今回は、今年上半期の記事を一覧する「総集編」です。
上半期は、
- ソフトバンクのイー・アクセス取得からスプリント買収への流れ
- シード用の投資契約(「日本版convertible equity」)
- ベンチャー経営者の持分を増やす方法(「乙種普通株式」)
- 日本向け、新しいベンチャー投資ストラクチャー(「LLP-LPS」)
- ベンチャー政策、ベンチャー税制(「法人版エンジェル税制」)
- DELLのMBO
- Bitcoin、ウィンクルボス兄弟のBitcoin信託
- 飲食系ネットビジネス、アップデート
などをお届けしました。
DISHの乱入で、ソフトバンクのスプリント買収の回数が思いのほか増えちゃいましたが、このケースは世界で日本企業がM&Aを活用する上で多大な示唆を与えてくれたと思います。
また、「日本版convertible equity」「乙種普通株式」「LLP-LPSストラクチャー」「法人版エンジェル税制」などは、日本の成長戦略を考える上でも非常に重要なご提案をさせていただけたんじゃないかと思ってます。
詳細は、以下をご覧下さい。
(以下、リンクはブログでの紹介にリンクしています。)
以下、一覧:
(第196号)謹賀新年(2012年の「週刊isologue」総集編)
2012年1年間を振り返った総集編の回です。
この回では、1月12日の「ソフトバンクが月内にイー・アクセス株を売却」という報道について考えてみました。
目次とキーワード
- イー・アクセスの資本構造
- 株式交換の概要(10月1日)
- 株式交換契約の変更(11月2日)
- スプリント買収報道と、株価、交換比率の関係
- 指針「3分の1以上の出資関係」とは正確にはどういうことか?
- 株式の種類を変更する方法
- 2種類の株式の内容
- 何株分を議決権株として残すか?
- 議決権制限株の上限をどうクリアするか?
- 連結会計上の取扱いは?
- まとめ
(第198号)ソフトバンクのイー・アクセス株売却について(答え合わせ編)
この回では、実際に実行されたイー・アクセス株の譲渡がどういった方法によって行われたか、ソフトバンクのプレスリリースや臨時報告書をもとに検証してみました。
目次とキーワード
- 元旦にソフトバンクの完全子会社に
- 元筆頭株主「ジーエス・ティーケー・ホールディングス・スリー合同会社」って、どんな会社?
- イー・モバイル統合後のイー・アクセスの株価推移
- 株主総会はなぜ1月17日だったのか?
- 会社法での制限
- 法令や定款以外の制約条件
- 株式の種類の名称
- 実際のスキームはどうだったか?
- 株式の種類の名称
- 株式の種類の変更方法
- どういう比率で株数を減少させたのか?
- なぜ議決権の数を1,649個にしたのか?
- 譲渡価格はいくらだったのか?
- なぜ全体の株式数が220,426株というハンパな数になったのか?
- どんな企業に譲渡されたのか?
- なぜ第三者株主の経済的持分は0.5%になったか?
新経済連盟としての政策案を3月までにまとめて、三木谷さん経由で、日本経済再生本部に諮っていただく予定とのこと。(結局、私の案は採用されませんでしたが;)、時間の関係でうまく伝えられなかったことや、データなども含めまして、私の私案の要旨をご紹介いたしました。
目次とキーワード
- 「ベンチャー」は「市場メカニズム」そのものであり、基本的には「政策」で操作するにはなじまない。
- それでも政策が必要になるケース。
- 米国に比べて大幅に遅れをとるファイナンス面。
- ネット等での株式の募集は、どうすべきか。
- 機関投資家や大企業の資金をベンチャーに呼び込む。
- 「10年後に成功している日本のベンチャー環境」を想定する。
この回の前の週に、経済産業省の「個人投資家の投資活動及びエンジェル税制の利用促進に関する委員会」にも委員として呼んでいただきまして、そちらでも「法人版のエンジェル税制が有効だ」という主張をしてまいりました。
法人がベンチャーに出資した場合に税制上の優遇措置を受けられる「法人版エンジェル税制」について検討した私案です。
目次とキーワード
- 法人版エンジェル税制とは、法人がベンチャーに投資する際に、一定額(仮置きで投資額の50%と想定)を損金算入できる制度を想定
- 法人版エンジェル税制の効果
- 日本の成長力(市場メカニズム)を活性化する
- GDPを増加させる
- 雇用を増加させる
- うまくいけば税収増にも寄与する
- この制度の目標
- 「10年後にGDP比で米国並みのベンチャー投資が行われる環境を作ること」
- ベンチャーキャピタルのベンチャーへの投資額:年5,000億円
- ファンド経由を除く法人版エンジェル投資制度利用のベンチャー投資額:年1兆円
- 法人版エンジェル税制によるGDP誘発額:年1兆円
- なぜ「法人版エンジェル税制」か?
