週刊isologue(第43号)ベンチャーキャピタルの財務諸表を読み解く(基礎編)

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週刊isologue(イソログ)
                     2010.01.25(第43号)
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■ベンチャーキャピタルの財務諸表を読み解く(基礎編)
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(追記あり:2009/01/26 9:50)

ベンチャー企業はいろんなタイプの投資家から投資を受けますが、その代表的なものがベンチャーキャピタル(VC)からの投資です。
今回は、日本のVC最大手の一社である株式会社ジャフコ(さん)の財務諸表も拝見しながら、VCの財務諸表について考えてみたいと思います。

 

■日本のベンチャーキャピタルの法的構造

シリコンバレーのVCは「パートナー」と呼ばれる個人で構成されるLLCと、そのLLCが業務を執行する(GP=General Partnerを務める)ファンド(LP=LImited Partnership)の形を取っていることが多いと思います。
つまり、ざっくり言うと「個人」の力量に大きく依存した運営が行われていると考えられます。

これに対して、日本のベンチャーキャピタルのうち特に銀行や証券など日本の大企業系列のベンチャーキャピタルは「株式会社」であり「組織的に」事業が行われているところが多いのが特徴です。
(「組織的に」ということは、別の言い方をすれば「サラリーマンがやっている」ということにもなります。)
アメリカで上場しているVCは存じませんが、日本ではジャフコのように上場しているVCもあります。

(もちろん、日本の大手ベンチャーキャピタルにも個性のある方もいらっしゃいますし、個人のパートナーが中心に行っているパートナーシップ的色彩の強いベンチャーキャピタルもありますので、念のため。)

一般には、ベンチャーキャピタルがGPとなり、1〜複数のファンドを立ち上げて、それらの運営を行います。

このファンドの「箱」の要件として望ましいのは、

  • ファンド段階で課税が行われないこと(法人税の課税対象でないこと)
  • できれば出資者が有限責任であること

などです。

ファンドは「利回り」が求められるので、儲けはなるべくファンド段階で課税されずにキャッシュを出資者に分配した方がパフォーマンスが良く見えます。

また、VCファンドは投資対象が主に「株式」で、その株式のキャピタルゲインを狙って投資するわけです。
日本のVCのファンドに出資しているのは金融機関や事業会社など法人が多いので、その人たちにとって所得の種類はあまり関係ありませんが、個人の出資者にとっては、株式のキャピタルゲインの税金は分離課税で上場企業なら10%、非上場企業でも20%なのに対し、法人からの配当などの形で受け取ると総合課税では最大約50%の税率にもなりますので、所得の種類によって結果が大違いになります。

 

このファンドのvehicle(箱)として、日本においては以前は、民法上の組合(任意組合)がよく使われていました。


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図表1.ファンドに使われる可能性のある「箱」とその効果
(クリックで拡大)

 

上の表のように、民法上の組合は、アメリカでファンドに使われるLimited Partnershipに似ていて法人格も無く、と同様、組合段階では法人税が課せられない「パススルー課税」であり、契約だけで組成できて登記も不要と、手軽だったからです。

この任意組合を使ったファンド形式は、一昨年亡くなられた元森・濱田松本法律事務所特別顧問の松本啓二弁護士のアドバイスでジャフコが組成したものが日本初だったと伺っております。

ただし、この民法上の組合では、出資者が無限責任になるのが、ちょっとした難点でした。
VCファンドが投資するのは基本的には株式だけで、株式は有限責任なので、ファンドが借入でもしない限り、実質的には出資者が無限の責任を負うことにはならないはずですが、法的に有限責任であることが明確なのに越したことはありません。
このため旧通産省が動いて投資事業有限責任組合法(当初は「中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律」)ができました。

この投資事業有限責任組合(LPS)は、GPは無限責任ですが、その他出資者(LP)は有限責任となっています。
任意組合と同様、パススルー課税のメリットもありますが、任意組合と違って登記が必要だったり、会計監査が必須だったりで、若干、コストが余計にかかります。

このため、そうしたコストが吸収できる中規模以上のファンドは、現在はLPSで組成されているものが多いと思います。
海外投資家から資金調達するファンドまたは海外向けの投資には、海外法のLimited Partnership等も使われていることと思います。

 

