ブータン・・・ナメててすみませんでした・・・

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一週間前に自動録画されていた、世界ふしぎ発見!「いま世界が注目!幸せの王国ブータン」を、今ごろみたんですが、今まで見た世界ふしぎ発見の中でも、最高レベルの感激。
ブータンが「ネパールの隣にある国」くらいのことは子供の頃から知ってましたが、正直、ノーマークでした。
が、これはすごい。
「鎖国の国」という認識でしたが、第3代国王のとき1971年に国連に加盟し開国を宣言。しかし、国王が突然の心臓病で倒れ、先代の第4代が1972年16歳で王になったとのこと。
1976年には、
「ブータンは、伝統や文化を守りながら独自の近代化を図りたい。」
と宣言。
今では、アマンが経営する高級リゾートもあります。
(Amankora:http://www.amanresorts.com/amankora/home.aspx 
ダブルの部屋だと一泊1200ドルくらいするようですが、円高の今はチャンスかも。)
急峻な地形を利用して、水力発電した電力をインドに売っており、国家予算の9割を電力収入でまかなえており、医療、教育はすべてタダ。
生活レベルは、カネで見ると一人当たりGDPが2000ドル弱
おそらく「派遣村」の人の年収よりはるかに低いことはもちろん、ミャンマーより低くて、金額ベースでは世界で最も「貧しい」カテゴリに入る国。
しかし、医療もMRTとかの最新医療も導入されてるようですし、家には電気もガスも来ており、子供までが携帯電話を持っている!街中にインターネットカフェもあります。
風景としては、日本の1960年以前の農村といった感じで、日本人としては非常に親近感がわきますが、何より、国民の誰もが幸せそうにニコニコしてるのが、いい。
第4代国王は、なんと、2006年TIME誌で、「世界で最も影響力のある100人(The lives and ideas of the world’s most influential people)」に選ばれてます。
まだ21歳のときに、

Gross National Happiness is more important than Gross National Products.

と語ったそうで。
こういうことを言う口だけのヤツはたくさんいます。しかし、2005年の国勢調査によると、国民のなんと95%が「今の暮らしに満足している」とのこと!で、実際にそれを実現できているというのがすごい。
先代がまだ52歳で存命なのに王座を譲るというのも特異ですが、28歳で即位した第5代のブータン国王も、先代同様、韓流映画のようなイケメンであり、世界で最も若い国家元首だそうで。
所信表明演説も泣かせます。

世界が変わって行く中で、ブータンも変わって行くでしょう。
行く先では、困難に遭遇するかもしれません。
そのときは、「みなさん」と「私」という両方の手で、ブータンの未来を築いていきたい。
私は、自分の在位中、皆さんに対して、支配者のような振る舞いは断じてしません。
あるときは親がわりになり、また兄弟のように守り、世話をやき
そして、みなさんの息子のように、仕えたいのです。

「一生あんたに付いていきまっせ!」という気持ちにさせられます。
実際、国王は代々、街中や各戸を歩いて、国民がなにを本当に求めているのかを自らヒアリングしてまわっているようで。
日本に住んで汚れた心で見ると、「どーせパフォーマンスだろ?」てなことを考えがちですが、国民全体が仏教を信奉しているということで、心の底からそう思ってるんだろうなあと思わされます。

風の谷のナウシカ
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で、「ユパ様」が、

なのに、どこへいっても戦に飢え 不吉な影ばかりだ。
なぜ この谷のように暮らせぬのか。

というセリフがありますが、世界中がブータンのように幸せに暮らすというのは進化ゲーム理論的に考えて無理なんですかね?
スイスなどと同様、山に囲まれて国防リスクが低かったり、国家財政を支える収入があるからできる「特殊な」事例なんでしょうか?
70万人では成立するけど、60億人が暮らすためには、殺し合ったり、餓死したりというのは不可避なんでしょうか。
それとも、今の世の中というのは、最終的に世界中の人がブータンのようにニコニコして暮らすに至る過渡期なんでしょうか。
「風の谷」はブータンがモデルなのではないかと思えるくらいであります。「トルメキア」が侵攻してこないことを祈るばかりであります。
(ではまた。)

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19 thoughts on “ブータン・・・ナメててすみませんでした・・・

