フジテレビが、発行登録制度を使ったポイズンピル(防衛策)をとってきましたね。
発行予定額が500億円と中途半端な額に見えますが、おそらく、株主割当増資で安い株価で(も)発行できる余地を残して、敵対的買収者に買収を躊躇させる目的のものかな、と。
(ポイズンピルというのは、米国でも「実際は抜かない宝刀」として運用されているようなので、それと同じわけですが。)
これからまた会議に入りますので、取り急ぎ。
(追記:22:05)
フジテレビのプレスリリース「新株式発行に係る発行登録に関するお知らせ」
http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10104676/00031444.pdf
1. 募集有価証券の種類: 普通株式
2. 発行予定期間: 発行登録の効力発生予定日から2年を経過する日まで
(平成17 年3月30 日から平成19 年3月29 日)
3. 募集方法: 株主割当
4. 発行予定額: 50,000 百万円
5. 手取金の使途: 設備投資、投融資、運転資金へ充当する予定です
と、これだけ見ると、「なんだ500億円ぽっちか」「時価で株主割当しても10%にも満たないじゃん」という気がするわけですが、よく見ると発行価額がいくらなのかが書いてない。
本発行登録により、当社は、必要な法的手続きを踏んで機動的に新株を発行することが可能となります。
当社は、本発行登録のもとでの機動的な株主割当による新株発行が行われうることを明らかにすることにより、当社の株主の利益・企業価値を毀損するような条件による公開買付け等による買収行為を未然に防止し、健全な企業活動の維持・継続とひいては株主の利益・企業価値の最大化を可能とする効果を期待しております。
当社に対する買収の提案または公表・公告があったときに、当社は、その内容・条件が当社の株主の利益・企業価値の向上に資するものか、内容・条件を修正すれば向上に資するものか、あるいは毀損するものかを検討します。
内容・条件を修正すれば向上に資すると判断した場合、当社は、買収者と鋭意、交渉し、内容・条件を修正するように促します。その上で、適切な内容・条件に修正されない場合には、当社は、株主の利益・企業価値を守るため様々な手段・方策を採ります。
また、株主の利益・企業価値を毀損するものと判断した場合、当社は、株主の利益・企業価値を守る様々な手段・方策を速やかに採ります。
と、「株主のため」という(ある意味当たり前の)スタンスを強く打ち出しておいて、ここで、
株主割当増資も、このような株主の利益・企業価値を守るためのひとつの選択肢であると認識しております。株主割当増資を行う場合は、取締役会で、発行新株式数、発行価額(時価を下回る可能性もあります)等の発行条件及び将来の割当期日を決定し、割当期日の2週間以上前に公告いたします。
というところで、「時価を下回る可能性もあります」というところが、脅し文句として効いているわけですね。
現在の時価より非常に安い価格の新株の発行をやっても、株主割当なら既存株主の権利には影響を与えないでしょ、ということですが、
その割当期日における株主名簿(実質株主名簿を含みます)上の株主(実質株主を含みます)の皆様にその持株数に応じて平等に新株を引き受ける権利が割り当てられることになります。割当期日現在の株主の確定作業が終了した後、申込期日の2週間前までに、株主の皆様に、失権予告付割当通知書(引受権の対象株数等及び申込期日までにお申し込みがない場合には権利を失う旨記載した通知書)、株式申込証及び目論見書等法令上必要とされる書類をご送付いたします。株主割当増資を行うことを決定した場合、以上の手続を適正に行い、株主の皆様・株式市場に対して、適正な開示を行ってまいります。
ということで、(「企業価値を毀損するような」買収者に対しては、新株を割り当てませんよ、なんてことは一言も書いてないわけですが)、なにやらイヤーな書きっぷりなので、「なにをしでかすかわからん」ところが、とりあえず不気味かな、と。
実際に、どういう理屈で、「企業価値を既存するような」買収者に対して「株主の利益・企業価値を守る様々な手段・方策を速やかに採」るのかというのが、これではまったくわからないわけですが、わからないだけに、少なくともこの段階では、ニッポン放送の新株予約権のように差し止めもできない。
(株主に平等に、てな、当たり障りのないことしか書かれてないので。)
もちろん、堀江社長はこんなのを出されても、ただひたすら突き進むのみかと思いますが、
一方で、LBOに資金供給するようなレンダーは、このような買収者の取得した株式の価値が著しく低下させられる可能性のある(わけのわからない)対抗策が存在するというだけで、貸し出しのリスクが非常に増大するわけですから、前のエントリーで述べたような種々の条件(金利等)を、買収者に対してよりハードな条件にしないと怖くて貸し付けができなくなる(または貸し付けそのものができなくなる)可能性が上昇するわけで、そういう意味では非常に大きな抑止力になるかも知れません。
「Strategic Ambiguity」(戦略的あいまいさ)ってやつですかね?(違う?)
