カブドットコム証券社外取締役辞任について(コーポレートガバナンスについてのご参考)

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先日、8月末日付けでカブドットコム証券株式会社(以下「同社」といいます)の社外取締役を辞任することになったことをお伝えしたところ、多くの方からお問い合わせやご意見をいただきました。

同じく社外取締役であった佐藤丈文弁護士が同時に辞任したこともあって、株主や投資家の中にも不安をお持ちの方も多いかと思いますし、また、上場している子会社におけるコーポレートガバナンスをどう考えるかということ一般について、広く他の上場企業や株主・投資家の皆様のご参考としていただく観点からも、以下、簡単に辞任に至る経緯等についてのご説明をさせていただければと思います。

 

I.親会社と少数株主の利益の考慮について

私は、これまでの同社においては、一般的な上場企業の水準に比してもクオリティの高いコーポレートガバナンスの下、上場会社としての独立した運営が行われてきたと確信しておりますが、同社元従業員が友人の口座を使って内部者取引を行うという非常に残念な事件(以下「本事件」といいます)が発生したことをきっかけとして、親銀行の同社に対する管理・監督が強まり始めました。

「親会社が子会社を管理するのは当たり前では?」と思われる方も多いかと思います。
確かに親会社として適切な管理・監督を子会社に対して行うことは一般に必要とされていますが、他方、子会社が上場企業である場合には、親会社の利害だけでなく、機関投資家や個人投資家などの少数株主の方々の利害も考慮されることが必要となるのも当然のことです。

特に、執行部門や親会社の出身でない社外取締役であった佐藤丈文弁護士と私は、こうした少数株主の利害を考慮する立場にあり(以下、こうした社外取締役を「独立社外取締役」と呼ぶこととします)、親会社グループ企業との合併や親会社によるTOBなど、親会社との利害が相反する局面をはじめとして、常に少数株主の利害をも考慮してまいりました。

また、これまでの取締役会には、株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの会長を含むグループ各社(以下、総称して「MUFG」といいます)の重役が取締役会メンバーにおりましたが、これらの方々は、同社の上場企業としての独立性や少数株主の利益に関して非常にご理解があったと考えております。

さらに、同社は現在の役職員数100名程度の会社であり、一目で見渡せる範囲の役職員が会社の業務を行っていましたし、詳細な資料や納得の行く説明もタイムリーに得られていましたので、従来の同社は、独立社外取締役から見ても非常に透明性が高い会社でした。

 

しかしながら、同社への親銀行の管理・監督が強まる過程で、同社取締役会に諮られる事項の決定プロセスに親銀行が関与することが多くなり、独立社外取締役から見た経営の透明度は大きく下がって行きました。子会社の独立社外取締役は、親会社を監査したり直接説明を求める権限はないため、同社が独立して運営されている場合と異なり、親会社のどこでどのような意図によって関与がなされているのかは伝聞から想像するしかないことになるわけです。

「社外取締役は企業の全貌を隅々まで見渡すことなんてできないのだから、すべてがわからないと社外取締役の役割が果たせないというのはおかしいのではないか?」とおっしゃる方もいらっしゃるかと思います。

確かに、社外取締役が、会社業務の森羅万象全てを理解できないというのはその通りです。しかし、だからこそ、監督や監査を行う社外取締役は、目の前の書類の形式的な辻褄だけを検討すればいいわけではなく、判断の前提として、株主や他の取締役、会社の内部統制システムなどに対しての信頼や背景事情への納得性が必要になるわけです。

しかし、残念ながら、親銀行の管理・監督が強まる過程で、「個々の取締役や執行役が、本当に個人で納得してそう考えているのか、それとも親銀行の意向を代弁してそう発言しているのか」を判断しかねることが多くなってしまいました。

また、「そうした状況であっても、国会における野党議員のように、反対意見を述べて牽制することで会社をよくすればいいではないか」と思う方もいらっしゃるかと思います。その点についても慎重に考えましたが、取締役会は国会と異なり、意思決定プロセスが外部に開示されるわけではありませんので、少数株主のみなさんの「民意」を味方に付けるといったこともできず、交渉のカードも限られますし、最終的には多数決で決議が行われてしまうことになります。

