7月8日の日経新聞14面「新興ネット企業 M&A成長戦略(下)」より。
「楽天やライブドアが資金力を背景に完全買収を目指すのに対し(略)インターネット関連サービスのGMOは(略)相手企業の株式を一〇〇%しない。買収先の経営者に継続して株を保有してもらい、従業員らの士気を維持するという。熊谷正寿GMO社長は「緩やかな連携」を強調する。グループ会社は十六社だが、そのうち完全子会社は四社しかない。
とのこと。GMOは、
六月、ネット広告のサンプランニング(東京・港)の六六・七%の株式を株式交換で取得した。株式交換は本来、相手先を完全子会社化する場合に使う手法。一部を取得するには現金で買う必要がある。だがGMOは、サンの六六・七%の株式を持つ持ち株会社を完全子会社化することで、現金支出なしにサンの部分保有を実現した。
とあります。
公告や他のネットの記事(末尾に掲載)によると、この66.7%の持株会社は「パワーフォーメーション」という会社のようです。
つまり、
・・・という感じだったのを、株式交換で、
・・・とする、というのは記事から素直に読み取れるわけですが、
興味あるのは、このサンプランニングの66.7%を保有する持株会社をどうやって作ったか、です。(加えて、「exit」してしまう持株会社の株主の株主構成も興味あります。)
この事例について具体的には存じませんので、もしかしたら最初から持株会社があって、その持株比率を若干修正したりしたのかも知れませんが、66.7%=2/3とキリのいい数字なので、買収のスキームの中で新たに加わった会社のような気がします。
どうやって部分買収するか
以下、一般論として、部分的な株式交換をするスキームを考えてみますと、
・・・というように、exitする株主と、引き続き被買収会社の株式を保有する意向の株主(正確には「株式数」)が仮に66.7%対33.3%の比率で存在した場合に、どうやって、
・・・というような66.7%の持株会社を新設するのがいいでしょうか、ということです。
特に、この持株会社がずっと前からあったのではなく、買収企業との株価の合意前後、買収のちょっと前に組み込まれ、被買収会社の株式の「時価」が買収する株価とみなせるようなタイミングが税務上、問題になるかと思います。
税務を考えずに商法的にだけ考えれば、いろんなやり方が考えられます。
例えば、株式移転または分社型会社分割で100%保有の持株会社を作って33%分だけ譲渡するとか、(つまり、
↑こんな感じにしてから、株式を残る株主に33%譲渡して、
↑こんな感じにするという方法とか)、も考えられますが、取得簿価より「時価」がかなり高い場合には税務上はいろいろややこしいことになります。
ということで、素直に考えれば、exitする66.6%の株主が、現物出資または持株会社への譲渡で持株会社を作るという手が一番シンプルではないかと思います。
さらに言えば、現物出資で会社を新設するとか、設立2年未満の会社に株式を譲渡する事後設立となると、その現物出資・事後設立の証明も必要となってくるので、設立2年超の休眠会社を買ってきて、その会社が買い取るということになると思います。(正確には、休眠会社の取得コストより、証明コストのほうが高い場合)
要は、持株会社を作るときにexitする株主等に税金がかかるかかからないか、かかるとしたらどのくらいかかるかといった問題になってくるわけで、そのあたりをわかりやすく図解でもさせていただこうかと思ったんですが、
・ exitする株主が、法人か個人か
・ 取得価額と時価はどのくらい差があるか、株主間でも違うか
・ 株式交換で取得した買収会社の株式を、すぐ売却するのか、長期で保有するのか(VC等なのか、創業者などもいてロックアップがかかるのか?)
等の条件でも話が違ってきてややこしいので、本日はここまでとさせていただきます。
この「部分買収の最適スキームの一般解」という話は、考えると非常におもしろいので、機会があれば、また。
以下、参考資料:
簡易株式交換公告(6月23日取締役会、8月10日)株式交換
http://ir.nikkei.co.jp/data/pdf/20040624/04060145.pdf
GMO、中小企業への販路拡大でパワーフォーメーションを子会社化
http://japan.internet.com/finanews/20040616/4.html
GMO、パワーフォーメーション買収で新株41万株を発行
http://japan.internet.com/finanews/20040624/5.html
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部分的な買収
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熊谷正寿
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