- 最先端の「生態系」に資金が注入される
- 地方にも資金が循環する
- 法人のほうが税務に強い
- 法人の方が自己責任原則を貫きやすい
- 具体的要件
- 確認、確定申告手続きの簡素化
- ファンドへの出資の扱い
- 現行の条文と改正案(素案)
- 租税特別措置法(本文)の改正案のイメージ
- 中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律改正案のイメージ
- 租税特別措置法施行令改正案のイメージ
- 租税特別措置法施行規則改正案のイメージ
2月8日の日経の報道でも、日本ニュービジネス協議会連合会、日本ベンチャーキャピタル協会、日本ベンチャー学会の3団体が、エンジェル税制を法人が資金を出す場合にも広げよ、という提言をしたとのことです。
今回は、法人がベンチャーに出資した場合に税制上の優遇措置を受けられる「法人版エンジェル税制」について、条文の素案を作ってみました。
今月2月5日に、DELLの創業者で会長兼最高経営責任者(CEO)のマイケル・デル(Michael Dell)氏、プライベートエクイティ会社の米Silver Lake Partnersなどが組んで、DELLを総額244億ドル(約2兆2900億円)で買収し非上場会社化するMBO(management buyout)を行うことを発表しました。
日本でもMBOの際の経営者と一般株主の間の利益相反については活発に議論されるようになってきましたが、では米国ではどういった利益相反防止のしくみが手当てされているのでしょうか?
今まで米国のMBOについては取り上げたことがなかったと思いますので、この回ではこのDELLのMBOのスキームの詳細に加え、そうしたフェアさを確保するための、さまざまな工夫を見てみました。
ベンチャーに対する優遇措置として、「大企業などがベンチャーを買収する時の税制優遇措置を検討したらいいんじゃないか?」というアイデアがよく聞かれます。この回では、「ベンチャーM&A税制」として、どういった内容が考えられるか、それがどういう社会的意義を持つのか、といったあたりを考えてみました。
目次とキーワード
- ベンチャーのM&Aを活性化させる意味
- 投資家は「株式売却」で資金を回収する
- M&Aの増加とベンチャー生態系の発展
- M&Aの「加速効果」
- どこを改善すればM&Aが活性化するか?
- 株式の譲渡、ドラッグアロング、スクイーズアウト
- ベンチャーM&A税制の案
- 「適格組織再編」範囲の拡大
- 売る側の企業のストックオプション保有者(従業員)
日本の経済を活性化し雇用を生み出すには、若い企業を増やしてやることが本質ですが、こうしたベンチャーを生み出すための起業家・投資家・専門家などの「生態系」を豊かにするには、創業するベンチャーへの投資を活発にすることだけではなく、exit(M&A)を活性化させることが重要です。
M&Aの税務はとにかくややこしく、これがベンチャーのM&Aの一つの障害になっていると考えられますので、どういった組織再編のスキームを取る場合でも、単純に株式を譲渡した場合と同じようなシンプルさになれば、ベンチャーのM&Aのフレキシビリティはかなり高まるのではないかと考えて、税制優遇というよりは「税制のシンプル化に力点を置いて、税制案を考えてみました。
目次とキーワード
- 適格組織再編とは
- 新たなパターンの整備
- なぜ現金対価の組織再編がベンチャーに必要か?