■ベンチャーキャピタルの会計処理

昔の会計基準には、連結において「性質が大きく異なるものを合算するのは望ましく無い」という考え方がありました。
例えば、金融をやっている会社がたまたまメーカーなどの事業会社の経営権を取得することになったとしても、全く性質の違うその2つをごっちゃにすると、財務諸表が何を表しているかが分かりにくくなってしまうからです。

一方、アメリカのエンロン事件や、日本のライブドア事件や日興コーディアルグループの件など、「ファンドやSPCを連結しなくていい例外」を利用した処理が社会問題になったため、「例外を作るとそれを悪用される」という側面の方が強く意識されるようになり、会計基準も例外を認めない方向に進むことになります。

こうした背景もあって、VCの決算を見る際には、その時代毎に、

  • 本体が直接投資しているもの。
  • ファンドが投資しているものを持分だけ反映するケース。
  • ファンドを連結して反映するケース。
  • 直接又はファンド経由で保有している投資先法人を連結するケース。

など、「どこまでが財務諸表に合算されているのか」をイメージすることが非常に重要になってきます。

 

実際に、ジャフコの有価証券報告書を見ると、「第2 事業の状況」に下記の図が掲げてあります。
ジャフコのホームページはEDINETへのリンクが張ってあるだけなので、EDINETで閲覧する必要があります。)

 


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図表2. 第37期有価証券報告書(至平成21年3月31日)

 

上図のように、基本的にずっと、「ジャフコグループが直接投資したもの」と「ファンドのうち、ジャフコが出資持分に対応する部分」だけが連結貸借対照表に反映されることになってますが、第35期だけは、

 


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図表3.第35期有価証券報告書(至平成19年3月31日)

 

上図のように、ジャフコ・グループが管理運営するファンドを全部連結して連結貸借対照表に反映させていました。
上の投資事業組合の箱の黄緑色に塗ってある範囲が違うところに注目。)

 

有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」の注は、以下のようになってます。

4.第35期は「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会実務対応報告第20号 平成18年9月8日)を適用し、当社グループが管理運営する投資事業組合を連結子会社として連結の範囲に含めた数値であります。

5.第36期は連結会計年度末をもって当社グループが管理運営する投資事業組合を連結の範囲から除外したことにより、当該投資事業組合の損益計算書のみを連結した数値であります。

6.第33期、第34期及び第37期は当社グループが管理運営する投資事業組合については、当該投資事業組合の資産、負債及び収益、費用を当社グループの出資持分割合に応じて計上しております。

 

なぜ35期に一度連結したのに、36期以降またファンドを連結から外した(外せた)のかという疑問が浮かぶわけですが、そのヒントは有価証券報告書の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されています。
(ちょっと長いですが、引用します。下線部筆者。)

 

平成19年9月30日に金融商品取引法が施行され、当社は、投資事業組合及びリミテッドパートナーシップ(以下、総称して「投資事業組合」という)の募集及びその財産の運用につき、平成19年12月7日付で、関東財務局に第二種金融商品取引業者及び投資運用業者として登録を行いました。また、当社の 100%子会社であり外国法人であるJAFCO Investment (Asia Pacific) Ltdは、平成19年11月1日付で、関東財務局に特例投資運用業務に関する届出を行いました。

投資事業組合の財産の運用業務におきましては、従来、当社は、投資事業組合の業務執行者として組合財産の運用業務(組合財産の取得、処分、分配及び払戻)及び組合財産の管理業務(現預金の管理、有価証券の保管、有価証券の受渡・決済に関する事務及びその他組合事務)を行っておりました。しかしながら、上記投資運用業者としての登録に伴い、投資事業組合及び当社は、投資事業組合契約の変更等によって組合財産の分別管理態勢を抜本的に見直し、再構築しました。すなわち、組合財産に属する現預金の管理、有価証券の保管など組合財産管理業務については、当連結会計年度末より、投資事業組合から直接、信託銀行へ委託することとし、当社は投資運用業者として専ら信託銀行に対する組合財産の運用の指図のみを行うことになりました。また、JAFCO Investment (Asia Pacific) Ltdが管理運営する投資事業組合についても、投資事業組合契約の内容を整備し、JAFCO Investment (Asia Pacific) Ltdは、専ら財産管理受託者に対する組合財産の運用の指図のみを行うことになりました。

