りることもできるかも知れませんが、1億円を超える金額ともなると、なかなか集めるのも大変です。まだ上場してもいないので、金融機関もおいそれとは貸してくれません。
将来に向けた計画を立てず、場当たり的にファイナンスをして、こうしたことになるケースが多く見られます。
■まとめ:資本政策は計画的に
こうした資本政策の失敗例の多くに共通する要因として、「経営者の人がいい」ということがあげられます。
私はオスカー・ワイルドの小説にちなんで「幸福な王子様」タイプと密かに呼んでいるのですが(笑)、自分の持分をガメつく抱え込むことなく、気前良く株式をどんどん投資家に割り当てたり、ストックオプションをどんどん従業員に与えたりして、自分の持分がどんどん減って行ってしまうわけです。
こういう経営者は、人間的には非常にいい人ですし、友人にするならそういう人がいいでしょう。しかし、資本政策については、以上述べたようなことを考えて、多少ガメツく見えても、冷静に自分のシェアを守ろうとする経営者の方が最終的にうまくいくケースが多いように思えます。
(特に日本の場合)、前述の通り、創業者が持っている株式は、創業者が自由に売り払って換金できるわけではなく、ファイナンスのバッファとしての性格を持つことも多いため、創業者が過半の株式を持つといったことが一見利己的に見えても、実は利他的に作用するということも考える必要があると思います。
(ではまた。)
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