- 適格要件の詳細
(第205号)日本版convertible equity試案
米国では設立間もないベンチャーに対する投資の約半分が「convertible note」になってきているとのことですが、日本ではこれに類した使い勝手のいい資金調達スキームの決定版がありませんでした。 以前、「週刊isologue(第179号)スタートアップの資金調達は「転換株式」で決まり!?」という回では、「転換株式」を使ったアイデアを考えてみましたが、これは種類株式を使うので、設立から日が浅いベンチャーが行う(3000万円未満程度の)少額の投資には複雑すぎるし、リーガルフィーも高くなってしまうんではないかというところが反省点。実際に登記できるかどうかも要検証です。
普通株式を使った、驚くほどシンプルで、日本のベンチャー向きじゃないかというアイデアを思いつきましたので、ご紹介しました。
目次とキーワード
- Convertible Note、転換社債の長所・問題点
- 債務超過になりやすい点
- 貸金業法に触れる可能性
- 新株予約権付社債の発行の負担
- 米国(オリジナル)のConvertible Equityの概要
- 転換株式(種類株式)方式
- 「普通株式方式」の概要
- 「普通株式方式」の特長と要注意点
- 「普通株式方式」と他の方式の違い
- 資本
- 議決権、株式数、株価
- 残余財産分配権
- 配当
- 転換条件
- 最初から株式を発行してはダメか?
- まとめ
(第206号)日本版convertible equity(転換契約模索編)
「日本版convertible equity」を、実際の契約書に落とし込んだらどうなるか?というイメージを模索してみました。
目次とキーワード
- 契約の名称、概要
- 契約当事者
- 定義
- 企業価値先決め版
- 企業価値決定先送り版
- 転換した場合の税務
- 次回予告(「みなし残余財産優先分配権」)
(第207号)日本版convertible equity(優先分配権編)
「日本版convertible equity」に「清算や買収の際に優先的に分配を受けられる」という特性を追加してみました。
この「日本版convertible equity」は、大層な名前が付いてはいますが中身は単なる普通株式に過ぎません。このため、そのままでは、高い株価で投資したにも関わらず、創業者などの他の普通株主と1株あたり同じ額の分配しか受けられないことにもなりかねません。
Convertible noteや優先株式で投資した場合と同様の優先的な分配を、創業したばかりのベンチャーに過度な負担を負わせないように、手軽でフレキシブルに実現する方法を考えてみたいと思います。
目次とキーワード
- 優先分配権
- 現金対価の株式譲渡による買収の場合
- 現金対価の株式譲渡以外の買収の場合
- 事業譲渡や会社分割の場合
- 会社を清算する場合
- 異なる株価での株式譲渡の税務
- ドラッグ・アロングの設定
- 優先株式への転換
- 「適格ファイナンス」を行うインセンティブ
- 残余財産分配権によるインセンティブ付け
(第208号)日本版convertible equity(活用編)
この回では、「日本版convertible equity」の活用実例について考えてみました。
目次とキーワード
- 前回からの変更点その1:「みなし優先株式」概念の整理
- 前回からの変更点その2:みなし優先株式の譲渡時の価値の担保
- 「日本版convertible equity(みなし優先株式)」の意義
- 素朴な普通株式投資の何が問題か?
- 前回の分配案の反省
- 残余財産分配権の倍率を増やせばいいか?
- 「参加型」の株式数を増やすとみなしたらどうか?
- 300万円規模の投資/3000万円規模の投資の違い
- (シミュレーション、Excelファイル付)
(第209号)これからの日本のベンチャー投資ストラクチャー(基本編)
この回では、日本が元気になる方策シリーズとして、日本のベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティなどの投資を行う際のストラクチャー(事業体の構造)について考えてみました。
目次とキーワード
- 海外ではファンド運営を株式会社ではやらない?
- なぜ海外では個人が投資の主役になっているか?
- なぜ日本では個人が投資の主役にならないか?
- 有限責任の重要性
- 有限責任とモラルハザード
- 運用者へのインセンティブと税務(パススルー)
- LLP-LPSスキーム
- LLPをGPとして登記できるか?
(第210号)これからの日本のベンチャー投資ストラクチャー(税務編)
この回では、日本においても海外と同様、個人が中心(GP)となって(下図の「LLP-LPSストラクチャー」などで)ベンチャーキャピタルファンド等を組成したら税務上どうなるか、について考えてみました。
目次とキーワード
- 「carried interest」は「成功報酬」ではない?