  1. ドゾー。
    http://cruel.org/economist/courier200705.html
    >>さらにブータンはインドより一人あたりで見ればずっと豊かなのに、インドから開発援助(ODA)を受けていて、かなりの福祉国家を実現しているのに/あるいはそれ故に底辺の仕事は(援助をくれている)インドの貧乏人に丸投げしている、ということ。ブータン人たちが楽しく幸せそうなのもあたりまえだ。相対的に豊かなうえ、辛い仕事はしないんだもの。
    >>そして最後に書かれた惨状——人口の二割を占める、言葉がちがうだけの同胞に強引なブータン同化を強制し、それに逆らったらテロリスト扱いで、一族郎党まで人権をまるごと剥奪するという前近代的な状況は、ぼくも含め多くの人のまったく想像もしなかったものだろう。
    そもそも売電で国家予算の9割をまかなえる国を皆が真似できるとは思えんです。

  2. 水力発電ダムで沈んだ村の住人はどこに行ったのだろう。
    続きまして
    http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200607091819510
    http://www.ne.jp/asahi/n/toyoda/bhutan/bhutan_j.html
    GNH(国民総幸福度)ってキモくないですか?
    別の番組(確かNHK)でリポーターが村の男性にインタビューしてた。
    「どんな風に幸せですか」
    「電気が来て、テレビや洗濯機が来て便利になったよ」
    う〜ん、どうしてカットされなかったんだろ。

  3. まあ世界ふしぎ発見はいかに世界を美しく見せるかという番組ですから・・・そういう番組のコンセプト自体は否定されるべきものではない(というか個人的には好きです)が、それを真に受けて**は天国だ!とか言い出すのはどうかと。
    それはそれとして、経済規模・一人当たりGNPがどうあれ国民が実際に幸せを感じているならその統治は成功だとは言えるでしょう。北朝鮮みたいにここは地上の楽園だと答えないと密告されるとかいうお国柄ではないようなので、そういう意味ではブータンの統治は大成功を収めているというのは真実だと思います。たとえそれが電気が来て、テレビや洗濯機が来て便利になった結果によるものであったとしても。
    ただ、そこから「世界がブータンのように生きられないものか」というのは無理な相談というものでしょう。部分の最適解は全体を向上させるとは限りません。ブータンの場合結局電気という天然資源が豊富にあるからこその成功な訳で、世界中みんなが電気を作って暮らせる訳ではないでしょう。世界中で石油が沸いてもみんなが幸せになれるのではないのと同じです。(まあ日本の場合ブータンとは違えど相当恵まれた状況なのに国民が幸せを感じていないのはどうなのよという議論はアリだとは思いますが。)
    #言語の違う国内集団を弾圧しているという問題は「幸せにすべき集団」をどう定義するかという問題と、インドに吸収でもされたら(インドに比べて相対的に)豊かな状況が壊されるという問題があるので一概に悪とは言えないと思います。

  4. みなさん、コメントありがとうございます。
    もちろん、
    「これは特殊例で、表面に出てない裏がイロイロあんに決まってんのよ。」
    と考えるのが一番簡単です。
    私も、コーポレートガバナンスとか監査とか内部統制とか、「人の言うことを頭からは信用しない(というか、基本的にまず人の言うことを疑ってかかる)」というヨゴれた心な因果なことをナリワイとしておりまして、ウマい話ほど、まずはそういうことを考える訳です。
    「日本で一番、生活が豊かなのは福井県」と言われても、
    「どーせ、原発とかで補助金がたくさん入ってんじゃねーの?」とか「都会のうまいレストランとか、娯楽施設の楽しみを知らないだけじゃないの?」とも思うし、(福井県ファンの方には申し訳ないですが)、正直、あんま福井に住みたいとも思いません。
    でも、
    「みんなが幸せに暮らすなんて、絶対無理。この世というのは薄汚れたところだから、何十年何百年かかろうが、みんなが幸せに暮らす世の中なんか絶対来るわけない。」
    と決めてかかるというのも、ちょっと頭が固かったかなあと。少なくとも、そう決めてかかっていたら、できるものもできんだろうなあ、と。
    そうちょっと反省したということを書かせていただいた次第であります。
    (ではまた。)

  5. ナウシカのように純真な心を持った磯崎さんに心打たれました。
    磯崎さんはコミックでナウシカを読まれたことがありますか?
    映画のナウシカではハッピーエンドですが、漫画ではやはり磯崎サン同様に悩み、最後まで”善”と”悪”、何が正しいと言えるのか?というテーマには解が出ないまま終わります。
    ブータンの人々にとっての幸福が、他の人間の不幸を前提としているのは間違いないとしても、その幸福を全世界に広げ、誰の不幸も前提としない、全人類の幸福を追求することは大切なことだと思います。