以上のような諸事情を踏まえて慎重に検討させていただいた結果、今のままでは、私が同社において社外取締役の職責を十分発揮することができないと考え、今回、佐藤弁護士とともに辞任させていただいた次第です。

 

II.特別調査委員会調査報告書について

本事件を調査された特別調査委員会委員各位には、多忙な中、限られた時間内で調査報告書をまとめあげられたことについて御礼申し上げます。
(また、調査期間中でしたので御礼を控えさせていただいておりましたが、委員長である久保利弁護士には、日経ビジネスONLINEのコラムにおいて、本ブログを好意的にご紹介いただきまして、ありがとうございました。)

調査報告書にも記載されているとおり、そもそも同社では、独立社外取締役である佐藤弁護士と私が、外部の危機対応専門の弁護士チームの支援を受けながら、早期に問題を解決するために調査・改善策の検討を進め、随時改善策の導入も進められておりました。
しかし、その過程で、親銀行の意向によって別の特別調査委員会の設置が求められ、その委員長候補としての久保利英明弁護士の紹介を受けることとなったわけです。

特別調査委員会は、調査報告書にあるように「同社からの」独立性を非常に重視しており、作成された調査報告書の表現に関する同社側からの意見は、基本的に一切反映されておりません。

もちろん、高名な弁護士3名から構成される特別調査委員会に厳しいご意見をいただくことはありがたいことです。しかし、特別調査委員会はあくまで、同社取締役会が決議して設置し、調査を依頼したものですから、調査報告書の内容を無批判に鵜呑みにするのでは取締役の善管注意義務は果たせないと考えますし、調査報告書をどのような方法で開示するのが適切かについての判断は、特別調査委員会ではなく同社の取締役会の責任です。
しかし、結果として、多数決により、調査報告書はその全文がそのまま開示されることになりました。

経緯はともかく、調査報告書がそのまま開示されてしまった以上、株主や投資家の方々の誤解を招かないよう、一通りの説明を果たす社会的責任があると考えますので、調査の労をお取りいただいた特別調査委員会委員各位には失礼となることを深くお詫びした上で、以下、調査報告書に関わる主要な点についてコメントさせていただければと思います。

 

1.同社のコーポレートガバナンスについて

調査報告書を読まれた方は、「同社の取締役会は、ワンマンの齋藤社長に言いたいことも言えない弱腰なものだった」という印象を持たれた方が多いかと思います。しかしそれは、同社の当時のコーポレートガバナンスの実態とは大きくかけ離れています。

調査報告書においては、昨年度の7名の取締役のうち、会長、社長、独立社外取締役の計4名だけについて報告され、MUFGの重役と兼務の調査当時の社外取締役3名については、一切触れられておりません。

 

しかし、よく考えてみてください。
世界的金融グループであるMUFGの取締役会長を含む重役3名が、大株主ですらない齋藤社長に弱腰でなければならない理由などないはずですし、もし仮にそうだったとすれば、MUFGのコーポレートガバナンス自体どうなっているんだ?という大問題にもなりうるわけです。

ところが実際には、そうしたMUFG重役との兼務取締役も含め、同社の取締役会や監査委員会では、一般的な上場企業にも増して闊達な議論や齋藤社長への意見が行われていましたし、齋藤社長も社外取締役の意見をきちんと聞いてました。

 

また調査報告書を読むと、特に山下会長については、「最も弱腰な取締役」という印象を受けられるかも知れません。しかし、山下会長は委員会設置会社の特性を十分に理解して取締役会や各委員会をリードして行動していたことはもちろん、「齋藤社長に言いたいことを言えない」といった事実は、私が見る限りなかったと考えます。
特別調査委員会の評価がなぜ非常に低いのか理解に苦しむのですが、山下会長は、私が今まで会った銀行出身の方の中でも、金融のリスクマネジメント等の専門知識も持ち合わせた上で、最もバランス感覚に優れた方の一人ではないかと考えております。