- 米英の「キャリー」の税務
- 従来の日本のVCの「成功報酬」の実務
- 消費税増税を迎える日本の「キャリー」
- ファンドの税務は「せこい話」か?
- なぜ株譲渡所得は分離課税で一定の税率なのか?
- 組合に法人税が課せられない根拠
- 「分配割合」が超重要キーワード
- 組合員の利益額の計算方法
- 法人の場合の規定
- 所得区分と経費の扱い(経済産業省の照会)
- まとめ
(第211号)ソフトバンクのスプリント買収に、DISH参戦(導入編)
ソフトバンクのスプリント買収に、先週4月15日に、米国の衛星放送サービス「Dish Network Corporation」(以下「DISH」)が、 ここに割り込んできました。
まず、ソフトバンクとスプリントの契約を振り返って、このDISH参戦について考えます。
目次とキーワード
- 買収への割り込みがあった場合はどうなる?
- ソフトバンクの買収スキームの概要
- ソフトバンクとスプリントの契約が終了する場合(Termination)
- 契約解除料(Termination Fees)等
- DISHの開示資料を見る
- 最初のレター
(第212号)ソフトバンクのスプリント買収に、DISH参戦(開示分析編)
連休中でしたが、引き続きDISHのスプリント買収関連の開示書類について見てみました。
目次とキーワード
- DISHの概要
- 議決権保有状況(「Dual Class」)
- スプリントの特別委員会の組成
- 特別委員会のメンバー
- スプリント側の開示一覧
- ソフトバンクのDISHへのコメント
- ソフトバンクの社債発行と格付
- ソフトバンクの修正大量保有報告書
- 買収契約書の修正内容
(第213号)スプリント買収にDISH参戦(ソフトバンク反論編)
孫社長のソフトバンクの買収提案とDISH買収提案の違いの説明を中心に、スプリント買収関連の開示書類について見てみました。
このディール及び孫社長のプレゼンは、(仮にソフトバンクが今後、スプリントの買収に成功したとしたら)、対抗買収者が現れた場合でも(英語で)米国の政府や一般株主を説得して買収に成功できた事例として、日本のビジネス史上に残るのかも知れません。
(出所:ソフトバンク、プレゼン資料)
目次とキーワード
- ソフトバンクの反論と市場の反応
- 今週のDISHの開示
(スプリントとNDA締結?) - 今週のスプリントの開示
(日本では報道されてない?6月12日の臨時株主総会の招集通知が!) - ソフトバンクの開示
- 孫社長のプレゼンテーション
- 買収後のスプリントの成長
(売却する株主向けの説明なのか?買収後も残る株主向けの説明なのか?政府向けの説明なのか?) - 「Scale is everything.」
- 「Smart phone is almost everything.」
(どっちやねん) - 「Most hated company in America」
- まとめ
(第214号)スプリント買収にDISH参戦(ソフトバンク反撃編)
5月3日にスプリントからすでに招集通知(Proxy Statement)が発送されちゃってると思いますので、DISHには、かなりキツい王手がかかっている感じではあります。
一方で、米当局の承認は、(司法省の独禁法関連の承認等、おりたものもあるようですが)「安全保障系のCFIUSは予断を許さない」といったご意見もあるようで、まだ「ソフトバンクが勝った」とも言えない状況ではないかと思います。
これら一連の開示から、「日本企業がM&Aを活用して世界で活動する際の戦い方」を垣間見てとることができるのではないかと思います。
目次とキーワード
- DISHには米国家安全保障上の問題は無いのか?
- DISH定時株主総会での議決権行使結果
- DISHの四半期決算発表
- BlackRockによるDISH株売却
- スプリントの決算発表
- ソフトバンクによる、反DISH、親ソフトバンクの米報道開示
- ソフトバンク委託による、業界専門家のDISH提案分析結果
- ソフトバンク自身による、スプリント買収のシナジー効果分析
- Capital Research Global Investorsによるスプリント株売却
(第215号)スプリント買収にDISH参戦(スプリント進撃編)
スプリント自身による詳細な分析が見もの!
