元ライブドア社長の堀江氏に懲役2年6月の判決が出ましたね。
判決が妥当かどうか、というのは、法学的に(追記:つまり、法令や過去の判例とのバランス、裁かれる人の人権の問題等の観点から)はまったく私の専門外でありますが、以下、若干のコメントをば。
どの程度認識していたか
どこまで堀江氏がスキームの詳細を知っていたかどうかというのを私が知るよしもありませんが、あれだけの金額の話ですので、知らなければならない立場にあったのは確実ですし、またライブドアでのメール等の情報共有のされ方からして、まったく情報のカケラも耳にしたことがないということはなかったのではないかと思います。
一方、「投資事業組合を通じて自社株を売却した場合、キャピタルゲインが連結の利益剰余金になるのか、それとも資本剰余金なのか」てなことは、当時の段階で普通の公認会計士が聞いても即答できる話ではなかったかと思います。
ただし、ファンドへの出資比率やファンド運営者のライブドアとの関係、金額の巨額さや利益に占める重要性などについての情報が仮に得られたとしてそれを熟慮すれば、ほとんどすべての会計士が「それを売上や利益に計上するのはまずいでしょ」という判断をしたケースだったとは思います。
しかし、堀江氏が宮内氏などから、「投資組合で自社株を売却した場合には、売上に計上できるんですよ」と説明されて、「それはまずいんじゃないの?」と反論できるだけの会計的知識があったかというと、なかったんではないでしょうか。
量刑が妥当なのか
上記のような事情を想像すると、実刑というのは感情的には「かわいそう」という気もいたします。
ましてや、明らかに堀江氏よりはるかに会計に詳しかったであろう宮内氏は3年弱の求刑ですので、宮内氏には執行猶予が付いたりしたら、なお堀江氏が相対的に「かわいそう」ですが。
一方、米国のケースを考えてみると、エンロンやワールドコムの粉飾でも、CEOはそれぞれ「私は知らなかった」という主張をして争いましたが、結果は一生刑務所から出て来れない判決が下ったかと思います。
「世界に通用する公正な資本市場の信頼性の確保」という観点からは、元社長に懲役2年6月の実刑というくらいは最低限必要があるのでは?という見方もできるかも知れません。
この判決で社長や取締役の責任はどう変化するのか
ただ、日興コーディアルグループの特別委員会の調査報告書についてのエントリで見たとおり、(外国ではどうなのか存じませんが)、日本の場合、こと会計処理の妥当性については、第三者に意見書を求めようと思っても入手できない、という現状があるわけです。
上場企業の社長なり取締役は、自分が必ずしも専門でないことについて、「ほんとにこれアリ?」と疑問がわいた場合、弁護士なり税理士なり専門家に意見を求めて情報を得て検討する義務がありますし、逆に十分そうした情報収集や検討を行なえば善管注意義務を果たしたことになり、たとえ結果は褒められたものでなくても、必ずしも取締役が責任を負う、ということにはならないはずです。
しかし、意見書を書いてくれる専門家がいないのでは、取締役はどうやって善管注意義務は果たしたらいいんでしょうか?(また、果たしたというエビデンスを確保できるのでしょうか?)
上場企業の社長は、会計処理について無過失責任を負う、ということになりはしないでしょうか?
本日の堀江氏への判決で、一般論としては以上のような懸念が生ずることにもなりえます。
日興と何が違うのか
日興もライブドアも、連結されない投資用のvehicle(組合やSPCといった「入れもの」)を使って利益の水増しをした、という点では変わりがありません。
また、カネボウのように、まったくありもしない取引をでっちあげて粉飾をしたというのと違って、ライブドアでもキャッシュはちゃんと入ってきていたわけですし、日興も少なくとも市場で形成された株価で単純計算した場合の「含み」は存在していたわけです。
ということで、一見して両社は同じに見えますし、どちらも褒められたケースでないのは間違いありませんが、両者の違いは一体どう考えればいいんでしょうか?