 

佐藤弁護士についても、「自分の専門(法律)に関わる問題以外はあまり口に出さないようにしている」旨の発言がなされたとして、調査報告書では「やや無責任な印象を禁じ得ない」とされています。しかしこれは、同社の取締役会や監査委員会では非常に活発な議論が行われており、法律以外のことについて追加で発言する必要性が低かったということであり、「無責任」によるものではありません。実際に、法律以外のことについても、たくさんの発言をされています。
また、佐藤弁護士は、私が今まで出会った弁護士の中でも最も責任感の強い弁護士の一人だと思いますし、同社のためを考えて、非常に献身的に社外取締役の職責を果たしていただいたと考えます。就任期間中、重要な案件について徹夜も辞さずいっしょに検討していただいたことも何度もありました。

 

調査報告書では、私については非常に慎重な表現をしていただいており、ありがたい限りですが、一点だけ。
調査報告書には「根っこの部分で、齋藤社長とは『同士』といった感情を抱いていることが伺われ」とあります。しかし、私は今まで、齋藤社長とプライベートで飲食やゴルフ等の付き合いをしたことはないのはもちろん、個人どうしではメールや電話での連絡すらしないようにしておりました。もちろん、他の取締役や執行役を交えた会議等はたくさん行って来たので、業務上必要な意思疎通は十分に図られていたと考えます。

またそもそも、社外取締役は社長と反目することだけが職務ではなく、同社の企業価値を高め、株式市場の発展に寄与するという共通の目標を持つわけですから、ある意味「同士」なのは当然のことです。

取締役会や監査委員会といった「チーム」で経営にあたることの意味は、それぞれの取締役の経験や知識の専門分野を総合的な力に変えることができるところにあると思います。
そうした意味では、これまでの同社のコーポレートガバナンスは、企業経営や組織風土、金融、法律、会計、システムといった多岐にわたる領域について、世界的金融機関経営の経験者、同社社長、弁護士や会計士等、メンバーのバランスも取れ、相応な対応が行われていたと考えます。

 

2.「デザイン至上主義」等について

調査報告書では、同社における各種ISO等の規格の導入やワンフロアのオフィススペースが「デザイン至上主義」という言葉で表現されており、これが本事件の遠因になっているとしています。しかし、齋藤社長は、むしろ経済的メリットがない「見かけ」だけの施策には嫌悪感を覚えるタイプであり、調査報告書は齋藤社長の気質を見誤っているのではないかと思います。

証券会社である同社では、取締役や内部監査部門による監督・監査だけでなく、金融庁、証券取引等監視委員会、日本証券業協会、各取引所等の検査や、顧客に関わる税務調査、システム監査、会計監査など、内部・外部の機関による様々な観点からの調査が年間を通じて行われ、そもそも一般の事業会社では考えられないほど詳細に、業務の実行結果やチェック結果等のエビデンスを保管することが求められます。

スタッフが山ほどいる大金融機関ならともかく、そうした要請に全員でわずか100人程度の役職員で対応するためには、それぞれの担当者の思いつきで事務等の様式を決めるのではなく、ISOという国際規格の様式を参考にして統一的な対応を図ることは、非常に合理的な方法であると考えます。

また、メールについても、簡単に文書を作成できて、後からの改ざんが困難であり、検索も容易であるため、同社にとっては低コストで効率的な手段でした。

調査報告書で指摘された「未消化」の部分など、改善すべき点は当然ありますが、「デザイン至上主義」や「メール文化」といった、単なる社長の趣味嗜好で業務の設計が行われていると理解する方がいらっしゃるとしたら、それは誤りだと考えます。

 

3.同社の企業風土について

また、調査報告書を読むと、「同社の役職員がワンマン社長に強く抑圧されている」というイメージを持たれる方も多いと思います。この点についても、慎重に考えていただく必要があります。