この結果、当社及びJAFCO Investment (Asia Pacific) Ltdが管理運営する投資事業組合のうち、当社及び子会社の出資又は投資事業から生ずる損益に対する享受又は負担が概ね過半を超える投資事業組合を除く 38ファンドについては、当社及び子会社が支配していないことが明らかとなったため、上記変更の効果が生じた当連結会計年度末をもって、子会社ではなくなったことにより、連結の範囲から除外しております。また、非連結子会社の7ファンドにつきましては、いずれも小規模であり、かつ、合計の総資産、売上高、当期純損益及び利益剰余金等は、いずれも連結財務諸表に重要な影響を及ぼしていないことから、重要性の乏しい子会社として、当連結会計年度末より連結の範囲から除外しております。なお当該38ファンドに関しては、上記の運用管理態勢の再構築に伴い、業務執行者である当社及びJAFCO Investment (Asia Pacific) Ltdは、専ら組合財産の運用を指図する権限を有するに過ぎず、重要な影響を与えないことが明らかであるため、関連会社とはしておりません。また、当中間連結会計期間は連結子会社であり、平成19年10月30日からは持分法適用関連会社であった株式会社MSJホールディングスは、同社に出資しているジャフコ・バイアウト2号投資事業有限責任組合及びJAFCO Buyout No.2 Investment Limited Partnership (Cayman) L.P.が当連結会計年度末をもって子会社ではなくなったことに伴い、関連会社ではなくなりました。

 

つまり、従来はVCファンドの持分は証券取引法の規制は受けなかったのですが、金融商品取引法が施行されて、ファンドの持分の募集を行うような場合にも「第二種金融商品取引業者」として登録を行わなければならないことになったわけです。
(これもアヤシゲなファンドを作って資金を集める事例が問題視されて法律で規制されるようになり、真面目にファンドをやってる方々までがトバッチリを食ったということですが。)

それを機に、ファンドの資産を信託銀行へ預けて分別管理をきちっとする代わりに連結からは外しました、ということのようです。

ファンドに関わる業務のほとんどはジャフコが行っているのでしょうし、ジャフコ以外の出資者(LP)が本格的に投資先の選定や投資条件の決定に関わるとも思えないので、信託銀行に組合財産を預けただけでは「支配してないことが明らか」とは必ずしも言えないとは思いますが、その他のしくみもいろいろ工夫して、「ジャフコは単に預かった資産を管理してるだけで、ファンドを自由にコントロールできるわけではない」という体裁を作られているのだと思います。

従来の証券会社(第一種金融商品取引業)でも、顧客からの預かり資産は連結対象とはなっておらず、いわば「簿外」になっています。
(「簿外」というのは「イイカゲン」という意味ではないので念のため。分別管理が義務づけられた資産については、ちゃんと監査も義務づけられています。)

どこからが「支配」でどこからが「支配」でないか、というのは、単純な外見からはなかなかわかりにくいですが、その実態を判断するために監査法人がいらっしゃるわけなので、監査法人が「実質的に支配していない」ことを確認されているということになります。

 

ちなみに、VCが出資先企業の議決権の5割超を保有するなど、出資先企業を「支配」している場合には、その出資先企業もVCの連結に含めることを検討する必要が出てきます。
ただし、一般のVC業務では、過半数の株式を保有することはあまり無いので、出資先企業を連結にしなければならないケースはさほど多くは無いのではないかと思います。
一方、バイアウト業務等では5割超の株式を取得することは比較的よくあると思われます。

ただし、ジャフコの場合、上述の分別管理方式も功を奏してか、もともと出資比率が高いものが存在しないのか、連結している出資先企業は一社もないようです。

 

■投資の全容(ジャフコのケース)

以上のように、「どの範囲までが反映されているのか」がピンと来ないVCの財務諸表ですが、全貌が体感的にイメージできる図が、決算説明のプレゼン資料

http://www.jafco.co.jp/investor/zaimu_tanshin.html

にあります。

 

201001250936.jpg
図表4.投資残高ならびに投資可能資金
(クリックで拡大、単位十億円、
  2009年12月末現在、< >内2009年3月末現在)

 