あえて説明をつけるとすれば、両社の違いはやはり、取締役等が「善管注意義務をどの程度果たしていたか」(適切なコーポレートガバナンスが形成されていたかどうか)の違いではないでしょうか。
ライブドアの場合、あれだけの金額についても、宮内氏以外の取締役や監査役は、投資組合の先がどうなっているかとか、スキームの全貌についてはほとんど知らなかったし、知ろうともしなかったんじゃないでしょうか?もちろん、その場合の会計処理の良し悪しについて検討も行われなかったと思いますし、取締役や監査役から宮内氏に「ほんとにその処理でいいのか?」というような質問も行われなかったんじゃないかと思います。
これに対して日興の場合には、報告書にもあるとおり、SPCであるNPIHや一番下にぶらさがっているベルシステム24まで内容はすべて(バックデートしたということ以外)取締役や監査法人によっては把握されており、しかも「これでいいのか?」という検討は、弁護士等の監査委員やCFO、監査法人も含めて、かなり何回も行っているようです。
また、
「保有は連結するが、(単なる転売目的の)投資については連結しない」
「”投資”にはSPCまで含む」
というのが(それが最善だったとは思いませんが)、従来からの連結方針だったわけなので、会計上の「継続性の原則」等から、ベルシステムの部分だけ処理を変えることは、それはそれでまずいのではないか、といった検討でもかなり丁々発止があったようです。(最終的には(これも、個人的には十分だったとは必ずしも言えないと思いますが)「注記」もしています。)
おまけに、経営者が後から見ても書類上は完璧なわけで、バックデートしたかどうかなんてわからない。「メールを50万件全部検索すりゃよかったじゃん」とも言えますが、そもそもバックデートした疑いを持つ必要があったかとか、当時、メールの全件チェックまで行う内部統制を構築している必要があったかということについて、どこまで責任を問えるか、ということはあるかと思います。
一般投資家の人にしてみれば、「結果だけ見れば同じじゃん!」と思われると思いますが、経営陣の方からしてみると、「やるだけのことをやった」か「何もやらなかった」かというプロセスを評価してもらえないのでは、限られた経営資源を使ってリスクのあることにチャレンジしていくことはできません。(「やってらんねーよ」ということにもなります。)
繰り返しになりますが、両社、決して褒められた話ではないですし、両社の実態をすべて把握しているわけでもないので、どちらの肩を持つものでもありませんが、
「社会全体として、どの程度コーポレートガバナンスや内部統制にコストをかければいいか?」
「経営としてどれくらいのリスクを取れるのか」
「それによって、結果として社会全体が発展するのかしないのか」
というような点をいろいろ考え合わせると、懲役2年6月というのは、注意義務が払われなかったことに対して結果として(経済学的に)まあ妥当な水準のペナルティなのかな、という気がします。
(追記):
つまり、これら一連の結果の教訓を見た上で、あなたがもし仮に上場企業の取締役に就任する場合、「ライブドアの取締役のようなことにならないようにする」のは比較的簡単だけど、「日興の取締役が陥った状況をあなたならなんとかできたか」というと相当難しかったのではないか、ということであります。
(ではまた。)
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俺は明らかにライブドアに対する罰則が強すぎると
思いますけどね。もしくは日興に対する罰則が
低すぎるか。
プロセスうんぬんなら明らかに宮内氏及び監査法人が
責を負うべきで具体的に実行していない堀江モンに
実刑負わせるのは検察の意地以外の何物でもないでしょう。
方や上場廃止、一方は役員交代だけ。ライブドアも
廃止にする必要無かっただろって正直思います。
ところでまたキッコが面白いこと書いてますよ。
url付けとくんで見てください。
すみません、URL表示する機能が今壊れてまして、
http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2007/03/post_2523.html
ですね。
ま、そのへんの裏事情についてはあるのかも知れませんし無いのかも知れませんし、私はよくわかりまへんので、あくまで表面化している話を合理的に解釈しようとすると、どう考えられるか、今後、上場企業のガバナンスをどう考えていけばいいか、というお話でございました。
私も以前のエントリに書いたように、できればライブドアも上場継続させたほうがよかったとは思いますが、(検察の捜査が妥当だったかどうかはさておき)、実際に主要経営陣や監査法人が全部逮捕されちゃった上に、宮内氏を中心とする少数の人間だけが全貌を把握している部分がほとんどで、そこ中心に内部統制が構築されていたとすると、私めが仮に東証さんの担当者だったとしても、「ちゃんと今後、正しい情報が開示されるのか?投資家に迷惑をかけることにならないのか?」という観点からは、怖くてとても「上場継続」という判断にはならなかったんじゃないかと思います。
(ではまた。)
堀江被告に実刑判決は想定外?
