MSCBで見たように、ちょっとオプション的な要素が入ったり、σとか√とかが出てくると、フツーの (おそらく99.9%以上の) 方の頭は「※○♂*△×♭・・・」状態になるのではないかと思いますが、同様の理由からか、ほとんど新聞等で紹介されてないのが、銀行のリスク管理について。
日本の個人金融資産1400兆円のかなりの部分が銀行に預け入れられている(郵貯等も入れると55.2%)わけですから、銀行等でどういったリスク管理が行われているかというのは国民にとっても最大に重要なことの一つのはずですが、新聞や雑誌の記事になるのは、「金融庁の検査で証拠を隠したの隠さないの」「ダ○エーが再生機構へ行くの行かないの」といった、一般庶民でも分かる(ベタな)内容だけ。
例えば、過去1年、日経4紙で「銀行&信用リスク管理」のキーワードに該当する記事はたった25件、「銀行&市場リスク」となると13件で、それもほとんどすべて「リスク管理」という名称の付いた部署の会社人事の記事。リスク管理の具体的中身を報じた記事は、限りなくゼロに近いわけです。_| ̄|○
つまり、日本の国民は、どうなってるかようわからんブラックボックスの中に、自分のお金を「ま、なんかちゃんとやってくれてるんでしょ?」とポンと投げ入れているわけで、それって、非常に恐ろしいことじゃないスか?(ちゃんとやってると思ってたのにやってなかったからバブル崩壊ということになったわけで、その二の舞はあるのかないのかは、あまりみなさん深く考えてないわけです。)
自分の資産の運用者に対する適切なガバナンスが存在するとはちょっと言い難い状況かと思います。
ということで、銀行がどのレベルの管理をしているのかというのは外からは非常にわかりにくいわけですが、例えば、三井住友銀行のリスク管理は、以下のURLでかなりわかりやすく開示されてます。
http://www.smfg.co.jp/aboutus/profile/risk/
上記に銀行の負う、信用リスク、市場リスク、事務・システムリスク、流動性リスク等のリスクの全体系が示されていますが、その中で今回は、市場リスク管理について見てみましょう。
http://www.smfg.co.jp/aboutus/profile/risk/market_risk.html
市場リスクを統合して管理するためにVaR(バリュー・アット・リスク)手法を用いています。VaR とは一定の確率の下で被る可能性のある予想最大損失額のことで、SMBCのVaR モデルは過去1 年間のデータに基づいた市場変動のシナリオを1 万通り作成し、損益変動シミュレーションを行うことにより最大損失額を推定する方法(モンテカルロシミュレーション法)を採用しています。この方法は、オプションリスクを伴う商品のリスク測定に優れており、デリバティブ取引等を活発に取引するトレーディング業務のVaR 算出に極めて有効な手法です。
また、為替変動リスク、金利変動リスク、株価変動リスク、オプションリスクなどの要因別のリスクカテゴリーごとにBPV(ベーシス・ポイント・バリュー:金利が0.01 %変化したときの時価損益変化)など、各商品のリスク管理に適した指標と統合的なリスク指標であるVaR を併用してきめ細かなリスク管理を行っています。
SMBCでは、経営戦略に基づいて設定された市場リスク資本極度と整合的かつ保守的にVaR の総量枠(ガイドライン)を設定しています。また、VaR の値が市場の急変などによりガイドラインを超過する恐れがある場合には、臨時ALM 委員会を開催するなど、対応策を事前に協議する体制としています。さらに、市場営業部門以外が保有する政策投資株式などの市場リスク、主要子会社が保有する市場リスクについても統合リスク管理部で一元管理しており、定期的にVaR を算出し、取締役会や経営会議において経営陣に報告しています。
SMBCでは定期的にストレステスト(数年に一度起こるかどうかの事態を想定したシミュレーション)を行い、不測の事態に備えています。
SMBCで採用している内部モデル(VaR モデル)については、定期的に監査法人の監査を受け、適正と評価されています。また、モデルから算出されたVaR と損益との関係を検証するバックテスティングを実施しており、下図の通りSMBCのVaR モデル(片側信頼区間99.0 %)は十分な精度を有しています。
市場リスクを統合して管理するVaR に加え、円貨バンキング勘定において、マチュリティーラダー等を利用したギャップ分析、EaR(アーニングス・アット・リスク)等の計測を実施しています。EaR とは、金利などの外部環境が不利な方向に動いた場合に、ある一定期間において一定の確率で起こる期間損益(金利差益)ベースでの予想最大変動額を示すものです。施策立案や業務計画管理については期間損益ベースで行われており、SMBCではVaR 管理を補完する観点から、新規に発生する預貸金などの取り組みを勘案したうえで、モンテカルロシミュレーションにより生成した1,000 通りの金利シナリオを用いてEaR を計測し、期間損益ベースのリスク量の把握を行っています。
政策投資株式の保有については、株価変動が財務に大きく影響します。SMBCでは、この株価変動リスクへの対応力強化が経営上の重要課題であるとの認識から、政策投資株式を自己資本等の経営体力に応じた適正規模にするとともに、株価変動リスクの適切な管理・運営に取り組んでいます。
具体的には、政策投資株式リスクの許容量に上限を設定し、遵守状況を統合リスク管理部が管理しています。
・・・うーん。教科書を読んでいるのかと思うほど、教科書的に美しいですね〜。
VaRとかEaRとか、用語のよくわからないところもおありかと思いますが、とりあえず今回はこれにて。
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