  6. >磯崎さんはコミックでナウシカを読まれたことがありますか?
    そうそう。そういえば、5巻くらいまで出版されたところで読むのが途切れていて、続きを読まなきゃと思ってたところなんです。
    うちの息子も、
    「それ、買って買って!学校にもあるけど、なぜか6巻までしかないから!」
    ということで、
    ワイド版 風の谷のナウシカ7巻セット「トルメキア戦役バージョン」
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/419210010X/tetsuyaisoz05-22
    を、早速、大人買いさせていただきました。w
    (ではまた。)

  7. はじめまして。いつも拝見してます。
    ふしぎ発見、それ見ました。
    同じく、非常に感動して夫婦でTVに食いっていたのを覚えています。
    いいですよね。あの雰囲気というか、感覚というか。
    田舎→都会、発展途上国→先進国 みたいな、常に上を目指すというか、(悪い意味で)成長し続けなくちゃいけない ような、変な強迫観念に囚われていましたが、ブータンをみたら、少し力が抜けました。
    上を目指す・成長し続けること自体を「あきらめたら」いけないとは思うんですが、いい意味で「今の暮らし・生活で十分。幸せ」と思えるようになれるかどうかって、すごいことなんだなと思いました。
    個人の生活もそうですが、会社のあり方もそうなんだろうなって。
    ものすごく考えさせられる番組でした。

  8.  電力は売るほどあるでしょうが、他のものが充分にある國ではありません。無いこととどう向き合うかというのは、心の持ちようでありましょう。
     それを是とすることを諦観と評価するか、無知と嘲笑うかは外の人の自由ですが、またその人々が自らの國でどう振る舞うかでまたさらにその外や後世から評価を受けるのでしょうね。

  9. >無いこととどう向き合うかというのは、心の持ちようでありましょう。
    (国王でなく)ブータンの首相が、
    「幸せとは、自分が今、手にしているもので十分と気づくことかも知れません。」
    と言ってたのが、非常に印象的でした。
    日本で首相がそんなこと言ったら、「おまえが能力が無いことを棚に上げるな!」と、ブーイングの嵐でしょう。
    (ケネディが「国のために何ができるか」といったら国民は感動するけど、今、日本の首相が言ったらブーイングなのと同様。)
    確かに、物欲や煩悩がモリモリあったら、いつまで経っても絶対、全員が満足するってのは無理ではあります。
    高度成長期ならともかく、「全員が満足していないことこそが、国が成長する力の源泉」といったレトリックも心に響きませんし。
    一方で、そういった「”善意”によって成り立つ均衡」というのは、(進化ゲーム理論的などに考えてみても)非常にvulnerableで、グローバリズムの前には非常に説得力が無いところが問題ですねえ。
    自然失業率仮説でインフレ無しに失業率をゼロにできないのと同様、満足率が高いのは「不自然な」「あってはならない」状態なんでしょうか?
    (コメントどうもありがとうございました。)
    (ではまた。)

  10. >>無いこととどう向き合うかというのは、心の持ちようでありましょう。
    >>「幸せとは、自分が今、手にしているもので十分と気づくことかも知れません。」
    私はブータンの道路建設現場や刈り入れの現場で、ブータン人の基準で見ても最悪な待遇・環境でしかも殆ど抜け出すチャンスもない、言語が異なるだけの同胞にはこうはとても言えません。いや、ブータン国王は言うんでしょうけど。しかもそれが全人口の2割とかだそうですからねえ。
    さらに、そういう人たちに加えて外の世界からの支援(開発援助や辛い労働をしてくれる安い労働力)に乗っかってこそシアワセにやれていけてるわけで、これを世界的にやりだされるというのは正直怖いものがあります。総合的には、資本主義の日本に生まれて良かったなあ、というのが正直な感想です。

  11. そう言われて、
    「世界60億人超の人のうち、『この国に生まれなければよかった』と思ってる人って、どのくらいの割合でいるのかなあ」
    てなことを考えてみました。
    世界の栄養不足人口は9億人弱のようですが、この全員が「他の国に生まれたかった」とは思ってない気もします。教育が不足してる人も多いでしょうし、家族や知り合いは自分の国の人しかいないでしょうから。例えば中国奥地の栄養不足の人が他の国についての想像力があるのかしらん、とか。
    世界の難民人口は3000万人くらいだそうですから、さすがにその人たちは「この国に生まれなければよかった」と思ってるでしょうか。
    私も、例えば欧米人から見たら、
    「そんな黄色い醜い姿で生まれて、狭い家やゴミゴミした街に住んでアクセク働いて、かわいそうに・・・」
    と思われるかも知れませんが、なぜかあまり生まれてこのかた「他の国に生まれた方がよかった」と思ったことがないです。
    「もっと金持ちの家に生まれればなあ」
    と思ったことは何度もありますが、その「金持ちの家」というのは他の具体的な誰かの家ではないし、ましてや外国でもない。
    想像力が欠如してるんでしょうね。(笑)
    「住めば都」ということかも知れません。
    (ではまた。)