規制関係の進捗状況など、新たな情報もいくつか入ってます。
目次とキーワード
- DISHの子会社で25億ドルの資金調達
- スプリントから提出された詳細な分析資料
- スプリントの置かれた状況
- ソフトバンク提案のプレミアム分析
- 株価の妥当性
- 取締役会のプロセス
- ソフトバンクとの統合に対する市場の反応
- 規制当局関係の現状
- DISH提案についての検討
(第216号)スプリント買収にDISH参戦(米国家安全保障編)
ソフトバンクのスプリント買収の対抗馬DISHは、経済的条件面での戦いは厳しいと思ったのか、「ソフトバンクがスプリントを買収すると、米国の国家安全保障上の問題が発生する」という角度から攻めることにしたようです。
その米国の国家安全保障のあたりを中心に、お送りします。
目次とキーワード
- ソフトバンクがDISHのデュー・ディリジェンス(DD)を認める
- DISHの、安全保障面からの斬り込み
- NSTAC(国家安全保障通信諮問委員会)
- Communications Assistance to Law Enforcement Act (CALEA)
- ソフトバンクの、安全保障に関する反論
- スプリント、株主向けの賛成(”FOR”)の呼びかけ
- ソフトバンク、州関係の許認可作業の終結
- DISH、ソフトバンクへの再反論
(第217号)スプリント買収にDISH参戦(DISHの逆襲編)
今週は、最大の山場と見られていた、CFIUS(対米外国投資委員会)からの承認を5月28日に取得しました。安全保障上、CFIUSから突きつけられた条件の概要も判明。
「これで最大の山場を超えた。あとはスプリントの株主総会を経るだけ」と思ったのも束の間、5月30日に、スプリントが買収しようとしているクリアワイアを、DISHがまたまた横取りしにかかってきました。
目次とキーワード
- CFIUSによる承認の取得
- 臨時株主総会は、いよいよ来週水曜日(16日)
- クリアワイアの非公開化スキーム
- CFIUSから付けられた安全保障上の条件
(コーポレートガバナンスで安全保障!) - スプリントが中国製機器を廃棄させられるリスクは小さいことが判明?
- DISHの、CFIUS承認に対する批判
- DISHの資金調達(26億ドル)
- そして、DISHがクリアワイア株式の公開買付けへ!
(第218号)スプリント買収にDISH参戦(クリアワイア編)
スプリントが買収しようとしているクリアワイアに、DISHがまたまた公開買付けで横槍を入れてきましたが、その続報です。
(ビン・ラディン殺害時のこのチームの超大物が社外取締役に。
出所:Wikipedia)
目次とキーワード
- ソフトバンクによる買収議案がISSの推奨を獲得!
- ソフトバンクが4,000億円の社債発行
- 「DISHの提案はデラウエア州法違反だ」
- クリアワイアの定款と株主間契約(EHA)によるガバナンス構造
- 元米海軍大将/統合参謀本部議長が安全保障担当の社外取締役に!
(第219号)スプリント買収にDISH参戦(クリアワイア反乱編)
この週なんと、クリアワイアの特別委員会は前言を翻して、DISHの提案に賛同表明をしてしまいました。
なぜスプリントの「子会社」であるクリアワイアが「謀反」を起こした(ように見える)のか、開示資料から、クリアワイアの採用しているコーポレートガバナンスと意思決定プロセスを見てみました。
(第220号)スプリント買収にDISH参戦(スプリント起死回生編)
ソフトバンクが買収しようとしているスプリントは先週、クリアワイアへの買収額を1株5ドルまで引き上げました。しかしスプリントが株価を上げればDISHも株価を上げて、「無限釣り上げチキンレース」になってしまわないでしょうか?今週は、そうならないためにスプリントとクリアワイアが買収契約に入れ込んだ株価以外の工夫の数々を見てみます。
(出所:ソフトバンクのSEC開示資料)
これでDoCoMoはぶっちぎりの日本1位で、「世界第3位の通信会社」(Verizonに肉薄しているのでほぼ2位)という構図に、かなり近づいてきました。果たして、孫社長の「30年で世界10大時価総額企業に入る」という構図実現への大きな一歩となるでしょうか。
目次とキーワード
- スプリントのクリアワイア買収(合併)契約書修正の変遷
- スプリントが締結した、クリアワイア株主との契約(多数派工作)
- 今回のスプリントのクリアワイア買収条件の変更内容
- 「フェアネス・オピニオン」を誰が出すか?