ライブドア元社長の堀江被告に懲役2年6ヶ月の実刑判決が下りました。有罪か、無罪かは別として、これまでの日本の経済事件からすると異例の判…
いまさら聞くのは恥ずかしいのですが、読売新聞の報道では、
「自社株売却益約37億6700万円や買収予定2社の預金など15億8000万円を売り上げに不正計上し」
http://news.www.infoseek.co.jp/topics/society/livedoor/story/16yomiuri20070316it03/
とあるのですが、株を売った場合、売った額ではなく、益の額だけを売上に計上するという方法があるのでしょうか。また預金を売上に計上するという会計手法もあるのでしょうか。それとも、新聞社の誤解なのでしょうか?
(新聞社は、起訴状や判決文から記事を書いているのではないかと思うので、そちらの表現がどうなっているかにもよりますが)、
投資している先の投資事業組合が売却益だけを営業収益として計上しており、その額を売上としてそのままライブドア(の子会社)の売上に計上していたとしたら、益の額だけを売上に計上する結果になったかも知れませんね。
(ライブドア子会社は、あくまで投資事業組合から上がってきた報告書をもとに売上計上していた、というタテマエにしていたはずですので。)
「預金を売上」にはできないわけですけど、預金を広告費等の名目で先にライブドアに支払わせてライブドア側で売上に計上し、それから買収する、ということであれば、結果として「預金を(使って)売上に計上」ということになるのではないかと思います。
(詳細を確認してませんが、ご参考まで。)
速報!堀江被告に実刑判決。——つわものどもに見た夢は覚めるのか?
ライブドア、堀江貴宏元社長に、東京地裁は判決を言い渡した。
2年6ヶ月の実刑判決で、かなり重い内容。
裁判所が検察側による証拠、証言をほぼ認めた結果に…
有罪は確実とは思ってたけど、実刑とは・・・。村上は無罪になる可能性が高いように思いますが。
ホリエモンが、これで、どう判断して、行動するか。
同じように、日興も同じ。
アメリカのように、
どちらの人も、しっかりした弁明と姿勢をみせてもらいたい。
いいわけだけは、聞きたくない。
本意でない謝罪なんかは、クソ!
コンプライアンスを語る資格なし
本日、ライブドア前社長堀江貴文被告に実刑判決が下りました。ライブドアは堀江被告のキャラクターと派手な買収手法で一躍名前を広めましたが、その強引な手法、場…
堀江氏一審判決
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今日は朝からこの判決に全国的に興味津々。TBSは特番を組んでライブドアの旧幹部を出演させて熱心に報道していた。9時を…
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誰か、よその新聞の情報も下さい。
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ライブドアの堀江氏への実刑判決(懲役2年6月)が出ました。堀江氏はただちに控訴する旨を発表したようです。(当たり前だ!)詳しくは ↓
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>「投資事業組合の組成は脱法行為」
もちろん、投資事業組合を作ること自体は普通は違法ではないわけですが、自社株を売買していることを隠すために、投資事業組合を作ってそれを仮装するというようなことをやった場合には、全体像を見たらその投資事業組合の組成は脱法を意図していた、という意味じゃないかと思います。
(判決文見てませんが、投資事業組合を作ることが違法、と解釈されると大変なので、取り急ぎ。)
毎日新聞夕刊(4版)では、投資事業組合の組成目的には会計処理の潜脱も含まれている→脱法目的で作られた組合は存在を否定すべきだ→株を売ったのはライブドアファイナンス→連結対象なので売上計上は許されない、となっていますね。
