前のエントリからちょっと間があいちゃいましたが、映画制作等で比較的少額の資金を調達する時に、現状の法令がどういった影響を与えているか、ということの続きと、こうすれば比較的うまくいくんじゃないか?という話です。
前のエントリには、いろんな方からコメントいただきました。どうもありがとうございます。
(以下、長文。)
私は、基本的に、金商法の幅広い有価証券概念の考え方を支持する者ですが、実際にそれほど大勢ではない人から資金を集めてインディーズ映画を真面目に作る人全てに金融商品取引業者としての登録を求めるというようなエンフォースメント活動は、金融庁や監視委員会としてやらないだろうし、やる必要もないだろうと思います。そういう人たちは、自分たちの行為が形式上金商法の規定に抵触している可能性を意識することもなく、別に問題なく暮らして行かれれば良いのではないでしょうか。
現在のような法規制の意義は、そういう善意(?)の人たちに余計なコストを負担させることではなく、映画を作ると称して妙な金集めをし、結局最後は破綻して出資者に迷惑をかけるようなやからを「金融商品取引業を無登録で営んだ」というような形式犯として摘発できるようにすることにあるのだと思います。出資者ともめて問題を起こすような恐れはないと確信する映画製作者は、堂々と(?)金商法の規定を無視してお金を集めていれば良いのだと、私は思います。そのような社会的に何の問題もない行為まで、画一的に取り締まるような無駄なエンフォースメントをするほど、金融庁や監視委員会も暇ではないでしょう。きっと。
おっしゃるとおり、金融庁や監視委員会さんが進んでそうした領域に入っていく可能性は低いと思います。
ただし、以前、「少年よ大志を抱け、で有名なクラーク博士はサギで訴えられたことがある(88へぇ)」という「トリビア」をご紹介させていただいたことがありますが、クラーク博士ですら、事業に失敗したら訴えられるわけです。「詐欺(または大ボラ)」と「大志(ambition)」というのは、外形的には区別がつかない場合が多い。
コンプラ意識のあまりない人だと「金商法的な説明義務」を満足に果たしていないことも多いでしょうから、もし仮に事業が失敗したら、出資者が「話が違う!」ということになる可能性は極めて高い。
また、成功したら成功したで、取り分に対する不満も発生するかも知れません。周囲のねたみも受けるかも。
そこで、怒った出資者などが、
「金を出した時には気づかなかったが、弁護士に聞いたら、こういう金集めをするときには、金融商品取引業者とやらにならないといけないらしいじゃないですか!」
と名乗り出たり、タレ込んだりしたとします。
このとき、金融庁/SESCさんは、それを無視したり、「500万円くらい大した金じゃないから、我慢されたらいかがですか?」ということにはできないんじゃないでしょうか。
なぜなら、そういう説明不足等でトラブルが発生しないように業者に義務を課すというのが、そもそもの金商法の趣旨でしょうし、条文上は、どう読んでもど真ん中のストライクでアウト。
そう考えると、「映画を作っただけで犯罪者」ということになる可能性は、やはり、それなりに高いんじゃないでしょうか。
もう一つ別な話ですが。たかだか数百万円程度とはいえ、今時は、契約書も無しで金を出してくれる太っ腹な人ばかりではないはず。そうすると、資金を集める側が契約書案を準備することになるわけですが、では、「この契約書を作るのは誰か?」ということです。
そうしたアートな世界の方々が契約書を自分で作成できる可能性は比較的低いと思いますので、税理士なり行政書士なり弁護士なりのところへ行って相談をすることも多いはずです。
その契約書には、それが民法上の組合契約だとか、商法上の匿名組合契約だとか、少なくとも「儲かったら、その分分配します」的なことが書かれるはずですが、そういう専門家の方々は、さすがに金商法の規定は聞いたことくらいはあるはず。まともな方ほど、そうした「みなし有価証券」に該当する場合で「金融商品取引業者」になる気がない人のために、そういったど真ん中ストライクでアウトのスキームを作る手助けをするということは、はばかられるんじゃないでしょうか。
ということで、当局が積極的にニラむような内容の事業でなくても、そもそも、今や、そうした適用除外要件に該当しない少額の資金を集めるのは、(金融商品取引業者にならない限り)専門家からも手伝ってもらえる可能性は低い。
以上から、「金商法の規定を無視してテキトーにお金を集める」、というのは、実は簡単そうで簡単ではなく、潜在的に犯罪者になるリスクがかなりあるし、そもそもその方法では調達が難しいことになっているんじゃないかと思います。
(ちなみに、「はてブ」で、「一回なら”業”ではないんじゃないか?」というコメントもいただいてましたが、以前、財務局さんに聞いてみたところ、「1回だけ資金調達するから業ではない、とも必ずしも言えない」という、(ある意味予想された通りの)お答えをいただきました。
