GoogleのDual Class構造(illustrated)

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「通りすがりA」さんからいただいたコメントから。

私が言いたかったことは、梅田さんのコメントの通り、種類株で議決権の過半数を持つのと普通株にて過半数持つのとは意味合いが違うということです。
あえて種類株にて議決権を維持しようとしているところに、ガバナンスのゆがみが生じるのではないかと思います。

・・・ということで、ちょっと図解してみました。
image002.gif
2つの観点
私が、このGoogleのDual Class構造がガバナンスの問題ではないと申し上げるのは、まず一つは「要は気持ちの持ちようじゃないの?」ということです。
「Class BはClass Aの10倍の議決権がある。」(上図で(A)→(B))と見ると、「Class Bのやつだけズリぃぞ!俺たちにももっと議決権をよこしやがれ。」という気持ちにもなりますが、
「Class Bは同じ議決権に対してClass Aの1/10の経済的価値しかありません。」または「Class Aは同じ議決権あたりClass B の10倍の価値がございます。」(上図で(B)→(A))と言われれば、「うん、Class Aも悪くないじゃん。」という気持ちにならないですか?
公開した後に、いきなり「本日よりClass Bの議決権は10倍とさせていただきます。」と言われたら、「おい、ざけんじゃねーぞ!」と怒ってかまわないと思いますが、Googleは初めから今の株主がそういう構造で株式を保有しているところを、今回、「こういう条件ですがよろしいですか?」と断って株を公募するわけです。
つまり、もともと100%株式を保有している創業者が5%だけ公募してIPOしても、それがガバナンスの問題に直結するわけではないのと同様、この構造でもそれがガバナンスの問題に直結するというわけではないはずです。
さらに、Googleの創業者たちは普通の100%所有のオーナー会社とは違って「図の点線で囲まれた白い(X)の部分の経済的価値は放棄している」とも考えられるわけです。
2種類の投資家
また、S-1によると、

Academic studies have shown that from a purely economic point of view, dual class structures have not harmed the share price of companies. The shares of each of our classes have identical economic rights and differ only as to voting rights.

とのことです。
元の論文が引用されてませんが、恐らく、同様のDual Class構造を取るメディア企業(New York Times Company、the Washington Post Company、Dow Jones)などの株価等を見て、こうした構造が株価に悪影響を与えないという研究があるんでしょう。
フツーの投資家は、一般に会社の経営に参画したいわけではなく、ただ株で儲けたいだけなので、議決権の一部を付けないことでまったく同じ経済的価値の株が安く買えるなら、それは、フツーの投資家にとっては、いい選択肢と言えるかも知れません。((A)の観点。)
(B)の観点からGoogleを見るのは、「あなたのすべてがほしい」というスケベ心のある人だけです。
「巨人たちの戦い」のルール
これがもし時価総額25億円の企業の株式なら、「あ、オタクの株、全部もらっとくよ。支払はAMEXでいい?(笑)」というお金持ちな企業は結構いっぱいいます。そういう場合は、市場原理を働かすためにも、Class Bなんて姑息なことはしない方がいいかも知れない。
しかし、時価総額2兆5千億円((B)の観点からすると20兆円超のオーダーか)ともなると、(B)の観点からGoogleを眺めるのは、MicrosoftなどGoogleのライバルとなる世界でも一握りの企業等に限られてきます。
こういうレベルの話で、金の力にモノを言わせてGoogleを買いに入るというのは、市場原理というよりは、むしろ適切な資源配分を保証する市場原理が歪められた独占禁止法的フィールドのお話にもなってきます。
ということで、Googleクラスの企業であれば、純粋にサービスや製品の良さでの競争が歪められないようにするという意味でも、単純にClass Aだけで公開するというより、こうしたDual Class構造を取って公開するほうがいいと言えるかも知れません。
(Googleの経営陣がヘボかった場合にきちんとガバナンスが働く可能性があるのか、という点については、また後日。)
ではでは。
ご参考URL:
オープンな社会とベンチャー(isologueバックナンバー):
https://www.tez.com/blog/archives/000051.html

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