日経・朝日・読売が業務提携(新聞社の事業構造改革(5))

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本日の日経新聞朝刊より。
すでに週刊ダイヤモンド誌などでも取り上げられていた構想ですが、

 二〇〇八年初めのサービス開始を目指し、三社共同出資で事業主体となる民法上の任意組合を設立する。
初期投資額は合計数億円規模となる見込みで、出資比率は三社均等にする。

「有限責任事業組合(LLP)で」なんて言わずに、民法上の任意組合で「無限責任、どーんと来い」というところが実に男らしい。


 
というか、メディア系企業だと、映画の製作委員会方式など「ただの組合」のほうがなじみがあるのかも知れません。
また、三社の財政状態からすると、合計で数億円規模の投資なんてタバコを買うようなもんで、そのvehicle自体がdebtで資金調達する必要もないかと思いますし、事業の性質上、あまり予想外に大量の債務が発生してしまうといった性質のものでもないのかも知れません。
肝心の事業内容ですが、

 ネット上の共同サービスの閲覧は無料とし、広告を収入源にしていく案を軸に検討中だ。各社が現在運営しているニュースサイトはそのまま独立して存続させ、新サービスとはリンクなどを通じてそれぞれが連携する。

 そうした状況をにらんで共同サービスはネット空間での新聞情報全体の存在感を高めることに主眼を置く。三紙の論調の違いを読み比べできるサービスは新聞各社サイトの集客力を上げる一つの試みとなる。

というところまではまだmake senseですが、

 三社は新サービスを「ポータル(玄関)サイトではなく、むしろ各社のニュースサイトを入り口にして利用してもらうもの」と説明する。

というあたりになると、「??」ですね。
(事業センス的にイケてるかどうかはともかく)「ポータルです」と言い切っていただいたほうがまだわかりやすいんですが、どういうビジネスモデルを意図されているのか、この記事だけからでは不明であります。
−−−
始まるまえからケチを付けるつもりは毛頭ございませんが、成功した世のイケてるネットのサービスというのは、非常にトガったセンスの持ち主(実質的に個人または数人)が中心になって一気に作り上げたものがほとんどで、意思決定が遅くなりがちな大企業がしかも「共同で」作り上げて成功したものというのは、ちょっと例が思い浮かびません。
もしかすると、実際には各社ともネットなんてどうでもよくて「販売・配達面での提携」にしか興味がないんだけど、それではあまりにドロドロしたオジサン的世界の話にしか見えないので、「ネット」を前面に押し出してサワヤカさを演出しようとした、ということなのかも知れません。
実際、金額的なインパクトから言ったら、販売店問題のほうがはるかに重要かと思いますし、ネットの広告収入で新聞社の収益に影響を与えるほど(少なくとも十億円単位)の収入を稼ごうというのも、当面かなり難しい話かと思います。
−−−
独禁法的観点からはどう解釈できるか(もちろん、主として販売面の話)にも非常に興味がありますが、ちょっと知識不足につき、また機会があったら考察してみたいと思います。
(ではまた。)

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5 thoughts on “日経・朝日・読売が業務提携(新聞社の事業構造改革(5))

  1. 犬猿の仲だって合併するわけですから、論調が違ったって将来、食い詰めれば合併ってことだってありうるんですかね。「得意分野が違うからうまく住み分けられる」というフレーズは何度も聞きましたし。
    都銀対地銀と同じ構図。
    いつの日か新聞業界も、4大メガバンクができたみたいになるんですかね…。
    消費者的には選択肢が減るわけで悲しがる人、新聞なんてどれも同じ、という人、反応はそれぞれでしょうが…

  2. 2007年10月10日付、地方紙 中国新聞 朝刊【内政・総合】面に
    「メディア2007 サイト拡充 新聞の反撃」という署名がないことから共同通信の配信と思われる記事が掲載されていました。
    内容は『日経・朝日・読売の業務提携に対して、共同通信を筆頭とする53社連合は“47NEWS(ヨンナナニュース)”で対抗する』という内容でした。
    本来なら、この記事の出典URLを掲載するところですが、“47NEWS(ヨンナナニュース)”上には公開されていないという不可解な現状です。
    疑問に思ったので地方紙のブログ中国新聞「朝刊探索」2007-10-10にコメントで問いかけてみました。
    ネタにさせていただきましたので、報告させていただきます。

  3. 先日の私の書き込みに対し日本の地方紙のブログ中国新聞「朝刊探索」にて、中国新聞ブログ担当者さ
    んからリアクションがありました。
    けれど中国新聞のWebには“リンクポリシー”を掲載していないにもかかわらず、中国新聞ブログ担当者
    の常識は�中国新聞へのリンクはトップページに限定�だそうです。
    私は寝耳に水でビックリしてしまいました。
    だって、『世のイケてるネットのサービス』は
    ここ[isologue(イソログ)- by 磯崎哲也事務所」>本サイトご利用上のご注意
    で書かれているのような“リンクポリシー”でしょ?
    地方紙「中国新聞」
    http://www.chugoku-np.co.jp/

    メニューバーの中の[ブログ]

    [コラム「朝刊探索」]

    [2007-10-13]
    で、
    中国新聞ブログ担当者さんの新聞業界についての“私見”
    が書かれています。
    私が書いたコメントもまだ消されていないようなのでたどれます。
    私がこのブログを持ち出して記入したコメントについては [2007-10-10] のコメントに記入されていま
    す。
    と、先日こちらコメント欄に記入したその後の報告でした。

  4. [ニュース][日記・コラム・つぶやき]「サイト拡充 新聞の反撃」とは名ばかりの現状『新聞没落』その後

    承前:“週刊ダイヤモンド”「新聞没落」を読む ブログ担当者さん、大事なかったようで良かったですね。 過酷な新聞記者生活では節制す…

  5. [日記・コラム・つぶやき]“中国新聞へのリンクはトップページに限定”って寝耳に水、今どき『直接リンク禁止』を書くなんて“時代遅れ”でしょ?

    承前: “週刊ダイヤモンド”「新聞没落」を読む 「サイト拡充 新聞の反撃」とは名ばかりの現状『新聞没落』その後 ブログ担当者さん…