今回も、昨日のエントリと同じく、昨年の3月末ごろに(仕事で)行ったライブドアの財務分析から一部抜粋、加筆修正したもの、です。
それ以降の期の開示資料等を見ていないので、その点はご容赦いただければ幸いです。
なお、いつものことですが、本記事もライブドアさんや関係する企業・個人等のバッシングを目的にするものでも擁護を目的にするものでもありません。また、第9期(平成16年9月期)の有価証券報告書やプレスリリースをベースに昨年3月に行った分析であり、第10期の有価証券報告書の内容は反映させておりませんし、ざっくりした分析であって、完全性や正確性を保証するものでもございません。(念のため。)
ヒントは「連結キャッシュ・フロー計算書」にあった
前回の財務分析の通り、ライブドアの「イーファイナンス事業」は売上の大半を占めるにもかかわらず、中身がブラックボックスなのですが、これを解くヒントが、「連結キャッシュ・フロー計算書」に出てます。
連結キャッシュ・フロー計算書に、「営業投資有価証券の増減額」として、3,510,109千円が記載されています。
「営業投資有価証券」というのは、ベンチャーキャピタルなどの投資業が用いる有価証券の「在庫」の勘定のこと。ライブドアさんも、子会社で投資業を営んでいるということで、この勘定を使っているのだろうということが推測されます。
株式の売却は通常、損益(収入と原価の差額の「ネット」)だけが営業外損益または特別損益等に記載されますが、ベンチャーキャピタルなどにとっては、「株」は「商品」であって、営業投資有価証券の場合、その売却は「グロス」で計上されるわけです。
つまり、10億円の株式が11億円で売却できたとしても、通常の有価証券や投資有価証券であれば、
売上 0億円
利益 1億円
というインパクトしかないわけですが、同じ有価証券を「営業投資有価証券」として扱うと(あら不思議)
売上 10億円
利益 1億円
というインパクトを作り出すことができます。
しかも、通常の商品やサービスなら、相手が買ってくれなかったら売れないわけですが、有価証券なら、売りたいと思った時に売れる可能性が高いですし、そういうスキームを作り出すことも容易です。
例えば、営業投資有価証券の中から特定のものを選択して売却するなどすれば、かなり恣意的に売上や利益を上積みすることができるわけです。
キャッシュフローの説明にも、下記のように「営業投資有価証券」という文字が出てきます。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、10,340百万円(前年同期比654.0%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益、仕入債務が増加し、営業投資有価証券が減少したことによるものです。
しかし。この営業投資有価証券が貸借対照表のどこにも表示されていないという大きなナゾがあります。
BSに残高が存在しないということは、(ベンチャーキャピタルのように何年も保有していた株式を売却するというよりは)、当期内で買ったものを当期内で売るという、「コロガシ」の可能性がある、ということかと思います。
関連しそうな項目を見ていくと、連結貸借対照表に「出資金」という勘定で26億円が計上されてます。
同じく、連結キャッシュ・フロー計算書を見ると、
投資有価証券の取得による支出△2,313,124
とあるのに、投資有価証券は3億円くらいしか増えていません。
出資金の支払による支出△2,688,162
というのがあって出資金の回収は8億円くらいしかないのに、出資金は4億円しか増えていないというのも怪しい。この営業投資有価証券の変動と出資金の変動は数字が近いので、有価証券が投資有価証券勘定や投資事業組合などをグルっと回している可能性があるんじゃないかと思います。
台湾等にファンドを持っているというウワサを聞きますので、もしかしたら、単純に1回売却するだけじゃなくて、複数回こうした関係会社やファンド間で回転させて売上を膨らませているのかも知れません。
−−−
・・・と、昨年の3月には推測したんですが、連日の報道や本日の日経朝刊を見ると、やはりこうした投資事業組合等を通じて株をグルグルをやっていたようですね。
私は、他社の株式をグルっと回すなどのかなり怪しげな(今の日本の会計慣行では明確には否定されてはいないものの、公正妥当とは認めがたい)ことをやってるだろうとは想像してたんですが、まさかいくらなんでも、自社株でやってるとまでは想像つきませんでした・・・。そこまでやったら、絶対監査通らないだろうと思っていたので。「イーファイナンス事業」は売上や利益の大半を占めるわけですから、監査上、これについて「よく中身を理解してませんでした」とか「重要性がないと思った」とは、口が裂けても言えないはずです。
こういう「楽な方法」に一度手を染めてしまうと、人間、どこまでも墜ちていく可能性がありますね。
最初は会計上問題ない処理をしていても、一度「自由に売上・利益を作れる」という魔力にとりつかれると、一線を踏み越えてしまう可能性が非常に高いんじゃないでしょうか。
そういうときに、「そんなことは許さん!」と叱ってくれる人がいるのが、コーポレートガバナンスじゃないでしょうか?
