先日、トーマツベンチャーサポート株式会社及び有限責任監査法人トーマツ主催で、渡辺千賀さんと「メガベンチャーを目指すスタートアップのためのファイナンス&シリコンバレー進出セミナー」というのをやらせていただいたところ、非常に多くの方にお越しいただきました。
日本でも「アメリカに進出したい」と考えている会社や人は増えているんじゃないかと思いますので、今回は、ベンチャーがアメリカに進出する場合のファイナンスについて考えてみたいと思います。
今年7月に、「起業家、ベンチャーキャピタリストの必読書登場」というTech Crunch JAPANの記事(滑川海彦氏訳、原文はこちら)で、「Venture Deals」という本;
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(Kindle[電子書籍]バージョンはこちら。)
が紹介されていました。
副題の「Be Smarter Than Your Lawyer and Venture Capitalist 」は、「弁護士やベンチャーキャピタルより賢くなろう」ということですね。
もし米国に進出して資金調達をするんだったら、英語でファイナンスの専門用語がわからないといけないのは当然ですし、日本から米国企業等に投資をする場合にも役に立つと思います。
この本はハードカバー本なのですが、本文はたった173ページしかありませんし、非常に平易な英語で書かれていて、原文(英語)のままでも読みやすいと思います。このため、CFOや法務担当などの方々が米国のベンチャーファイナンスのテクニカルな概要を知るために読むのもさることながら、世界で資金調達や投資を考えるベンチャー企業の社長などの経営陣の方々にも是非読んでいただいた方がいい本だと思います。
この記事は、著者自身ではなく、ロスアンジェルスのGRP Partnersというベンチャーキャピタル(VC)のパートナーであるMark Suster氏;
(出所:GRP Partnersホームページ)
が書いたものです。
(GRP Partnersホームページにある経歴を拝見すると、この方は、最初ヨーロッパ、日本、米国のアクセンチュアに勤めていて、その後2回起業し、2回目の会社がSalesforce.comに買収されて、その後、このGRP Partnersに加わった方とのことです。)
この記事でちょっとびっくりしたのは、下記の記述。
そういったすべてに全く無知だったわけだから、私の最初の起業はあまりうまくいかなかったのも不思議はない。ともかく当時教科書はなかった。ベンチャーキャピタリストが一方的に情報を独占していた。Brad FeldとJason Mendelsonの新著、Venture Dealsはこうした状態を一変させるものだ。
It’s no surprise that I got a bit fawked on my first company. There was no guide. No book. VCs were negotiating with asymmetric information. Brad & Jason’s, Venture Deals, aims to change this.
シリコンバレーやボストン近辺をはじめとして、起業家が日本の何十倍もいるであろうアメリカなら、こうしたスタートアップのための入門書は、大昔からあって当然だと思ってましたが、もしかして、2010年9月末に出た拙著「起業のファイナンス」;
ベンチャーにとって一番大切なこと
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は、アメリカに先駆けちゃいましたか?(笑)、と思って一瞬うれしくなりました。
(もちろん専門書であればベンチャーファイナンスの本はかねてからありましたので、多少誇張も入っていると思いますし、ベンチャーがフィーを払えば弁護士等からきちんと説明を受けられる環境は、もちろん、シリコンバレーをはじめとするアメリカの方がはるかに上だと思います。また、優先株のスキームや契約書の複雑さ、洗練度合い、ひな形になっている等合理化されている度合いも、まだまだ遠く及ばないと思います。)
今週の目次とキーワード:
- The Players(生態系)
- How to Raise Money(どう調達するか)
- 「Do or Do Not; There Is No Try」(by “ヨーダ”)
- ビジネスプランは役に立つか?
- いいVCと巡り会う方法
- ベンチャーにおけるTerm Sheet (タームシート)の意味
- Liquidation Preference(残余財産分配権)
- Pay-to-Play条項
- 米国創業者の持株のベスティング
- Capitalization Table(資本政策表)
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(ではまた。)
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