驚いたのは、偽計、風説の流布の方で、「マネーライフ社の企業価値を過大評価して交換比率を決定しているにもかかわらず、適正な評価方法で算出した旨公表している」ことが虚偽事実とされたようです。家宅捜索の時に言われた、「既にファンドを通じて子会社化しているのに、再度完全子会社化すると発表した」という点は、なくなっていますね。
堀江貴文被告に対する実刑
「東京地裁、堀江元ライブドア社長に懲役2年6カ月の実刑判決」(CNet)などで報道されているとおり、ホリエモンは実刑になった。磯崎氏のわかりやすい解説に異…
ホリエモンに実刑判決
ホリエモンこと、前ライブドア社長の堀江貴文被告の証券取引麻反の罪を問う、第1審の判決が 今日の午前にありました。 懲役2年6ヶ月の実刑判決が言い渡されまし…
グレーゾーンをめぐるアクションの中で、やった内容ではなく、やるに至った検討プロセスで、ライブドア、日興で評価をわけるとしたら、形式的に、がんばりましたが、だめでした、ゆるしてちょんまげで通用するってことですよね。
どこまでも、日興には甘い国なんでしょうね。
特捜ににらまれないよう、しくしくとお上の様子をみなくてはいけない国なんて、資本主義からは隔絶された世界で笑ってしまいましたよ。
僕は日興とライブドアだと圧倒的に日興のほうが悪質だと思いますけどね。プロセスが違うとおっしゃられてますが、ライブドアの場合も資本取引、M&Aなどの時にはすべて顧問弁護士に確認しているわけで、何もやってないどころか、他の会社より圧倒的に細かくやっていた模様です。確かに取締役会ではほとんど議論していないでしょうが、違法か合法かの判断は法律家の範囲となる部分で取締役会での判断とは違います。また今回の件は違法行為ではなく脱法行為です。有罪判決になること自体どうかと思いますけどね。とりあえず、日本の司法は独立機関ではないということがはっきりしました。ただの行政組織です。検察が起訴したものを有罪とするだけの行政組織ですね。残念なことです。
コメントありがとうございます。
やらさんとhideさんの総合的な判断に異論を唱えるものではありませんが、
>やった内容ではなく、やるに至った検討プロセスで、ライブドア、日興で評価をわけるとしたら
>日興とライブドアだと圧倒的に日興のほうが悪質だと思いますけどね。
「やったこと自体」の悪質さについての判断はともかく、このエントリで問題にさせていただいているのは、「チェック機能の構造」の問題です。また、「検察の捜査が適正だったか」ということについても、とりあえず横に置かせていただいてます。
捜査や裁判が適切だったかどうかはともかく、少なくとも「上場維持かどうか」の判断は、「チェック機能」が適正に機能しているかどうかの判断が重要になると思います。
「チェック機能」以前に、ライブドアの場合は問答無用で強制捜査され、日興のように調査報告書を出してお上に土下座するチャンスすらなかったのですが。。。
ライブドアの粉飾の動機は「個人投資家を欺く」ことにあったようで、悪質であることは明白です。判決で比較するなら、むしろカネボウと比較したほうが良いように思います。あちらは社長の関与が明白で、800億円という巨額粉飾であったにもかかわらず、「ごめんなさい」したので執行猶予がつきました。日興のケースは、「うっかりミス」と言い切ってしまうには、「バックデートをしていた」という事実の前には「犯意」があったと考えることが自然に思います。ただし、日興が粉飾をする「動機」がサッパリ分かりません。週刊新潮が色々と推測していましたが、完全には証明されていません。
ライブドア、カネボウ、日興の結果には、いまだに釈然としない違和感が残ります。
堀江貴文さんへの判決について思うこと。
私の感情が大半になってはいけないと思うので、一晩たった後に書いてみる。
….人間だから仕方ないといたらそれまでだけど、「堀江貴文」という人物にもって…
堀江氏の判決
3/16(金) 16,744.15 -116.24 懲役2年6月の判決が出たようですね。 あまり、詳しいことはわからないのですが・・ 思ったことを、以下、…
堀江氏判決について考える(「結果」と「プロセス」)
磯崎哲也事務所さんのブログで、日興コーディアルとライブドア事件の違いについて語っています。