「1回なら業でない」で済むなら、資金調達の度にvehicleを変えればいいだけですからね。)
EXCAPさん曰く;
やっぱりある程度の規制は必要だと思います。この仮定であるインディーズ映画でも、俺今度映画作るからみんなもちょっとずつでいいから、お金だしてよっ!と言いながらお金が集まった時点でバックレてしまうということだってあるだろうし…
私も「ある程度」の規制は必要だと思いますが、「ある程度」というのが、株式会社が資金調達するのと同程度ではなぜいけないの?ということです。
株式会社でも、同様のことはできてしまうわけですし、投資家が損することも当然あるわけで。
とはいえ、おっしゃるように2種を取るのも意味がないとなると、2種業者さんにお願いするということで、新たなビジネスチャンスができるのではないでしょうか?
例えば、適格機関投資家のハードルが下がりましたので、彼らが一口10万円で参加してあげる、けど全体のコンサルもしてあげるので、50万円払ってねとか…新興のベンチャーさんとかで有価証券を10億円以上お持ちであれば簡単にできちゃいますしね。
まさにそういうことをする人が現れるかなとも考えたのですが、それもちょっとナニな感じがします。禁止されている「名義貸し」等、なんらかの名目でそっちの業者自体が処分されるような気もします。
適格機関投資家が入った場合にはソフトな規制にとどめるというのは、そうした適格機関投資家の「審査能力」に期待している、ということだと思いますので、形式要件だけ満たして実態がともなっておらず、投資家に実害が発生していれば、「厳しい見方」をされる可能性は高いでしょう。メガバンクや大手証券等ですら処分されるくらいなので、そうした潜脱の補助と取られかねないことをする「適格機関投資家」であれば、叩く気で叩けば、いくらでもホコリは出るはず。
また、例えば十億円単位の資金量のファンドが金融商品取引業にならないで済むために、「適格機関投資家」が名目的に出資する代わりに見返りをもらう、ということをやっているケースは、すでに存在するような気もします。もしかしたら、そうした名目的な出資をしてくれる「適格機関投資家」を紹介してくれたりするコンサルタントもいたりするんじゃないでしょうか?
ただし、前のエントリと逆のことを言うようですが、前に引用させていただいた神田先生のお話のとおりで、そういう「法の趣旨に反した(潜脱)行為」を業とする人とかかわり合いになるのはやめておくのがオススメです。(特にライブドア事件以降。)
このため、(上記とまたまた違うことを言うようですが)、神田先生のお話と異なり、「金商法の適用を受けないようにする」ことは極めて重要なんじゃないかと思います。
「潜脱する」のと「適用を受けない」のと、どう違うんじゃい!、というツッコミがあるかと思いますので、以下、たとえ話でイメージを共有させていただければと思います。
「節税」「租税回避」との対比で考えてみる
税金の世界では、
「脱税」は、法に違反して税金を減少させること、
「節税」は、法が予定する方法によって税金を減少させること、で
「租税回避」というのは、法が予定していない方法によって税金を減少させること、
です。
税金の場合、憲法上「租税法律主義」が存在します。(税務調査で必ずそういうキレイごとですむかどうかはさておき)、法が予定していなかった方法とはいえ、税金をかける場合については、法律は厳密に解釈しないといけないという理念は存在するわけです。
しかし、金商法のフィールドでは、(もちろん「罪刑法定主義」はあるわけですが)、「法が予定しない方法によって」金商法を潜脱するのはまずい。なぜなら、意図してる部分についてはうまく潜脱できたつもりでいても、規定がめちゃくちゃ多岐にわたっているため他の部分どこかでかなりの確率でミスしてるはずですから(笑)、お上の神経を逆撫でするようなことをすれば、まさに「法定」された「罪刑」にストライクで罰せられる可能性が極めて高いからです。「金商法違反」ということになれば、マスコミでも「悪徳業者」として吊し上げられる可能性は極めて高いと言わざるを得ません。
「陸」と「海」のたとえで考えてみる
税法というのは、大企業だけでなく街のパン屋さんも八百屋さんも適用される法律なので、(いろいろ異論がおありの方もいらっしゃるかとは思いますが)比較的「常識」が通用する度合いが高い領域だと思います。
これは「陸」を走る車を規制する「道交法」もそうかも知れません。
みんなが100%厳密にルールを守ってるわけではないし、(違反によって死者が出たりしたら厳しく罰せられるのは当然として)、うっかり的な違反の範囲であれば、普通は当局やマスコミからも「犯罪者」呼ばわりまでされることは少ない。
これに対して金商法では、もともと外洋を公開する客船やタンカーを規制していたルールが、同じ海だからということで水上バイクやサーフィンにまで適用されることになっちゃったみたいなもんなわけです。
確かに海は怖い。だけど、もともとタンカーを規制していたルールで、波打ち際でサーフィンしてる人まで規制するのはどうなんでしょうか?