- スプリント株主の新スプリントの株と現金の選択フォーム
- ソフトバンクのプレゼン資料
(第221号)スプリント買収にDISH参戦(DISH降伏編)
この週、DISHがついにクリアワイアの公開買付けもあきらめて、スプリントとクリアワイアの買収から完全撤退することになりました。
スプリント、クリアワイアとDISHの開示から、どのような出来事があったかを整理してみます。
目次とキーワード
- ソフトバンクの定時株主総会プレゼン資料(英語版と日本語版)
- クリアワイアの大株主への多数派工作
- スプリントがクリアワイアの買収でISSのお墨付きをゲット
- スプリントの株主総会でソフトバンクの買収承認!
- クリアワイア役員が受け取る「ゴールデンパラシュート」
- 特別委員会の資料「プロジェクト”犬(イヌ)”」
- 分析の観点(取引価格、DCF法、他の周波数帯売買事例、等)
- DCFに用いるWACC(加重平均資本コスト)のタイミング
- DISH、ついに降伏
(第222号)Bitcoinビジネスのブーム到来か?(導入編)
Bitcoinは、中央銀行やカード会社など、信頼できる企業(trusted third party)が不要で、ユーザーからユーザーに直接支払いができるP2P的な決済手段です。高度な数学的技術(アルゴリズム)を使って、このしくみを実現しており、主要な部分のプログラムはすべてオープンソースで、公開されているようです。
数学的な暗号技術を使って電子的に通貨を作る可能性は、1990年代後半のインターネット黎明期に盛んに議論され、「これで政府や中央銀行は不要になる」といった脳みそフラワーな言説もたくさん飛び交ったので、当時を知るおっさんとしてはどうしても眉唾モードになってしまいますが、昨今の米国では、Bitcoin関連のベンチャーへの投資も活発化しており、また先週は、ウィンクルボス兄弟(ザッカーバーグ氏がFacebook創業時にアイデアをパクったパクらないで訴訟となっていたハーバード大学の先輩)が運営するBitcoinの信託が上場を発表するなど、にわかに過熱感が出てきました。
今回はまずBitcoinがどのような原理でどう実装されているのか、Bitcoinの発案者「Satoshi Nakamoto」の論文を中心に検討してみたいと思います。
目次とキーワード
- Bitcoinとは?
- 発案者「Satoshi Nakamoto」の正体
- Bitcoinの論文の主語が「we」?
- Bitcoinの取引の概要
- 新しいコインの創造は「金(きん)の採掘と同じ」
(中央銀行がコインを作るのではない。) - ハッシュを使ったタイムスタンプ・サーバーの仕組み
- 「Proof-of-Work」という仕組み
- Bitcoinの実績データ(取引量、発行残高)
- プライバシーの実現
(第223号)Bitcoinビジネスのブーム到来か?(ウィンクルボス信託編)
あの映画「ソーシャルネットワーク」にも登場したウィンクルボス兄弟(双子)が電子マネー「Bitcoin」の信託を上場させようとしています。
この回ではこの信託の上場用資料(S-1)を検討して、Bitcoinの経済的な側面を考えてみました。
(出所: SEC資料、WSJ。)
目次とキーワード
- 上場する信託の規模(食っていけるのか?)
- 中央銀行が無く、コンピュータで「採掘」するBitcoin
- スポンサー(運営者)が受け取る報酬
- 受託者(Trustee)の分担業務
- 世界最大のBitcoinの交換サイトは「渋谷」にある?