上場企業として内部統制にコストをかける必要があるというのは、仰るとおりだとは思うのですが、会社の規模(売上高や利益)も踏まえて考える必要があると思います。
ライブドア規模に企業に日興と同様のレベルを求めるのは少し厳しすぎるのではないでしょうか。
金融まで含めて実務が分かっている会計士の方は多くありませんし、いても高いです。また、監査をやりたいという良い人材も少ないです。
先生のようなレベルの方に監査役をして頂けるベンチャーは非常に限定的なわけで、ベンチャーはかなり厳しくなります。
堀江被告に実刑判決
証券取引法違反の罪に問われたライブドア前社長、堀江貴文被告の判決公判が16日、東京地裁であり、懲役2年6月の実刑が言い渡されましたが、堀江被告は即日控訴、…
ホリエモン判決
ライブドア元社長堀江貴文氏の証券取引法違反事件判決が出た。 茫猿はこの判決につ…
トピック”Yahoo!ニュース – 毎日新聞 – <ライブドア判決>堀江被告に実刑 懲役2年6月 東京地裁”に推薦しました
牛タンさんが、この記事をTopima!の【Yahoo!ニュース – 毎日新聞 – <ライブドア判決>堀江被告に実刑 懲役2年6月 東京地裁】に推薦しました…
証券会社が、100億円以上の粉飾決算に基づいて、市場から500億円を社債で調達した、という事への評価にはあえて目をつぶっておられるのでしょうか?
>ライブドア規模に企業に日興と同様のレベルを求めるのは少し厳しすぎるのではないでしょうか。
ライブドアは一時期は(確か)1兆円を越す企業価値があったわけで、その観点からは、日興と何倍もの規模の差がある会社ではなかったですよ。
投資家の観点から見たら、ライブドア株の時価が資産価値なわけで、(時価総額が50億円の企業なら「そんなに内部統制にコストはかけられません」というのもいたしかたない面もあるかも知れませんが)、1兆円弱の「資産」を守るためのコストを、「ベンチャーだからかけられません」、と言われても、投資家は困るわけでして。
また、「高度な内部統制やコーポレートガバナンスは、その分コストがかかる」というわけでもないとと思うんですよ。
ライブドアのケースでは、「本業でもない投資組合への投資が、なんでこんなに何十億円も儲かるの?」という疑問について、
「なんで?」
と聞けばいいだけのことだったと思います。
(常識的に考えて、出資の何十倍も儲かるといったおいしい話があるわけないわけで。これは、開示された連結財務諸表からはわかりにくいかも知れませんが、取締役や監査役なら、宮内氏に質問すればいいだけの話です。)
「なんで?」って聞いたり、その検討結果を議事録に残したりするのは、基本的に「タダでできる」ことではないかかと思います。
>証券会社が、100億円以上の粉飾決算に基づいて、市場から500億円を社債で調達した、という事への評価にはあえて目をつぶっておられるのでしょうか?
過去のエントリで何度も書いてきましたが、この日興のケースは、8月中にドキュメンテーションが完了していたか9月にずれこんでしまったか、の差であって、しかもその部分については監査委員の指摘で(一応)「評価益です」という注記までされているわけです。
もともとEB債を使って含み益を実現させるという手法は違法とは言い切れないにしても個人的には不誠実な方法だと思いますし、結果として議事録等を作ったのが9月になってしまったからには不適切としか言いようがないですが、一方で、7000億円も自己資本のある会社が100億円の含み益を計上するかしないかで、社債の償還可能性が大きく変わるというもんでもないということも勘案すると、上場継続と言う判断は、著しく妥当性を欠くとは言いがたいかと思います。
もちろん、東証も「目をつぶって」いたわけじゃなくて、慎重に検討するために監理ポストにまで入れたわけですし、(以前のエントリでも書かせていただいたとおり)、上場廃止したら罪の無い投資家まで割を食うわけですから、今後、不適切な開示が行われないだろうという合理的確信が持てるのであれば、あえて上場廃止にしなくてもいいんじゃないか、ということです。
日興の場合バックデートした時点で「やるだけのことをやった」という部分の「やった内容」が悪意あることと取れるのですが、それは私がバカだからでしょうか?(故意なので黒)