確かに、齋藤社長が厳しい口調で役職員に向かうことは事実ですが、それは、齋藤社長の著書に「社員の成長を願って叱る」旨のことが書かれているとおり、(好き嫌いはさておき)、齋藤社長の信念・経営スタイルとして実行されてきたものです。

 

同社は、コールセンターやシステム部門の従業員も多く、監督官庁等の検査やコーポレートガバナンス・内部統制上の要請も厳しいので、もともとストレス度が非常に強い業態ですが、ここに齋藤社長からのプレッシャーが加わるわけですから、役職員は非常に大変なはずです。このため、役職員に過度なストレスがかかっていないかどうかは、従来より私の最大の関心事の一つであり、全社研修会やその後の打ち上げの宴会等、役職員全員の生の声を直接個別に聞ける場には、時間の許す限り参加するようにしておりました。

しかし、意外なことに当社は、客観的な現象としても、(病気や退職がなければそれでいいという意味では決してありませんが)、他のIT系企業一般と違ってうつ病の発生もほとんどなく、また正社員の離職率も極めて低い(ほとんど辞める人がいない)のです。

また、同社の従業員1人あたりの給与も、世間一般の企業や同業と比してもそれなりのものになっており、ストレス度の高い業務に対して相応の報酬は支払われているとも考えられます。

いずれにせよ、抽象的な言葉による議論では組織風土の改善策の策定や改善の効果の測定はできないため、今後、必要であれば組織や人事の専門家の協力も得つつ、客観的なデータに基づいて改善に取り組む必要があると考えます。客観的な検証がなければ、状況が改善されたかどうかは判断できないからです。

 

4.社長によるメールの送信について

調査報告書では、齋藤社長が全社員に対して送付したメールを厳しく指弾しています。

取締役会に提出した独立社外取締役2名による調査委員会の報告書にも記載しましたが、このメールの送信は、もちろん最善の方策とは言えないものの、当時の状況を考えると、著しく不当な判断であったと断言することは困難であると考えます。

「証券会社の常勤社員全員にメールで公開買付け等情報を通知をした」という点だけを聞けば、通常の証券業務を知る人であれば驚いて当然だとは思います。しかし、同社は、オンライン証券として、自身の株券への公開買付けの復代理人を務めることになっていたため、公開買付け公表当日までに、当時の80人程度の小所帯の半分弱の従業員が既に公開買付けに関連する作業を行っており、この情報を知っておりました。狭い社内で80人の従業員の半分近くが機密情報を元に慌ただしく作業しているというのは他の従業員への情報漏れが強く懸念されるのは当然ですから、社長のメールが、情報の取り扱いに注意を促すことを主眼にしたものだったことから考えても、(より望ましい方法の選択の余地は否定できないものの)、当時の状況において、これが著しく不当な行為とまでは言えないと考えます。

また、調査報告書においては、私についてのみ、「このメールについて齋藤社長に『重大な過失』があったとは認定していない」とする記述がありますが、そもそも私は法律の専門家ではないので、過失かどうかの認定を私が一人で行ったわけではありません。

私は、重大な過失であったかどうかを検討すべきであるという提言を監査委員会に対して行い、これを受けて、(「結論ありき」ではなく重大な過失があるかも知れないという観点から)、外部の複数の法律事務所の弁護士の意見も求めつつ、社長のこの行為について慎重に討議した結果、当時の監査委員会委員4名の一致した意見として、監査報告書に記載すべき法令に違反する重大な事実が存すると断言することはできないと判断したわけです。

また、この監査委員会の意見については取締役会にも報告され、当時の取締役全員の同意を得ております。

 

4.業績確保とコンプライアンスのバランスについて

また、同じく私について言及した部分で、「会社の業績が伸びていたこともあり、最近では是が非でも齋藤流の経営を変えなければならないという強い意欲は薄らいでいたのではないかと推察される。」とありますが、特別調査委員会は、同社を取り巻く環境を誤解しているのではないかと思います。

