最近、放送大学の「量子力学(’05)」の授業(全15回)を拝見しております・・・・が、これはキツい。
放送大学のテレビ番組は、いろんな自分の専門領域外の話をどこまで理解できるかに挑戦するには最適です。
(ちなみに、授業は1回45分ですので、HDDに録りだめしておいて一気に1.5倍速などをつかいつつ見ると、最短で、本を1〜2冊をゆっくり読むくらいの時間[私、遅読なもので]で全15回分をみられます。)
しかし、ほとんどの授業は、(一般に、よくわからん話をする人は、自分がよく理解してないことが多い気がしますが)そもそもしゃべってらっしゃる方が第一線の方ですし、(普通のテレビ番組の予算よりは桁違いに低予算で作ってそうですが)、普通の大学の授業よりは桁違いにカネをかけた図表、CG、海外取材等があるので、法学、天文学、社会学、歴史、生物学等、ジャンルに関わらずどれも基本的に非常によく理解できます。
が、しかし。
この「量子力学」の授業は、いきなり最初から偏微分方程式とか行列のオンパレードで、かなりキツい。
(高校の数学くらいまでしかやってらっしゃらない方は、これを見る前に、初歩からの微積分(’06)を見ておかれることをオススメします。)
昨年末に、AMNさんに「デクスター(DEXTER)」
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面白い。
「怪物」のブルース
最高!絶対オススメ
おもしろすぎる!!!!
の試写会にお誘いいただき、城山ヒルズのパラマウントジャパンさんの試写室まで見に行ったのですが、「地上波では放送できない衝撃!」だけあって、(私、血とか死体とか、それほど弱くないんですが)見ててちょいキモチ悪くなって、試写の後の懇親会もパスさせていただいたんですが・・・・それはさておき、
この「量子力学」の授業も、「地上波で流しちゃっていいの?」という気すらします。
これ、どういう方が見てらっしゃるんでしょうか。電子工学系のことを仕事でやられてらっしゃる方は、そもそもこのへんはとっくに勉強した話で、放送大学で基礎を学び直す必要はない気もしますし、それ以外の方が[数式のオンパレードに]興味を持つともあまり思えず・・・・。
もちろん、ことは量子力学の本質に起因する話でありまして、番組にケチを付けているわけではございません。
「ゆとりの時間」に再放送までしているということは、意外に人気が高いのかも。
でも、(例えば、先日、長谷川眞理子先生は性選択の話で出演されてましたが)、「世界一受けたい授業」からは、間違ってもお呼びがかからない内容な気がします。
「相対性理論は誰でも理解できるが、量子力学がわかってるというやつは嘘つきだ。」
という趣旨のことを言った有名な学者がいたと記憶しているのですが(検索してもちょっと発見できませんでしたが)、
【追記】
コメント欄で教えていただきましたが、ファインマン博士の、
I think I can safely say that nobody understands quantum mechanics.
だと思います。
【追記終わり】
そもそも、「ものごとを理解するということはどういうことなのか?」という哲学的な疑問を持たざるを得ません。
一般に、自然というのは、(我々レベル以上の大きさの世界では)突き詰めていくと非常にシンプルで美しい法則に支配されていることが多いわけで、
例えば、コペルニクスが地動説を唱え、ニュートンが万有引力を発見することで、天動説的な世界観では非常に複雑に見えた惑星の運動が、非常にシンプルなルールで記述できるようになりましたし、
非常に多様に見える生物も、突き詰めていくとDNAのたった4種類の塩基の組み合わせから生み出されていることが判明したわけです。
多様な物質も、分解してくと電子・陽子・中性子の性質だけで説明できる・・・かに見えたところまではよかったわけですが・・・。
以前、「エレガントな宇宙」
草思社
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難解な箇所でも読み進められる好著
超ひも理論をイメージとして把握する
物理は習いませんでした。
わからないのに面白い。宗教的陶酔。
まだ読んでいる最中なのですが・・・・・・・
を読んだ時にも感じましたが、(この本自体とか、著者のブライアン・グリーン氏の説明能力はすばらしいですが)、そもそも自然を突き詰めていったら、超ひも理論のようなほとんどの人が理解できないような話に行き着くというのは、ホントなのかしらん、という気がしてしまいます。
確かに、増えすぎた素粒子が、すべてsuperstringというヒモの振動の違いで説明できるというのはエレガントっちゃエレガントですが、それがなぜ折り畳まれた11次元の空間の中で誰もわからないような数学でも解明できないような振動をしてないといけないのか。
本当に宇宙というのは、そんな「ややこしい」ものをベースにして成り立っているのかしらん。
(ちなみに、これはアメリカでは地上波?で放送されたようです。
http://www.pbs.org/wgbh/nova/elegant/program.html )
もちろん「超ひも理論」に比べたら、量子力学の方がはるかに「まし」であります。
親父が電子工学科卒で、幼稚園の頃から「光は粒子性と波動性をあわせ持つ」といったことを聞かされていたので、まあそんなものかというのは「納得」はできますが、それを「理解」するというのは一体どういうことなのか。偏微分演算子とか行列の外積とか内積といったことが、実際の世界の何を表すのか、・・・・といったことについて思索してみたいと思います。
(後半8回目以降の市村先生の回に入ってからは、数式だけでなく、いろんな図もあわせてご説明いただけるので、まだなんとかなりそうな気はちょっとしてきました。)
(ではまた。)