こちらの本文を読んで感じたのですが、ライブドアの宮内氏の他のメンバーは事の重大さを認識していなかったのであれば、引き起こした結果の大きさに関わらず「過失認定」されるべきではないですか?(過失ではあるが、曖昧な基準の境目で行われた行為はグレー)
世の中がグレーの部分に「ズルさ」という要素を過大に加味し、いつの間にか「グレーのほうが黒よりも汚い」というイメージになっている気がします。(堂々と書き直した部分に清々しい雰囲気でもあるのでしょうか)
他の方のコメントを読む前にこれを書いてますので、重複してたらごめんなさい。
今回の事件に関して堀江氏が否認しているからといって、そのことから本当に知らなかったのか、知っていたのかなどの議論をする、ほんとに社会人なのかなと思いますね… 十中八九彼は知っていましたよ、もちろん。わたしが察するに彼は知ってはいたでもさして重要なこととも思っていなかった、し気にもしていなかった、これが正解でしょう。法廷というのは戦うところであって、事実どうであったかをいうところではないんですよ。もちろん彼はそのように、弁護士の指導を受けているでしょうしね…
裁判官というのは、双方がどう思っているのか、どういう判決を出せば双方腹の虫が収まるのかを気にしていると思います。拠り所はそこしかないんですよ。ということは、知っていましたといったらはい終わりとなるわけです。刑務所に入れられるかもしれないのに。ハイやりましたとは言わないし言わせる弁護士もいません。そういうことです。
>磯崎さん
その理屈だと大企業になればなるほど、犯罪し放題になりますね。
年1万食の売り上げのある町の弁当屋が去年1件の食中毒を出したのではないかという嫌疑をかけられて営業停止、社長は逮捕、起訴、有罪。
一方、年100万食の売り上げがある大きな弁当屋は、2年間にわたり10件の食中毒を出したうえに組織的に隠蔽工作をした証拠があり社長も認めたのだが、営業停止どころか弁当1食分の罰金、会社の人間は有罪どころか起訴も、それはおろか逮捕もされない。
弁当の専門家は、前者は1万分の1件、後者は10万分の1件なので前者の方が罪が重いと強弁。
こんなのが通用するのはさすがに金融業界だけじゃないですか?
「あ」さん、コメントありがとうございます。
>こんなのが通用するのはさすがに金融業界だけじゃないですか?
そんなことはないと思いますよ。
一日30個程度の弁当を作る会社を夫婦でやっていて、食品衛生責任者は社長の奥さん、そのほかはパートさんの会社で、衛生管理らしい衛生管理もしていなかったところ、食中毒が1件起こっちゃいました。・・・という状況であれば社長が責任に問われても全く不思議ではないと思います。
一方、年100万食を生産している弁当屋というのが、近代的な工場で1日2000個作る本家と1000個作るのれん分けした会社から成り立っていて、すべてを本家経由で販売していたところ、ある日、子会社の社長がコストダウンの方法を提案してきた。本家としては、それは、利益は増えるかも知れないが衛生上望ましくない方法じゃないの?と他の役員も含めてかなり慎重に検討したけど、子会社社長が提示してきたデータを見てみると、確かに細菌量などは規定上問題ない範囲に収まっている。じゃあ、必ずしも賛成しないけどその方法でやってみたら?、ということになったが、結果として食中毒が10件発生して、子会社社長のデータの取り方も正しいやり方からは逸脱していたことが後から発覚しました。・・・という場合ですが、
もちろん、この大手の弁当屋も納品しているコンビニ全てからとりあえず取引停止になるのは当然。この間に、本家は第三者による調査を徹底的に行って報告書を提出。子会社の社長が食中毒の危険性がもしかしたらあるかも知れないことを認識していながら生産していたが、本家は一般的に十分と考えられる衛生管理指導を行っていたことが報告書で報告された。
・・・という場合に、コンビニ各社が「子会社社長もクビにするなど適切な方法をとって、今後の改善の意向もあるので、これなら再発の可能性は低いんじゃないか」と判断して、この大手弁当屋との取引を再開し、本家社長も逮捕されなかった、としても、「差別だ!」ということには必ずしもならないと思います。
