本日の日経朝刊7面の記事「勧告で決算訂正、日興・監視委なお食い違い—経営陣、問われる説明責任。」に、
ただ、現行の会計基準では、過半の株式を保有しているケースでも傘下に入れる狙いがなく、将来転売する可能性があるなど「投資育成目的」の場合は、特例として連結対象としなくてもよいとする規定がある。
日興コーディアルグループの場合、一〇〇%子会社の日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)がNPIホールディングスに全額出資しているうえ、役員も全員兼任。「支配していないとは言い難い」(連結会計に詳しいベテラン会計士)。公認会計士の磯崎哲也氏も「重要性や保守主義の原則から考え、連結から外すべきではなかったのではないか」と指摘する。
と、私のコメントを載せていただいてますが、この取材を受けた時は、今月16日の日経朝刊の記事「不適切な利益、日興が計上——特別目的会社連結外し、損失、反映せず。」
一方、NPIとNPIHはベル24の株価によって損益が変動するデリバティブ(金融派生商品)取引を締結。その後、ベル株が上昇したことでNPIは百四十億円程度の利益を上げ、親会社である日興コーディアルの〇五年三月期連結決算に計上した。
この金融取引で、NPIHはNPIと同額の損失を抱えたもよう。
と同様の認識、つまり、「NPIは得してるけどNPIHは損してる→差引チャラ」と考えていたんですが、この取材を受けてから書いた前回のエントリで、当時の含み益を考えてみると、計上時点の2004年9月末で、すでに400億円くらいの含み益があったと考えられ、その後、(利益額は開示されてないようですが)、ベルシステム24の株式売却で実際に利益も出ていることから考えると、(一般原則の)保守主義の原則というよりは、(損益計算書原則の)発生主義の原則
すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない。ただし、未実現収益は、原則として、当期の損益計算に計上してはならない。
の話だったかも知れないですね。
上述の今朝の記事では、
ただ、訂正に至った根幹の理由については監視委と見解が大きく異なっている。日興側は「『SPCを非連結とする』という会計処理そのものが間違っていたとは今でも思っていない」(森田収取締役)と説明。一方で監視委は「実質支配の関係にあり連結すべき」(幹部)としてSPCを非連結にしたこと自体が「虚偽記載」にあたると見る。
とありますが、話はSPCが連結できるかどうかの話というよりも(ということもさることながら)、前回のエントリで述べたように、今後TOBするのが確実で、100%子会社が必ず損をして親会社が必ず得をするようなEB債の条件(だとしたら)自体が、独立の第三者間では行われるはずのない取引であり、収益の期間帰属をゆがめる目的以外には考えられない(下記追記参照:ホントにそうか?)わけで、そうした取引を前提に財務諸表を作ること自体が、企業会計原則の初っ端の大原則である真実性の原則
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
に反している気がします。
(ではまた。)
追記:ホントに第三者間では行われないような取引か?ということについて、別エントリを立てました。
2300億円もペーパーカンパニーに貸し付けるリスクを考えれば、140億円くらいのリターンを求めるというのはありうるかも知れません。
ご参考まで。
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。