米国では「クラウド・ファンディング」を可能にする法律が下院を通過して、クラウド・ファンディングの機運が一気に盛り上がりを見せています。
クラウド・ファンディングとは、ネットなどでベンチャー等が直接一般投資家等から資金を集めることを指します。「クラウド」は「クラウド・コンピューティング」の「クラウド(cloud)」と同じではなく、「大衆」の方の「クラウド(crowd)」です。
日本のネット上でも、このニュースが「日本でもクラウド・ファンディングが可能になるんでは?」と期待を持って迎えられていますが、果たして日本ではこのクラウド・ファンディングは可能なのでしょうか?今回から何回か、このクラウド・ファンディングを日本で成立させるためには、どのようなことが必要になるのか、そもそもこんなことをやっちゃって大丈夫なのか?等について考察していきたいと思います。
日本でも、
- 「アーティストの活動などに(見返りを求めない)寄付をする(寄付型)」
- 「お金を出すと、作品が完成した時などにモノをもらえる(購入型)」
等はすでにいろいろなプラットフォームが出ていますし、法律上も非常にシンプルです。
「寄付型」は何も戻って来ないですし、「購入型」で先に代金を払って、後からアーティスト等の作品がもらえるといったことだけであれば、単なる「売買」です。どちらも、もちろん詐欺的なことも考えられなくはないですが、話はシンプルなので、その分、資金を出す人を厳重に保護する必要性があるということにもなりにくいかと思います。
しかしこれが、「儲かったら、その分、お金を分配しますよ」という、
- 出資をして儲かったらリターンを受け取るタイプ(投資型)
となると、法律上のややこしさはグンと上がります。
ただしその「投資型」のうち、匿名組合持分等の「集団投資スキーム持分(みなし有価証券)」に投資をするタイプのものとしては、ミュージックセキュリティーズ株式会社や、maneo株式会社、株式会社エクスチェンジコーポレーション(サービス名AQUSH[アクシュ])などが、すでにサービスとして存在します。
ところが、「みなし有価証券」ではなく「ホンモノの」有価証券である株式でお金を集めるサービスを作るとなると、今の日本の制度では、段違いに難しくなってしまうのです。
私が2004年3月にブログ「isologue」を始めて最初に書いた記事、誰がベンチャーを助けてくれるの?」日本の未公開株市場の構造がまさにこのテーマでした。
つまり、株式による資金調達というのは法律的にも財務的にも非常にややこしくて、プロの助けが必要なはずなのに、会社側が自分でやらないといけなくて、プロの助けを借りることができないわけです。
今回は、日本にクラウド・ファンディングが導入できるかどうかの前提として、現状の日本の非上場株式等についてのルールを整理してみたいと思います。
目次とキーワード:
- 株式で資金調達を手伝う際の規制
- 株式の公募と私募
- みなし有価証券の公募
- 第一種金融商品取引業者
- 未公開株は原則として取扱い禁止
- 適格機関投資家向け投資勧誘
- 店頭取扱有価証券の投資勧誘
- グリーンシート銘柄
- 方向性まとめ
以上が、日本の非上場会社のファイナンスのイノベーションに参考になれば幸いです。
(ではまた。)
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