(取り急ぎ。)
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。
今回は、ニッポン放送の場合(後だし)と違って、事前の防衛策なので、法的に大きな問題はないように思われますが、いかがでしょうか?
株主割当増資ですから、既存株主にも平等に割り当てられる点が有利発行にあたらないという解釈でしょうね。
フジ側がここまで企業価値の毀損という文言にこだわるのは、明日の高裁判断の睨んでのことかと思うけど違うかしら?
あまり注目されなかったけど、地裁の新株予約権の発行差止めは、有利発行ではないが不公正発行であるという判断だったわよね。
で、不公正発行であるという解釈としては下記(一部抜粋)になるんだけど、
特定の株主の支配権取得によりかかる利益が毀損される場合には、これを防止することを目的としてそのために相当な手段をとることが許される場合があるというべきであるが、現経営陣の支配権の維持を主たる目的とする新株予約権の発行が原則として許されないことからすると、企業価値の毀損防止のための手段として新株予約権の発行を正当化する特段の事情があるというためには、特定の株主の支配権取得により企業価値が著しく毀損されることが明らかであることを要すると解すべきである。そして本件では、債権者の支配権取得により債務者の企業価値が著しく毀損されることが明らかであるとまでは認められない。
というところの、「特段の事情があるというためには」というところが大事よね。
ニッポン放送株をLDが取得することによって、企業価値の毀損に特段の事情が明らかにあると認められる場合は、新株予約権の発行もありうると解釈することもできるわけで・・・。
私としては、地裁判断は「まあ、会って話を聞いてみないと企業価値が毀損するかどうかわからんでしょ?」という解釈をしていたんだけどね・・・。だから実際に会って話をしたみたいだし・・・。(ものわかれに終わったようだけど。)
その上で、今日の本丸防衛の株主割当増資があり、弁護団を通じての証券取引法違反に
関する監視委への調査要請でしょ・・・。
仮に高裁判断が覆らなかったとしても、フジ側は2の手3の手は打っていると考えるのが妥当そうだわね。(当然、焦土作戦も用意してると思われるわ。)
空中戦での目立つどんぱちは単なる陽動作戦・・・。
守るほうは地味なんだけど、カウンター攻撃もあるから・・・。
今回の株主割当増資がカテナチオになればいいわね。
いずれにしても高裁判断待ちということね。
フジテレビの担当者、もう遊んじゃってる感じね。
よく判ってる人なら、思わずにやりっとしたんじゃないかしら。私なんか思わず吹き出してしまったわ。
株主割当なら不公正発行も有利発行も端から関係ないしね。
ポイントは割当価額が無償で無いってところね。時価上でも時価下でもよいわ。
議決権比率を維持したければ、失権できないから買うしかないものね。
つぎ込めるだけつぎ込んで頂戴。
私こういうマニアックなの大好きよ。
どもども、磯崎さん
昔、株式に額面があった頃の、その昔、
1960年代には、株主割当の額面有償増資というのが、
かなり一般的にありました。
例えば、額面50円、時価400円の株だとして、
株主に割り当てる形で、
時価と無関係に額面50円で有償増資されるものです。
フジの今回の手法は、昔の増資方法を応用したやり方と見えます。
何時の時点をもって支配権争奪が始まったか?というのは定義が無いようですので、その点において司法判断を求めることが生じないとは言えないかもしれませんが、議論になりそうなライツプランやニレコのセキュリティプランの様な新株予約権の権利保有者の問題を避け、株主割当としているのが特徴ですね。
その結果、買収者にも新株引受権が発生なるが、敵対的買収に対する防衛策としては有償とし、比率維持(或いは比率アップ)の為には相当な資金を必要とさせ、買収者に断念させるのが狙いと、まあ時価総額の大きい企業としては教科書どおり。(中間発行増資と呼ぶべきもの??)