もちろん、大手弁当屋も何のペナルティもくらってないわけではなくて、社会的な信用を大きく損ない、多額の課徴金も払っており、子会社社長を含めてすべて役員の私財でまかなっている。
「犯罪やり放題」のわけもないです。
この例の場合、「衛生管理皆無」の状態と判断されるんだったら、コンビニも怖くて取引再開にできない。
もちろん、その子会社社長が絶対罪に問われない、と言ってるわけじゃないですし、本家の社長も実態を知っていたのに手を打たなかったとしたら、罪に問われてもおかしくありません。
その零細企業の社長が逮捕されるのは当然で、捜査も適切だった、と申し上げているわけでもありません。
1個か10個かというような数だけで判断される話ではなく、衛生管理にどの程度注意を払っていた等の事情も考慮されるべきではないか、というお話でした。
(ではまた。)
日興が大手弁当屋ですか?日興の販売する弁当は株式等の金融商品ですが、顧客離れはなしと新聞社の調査結果が出ています。M&Aで社会的な信用力は増し、上場廃止なしのどんでん返しで株式はストップ高。あなたが想定する大手弁当屋とはぜんぜんちがうと思いますが。比べるなら弁当屋ではなく、牛乳屋かケーキ屋はどうですか。雪印や不二家の例もあります。
検察の捜査の是非は別にしてといいながら、ライブドアの上場廃止は経営人が全員逮捕されたので、東証担当者にしたら上場維持に不安を感じるだろうでは、是として論をすすめている。否ならそれを救済する方法を考えることになります。
日経をはじめ大新聞がすべて「上場廃止へ」と誤報をやらかしたのは、直前になってどんでん返しがあったからで、日興の政治力が働いた政治介入があったとみんな見ています。政治力の違いが逮捕や上場廃止の有無に影響したのであって粉飾や経営者の姿勢の違いの影響はほんの少しでしょう。1部市場に投資家の資金が逃避するのは、検察が無茶やらないし東証も守るからで、新しいチャレンジに経済的なリスクを取る以前に検察リスクから逃避するようでは日本の経済社会の未来は暗い。
企業統治が進展するような力が働く事例とは思えません。
ライブドアの上場廃止の本当の理由は、システムが負荷に耐え切れなかったから、ですよね。株式分割で増えて、1株単位で売買されて、取引時間も制限したけど駄目だった。はっきり言うと、証券取引所としての怠慢です。
日興とライブドアの上場維持と廃止の違いは、この点も考慮されるべきだと思います。
>ライブドアの上場廃止の本当の理由は、システムが負荷に耐え切
>れなかったから、ですよね
時間の前後が逆です。相場の大天井で強制捜査をし担保ゼロにし上場廃止必死となったので、20万人株主のライブドア株に売りが殺到。売買単位が一株だったために東証の処理能力を超えたのです。あの時点で強制捜査を行なえばシステムダウンは予想できたのに、東京地検が市場を無視して突っ込んだために起きるべきしておきたのです。あとでそんなことはなかったとつじつまを合わせていますが、当時の日経に「強制捜査にいちばんびっくりしたのは金融庁、証券取引監視委員会だった」と内幕が暴露されています。東京地検が狙ったのは「額に汗して働くものが損をせず報われる社会。違法ではない方法で濡れ手に泡で利益を手に入れる者たちを摘発する」ことです。分割による株価上昇は新株の流通が遅れるからで分割を奨励したのもその制度欠陥を放置したのも東証ですから、検察の狙いはライブドアだけではなく東証に対して徹底的な打撃を与えることが目的だったと理解するのが論理的な推論の帰結になります。
となると、証券取引法は経済法でその法の目的は「市場の円滑な運営と投資者の保護」ですから、東証のシステムダウンを起こさせることを狙った強制捜査を証券取引法違反で行なったことは、まさに法を悪用して証券取引法そのものをも破壊することだった。なぜ法学者はこういう法の目的に挑戦する異常な法解釈と法の執行になにも語らないのか。この国は法治国家なのかどうか。日本の法律家はみんなダメじゃないかと思います。
livedoorと共に日本経済が葬ったもの
今更ながらホリエモンの判決が出ましたね。まぁ刑が重い軽いなんて話や国策捜査だったのかなんて話を俺がしても不毛なんで、いちwebジャンキーという視点からこの…