  12. >国家予算の9割を電力収入でまかなえており
    これがブータン経済の成立条件だと思うのです。手厚い福祉をやれば税率は高くなる、というのが先進国の常識。フリーランチはなく、トレードオフ。
    http://ohtake.cocolog-nifty.com/ohtake/2009/01/post-7630.html
    しかし、税収の9割が政府事業で国外からもたらされるのならば、実質的に政府は国民から徴税していないに等しい。ほとんどの国民が払った税金以上の還元(福祉)を受けるとしたら、これはフリーランチでしょう。
    「福祉国家」か「小さな政府」か、という対立軸のうえにはない存在だとしたら非常に面白いですね。経済学の想定外というか。個人の自由の観点とあわせて、ノーラン・チャートに位置づけてみたいと思いました。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%88
    FYIですが、写真も綺麗で、面白い記事でした。
    http://premium.nikkeibp.co.jp/em/ngs/21/index.shtml
    http://nationalgeographic.jp/nng/magazine/0803/feature05/index.shtml

  13. こんにちは。
    いつも楽しく拝見させて頂いております。
    ところで、風の谷のナウシカは、パキスタンのフンザだという話を聞いたことがございます。
    私も一度行きましたが、雪に覆われた山々に囲まれて、大変美しい村でした。
    そんなのどかな村でも、子供達は見たこともないインド人を大変憎んでおりました。そこにナウシカをオーバーラップさせてしまったことを覚えております。

  14. 石橋秀仁さん、morimotoさん、コメントありがとうございます。
    >パキスタンのフンザだという話を聞いたことがございます。
    ほんとですね。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/フンザ
    存じませんでした。ありがとうございます。
    ちょうど数日前、放送大学「現代の国際政治」のアフガニスタンの回で、お隣のワハンの風景が映ったときに、「これって、風の谷じゃん!」と思いました。
    ブータンの難民について批判的なみなさんもいらっしゃいますが、上記の講座などに関連して、アフガニスタン、パキスタン、ブータンなどインド周辺の歴史を知ると、結局は西欧の帝国主義(主に英国)が自分の都合で適当な国境線を引いたりしたことが今に大いに影響しているなあ、という気もします。(そういう意味でも、ナウシカの世界観に近い?)
    >私も一度行きましたが
    うらやましい!
    法人の登記で、ですか?(・・・んなわけないか。:-)
    (ではまた。)

  15. 再三のレス、申し訳ありません。
    私はキルギスタンにも行ったことがありますが、この国も風の谷を想起させる美しい山国でした。
    ちなみにどちらも登記がらみではありません(笑)
    昔、バックパッカーだったんですね。

  16. ブータンはネパール系(ヒンズー教徒)住民に対する徹底した民族・人種・宗教差別で有名な国です。
    ブータンの多数派はチベット系の仏教徒で、支配層もそうなのですが、
    昔、ブータンの直ぐ横にシッキムというチベット系仏教徒の国があったのですが、
    ネパール系ヒンズー教徒の流入よって多数派がヒンズー教徒となり、
    インドへ併合されてしまいました。それを見たブータンの支配層はヒンズー教徒に対して
    徹底した差別的政策を行っているのです。
    黄色いブータン人の笑顔の裏には、黒いヒンズー教徒の血と涙があるわけです。
    ブータンのことですから幸福度の国勢調査もヒンズー教徒は対象としていないでしょう。
    ちなみにミャンマーの1人あたりGDPは200ドル程度で、ブータンの10%程度です。
    ミャンマーの方が遥かに貧しいです。
    ブータンの差別に関して日本語で書かれています。
    http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200607091819510

  17. 戦いを略す – 書評 – 国をつくるという仕事

    英字出版高野様より献本御礼。
    国をつくるという仕事
    西水美恵子
    英字出版というのは最もはずれ率の少ない出版社の一つだが、その中でも、…