船なら、20トン以上なら海技免許、その下も、段階に応じて小型船舶一級、二級、特殊、とわかれ、エンジンがついてないボートは免許もいらないわけですが、そういった規制が常識的ではないでしょうか?
「陸」で商売する
以上のようなことをいろいろ考えて来ると、(「マリンレジャー」が発展するかどうかはさておき)善かれ悪しかれ、現行の法律下では「海(金商法下、金融庁監督下の領域)」に入るのはあまりお勧めできないことになります。
反対に、「陸(一般の事業)」として、(SPC的な)株式会社を作って、株式で資金調達するなら誰も文句いわんのではないでしょうか。(もちろん、実態として真面目な事業をやっている場合、です。)
この方法のメリットは、「誰にでもできる」こと。
任意組合や匿名組合といったファンドのスキーム作りというのは、対応できる(対応する気のある)税理士、弁護士などの専門家は、10人に1人もいないんじゃないかと思います。(もちろん、よく調べれば対応できないことはないが、金商法をはじめとする非常に細かい規制や、業界の慣行などを調査して、契約書に落とし込むのは、かなりの時間=フィーがかかるし、少額の資金調達では、そうした手間に見合ったチャージも取れないはずなので。)
そうすると、そうした対応してくれる専門家に出会える可能性はかなり低い上に、前述の通り、ましてや金商法違反ということであれば、尻込みする人がほとんどではないかと思います。
一方、単に株式会社を設立するのであれば、全国の司法書士さん、弁護士さん、行政書士さん、税理士さんなど、誰に聞いても、「できない」とはいわないはず。
任意組合や匿名組合の契約書だけを作成する場合に比べて、定款認証や登記等のコストがよけいにかかりますが、その差は30万円程度だと思います。
理論上は「合同会社(LLC)」の方が定款認証等のコストが不要など、設立コストが安くなりますが(合計10万円以内で収まりそう)、「何それ?」と言われて説明するコストもバカにならないはず。(プロデューサーや監督自身が、自分の言葉で出資者に説明できなさそうです。)専門家でも、やったことない人は尻込みするかも。
有限責任事業組合(LLP)も理論上はすぐれていますが、そもそもLLPに必要とされる共同事業要件を満たすのであれば、金商法上も「みなし有価証券」に該当しないようにできる可能性も高そうですので、除外。
「株式会社」であれば、「何それ?」という人はまずいない。
いくら「Linuxならタダですよ」といわれても、みんな金を払ってWindowsを使うのと同様、多少高くても「株式会社」のほうがいろいろ楽なわけです。
株式会社方式は「パススルー」にはならない
そもそも、なぜ映画制作の場合に任意組合や匿名組合方式がとられるかというと、税務上「パススルー」で、構成員課税で済むからです。つまり、ファンドの段階では課税されずに、投資家の所得に合算されて投資家が確定申告しますので、いろいろ節税できる余地もでてきます。
しかし、上場株式を運用するファンドなら個人の出資者への課税が10%の税率(分離課税)で済むか、実行税率40%の法人税がかかってくるか(配当で受け取ると配当控除はある)というのは大きな違いですが、
映画の場合、パススルーにしても、事業所得や雑所得で「総合課税」として他の所得と合算するということになれば、(出資者には所得の高い人が多そうだということと累進税率を勘案すれば)平均すれば、「株式等を運用するファンド」に比べれば、「会社」でやってもインパクトは小さいでしょう。
スキーム例(というか、ただ株式会社を設立するだけの)実際
1.映画の制作を思い立ったら、まずは株式会社を設立
他に制作会社などがすでにあったとしても、別に(SPC的な)株式会社を設立します。オフィスや机などを別途用意する必要もなくて、この時点では単なるペーパーカンパニーです。住所も、従来のオフィスと同じ住所で登記ということでよろしいかと思います。
イメージとしては、(仮にですが例えば)、設立時の資本金が50万円で50株(1株1万円)。
