英治出版さんから送っていただいた本。(どうもありがとうございます。)
英治出版
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法曹を目指す
進む道を考える
いつも英治出版さんからはいろんな本を送っていただいていながら、(遅読なもので)なかなかご紹介できていなかったんですが、この本は、(一応、私、ロースクールの教員で、内容に興味もあったので)、一気に読ませていただきました。
かなり、おもしろかったです。
司法試験のガイドブックというのは巷に山ほどあると思いますが、この本は、「弁護士になる」「裁判官になる」というところで終わりではなくて、「司法試験に受かって(または受からずに)、その後、どんな仕事をするの?」という視点から書かれているところがイイですね。
著者が、「株式会社More-Selections」という、司法試験の受験生を対象とした人材紹介業をやってらっしゃる会社さんで、Webを拝見すると、GMOインターネット証券(現クリック証券)の設立に参画されたメンバーの方々だそうです。
他の司法試験のガイドブックと同様、司法試験やその後の基本的な項目もカバーされていると思いますが、「実務家インタビュー」というコーナーがあって、これが、(司法試験受験者だけでなく、既合格者の方々や、一般企業で法務部門を強化したいと考えているような方々にも)非常に参考になると思います。
取り上げられている方々は、
日本放送協会(NHK)綜合リスク管理室法務部
梅田 康宏 弁護士
「日本メディア業界初の企業内弁護士」
「優秀な弁護士とは 新たなものをひらめく、作り出すことができる人」マーサージャパン株式会社 コンプライアンス オフィサー
山崎 泰氏(「崎」は「立つ崎」で、右上は「大」ではなく「立」)
「司法試験浪人から、企業法務への転身」
「弁護士も、コンサルタントも、顧客の立場に歩み寄って考えることが必要不可欠」ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 バイスプレジデント
田中 久也 弁護士
「リーガルという枠にとらわれない」
「弁護士も法曹資格も、ツールでしかない 重要なのは何をやるための弁護士になるか」内田・鮫島法律事務所
伊藤 正浩 弁護士
「社会人からの挑戦、新司法試験でトップ合格」
「どこにニーズがあり、どこで強みを活かすのか
目標を明確かするためにも、リサーチが必要」
といった、非常にバラエティに富む方々で、話の内容も非常にタメになります。
(海外企業の法務部門の社内弁護士の数とか役割とか。
まるごと一冊、こうした[ちょっと標準的なパターンとは違った]実務家の方々のインタビューでもいいんじゃないかと思うくらいです。)
現在の新司法試験制度の下では、どう考えても、「司法試験に合格しただけで一生安泰」 なんてことは考えられないわけですし、それどころか、試験に受かってもへたすると就職できるかどうかすら危ういわけで、問題はまさに、「受かってから何をするか」であります。
(そもそも「ロースクール」ってのは、そういうことを教える場所なんじゃないかと。)
先日、私が時々おじゃまさせていただいている中大ロースクールの「租税法研究会」という学生の勉強会に、昨年の司法試験合格者が来ていて、「国税庁に就職しました」というので、「うーん、しぶいチョイス!」と思いました。
過去にそういうケースはあまりないようなので、具体的に国税庁でどういう仕事をさせてもらえるかにもよるかと思いますが、 将来の差別化・競争力のためには、絶対強い武器になるんじゃないかと思います。
私、今年で3年間、ロースクールの講師をやらせていただいていながら、あまり試験制度自体に興味がなく、自分のロースクールのポジショニングもよく理解していなかったので、巻末のロースクール別の合格者数や合格率の一覧表という初歩的な情報からして非常に役に立ちました。
他の先生や学生さん達には激怒されるかと思いますが・・・中央大学法科大学院って、かなり「スゴい」ロースクールだったんざんすね・・・。
(「スゴい」かどうか考えてなかったから授業の手を抜いてましたというわけではないので・・・ご容赦ください。)
(ご参考まで。)
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こんにちは、私もその本、読んでみます。
中央ローが「スゴい」かどうかは諸説あると思います。制度にも教員にも学生にも(私も含め)問題は山ほどあると思いますが、(私の思い過ごしでなければ)少しずつ良くなってきているという実感があり、その部分は「スゴい」とまで言わなくとも、なかなかイケてるのではないかと(他に言ってくれる人もいないので)自画自賛しています。もちろん、磯崎先生のご貢献も決して小さくありませんよ!
国税庁に就職された司法試験合格者の方ってスゴいなあと思いました。磯崎先生が「うーん、しぶいチョイス!」とおっしゃるのもよく分かります。
租税訴訟での納税者の勝率って5%前後らしいので、もし弁護士さんになってから、そこでビジネスをされるのであれば、かなりリスキーな選択かと思いますが、この勝率をドンドン上げていかれる素敵な弁護士さんの誕生を祈っております。
コメントありがとうございます。
>私もその本、読んでみます。
おおすぎ先生は、全部ご存知のことばっかりかとは思いますが。
>もちろん、磯崎先生のご貢献も決して小さくありませんよ!
もしそれが本当だとしたら、お役に立ててうれしいです。
>租税訴訟での納税者の勝率って5%前後らしいので、もし弁護士さんになってから、そこでビジネスをされるのであれば、かなりリスキーな選択かと思いますが
必ずしも訴訟ということでなくても、とにかく「国税庁」という組織がどういう動き方をするのかということを、内部から知ってる法律専門家というのは、非常に少ないと思いますので、若いうちにそういう体験をしておくというのは、非常にすごいことなはずです。
「ヤメ検弁護士」の方々が、刑事訴訟だけでなく各方面でご活躍されているように、「ヤメ国税弁護士」の活躍の領域も、いろいろありそうですよね。
(ではまた。)