但し、市場参加者としては大問題では?
1単元、2単元と言ったレベルの個人投資家であれば割当に応ずれば良いが、機関投資家などはそうはいかないだろう。割当価格が1円とか言った世界であれば問題ないが(それでは防衛策にならない)、有償割当であれば機関投資家は買えない。
(ちょっと上手く説明が出来ない。。。)その株主割当には有償で応じることは出来ないだろう。
かといって、応じなければ保有株式が希薄化し損失をすることが予想される。
とすれば、機関投資家にしてみれば、フジテレビに投資することはとてもリスキーなことであると判断する可能性が高いと思う。
ライブドアの株価ように個人投資家により価格形成がなされているのであれば問題ないが、フジテレビの株価形成は機関投資家によるところが大きいと思われるので、明日以降の株価がちょっと心配。杞憂であればいいのですが。
超余談ですが、うちの奥様が堀江氏の本を買ったそうです。
私が聞きながら内心ぶちきれそうになっているのを知ってか知らずか、そのことを嬉しそうに話してきます。
著書も読まずに批判的に構えている私の了見の狭い姿勢なんかよりは評価されるべきなのでしょうが、悩みます。。。
(内容について彼女が語る所では読む価値を感じることは出来ませんでしたが)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20050323k0000m020115000c.html
上記の通り一般紙にも載っている内容ですが、
TOB の期間が最低20日あることを利用して、
買付対象の旧株の希薄化を狙っているようです。
個人的には、これも不公正発行になるんじゃないかと思いますが・・・
日本版「ポイズン・ピル」も楽じゃない?
フジテレビ、買収防衛策で新株発行枠500億円分を設定 (NIKKEI NET)
一番星さんからのコメントとIsologueで知ったのですが、将来敵対的な公開買付けがなされた場合に株主割当で(おそくらは市場価格よりも安い価格で)新株を発行することで敵対的買収に対抗しようという仕…
追記ですが、上記のスキームであれば、発行価額は1円でしょうね。おそらく。
ところで、ライブドアがTOBをしても最低期間が20日間ということで、今月末には間に合いませんよね?
フジテレビが500億円の新株を発行したら防衛策になるのか?
これは素朴な疑問で、ニッポン放送による新株予約権が東京高裁でも指し止めになると言う前提だが、本当にフジテレビが設定した500億円の新株発行したら防衛策になるのか? まず、新株を発行すればニッポン放送が現在所有している22.5%に見合う割合が充てられる。しかし、こ…
ぐわっ 発行登録の第一義的目的は、予告効果と期間短縮効果によるTOB抑止でしたね。
最大のポイントの意味をすっ飛ばしていました。otz
TOB時には1円で割当が行われるのでしょうが、敵が市場買付けで来た場合はどうでしょう?