役員も、会社法では株式会社でも取締役1名から設立できるようになったので、プロデューサーまたは監督など1人が取締役(取締役会、監査役、監査役会等なし)でもいいかと思います。
(頭数がそろうのであれば、慣れ親しんだ取締役会3名+監査役の「デファクトスタンダード方式」のほうが、むしろコストは安くなるかも知れません。)
設立時の登記費用などで、自己資本はほぼゼロになるはずです。
2.映画制作の構想を練る
「この会社で」プロデューサーや監督が映画の構想を練ります。
出資してもらえるくらい概要が固まったら、プレゼンの資料を作ります。
このとき、資金を集める人は、(従来からある制作会社などではなく)、あくまで「この会社」の役職員の人でないとダメです。株式会社の「自己募集」は金融商品取引業者ではなくてもできますが、他の会社が手伝う場合には、金融商品取引業者の登録が必要ということになりますので。
また、1億円以上の資金を集める場合に50人以上を勧誘すると、(株主が50人以上でなくても)「公募」に該当して、コストのかかる「有価証券届出書」の提出が必要になるなどの規制はありますので、ご注意を。
3.増資と事業価値評価
投資家と制作者間の合意によりますが、例えば、映画がヒットしたら成功報酬的にプロデューサー等が2割取るということであれば、もとの50株が2割になるような形で増資をするというのはいかがでしょうか。
仮に、3千万円資金調達が必要であれば、1株15万円で200株増資する。
すると、もともとのメンバーが20%(50株)、外部が80%(200株)を保有することになります。
(もちろん、80%の中に、もとのメンバーが出資するということも可能です。)
このため、外部の人が結託すれば、もともとのメンバーを役員等からはずすことも可能になってしまいますので、役員の考え方や、株式の譲渡や破綻時の考え方、制作会社に支払うコスト等について定めた、簡単な株主間契約書を作っておいた方がいいかも知れません。
きっちりやるとすれば理論上は種類株式を使って議決権の比率と経済的な持分の比率をずらす方が美しいですが、あまりややこしくすると、せっかくのシンプルで低コストなスキームのメリットがなくなっていってしまいます。(中小企業の実務で種類株式の実務をきちんとこなせる人は、まだ非常に少ないので。)
「なんで設立時に1株1万円だったものが、15万円になるのか?」ということですが、理屈としては、そのプロデューサーなり監督なりが映画構想を練った結果、将来キャッシュフローの現在価値であるその会社の企業価値が、増資前(pre)で750万円と評価されたから、ということになります。
もちろん、どう考えてもそれだけの価値が無かったりしたら、投資家から制作者に対する贈与などと認定されるリスクが無いわけではないですが、一般にはどのベンチャーも、将来への期待を考えて企業価値評価をあげて行きますので、「常識」の範囲で判断されるのではないかと思います。
4.事業が成功した場合
利益に対して、株式会社が実行税率で約40%の法人税を支払うことになります。
また、映画があたって現金が入って来た分については、そのときの比率で「配当」を行います。
これは、出資者が個人の場合には「配当所得」ということになり、「配当控除」が受けられ、法人の場合には、配当の益金不算入があります。
このへんの話はややこしいことはややこしいのですが、日本全国どの税理士さんでも対応できるかと思います。
5.事業が失敗した場合や「元本」を返す場合
(例えば資本金1円まで)資本金及び資本準備金の減少(減資)を行って、自己株式の取得を行います。
事業が失敗した場合には、(これも税務上のリスクはありますが)、まずは外部の投資家分に分配できるだけ分配するんでしょうね。
映画の知的財産権などの換金性の低いものが残った場合はどうするか?といった問題もありますが、それは匿名組合契約等の場合も同様でしょう。
6.エンジェル税制適用の可能性
上述のとおり、株式会社だとパススルーにはならないわけですが、映画を作るというのは、実態がそもそも「金融」ではなく「事業」なわけですから、代わりにエンジェル税制の要件を満たす可能性はあるでしょうか?