確かに同社は、同業他社比では相応の業績をあげてきましたが、ご案内の通り、いわゆる「ライブドアショック」のあった2006年以降、3期連続で業界全体の業績自体が伸び悩んでおりました。

今後、会社の業績や従業員数が右肩上がりで伸びて行くことが予想できるのであればともかく、全社を挙げてコストを削減し、予算を捻出しながら新規事業等にも取り組んでいる中で、あえて、多くのコストをかけてスタッフ組織や内部統制を強化し、マネジメントの方法を変えたほうがいいのかどうかは、当時の状況下では必ずしも自明なことではなく、経営判断上の問題であったと考えます。

 

III.最後に

特別調査委員会の方々に厳しいご提言をいただくのはもちろんありがたいことですが、この調査報告書には、上述のような誤解を招きかねない面が多数あると言わざるを得ません。もちろんそれ自体は、同社の取締役会や各委員会での議論や日常の業務運営の状況を直接見る機会のない外部者が短期間に調査を行い、しかも独立性を重視して同社からの意見を一切反映していないため、やむを得ない面があります。しかしながら、この調査報告書の全文を、同社からの意見も一切付すことなく、そのまま開示したのは、これを読まれる同社の少数株主や一般投資家の観点からすると適切な行為であったとは言い難いと考えます。

もちろん、親銀行は金融グループとして同社を管理・監督する立場にあるため、本事件を受けて管理・監督を強めようとするのは理解はできますし、特別調査委員会をはじめ、個々の関係者に「悪気」があったということではなく、それぞれが同社のためによかれと思って行動されたこととは思います。しかし、以上のような特別委員会設置の要請に始まる一連の流れを通して見ると、親銀行の同社に対する「指導」は、上場企業のコーポレートガバナンスへの配慮を欠いたものであったと言わざるを得ません。

また仮に、今後、親銀行が現場の状況を直接十分に把握せずに同社における施策の決定プロセスに関与したり、内部統制の強化と称して親銀行の人員が子会社に押し付けられるといったことが行われるとしたら、それは同社の経営の実行速度の低下やコスト増を招き、投資家や顧客の求める企業像とのズレを生じさせる可能性もあると考えます。

私としては、そうしたことにならないよう、親銀行の子会社に対する管理・監督義務と、上場企業である子会社における少数株主への配慮のバランスが保たれることにより、今後、同社が健全に成長し発展することを願う次第です。

(以 上)

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1 thoughts on “カブドットコム証券社外取締役辞任について(コーポレートガバナンスについてのご参考)

  1. 親銀行による管理が強化される中で、少数株主の利益を守るという社外取締役の任務を全うしにくいと考え、辞任を決意されたとのこと。立派な見識を示されたと思います(決して親銀行を批判しているわけではありませんが)。
    今後、東証等で議論が進むであろう社外取締役の独立性とは何か、とりわけ上場子会社における社外取締役の意義は何か、という議論に一石を投じる決断であったと評すべきかも知れません。
    今回の事件と調査委員会による調査について言えば、私も、委員会の先生方のご見識とご努力には敬意を表するものの、今回のような事態に、当人が不心得者であったということ以外に原因が求められるべきなのだろうかという疑問を抱かずにはおられません。
    インサイダー取引は上手くやれば確実に儲かるのですから、誘惑に負けて犯罪に走る人をゼロにすることは不可能でしょう。いくら管理を強化し、情報アクセスを限定しても問題が起き得ることは、他の証券会社で起きた顧客情報流出事件などからも明らかではないかと思います。
    私は、インサイダー取引への対応方法には、悪質な事案の徹底した摘発と刑事罰や課徴金による厳しい対処しかないと思っております。管理を強化しても、真面目な社員を萎縮させるだけで、本当の悪者や不心得者の馬鹿な行動を抑止することは不可能でしょう。およそ人間の社会で表立って許されたことがない殺人や強盗が決して根絶されないのを見ても、そう考えるしかないと思うのですがねえ。