オブジェクト指向な社会とコンプライアンスの意味

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本日、企業におけるコンプライアンスについての弁護士さんのお話を聞いていたら、
「営業部門の強い会社などでコンプラ部門の人と話をしていると、よく『我々コンプラ部門はブレーキ』『営業部門が暴走しがちなので、我々が時々ブレーキをかけないと』というような発言が聞かれるが、コンプライアンスや法令を遵守するという心構えは『ブレーキ』という機能として捉えられるべきではない。コンプラとは企業の底辺にあるべきもっと「あたりまえ」の活動であって、社員の普通の活動の中にとけこんでいなければならない。」
ということをおっしゃってました。
実は、私も過去何度かこのblogで、コンプラとかガバナンスの機能を「ブレーキ」に例えてきたんですが、

「企業統治とアクセル、ブレーキ」「監査役にはどんな要件が必要とされるのか」、等

私は、ブレーキという機能は、単に「足をひっぱる」という機能ではなく「より速く走るために必要なインフラ」なんだということが言いたかったので、上記の弁護士さんと趣旨は同じなのではありますが、そもそも企業としては、全社員に「インフラ」としてコンプラ意識が行き渡っていた方が理想なのは間違いありません。
つまり、「ボケとツッコミ」というような対峙する機能というよりは、企業の機能の一番底辺にある「物理層」のすぐ上くらいに「コンプラ層」があるというくらい、基本的・インフラ的な概念であるべきである、というようなことかと思います。
なぜ「信用」が大切なのか
これは、「商売で一番大切なのは『信用』でっせ」
ということにも関連するかと思います。
信用とは何か。というと、信用とは「分業を支える基礎概念」であり、プリンシパルがエージェントに関して「思考停止」できるための条件なわけです。
(ご参考:https://www.tez.com/blog/archives/000089.htmlなど)
y=f(x)
という関数があるとして、「f」がお金を払うと食べられる餃子を返す関数かと思っていたら生ゴミ餃子が値として返ってきたり、安全な自動車を返す関数かと思ったら炎上するトラックという値を返してきたり、ということだと、「f」は「信用できない」わけです。
「オブジェクト指向な社会」で、「使ってもらえる関数やライブラリ」になるためには、「いつも正しく動作する」ことが絶対条件であり、コンプライアンス態勢というのは、「ときどきはブレーキもかけます」というようなものじゃなくて、法令や契約、仕様等といったものに従っ(complyし)て、常に正しく作動しているものでないと困るわけですね。
「信用」されない企業は使ってもらえないし、使ってもらえない企業は儲からないだけじゃなくて、社会に存在する意味がないわけですから。
そういう意味で「ブレーキ」という例えはミスリーディングだったかも知れないな、と、ちょっと反省した次第です。もちろん、なかなかそう理想的どおりにはいかないので、独立してコンプラを考える部門とかガバナンスを行う機能が必要になるわけですけどね。
(ではまた。)

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4 thoughts on “オブジェクト指向な社会とコンプライアンスの意味

  1. こんにちは。
    興味深く、わかりやすいお話でしたが、コンプライアンスについて「アクセル部門」と意見がぶつかる傾向にあるのは、「生ゴミギョーザ」や「火を噴く車」のように「戻り値自体が適正でない」場合ではなく、「戻り値は適正だが、関数の中身に問題がある」場合なのではないかと思いました。
    コンプライアンス教育で現場から出される愚痴の多くは、「言われたとおりの物を作ってんだから、それでいいだろ?そんなことまでしてたら利益出ないよ。」なのではないでしょうか。(もしかして、これはうちだけ?)

  2. こんにちは。
    あー、なるほど。おっしゃるケースは、「顧客の要求は完全に満たしているが、顧客の要求自体に違法性が含まれるケース」、という感じでしょうか??
    (ふつうの)最終消費財・サービスの場合には、比較的、顧客のニーズは適法なことが多いかと思いますし、または自社が適法な方にコントロールできる裁量の余地も大きい気がしますが、請負的な事業の場合、その「板挟み」はありがちかも知れませんね。
    コメント、どうもありがとうございます。

  3. えーっと、ですね・・・
    僕が想定したのは、たとえば下請企業の使い方が下請法に違反している、とか、違法派遣で業務をこなしている、とか、秘密情報を施錠管理していない、とか、そういったケースなのです。
    問題にならなければ仕事の結果自体には何の問題もないわけで、先方には文句を言われない、ということで、こういった事項についてのコンプライアンス教育はなかなか難しいという印象を持っています。

  4. あっっ、それは失礼いたしました・・・。
    確かに、おっしゃるあたりが、一番「ありそう」で、しかもなかなか現場の理解を得にくい部分かも知れませんね。
    (ではまた。)