なお、公開しているベンチャーキャピタルさんなども、「営業投資有価証券」という勘定は使ってらっしゃいますが、通常は長期に保有した未公開株式を1回こっきり売却する処理をしているはずで、売上を水増しするために株を転がしたり、ましてや自社株の売却を売上に計上するなんてことはしてないと思いますので、ベンチャーキャピタルさんの名誉のために申し添えます。
(ではまた。)
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なるほど・・・これが「粉飾」ということですか
とりあえず、今から授業なんで、詳しいことは後にしますが、こちらのNIKKEI NETの記事で、(早合点かもしれませんが)ようやく今回問題とされているカラクリが見えてきたような気がします。ライブドアグループの証券取引法違反事件で、ライブドア本体が実行したとされる粉飾…
なるほど、単体決算がどうのこうのだけじゃなく、CFまでいじっていたわけですか・・・ここまで来ると、ある意味、それはそれでよく考えられていますね。ただ、次の問題は、これは「違法」なのか「ルールの穴をうまくついた取引」だったのかというところですね。こちらは、相当難問な気がします。
ライブドア粉飾の手口
ライブドア本体まで粉飾に手を染めていたみたいですね。
どんな形で粉飾していたのだと常々思っていたのですが、
今回の件でハッキリしましたね。
NIKKEI NET記事参照
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投資事業組合連結外しは違法か?
疑惑については、まだ疑惑の段階にしか過ぎないので、引き続き、このブログでは触れないことにする。
ただ、投資事業組合との連結に関して、書いておきたい。 別に、ライブド†
(しまったdurianさんのコメントを間違って消しちゃった・・・。)
ライブドア事件に一言
ライブドアに関することが世の中を賑わしています。流行語大賞も泣きますよ。
想定外の「ライブドアショック」。
今回の件については、まだ静観するしかない部分が多くあるのですが、昨日の大騒ぎをみていて、コミュニケーションに関わる仕事についている者としては少…
ライブドア 平成16年9月期個別決算の粉飾疑惑 総まとめ
ライブドアの粉飾決算疑惑、
かなり情報も出てきましたし、
ここらでまとめてみようかと。
粉飾疑惑を向けられているのは、
判明している部分で、3Typeかなと。
Type1 投資事業組合†
峠は越えた?
こんばんわ、ひろです。
買い場、短かったですね†。あっという間に戻っていきました(^^;
やはり僕はこういう短期勝負には向かないようです。
ライブドアは大変なことになっているようですが、ITバブルの頃の
ソフトバンクとやってることは似ている…
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磯崎さん、はじめまして。いつも楽しく読ませていただいております。
トラバの設定をめっちゃま違えていましまして、3つもくっつけてしました。
ご迷惑をおかけしました。
ライブドアのCFは、私もざざっと目をとおしていたので、磯崎さんの解説には本当に納得です。
ライブドアショックからバブル経済へ!?
今日現在の相場の雰囲気からすると・・・本格的な好景気の到来かも。…
ライブドアショックについて
ライブドア問題は、アメリカでも報道されていて、朝のラジオのニュースで、”livedoor”という名前がでて、東証が史上初めて全銘柄の売買を停止したということが報じられたときには、さすがに驚いた。当初、情報が少なくマスコミ報道も錯綜していたようだが、ようやく問題が…
Livedoorと、個人投資家と、金融教育と・・・・を話題にしてみる
今回は、株式&金融&ライブドアの話です。
いろいろ忙しい時期ですが、まぁちょっと手を止めて見てって下さい(^。^)y-.。o○
さて、ライブドアが連日ストップ安だそうです。
まぁ、当然と言えば当然ですね。
(おっと!、「奢れるものは・・・」の論理を展凱..
海外から見ているライブドア事件
今海外出張中で、海外よりライブドア事件を眺めています。 この事件については、そも…
主語の見える情報
マスコミが「掌を返す」のは、massの期待値の中央値がそこにあるからであろう。ま…
すごい推察ですね。
自らb/sからCF表を作成する力と検証する意欲がないと、これは見抜けませんね。
空売りの美学に記載されているような内容がこちらにあったとは。
粉飾は見破れると思いますが、でたらめな数字で帳尻が合っている虚偽粉飾は見破れるでしょうか。