(A) ジャフコ直接投資

ファンドの投資と平行して、VC自身が自腹でも投資を行うことは、ファンドの受託者としての立場との利益相反が起きる可能性があるので長らく批判の対象となってきました。
つまり、仮に「イケてる案件」は自腹で投資して失敗しそうな案件はファンドに押し付けるといったことが行われたら、 VC及びVCの株主にはプラスに働きますが、ファンドの出資者にはマイナスになり得ます。

ただし、VCの場合そういったことを続けていると次のファンドの資金が集まらなくなります。

上図のようにジャフコには2009年12月末現在で188億円の直接投資分があるようですが、これも、そうした利益相反を防ぐようなしくみやプロセスを経て投資されているのではないかと思います。

 

(B) ジャフコ出資持分

投資事業組合の投資残高1851億円のうち、693億円がジャフコの持分になっています。
つまり、ジャフコが管理運営する数十のファンドの平均としては、ジャフコ自身が37%くらいを出資しているようです。

 

上図の黄緑色の部分が、ジャフコの財務諸表の投資有価証券残高に反映されている部分ということになります。

 

未払込金額

これはファンドの出資者が出資金を払込むのを怠っているわけではなく、ファンドの契約上、今後「キャピタル・コール」できる部分ということだと思います。

VCは、投資案件を探しながら投資をしていくので、ファンドの資金を集めた瞬間に、その資金の全部を株式に換えられるわけではありません。
このため、ファンドで計画している資金の全部を最初から集めてしまうと、遊んでいる資金が生まれ、その分、資金の効率や利回りが下がります。
このため、投資案件が決定する都度、資金をコールするのがキャピタル・コール方式です。

 

■ファンドのビジネスモデル

ファンドからVC(GP)が受け取る報酬の上限が、前述の決算説明プレゼン資料の最後のページ
「投資事業組合に係る手数料等及びリスク事項について」
から見て取れます。

[手数料等について]

投資事業組合(以下「組合」といいます。)の募集・私募その他当社との相対取引により組合持分を取得いただくにあたり、追加出資申込期間以降にお申し込み頂く場合には、取得される組合持分に係る出資約束金額(キャピタル・コール方式による組合の場合)又は出資金額(一括払込方式による組合の場合)に対し、年率で上限1.05%(税込み)の追加出資又は持分譲渡に係る手数料を直接ご負担いただくこととなります。また、組合の設立時に間接的にご負担いただく費用として、出資約束金額又は出資金額の0.21%(税込み)を上限に設立費用を実費でいただいております。

組合持分の保有期間中に間接的にご負担いただく費用として、管理報酬(出資約束金額又は出資金額に対し、年率で上限3.15%(税込み)。組合財産管理委託報酬を含みます。)をご負担いただきます。また、成功報酬(運用成績に応じて各事業年度における利益の上限21.0%(税込み)。一部の組合については一定の条件を満たした場合に各事業年度の利益の31.5%(税込み))及び事務委託費(組合財産総額に対し年率で上限0.315%(税込み)。組合財産管理委託報酬を含みます。)をご負担いただく場合があります。その他、組合の業務遂行に関連して発生した費用を実費で間接的にご負担いただく場合があります。
お客様にご負担いただく手数料等の額は、上記の各手数料等の合計金額となります。

税抜きで、管理報酬が上限で年額3%、利益に対する成功報酬が20%くらいということになってます。
ちなみに、アメリカの調査でも、バラツキはあるものの、ほとんどのファンドの成功報酬(carried interest) が20%になっているようです。

 

[リスク事項について]

当社の運用する組合は、主に国内外の未上場企業の発行する株式等を投資対象としています。未上場企業は、上場企業に比べ、経営や財務に関するリスクが高く、日本経済や景気の動向・業界の動向・競争状況の影響を受けやすく、また、株式上場やM&A等による出口が保証されているわけではなく、株式上場やM&A等による回収を行った場合に投資資金を増殖して回収できる保証もありません。また、国内外の未上場会社を中心とした企業が発行する株式等、価値が変動する証券を投資対象としているため、組み入れる株式等の価値の変動や、海外の企業が発行する株式等に組入れを行った場合には為替相場の変動の影響を受けます。さらに、組み入れる株式等の発行者の経営・財務状況の変化及びそれらに関する外部評価の変化等に影響を受けます。これらの要因から、組合の投資収益に悪影響を及ぼし、ひいては出資元本を割り込むことがあります。
組合の組合員たる地位の譲渡は、投資事業組合契約上、他の組合員に譲渡する場合を除き、当社の事前の書面による承諾が得られる場合に限られており、出資金の回収手段が制約されるため、かかる譲渡を行う場合には、当該譲渡の対価が直近の組合財産の当該持分相当額を下回ることがあり、ひいては出資元本を下回ることがあります。

