今週の島耕作に学ぶインサイダー取引

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本日発売の「週刊モーニング」で、韓国のソムサンから敵対的買収を仕掛けられている五洋電機のホワイトナイトに、初芝電産が名乗りを上げた、という話より。

専務島耕作 3 (3) (モーニングKC)
弘兼 憲史
講談社 (2007/11/22)


初芝電産初代社長の愛人で初芝電産大株主の大町愛子と島耕作の会話。

大町:新聞で見たけど、最終的なプレミアムはいくらになるの?
:それはわかりません。わかったとしても私の口からは言うことは出来ません。インサイダー取引になりますから。

確かに社内情報管理的にそんなことはペラペラしゃべらない方がいいには決まってますが、はたして島耕作が最終的なプレミアムの見込みを伝えて大町愛子が五洋株を取引した場合、金融商品取引法的に罪になるのかどうか。
金融商品取引法167条第1項では、

次の各号に掲げる者(略)であつて、(略)上場等株券等(略)の同項に規定する(略)公開買付け等(略)の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実を当該各号に定めるところにより知つたものは、当該公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実の公表がされた後でなければ、公開買付け等の実施に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る(略)買付け等(略)をしてはならず、公開買付け等の中止に関する事実に係る場合にあつては当該公開買付け等に係る株券等に係る売付け等(略)をしてはならない。(略)

となっており、第2項では、

前項に規定する公開買付け等の実施に関する事実又は公開買付け等の中止に関する事実とは、公開買付者等(略)が、それぞれ公開買付け等を行うことについての決定をしたこと又は公開買付者等が当該決定(略)に係る公開買付け等を行わないことを決定したことをいう。(略)

とあります。
ソムサンも初芝電産も、すでに「公開買付け等を行うことについての決定をしたこと」を公表しており、価格についての情報は、条文上、「公開買付け等を行うことについての決定をしたこと」には含まれないと思われるので、今週号の段階で、すでに未公開の公開買付け等事実は存在せず、これで大町愛子が売買してもインサイダー取引には該当しないのではないかと思いますが、どうでしょうか?
また、167条は166条とは違って、「TOBの未公開情報を知っている」場合に「買う」ことを禁じているのであって、(TOBを中止するという情報を伝えるならともかく)、大町愛子がどちらかのTOBに応じて「売る」ことを禁じているわけではないと思います。
また、167条は、「買う」または「売る」ことを禁じてはいますが、大町愛子が初芝がまだ価格を吊り上げる余地があるという情報を聞いて、「売らない」ことを禁じているのではないのではないかと。
まあ、島耕作氏は、どっちにしろ大町愛子にはそうした企業秘密をしゃべりたくはないので、インサイダー取引のせいにした、というだけかも知れません。

一方、島耕作氏は、その後の五洋電機勝浦社長とのミーティングで以下のような会話をしています。

:これ以上のプレミアムの上積みには反対する役員も多いでしょう。何か決定的な五洋のポテンシャルがないと。
勝浦:・・・・・
実は今まで黙っていたものがもうひとつあります。
:!?
何ですかそれは?
勝浦:有機ELです(中略)
実は我が社は大型パネルの実用化にメドをつけております。これは間違いなく世界と戦える最大の武器となりうるでしょう。
島耕作の背景音:「ゴオオオオ」

こんな重要な未公開情報を知って初芝がTOBを継続したら、そっちのほうがインサイダー取引なんじゃねーの?、という気がしませんか?
実はこれは、166条第6項第4号の、

当該上場会社等の株券等(略)に係る同項に規定する公開買付け(略)に対抗するため当該上場会社等の取締役会が決定した要請(略)に基づいて、当該上場会社等の特定有価証券等(略)の買付け(略)その他の有償の譲受けをする場合

という適用除外要件に該当するから大丈夫、ということなんでしょうね。
(そういう意味では、ホワイトナイトになれば、「国家公認のインサイダー取引」ができてオイシイ、ということかと思います。)
(ではまた。)

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1 thoughts on “今週の島耕作に学ぶインサイダー取引

  1. 嫌いといいつつ読んでいる 島耕作はご都合主義的最終兵器を持っているらしい

    タイトルはチョッと意味不明ですね。自分でもそう思います。
    元々今週発売のモーニング2008年2月14日号の『専務島耕作』で初芝が五洋に対してホワイトナイ…