先週の「華麗なる一族」(総勘定元帳が「決定的な証拠」になるか?編)

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(追記あり。19:10)
遅ればせながら、先週の「華麗なる一族」を録画で拝見。
父親でメインバンク神戸銀行の頭取大介(北大路 欣也)を背任(大介は阪神特殊製鋼の非常勤取締役を兼務)で訴えると息巻く鉄平(キムタク)に、友人の弁護士(萩原聖人)が「財務内容を徹底的に洗いなおせ」とアドバイス。


夜を徹して資料を洗いなおす鉄平が、ダンボールの底に隠れていた長期借入金の総勘定元帳を見つけて、「ついに決定的な証拠を見つけたぞ!」と言うんですが、その総勘定元帳の記載は、

1月上旬に20億円の長期借入金の増加((父親の)阪神銀行分)
その後、20億円の長期借入金(協調融資の大同銀行分)増加
1月下旬に20億円の長期借入金減少(阪神銀行分)

というもの。
これは、大介が公に主張している、「高炉の突貫工事の無謀さに驚いて20億円の融資は撤回させてもらった」ということそのままで、背任の決定的な証拠になるんでしょうか?というのが素朴な疑問。
そもそも、大介(&鉄平)に対する個人的な好き嫌いを除いてフェアに考えれば、電炉会社が高炉に進出するという計画を見て20億円融資撤回するというのは、「business judgement」の範囲内、という気もします。
「一時的に返してくれ」といって20億円を引き上げて戻さない、というのは(どっかで聞いたような話ですが)、詐欺的行為な気もする一方、「返してもらっている間に銀行としての判断が変わった」と言われると、これも大変ビミョーであります。
教訓:
(銀行借入も増資もそうですが)ファイナンスにおいては、(たとえ契約が存在しても)、手元に資金が実在するのをちゃんと確認するまでは実行されたと思っちゃあきまへん。

(原作を読んでないんですが、次回の展開に期待。)
(追記。19:10)
コメントおよびトラックバックで、やましたさん及び小林雅さんから、
「高炉建設の決定が2月なのに、1月中に融資を撤回してるからじゃないか?」
とご指摘いただきました。ありがとうございます。
ただ、コメント欄でも書かせていただいたんですが、
「1月末に事情で仮に返済してもらったが、2月から突貫工事を始めたので、状況を見て判断を変更した」と言われたら、なかなか違法行為だという立証は難しい気がします。
(萩原聖人弁護士も「難しいぞ」とはおっしゃってましたが・・・。)
当時の銀行業務のプロセスの想像もつきませんが、1月末にいったん返済を受ける際には、融資契約を1度事情により合意解約した、という形を取っているんではないでしょうか。
(毎日、必ず1円単位まであわせる銀行業務の体質からして、エビデンスが何も無いのに返済が発生したりするのかなあ?ということで。)

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6 thoughts on “先週の「華麗なる一族」(総勘定元帳が「決定的な証拠」になるか?編)

  1. 突貫工事が始まったのが2月以降なのではないかと。
    だから、「高炉の突貫工事の無謀さに驚いて20億円の融資は撤回させてもらった」発言が矛盾すると。
    そんな話のような気がします。

  2. >突貫工事が始まったのが2月以降なのではないかと。
    なーるほど。
    でもやはり、「1月末に事情で仮に返済してもらったが、2月から突貫工事を始めたので、状況を見て判断を変更した」と言われたら、(もともと両者間にどういう合意が存在したか、ですが、昭和40年代当時にメインバンクとの間で詳細な合意事項についてドキュメンテーションする慣行があったとも思えず)、なかなか違法行為だという立証は難しい気がします。
    (萩原聖人弁護士も「難しいぞ」とはおっしゃってましたが・・・。)

  3. 先週の「華麗なる一族」(総勘定元帳が「決定的な証拠」になるか?編)

    先週の「華麗なる一族」(総勘定元帳が「決

  4. 「決定的な証拠」は仰るとおり、日付だとおもいますが、状況的にみても大介頭取−銭高常務ラインはかなりクロだと思います。
    ・銭高常務は阪神銀行からの出向で、阪神銀行頭取、大介の事実上の部下であること。
    これが根底にある構造ですよね。
    で、阪神銀行からの融資20億は当然阪神特殊製鋼の「阪神銀行の口座」に振り込まれたはず。このお金を返したということ。
    阪神特殊製鋼にとってこの資金は大変重要な資金ですので、もし、銀行が融資撤回の申し入れをするなら、大介か、銭高は阪神特殊製鋼の役員の立場で取締役会を招集して、この議題を謀らなければいけない(もしくは社長または専務に開催を要求しないといけない)と思うのですが、当然二人は利益相反の関係なので、議決には参加できないと思います。
    その取締役会のプロセスを省略して、なおかつ事実上のCOO/CEOの立場の鉄平の耳にも入れなかったのは、善管注意義務違反かなぁ、と思います。
    大介が銀行の役員の立場でこれらを行った(指示した)とすれば、「優越的地位の濫用」すら、当てはまるかと。
    で。
    肝心の「背任」ですが、これらを行う動機が、銀行の健全経営が目的だったのか、それとも鉄平(→敬介)に対する怨念で、阪神特殊製鋼をつぶすつもりでやったのか、ということが法廷では問われそうですが、自分が敬介と大介の妻との間の子供だと言うことを証言するとすると、かなり鉄平有利かと。
    銀平も証言に立ちそうですし、銭高もちょっとつつけば口を割りそうですし、もし、二人の証言(のうちどちらかでも)がとれれば非常勤取締役大介の「背任」確定ですね。
    #isoさんが「小が大を食う合併・・・」が口癖になっているように、私は、「私は万俵鉄平の妻です。」というのを頭の中で反芻するのが癖になっています。

  5.  素人で恐縮なんですが、融資撤回の場合って、借り入れ側への明文通告や同意は全く必要ないものなのでしょうか? また、利息は発生するんでしょうか?

  6. 「華麗なる〜」も大変面白いのですが、
    もしご覧になっているのであれば、NHKの「ハゲタカ」(土曜夜9時から。全6回中3話まで終了)の批評をしていただけたら光栄です。
    ファイナンスに関係するドラマであるのなら、個人的にはこっちのほうが面白いと思っています…。