投資事業組合契約に定められた組合財産の分配による場合を除き、出資金額の払い戻しはできません。脱退による組合財産の分配の場合、組合は流動性のない未上場株式等に投資しているため、投資事業組合契約上、脱退組合員は持分に占める投資部分の払い戻しは一切請求できず、現金及び現金同等物に対する自己の組合持分の2分の1に相当する金額に限り払い戻しを受けることができますが、その場合、出資元本を著しく割り込むことがあります。

上場株式などと違って、組合員の地位(出資)を第三者に譲るということも原則としては行えず、また、出資の払戻しもできないことになっている、ということですね。

 

■投資の評価(投資損失引当金)

ジャフコの場合、有価証券報告書の「投資損失引当金の状況」という項で以下のような説明がなされています。

 営業投資有価証券の損失に備えるため、投資先会社の実情を勘案の上、その損失見積額を計上しております。
 個別銘柄ごとには、原則として回収見込額が取得原価の70%未満になったものを引当し、個別引当対象にならなかった未上場残高に対しても一定の一括引当を行うこととしております。なお、当連結会計年度において新規上場市場の悪化等を考慮し、一括引当を10%(前期5%)に引き上げております。

 

VCが投資した株式の評価が難しいのは、特にスタートアップ、シード、アーリーといった時期においては、投資先企業の純資産の数倍から数十倍の金額で投資されるケースもしばしばある点です。


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図表5.投資直前の純資産、評価額、出資比率と投資直後の純資産の関係

 

通常の金融商品会計においては、「(金融商品会計に関する実務指針92)市場価格のない株式の減損処理」で、時価純資産が取得時に比べて50%以上下落していた場合には減損処理しなければならないとされてますが、ベンチャー企業は当初赤字が続くことも多く、単純な純資産で比較したら、投資してすぐ減損というケースが続出してしまいかねません。

「金融商品会計に関するQ&A Q34」においては、財政状態が悪化している会社のケースについて、「損益見込み等」の計画に沿っている場合には減損しなくてもいいが、「一定期間経過後もなお経営改善等の効果が現れ」ないケースなどに減損を行わなければならないこととしています。

ジャフコの基準では、こうした減損とは別に、(計画との乖離ではなく)「回収見込額」が取得原価の70%未満になったものについて個別に引当金を計上し、それ以外の株式についても(ベンチャーの多くはうまくいかないので、ざっくり)10%を引き当てているということですね。

ベンチャー企業の場合、計画を立てても、その通りに行かないことも多いので、計画の達成度を基準にすると不安定感が増してしまうはずです。このため 「回収見込額」というのはいい切り口だと思います。
一方で、「個別のベンチャー企業の回収見込額が70%未満になった」という判断を客観的に行うことは(おそらくもっと詳しい内規もあると思いますが)なかなか難しいのではないかと推測します。

 

下記はジャフコのホームページにあった図ですが、

201001250947.jpg

 

この図は社数ベースですので、投資金額ベースではもう少し「シード&スタートアップ」や「アーリー」の比率は小さくなると思います。
しかしそれにしてもこのベンチャー企業の株式の評価というのは、客観性の高い「純資産」等での評価ではなく「将来の予想」によって支えられている部分が多いだろうということが推測されます。

つまり、(もちろん極力客観的な評価を心がけているとは思いますが)、もともと未上場のベンチャー企業の株式の評価というのは評価に幅があるものですので、新規上場市場の悪化その他の経済環境の変化で、楽観的な場合と悲観的な場合で、評価するのにご苦労があるのではないかということが考えられます。

実務を担当している方には怒られるかも知れませんが、文学的に美しい言い方をすると、ベンチャー企業の株式の評価のそこそこの部分は「希望」や「」によって支えられている気がします。

 

次回は、引き続き、より具体的なVCの決算の内容について考えてみたいと思います。

 

(ではまた。)

 

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