6月7日のエントリー「外資による買収、租税条約」で、合併の対価として外国企業の株式も使えるようになる方向だ、ということをご紹介しました。
その際、外資(外→内)の買収の可能性が高まる点について書きましたが、よく考えると、国際間の企業再編が容易になる影響は他にもいろいろ考えられます。
2007年というかなり未来の話ですし、税制がそれに伴ってどう変わるのかなどの内容もまだ具体的にはわからないので、以下「SF小説」ということでお読みいただければ幸いですが。
例えば。
「ソニー、米国法人化へ」
2008年3月15日 日本経済新聞 朝刊1面
ソニーは今年六月の株主総会において、デラウエア州に設立された持株会社「ソニーコーポレーション インク(SCI)」との合併承認を求める方針を固めた。存続会社はSCI。現在のソニー株主には米国法人であるSCIの株式が交付されることになる。昨年施行された「会社法」と税制の改正により、合併の対価として外国株式等を交付しやすくなったことを利用する。
ソニーがSCIと合併した場合、東京証券取引所はSCI株式の東証一部上場を承認する方針だ。実現すれば、東証一部に上場する初の外国株式となる。また、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場されているソニーのADR(米預託証券)は上場廃止され、預託証券では無いSCIの株式そのものが新たにニューヨーク市場に上場することになる。
従来のソニー株式会社の営業は、SCIの100%日本子会社である「ソニージャパン株式会社」が引き継ぐ。また、ゲーム、音楽、映画など、従来、ソニーの傘下にあった事業部門や子会社も、逐次、SCIの直接の子会社に再編されていくことになる。
ソニーが米国法人化を行うのは、「ソニーのグローバル化を完成させるため」(同社経営陣)。ソニーは従来からグローバル化を進めてきたが、米国会社化を期に役員や従業員などの意識を完全にグローバルなものに改める。また、日本の会社法より柔軟性の高いデラウエア州の会社法を活用することにより、買収や合併などの企業再編をよりスムーズに行えるようにする。デラウエア州会社法は会社法の事実上の世界標準となっており、それを理解できる弁護士等の専門家の層も厚いため、ソニーが海外企業と買収の交渉をする場合にも、米国株式を対価として交付するほうが交渉が行いやすい可能性も重視されたようだ。
国際間取引の多い大手の商社、海運会社の中にも、グローバルな課税の最適化を図るために海外に本社を移すことを真剣に検討する企業があらわれ始めている。「ソニーの米国会社化ショック」は、今後、日本の産業界に大きな衝撃を巻き起こすことになりそうだ。
・・・と、まあ、ホントにそうなるかどうかはともかく、会社法や法人税法等も産業のための重要な「インフラ」であり、そうしたインフラ自体が、今後ますます国際間の「競争」にさらされ、「インフラ」の悪い国からはどんどん企業が出て行っちゃうということになりかねないのは確かではないかと思います。
(ではまた。)
追記:2004/09/10
本日の朝日新聞朝刊によると、外国法人の日本子会社との合併をする際に、親である外国法人の株式を対価として被合併会社の株主に渡す「三角合併」を認める、ということのようです。
上記の「SF」では、直接、ソニーとデラウエア法人が合併するという想定になってますが、SCIの日本子会社(ソニージャパン)とソニーが合併する、という絵になるということのようです。
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インフラ整備
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