なぜ「クラウド」か?の文化的考察+スキャナの効用第二弾

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私は(そしてみなさんの多くも)「クラウド」という言葉に「ん?」という違和感を感じたことがあるのではないかと思います。

ご案内のとおり、クラウドというのは、インターネット上にあるコンピュータリソースを使う、使い方の呼び名です。
(SaaSとかASPとかといった概念と何が違うのといった話を含めて、詳しいことはネットでお調べいただければと思います。例えばWikipediaの記述はこちら。)

 

クラウドの説明図に、

201006020941.jpg

といった図もよく出て来るわけですが、普通の日本人だったら、こんなモヤモヤした得体の知れないところに大事な処理を依頼したり重要なデータを保存したりするというのは、気持ち悪い以外の何物でもないのではないかと思います。

なぜ「クラウド」なんて言葉を選んだのだろうか(ネットワークをこうした「雲」で表すというのは、今の「クラウド」が出て来るはるか以前から行われていましたが、なぜ今後も使う気になったのだろうか)、「クラウド」というイメージは欧米人にとってはイケてるんだろうか?と考えていて、もしかして、新約聖書に下記のように書いてあることが欧米人の潜在意識に作用してる面もあるかも知れないなあ、と、ふと思った次第であります。

 

あなたがたは地上に富を積んではならない。そこでは、虫が食ったり、さび付いたりするし、また、盗人が忍び込んで盗み出したりする。富は、天に積みなさい。そこでは、虫が食う事も、さび付く事もなく、また、盗人が忍び込む事も盗み出す事もない。あなたの富のあるところに、あなたの心もあるのだ。
(マタイによる福音書6:19-21)

 

擦り切れることのない財布を作り、尽きることのない富を天に積みなさい。 そこは、盗人も近寄らず、虫も食い荒らさない。
(ルカによる福音書 12:33)

 

つまり「クラウド」=「天」と考えると(または「天」とまで行かなくても、「地上」ではない「天」に近い存在、と考えると)、アメリカを中心とするキリスト教が文化の土台にある国の人達にとっては、まさに「クラウド」こそが財産を蓄える場所だ、ということが感覚的に違和感なく受入れられやすいのかも知れないなあ、と思いました。

特に小さいころからキリスト教の教育をしっかり受けているお金持ちの人達(含むIT系の成功者達)は、「金持ちが神の国に入るよりも、らくだが針の穴を通る方がまだ易しい。(マタイ19:24他)」と聞かされているはずなので、「地上」に富があることに対して、意識するかどうかにかかわらず、心の片隅で負い目を感じているのではないかと思います。

そういう人達にとっては「クラウド」に投資するというのは、心理的に非常に心地がいいかも知れませんね。

そう考えると、グーグルがウェブだけでなく地理情報や書籍といったすべてのものをデータ化し、それをサーバーにどんどん蓄えて公開していっているのも、金儲けやビジネスを超えた、何やら宗教的なパッションが背後にあるようさえ思えて参ります。

 

 

さてそんな中、先日ブログに書いた「ビジネスマンのための書籍スキャン入門ー既に始まっている電子出版」には大変な反響をいただきまして、ありがとうございました。

 

この記事では、日本の出版社が行う「電子出版」はどうも待っていてもラチがあかなさそうなので、自分で書籍をスキャンして電子化(「自炊」)してしまおう、ということをご提案させていただきました。

実は私ほどモノグサな人間もいないので、他の人がネット上で「自炊」の技をご披露されてるのを見て、「スキャン?それホントに人件費まで考えたコストパフォーマンス的に見合う話なの?」と思っていたわけでありますが、実際やってみると、今のテクノロジーの下では、これが驚くほど簡単だったわけです。

たとえば「コピーを取る」という作業は「そんなのオレがやる仕事じゃないよ。オレの時給を考えたらアシスタントの子にやらせるに決まってるでしょ。」てなことをおっしゃる方が多いかと思います。しかし、「CDをiTunesに読み込むのが面倒」という人は、かなり数が減るんじゃないでしょうか。

書籍のスキャンというのは、今や、CDをiTunesに落とすのよりちょっと面倒なくらいでできると言っていいのではないかと思います。

 

そして本日の本題は、その書籍のデータをどこに置くか、であります。

 

そこで「クラウド」登場なわけですね。

私は、パソコン間を同期するのは「DropBox」、同期しない古いデータを取っておく場所として(Macを使っているので)AppleのMobileMeというサービスについている「iDisk」を使うことにしました。

スキャンしたデータをパソコンの「DropBox」内のフォルダに入れておくと、他の(例えば持ち歩き用の)パソコンなどとも自動的に同期してくれますし、iPhoneのアプリもあるので、外出しているときにもファイルを見る事ができます。

(もちろん、スキャンしたデータじゃないとダメなわけではなくて、仕事のファイルでも写真でも何でもいいわけです。)

 

また、iPhoneやiPadのアプリもあります。
「パソコン」でなくても、外出先でちょろっと資料を見るということが可能になるわけですね。

さらに、Goodreaderというアプリ(Dropboxとの親和性もいいです)にデータをダウンロードしておけば、電波が届かないところでもpdfファイルなどをサクサクと読む事ができます。

ちなみにネット上で評価が高かった「SugarSync」ですが、私はMacを使っているので、古い情報などをアーカイブするならiDiskでいいし、常に他のパソコンやiPhoneから見たい情報については、「DropBox」の方が優れている気がしたので、SugarSyncは1日で解約してしまいました。

