「濃ゆい」社外取締役と委員会等設置会社

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Law Maniacのminori_takahashiさんからトラックバックいただきました。
「急がば回れ − 監査役制度はまだまだ続く」
http://lawmaniac.exblog.jp/447055

こちらもいつも勉強させていただいております。<(_ _)>
minori_takahashiさんのおっしゃるご趣旨を勝手に要約させていただきますと、「株主の権利一票一票を使うことが大切。だけど、監査役制度中心なのはそんなにすぐには変わっていかないよ。」ということかと思います。
私は「どうせ株主の権利を使ってどんどん提案していくのであれば、ベストなガバナンスの方向を提案していったほうがいい」し「やるなら変わりそうな企業、変わらなきゃいけない企業から重点的にアタックしたほうがいい」と思います。
日本監査役協会が、会員企業を対象に実施した「委員会等設置会社への移行動向等 コーポレートガバナンスに関するアンケートの集計結果」も掲げてらっしゃいますが、この結果は、アンケート用紙を配布した先が「監査役」だ、ということも考える必要があると思いますよ。(実は、私も一票回答しているんですが。)
日本監査役協会は、全社が委員会等設置会社になったら、「監査役協会」じゃなくなっちゃうということも要考慮、かと。
会社(とりわけ監査役)は自らを変える気はあまりないのが通例だと思います。会社が自ら変わる気が無いからこそ株主のパワーが必要だ、というロジックなわけですよね?
株主がパワーを出すのに「監査役をもうちょっといい人に変えろ」というのは、なんか本筋ではない気がして、パワーを出そうにも気合が入らない気がします。
今週号の週刊ダイヤモンドに、「社外取締役は機能したか−ガバナンス改革一年の決算」という特集があります。ガバナンスの鍵を握るのは社外取締役だが、その人がこの1年どんなことをやってきたのか?という内容ですが、IBMの椎名氏とか、オリックスの宮内氏、野村ホールディングスの社外監査役の久保利弁護士などの「大物社外取締役」がインタビューに答えていて、どこの会社でどういうガバナンスが模索されているのかのイメージが垣間見えて非常に参考になりました。(うーん「濃ゆい」方ばっかり。)
この記事に載っている大物ほどではないにしても、やはり、「顔の濃い」社外の人が、あるべきガバナンスの鍵なんではないかと思います。社長が「濃い」んだったら、「薄い顔」の人では対抗できない。脂系には脂系をぶつけないと。w
Googleの社外取締役も「濃」かったですよね。(以下、再掲

L. John Doerr: ベンチャーキャピタルKleiner Perkins Caufield & ByersのGeneral Partnerで、Amazon.com、 drugstore.com、 Homestore.com、Intuit、palmOne、 Sun Microsystemsなどのdirectorを兼任。
John L. Hennessy:Stanford大学President、Cisco Systemsの取締役経験者。
Arthur D. Levinson:Genentechの会長兼CEO、Apple Computerのdirector等経験者。
Michael Moritz:これも言わずと知れたSequoia CapitalのGeneral Partner。
Paul S. Otellini:IntelのPresident and COO経験者
K. Ram Shriram:Netscapeの初期経営メンバー、(Amazon.comに買収された)Junglee のCEO、Amazon.comのVice President of Business Developmentなどを歴任。

このメンバーですら、「腰抜け」と呼ばれたりするわけですから、日本の監査役制度を変えたくないなんて言ってる会社になんて、遠慮せずに「『濃い』社外の人間をガバナンスに入れろ!」と、ガンガン言ってやればよろしいんじゃないでしょうか。
となると、そういう「濃い」方を呼んでくるのに、「監査役やってください(でも、取締役会の議決権はないですけどね)」というのもちょっと座りが悪い。
繰り返しになりますが、監査役は、取締役の違法行為差止請求権とか訴訟とか、いろいろすごい権力は持っていますが、スゴすぎて「抜いてはならない伝家の宝刀」になってしまっているところが問題かと。権利を行使するときは「自分も切腹覚悟」ってな悲壮感がにじんでいる感じ。
当然、取締役会への出席権もあるわけですが、「必要アリト認ムルトキハ意見ヲ述ブルコトヲ要ス」(商法260条ノ3)てな権限を使って発言するというのもちょっとモノモノしい。
取締役メンバー以外に黙って座っている方が3人も4人もいるというのも、会議の雰囲気としてはマイナスじゃないでしょうか。
やはり、「濃い」社外の方に来ていただくとすれば、「対等な」関係でケンケンガクガク議論して、取締役としての議決権行使という「抜きやすい刀」を持って話し合いをする方が、「どーせ抜かないだろう」という宝刀を持っている人と対峙するよりは、緊迫感もバツグンかと。
となると、そういう「濃い人たち」を見張る「薄い顔の」監査役はあまり意味がなくなるので、自動的に委員会等設置会社の方がいいということになってくるんではないかと思います。
社長というのも、威張っているようでも実は孤独なことが多いので、そういう対等に意見を言ってくれる人とディスカッションしながら意思決定できる方が、会社としても栄えると思います。
松山太河さんのメルマガ「DEN」前回号(6/13)より。

「己の周りに己より賢い人物を集めた男 ここに眠る」

                  アンドリュー・カーネギー(米鉄鋼王)

(ではまた。)

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