- Bitcoinのボラティリティと投機的需要
- Bitcoinそのものに関わるリスク
- Bitcoinの取引や平均価格算出に関わるリスク
食に関するネットビジネスは、vertical(バーチカル=業種別)なネット系のサービスの中でも一般の人になじみ深いサービスの一つではないかと思います。
昨年3月に「Yelp!」の上場に合わせてネットの飲食系サービスついてまとめましたが、今回も飲食系ネットビジネスについて、日米の代表的な企業をいくつかピックアップして、状況をアップデートします。
目次とキーワード
- 未だ赤字だが時価総額27億ドル越えの口コミサイト「Yelp!」。
- 赤字幅は縮小。Groupon。
- 予約サイト大手OpenTable。
- ぐるなびの戦略。
- カカクコムの時価総額のうち「食べログ」分の企業価値はどのくらい?
- クックパッド。
- 企業価値が何で決まっているか?
この回は、ベンチャー経営者の持分を増やす方法について、です。
昨今は、エンジェルやインキュベーター、シード・アクセラレーター(以下「エンジェル等」)の方々も増えて、設立直後の企業にも数百万円から1千万円程度までの資金が付くようになってきました。それは大変すばらしいことなのですが、一方で、そうした投資のかなりの部分が、非常に低いvaluation(株価)で行われるため、資本政策が上場に向かない(M&Aでexitするしかない)ことになってしまっているケースがたくさんあります。
今まで、このようにエンジェル等によって3割から5割弱の持分を持たれてしまったベンチャーは、ベンチャーキャピタルに投資を申し込んでも、「この資本政策じゃIPOできないなあ」と、そっぽを向かれてしまったケースも多かったと思います。既存のエンジェル等に嫌われてまで比率を引き下げて投資をしても、投資した後の株主間の人間関係にも影響を与えかねませんし、何より交渉も面倒です。ベンチャーキャピタルもビジネスなので、そうした手間やコストやリスクを払って投資するのは、よほどの案件に限られます。
将来IPOして大きく羽ばたけるかもしれなかったベンチャーが、資金調達ができず潰れてしまったり、少額のM&A等で買収されて終わってしまっていたのだとしたら、非常にもったいないことだと思います。
そういうわけで今回は、IPOモデルから乖離してしまっている資本政策を、「乙種普通株式」という株式を使って是正する方法を考えてみました。
目次とキーワード
- 乙種普通株式の要項
- 議決権
- 株式分割等の場合の取り決め
- 普通株式への転換
- 配当
- 残余財産分配権
- 株主間契約
- 実例で考えてみる
- 乙種普通株式が使える「経済的」前提
- 税務上の問題
- 発行時の価格
- M&Aのexit時の価格
- 上場時の普通株式への転換
- 「特に有利な価格での発行」か?
- ストックオプションによる是正では何がダメか?
- 普通の(無償)ストックオプションを使う方法
- 有償ストックオプションを使う方法
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(以上)
以下、目次一覧:
(第196号)謹賀新年(2012年の「週刊isologue」総集編)
(第198号)ソフトバンクのイー・アクセス株売却について(答え合わせ編)
(第204号)「ベンチャーM&A税制」試案(その2)
(第205号)日本版convertible equity試案
(第206号)日本版convertible equity(転換契約模索編)
(第207号)日本版convertible equity(優先分配権編)
(第208号)日本版convertible equity(活用編)
(第209号)これからの日本のベンチャー投資ストラクチャー(基本編)
(第210号)これからの日本のベンチャー投資ストラクチャー(税務編)
(第211号)ソフトバンクのスプリント買収に、DISH参戦(導入編)
(第212号)ソフトバンクのスプリント買収に、DISH参戦(開示分析編)
(第213号)スプリント買収にDISH参戦(ソフトバンク反論編)
(第214号)スプリント買収にDISH参戦(ソフトバンク反撃編)
(第215号)スプリント買収にDISH参戦(スプリント進撃編)
(第216号)スプリント買収にDISH参戦(米国家安全保障編)
(第217号)スプリント買収にDISH参戦(DISHの逆襲編)
(第218号)スプリント買収にDISH参戦(クリアワイア編)
(第219号)スプリント買収にDISH参戦(クリアワイア反乱編)
(第220号)スプリント買収にDISH参戦(スプリント起死回生編)
(第221号)スプリント買収にDISH参戦(DISH降伏編)
(第222号)Bitcoinビジネスのブーム到来か?(導入編)
(第223号)Bitcoinビジネスのブーム到来か?(ウィンクルボス信託編)
(ではまた。)
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