(Sugarsyncは、インターフェイスも直感的にわかりづらくイケてない気がしました。でも、アップルのMobileMeを使ってない人とか、パソコン間で同期させるフォルダを自由に選びたい、といった人には、Sugarsyncはいいんじゃないかと思います。)

 

実は、データが数GB単位で存在すると、最初にそのデータを「クラウド」上に持って行くのは1日がかりになります。
しかし、毎日地デジの録画データをアップロードしたりしない限り、1日あたりのアップロード量は、せいぜい百MB程度が普通になると思いますので、一度初めてしまえばさほど不自由は無いはずです。

とにかく、「光の道」でもなんでもいいので、インターネットが数十Gbpsといった実効速度になって、「ネット上でも手元のパソコンでもあまり体感速度が変わらない」ということになってほしいところであります。そこまで行けば、世界がいろいろ変わって来るはずじゃないかと思います。

 

こうして、徐々にではありますが、私は本棚の書籍を「クラウド」に移し始めています。

冒頭にのべた「クラウド」なんてわけのわからないところにデータを置いてしまって大丈夫?という気がする方も多いと思いますが、こちら(How secure is Dropbox?)に、Dropboxのセキュリティについて書かれていますので、ご参考まで。

今どき当たり前のことではありますが、

  • 保管されたデータはバックアップされている
    (間違って削除してしまったデータも復元してくれるサービスもある。)
  • ネット上のやりとりはすべて「SSL」による暗号化が行われている。
  • サーバーに保管されているデータは「AES-256」により暗号化されている。
  • Dropboxの従業員といえども、利用者のファイルにアクセスすることはできない。
  • ただし、トラブルシューティングの際に、ファイル名、ファイルサイズ、などのファイルのメタデータにはアクセスすることがある。しかしファイルの中身を見る事は従業員でも行えない。

といった感じになってます。

つまり、今後は、

  • 「間違ってファイルを消しちゃった」
  • 「パソコンを落として壊しちゃった」
  • 「家が火事にあった」
  • 「近所一帯が大雨で水没」

といったことで慌てることもなくなるし、泥棒に入られてパソコンが盗まれることはあっても、中のデータまで失って、明日から仕事ができない、なんてこともないわけです。

 

まさに「さび付いたりする」こともなく「盗人が忍び込んで盗み出したり」もできないわけですね。

 

また、上記のセキュリティについての説明を読むと、Dropboxが使っているサーバーは、アマゾンのクラウドサービスである「Simple Storage Service (S3)」であり、それはここに説明があるように、非常に robustなsecurity policyを持っているようであります。

 

つまり今どきは「駆け出し」のベンチャーであっても、技術力さえあれば、大量のサーバーを購入したり、地盤のいいところに頑強な建物を建設したり、物理的な入退館システム等を構築しなくても、利用料を払って、非常に高度な物理的なセキュリティをいくらでも簡単に手に入れることができるわけですね。

 

もう一つ。
昨日気付いた、書籍や雑誌をスキャンしてみていいこととして、

  • 古い本を久しぶりに開いたら、上にホコリがたまってたり、
  • 酸性紙で黄ばんだりボロボロになってたり、
  • ちっちゃいムシがこそこそっと歩いてたり、

といったことが一切なくなるということが挙げられます。

虫が食ったり」もしないわけですね。

私、アレルギー体質ではないんですが、図書館に行ったり、本棚の掃除をしたりすると、なんとなく目や鼻がむずむずするので、これはありがたい。

 

また、私、生まれてこのかた机の上をきれいに整頓できた試しがなかったのですが、苦節48年、会議で使った資料でも送られて来た書籍や雑誌でも、何でもスキャナで電子化するようになって、先週あたりから、ついに机の上が毎日スッキリした環境で仕事ができております。

 

「『クラウド』に富を積む。」・・・まさに私にとって福音であります。

 

以上、ご参考まで。

 

(ではまた。)

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4 thoughts on “なぜ「クラウド」か?の文化的考察+スキャナの効用第二弾

  1. 文庫クセジュのキリスト教シンボル事典で「雲」を引いてみたところ、「空にあって、明るくも暗くもあり、近づきがたく、漠としてとらえがたい雲は、目には見えずに偏在する神の象徴である」とありました。
    これがクラウドコンピューティングという命名に実際にどの程度影響したかは何ともわかりませんが、ひょっとしたらInternetを雲になぞらえる辺りから既にキリスト教的な考え方がバックボーンにあったのかもしれません。目に見えず触ることもできないが偏在するものを(頭が大文字の)Truthとして重要視する価値観です。

  2.  実際に、宗教的な部分から『クラウド』が来ているのかは分かりませんが、読んでいて『そうに違いない!』とは思いました。
     大抵の日本人にとって宗教はちょっと縁がない(感じがする)ので、理解しがたい半面、だからこそ気づく事も多いかもしれませんね。改めて、聖書を読んでみようかと思いました。
     ところで、メルマガを初められてからブログの方は大作が少ないなぁと寂しく思っていましたが、前回の自炊も今回もおもしろかったです!

  3. スト教シンボル事典で「雲」を引いてみたところ、「空にあって、明るくも暗くもあり、近づきがたく、漠としてとらえがたい雲は、目には見
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