ご参考:経済産業省:エンジェル税制(ベンチャー企業投資促進税制)のご案内
http://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/angel/index.html
このエンジェル税制、今やかなり太っ腹なことになってますので、仮に適用できればパススルーなんかよりメリットがあることも多いはずですが、基本的にはゴーイングコンサーンを前提としていて、映画制作のようなプロジェクト的な会社への投資はあまり想定してないようにも読めます。映画制作会社自体はともかく、映画制作のSPC的なものは要件にあてはまらないかも知れません。
ただし、経済産業省さんは、「コンテンツ製作」等の領域にはご理解があると思いますので、「金商法のせいでこんなに困ってるんです!」と訴えて、ダメもとで相談してみてもいいかも知れません。
どっちにしろ、数千万円規模の映画に出資する人は、そんなに税メリットを望んでいるということでないケースも多いと思いますので、必ずしも、こうしたペーパーワークが必要なことをやる必要もないかも知れません。
株式会社なら、本屋で「会社を設立する」系の本を一冊買ってくれば、専門家の助け無しで自分でもできないことない、というシンプルさがメリットかと思いますので。
まとめ
一長一短はあるものの、上記のように「株式会社」でも同様のことはできるわけですから、任意組合や匿名組合について、ことさらに規制を厳しくしている趣旨が意味不明だということはお分かりいただけるかと思います。
「パススルーは悪である」とか「登記してる方がエラい」ということは言えないと思いますので。
「みなし有価証券」の場合も、株式会社と同様の公募・私募、自己募集の規制(例えば数人から数千万円集めるだけだったら、金融商品取引業者になる必要もないし、有価証券届出書も不要)にして、株式会社とか任意組合、匿名組合等、それぞれの事業の性質に応じた最適なスキームを選択できるように、ということにしたほうが、産業発展のためになるんじゃないでしょうか?
詐欺的な行為を働くやつは、株式会社でも(場合によっては種類株式などを使って巧妙に)結局、同じようなことはできますので、任意組合や匿名組合の場合だけを規制しても意味はないはずです。
(ではまた。)
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某大学院「ベンチャービジネスと法」受講1期生です。
磯崎先生が、初回の講義で世界地図を示しながら「北極圏で活動するやつら」という言葉を使っていたのを思い出しました。
株式会社スキームの場合、ほとんどの弁護士等が当該スキームを理解でき事実上の監視機能が及ぶので脱法行為が行われにくいし、「会社」に出資しリターンを得るということを一般の人はあまり理解しないので脱法行為に使いにくい(出資を募りにくい)のではないかと思います(株の売買は転売益のためという理解が一般で、配当を得るという点を重視している人ってあまりいないのでは?)。
一方、「○○に投資しませんか?」は、なぜか、喜んで出資する一般の人が多く、さらにはこの一般の人の特性を理解してそれを利用しようとする輩が多い気がします。そして、こうして出資を募りお金儲けをしようとする人の中には、(半端なものから高度なものまで様々でしょうが)自己の知識をフル活用して北極圏に赴いていくやつらが多い、という現状があるのだと思います。
株式会社スキーム以外では、(事実上の監視機能を果たす)弁護士等の目もあまり届かず(弁護士等もよく分からず)、一般の人も乗っかってくるし、北極圏に行く人も多いので、結局、金融庁が動きやすい法制に行き着いているということでしょうか。被害が多いからこうなっちゃったってことではないかと。
お金を集めるスキームとしてはどっちでも簡単にできるとは言っても、金商法等を利用するスキームは、金融庁にお願いしておかなければならない痩せた土壌しかない、ということでしょうか。
「任意組合や匿名組合の場合だけを規制しても意味がない」としても、任意組合や匿名組合を規制しなければならない理由があるのだと思います。
金融庁が忙しいことがいいことなのか私には分かりませんが・・・。
長文失礼しました。