しかし、ウラ技合戦のようで余り感心しませんね。
磯崎様
個人的には、ライブドアはニッポン放送を買収したあとは、フジテレビを本気で買収しかけない様な気がします。
なぜなら、ポイズンビル含めた対策他を取ってくることが予想される上、
結果的に1年すれば、フジテレビは増配やその他によって自滅するのが目に見えているからです。
ならば、無理に買収をかけずに
1.弱った半年〜1年後に再度しかける。
2.25%だけを確実に確保し、発言権限を高めつつ、5%ルール以下で売買を繰り返し、
利益を確保する。
方が賢いような気がしますし、私がその立場なら、ニッポン放送を持つ価値はあれど、
その持ったと言う事実によって、TOBをかけるぞ。
と脅す事によって、株価が上がることを期待して、フジテレビ株を売却しつつ、
実質ニッポン放送の持つフジの株式とあわせて25%の議決権ベースを確保できれば、
非常に効率的な買収劇をしつつ、折り合いが付くことにならないでしょうか。
と言うのが、私が堀江モンならば。
といった答えです。
ふーん、本当にやるんだ
ライブドア幹部、フジテレビ株取得に意欲 ライブドア幹部は22日、フジテレビジョンの株式取得について、「友好的な関係を築いて、合意のもと(株式を)取得したい」と述べほうほう、それで株式公開買い付け(TOB)による取得については、「我々は敵対的ではないので`..
まったくの妄想ですが。
はなっからフジサンケイを支配するとか提携するなんていう気持ちはさらさらなくって、一連の株取引でライブドアとホリエモン自身が儲けようとしているだけなんでは。それこそ、ゲーム感覚でのマネーゲーム、っていう気がしてきました。
どう転んでもライブドア、ホリエモンそして村上ファンドもリーマンは損しないようなシナリオができてるような。もちろん、あわよくば莫大な儲けが得られる、そんなシナリオが存在しているような・・・。最終的に誰が一番儲けた、損したと総括されるのが楽しみでつ。
フジの「ポイズン・ピル」のメカニズム?(前編)
こちらは毎日新聞の方のニュースなのですが・・・
フジテレビ:500億円の株主割当増資を事前登録 (毎日新聞)
通常の株主割当増資は手続きに最低25日必要だが、あらかじめ登録することにより手続きが2週間に短縮できる。TOB期間は最短で20日間のため、敵速..
ほんとに皆さんポイズンピルを理解してらっしゃらないようね。
もうちょっと勉強してからお話しなさいな。
思い込みだけでしゃべるのはみっともないわ。
世の中で一番正しいLBO解説
あちこちでかなり誤解されているので、改めてポイントをアップします。
1.公開買い付け価格
2割上だとかテレビで言っている専門家と言われる人たちが多いのであきれます。それではだめです。2倍、3倍のTOB価格をわざとつけるんです。
2割程度だとこれに応じな…
磯崎 様
詳細な情報アップありがとうございます。
この対抗策、かなり練られたことが分かる代物ですが
ひとつ気になるのは、相変わらず、とでもいいましょうか、
取締役会だけでポイズンピル(のようなもの)の導入を決議していますね。
しかも、「買収者が敵対的であるかどうかは取締役が判断する」という。。。
フジテレビはこういう「オレ様スキーム」が本当に好きなんだなあw と思いました。
たまごさんたら、抜け道利用の強圧的買収がされてる状況下で、取締役以外の誰が意思決定できるって言うのよ。できるんなら株主総会召集して御覧なさいな。何日かかるのかしらね。
高裁判決出たわね。
当該ケースにおける新株予約権を認める上での明確な基準が示されたけど、
それ以上に、株主による所有と経営の分離を明確に区分した点と、
経営陣の交代にあたっての労働者との問題は、新経営者と労働者間
の労使問題であるとした点が極めて興味深い点だったわ・・・。
こちらに関しては、そういうことでよいということよね?
*
そのうえで、株式の取得経緯に関しては、判断する上での法律が別とし
ているので、株式の取得による経営権の取得が脱法的であっても、相手方
の経営陣に隙があり、かつ、脱法的であるというリスクを考慮したうえでも、
取得意欲がある側に取得を実行する意志があるのであれば、それをよし
とするということでよいのかしら?
なんかメディアはライブドア勝利勝利ってうるさいね。地裁の判断が覆らないことぐらい予想できたのにね。ライブドアって勝利なのか??フジの株買収を凍結したのって、間違いだったんじゃない?