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シラバスを見た感じでは、非相対論的量子力学に関連するトピックが一通り取り上げられていて、学部3年生向けの授業のダイジェスト版という感じですね。
実際の番組を見ていないのですが、こういう方面に興味を持っている高校生や大学1、2年生なんかには、ちょうどいい内容ではないでしょうか。
本日はじめてシラバスを見たのですが、これなら文系でちょっとそっち系に興味がある人も含めた幅広い人の興味をそそりそうであります。(甘い誘い。)
が、しかし。実際の授業の前半7回は、ただひたすら数式を解きまくるだけで・・・ちょいつらかったです・・・。もう一度見返したりすると、だんだんわかってくるんじゃないかというような気もしないでもないです。
(ではでは。)
「量子力学を使える者はいても、量子力学を理解している者はいない」と言ったのはファインマンですね。物理公式の意味を数式を通さず直観的に分かるということが物理法則を分かるということだ、というのが彼の主張だったのでその意味で理解している人はおそらく地上にはいないのでしょう。
量子力学の話がひたすら数式解きまくりになるのは、量子力学を人類が「理解していない」からじゃないかなあ、と思います。まあ、大学の講義である以上数式をたたき込むという目的もあるのでしょうが。
「偏微分演算子とか行列の外積とか内積といったことが、実際の世界の何を表すのか」というのは、数学上の一操作以上でも以下でもないかと…演算子を実世界の何かに結びつけて理解しているという人間は見たことがありません。
量子力学の解釈問題で確率解釈とか多世界解釈というのがありますが、現在一応スタンダードになっている確率解釈は「確率関数の内積を取れば物理量が出てくるけど、これを我々の日常感覚の範囲で解釈は出来ないから、無理に何かに対応づけないでそのまま理解しよう」ということです(と私は理解しています)。なので、これが正しい!という実世界に対応づけた解釈はないはずです(有力なのは多世界解釈ですが、人によってはトンデモ扱いをするようです)。もし確率関数を実世界とうまく対応させられたらノーベル賞ものでしょうが…
「量子力学を理解したと言う人は、量子力学を理解していない」というようなことを、Feynmanが言っていったとどこかで読んだ記憶がありますが、出典を探すことはできませんでした。
I think I can safely say that nobody understands quantum mechanics.
というのは出典があるみたいです。
私は量子力学を理解するどころか計算もできず挫折したくちですが、その経験からすると6回目から8回目が数学の嵐ですごくきつそうな気がします。ですので、そこを通り越せばちょっと楽になるのではないでしょうか。
そうそう、確かファインマンだと聞いた気がします。
(ありがとうございます。)
>6回目から8回目が数学の嵐ですごくきつそうな気がします。ですので、そこを通り越せばちょっと楽になるのではないでしょうか。
今、ちょうど8回目の途中です。がんばりまーす。
(ではまた。)
いつも拝見しております。自分が学部生の頃に、こういう手段があるのだと意識していたらもっと学部の授業(当時の自分の人生の目的であり、かつ時間を消費する理由の大半)がもっと効率的なものになっていたのだろうなあ、と感じました。放送大学、私もぜひチャレンジしてみたいです。それから、先日の世界地図の書かれたエントリーも深く考えさせられました。ブログ主さんの思索の日々の様子をここで拝見することを今後も楽しみにしております。
「リチャード・ファインマン博士」について英文検索すると:QTE
I think I can safely say that nobody understands quantum mechanics.
The Character of Physical Law (1965) Ch. 6; also quoted in The New Quantum Universe (2003) by Tony Hey and Patrick Walters
Unsourced variant or misquotation: I think it is safe to say that no one understands quantum mechanics.UNQTE
少し極端な意見かもしれませんが、私の友人のコメントで「量子力学は真実だ」という意見に私は同意しています。ミクロの世界で実際に起きていることや、実験結果を説明する唯一の理論です。ミクロの世界の仕事を行う人は必須です。なかなか理解が難しいのは、自分たちの持つ直感が全く効かないからでしょうか。無意識のうちに、世界をニュートン力学的に、「x、y、z軸があって、ここに質量Mの物体があって・・・」と考えているのが普通の人です。その世界って実は普通じゃないんだと思うところがスタート地点でしょうか。自分が持っている既成概念をリセットして乗り越える必要があるので、非常に苦痛を伴います。
一番簡単な「トンネル効果」も電子が「飛ぶ」とか「ワープする」と考えてしまうとアウトなのでしょう。それは元々電子を「ボール」みたいなものとして考えてしまっている自分が原因です。電子はボールではなく、「波」「波動関数」と最初から思ってください。数式でしか正しくかけないのです。ボールみたいに絵を書くとイメージしやすいためよく使われますが、実は大きな誤解を含んでいるのです。
「ひも理論」は実験検証出来ないという意味では正しいか正しくないか良く分かりません。でも数学から生じる様々な制約を克服しているため、数学的には正しいです。
量子力学が間違っているなんてことはまったく言っておりませんし、本文にも書きましたとおり、幼稚園のころから40年以上、物質が「波」であるということは自分なりにイメージはし、「納得」はしてきたわけです。
でも、雑誌「ニュートン」に代表されるような一般向けのわかりやすい説明ではなく、「数式で理解しろ」と言われた時に、では数式を理解した先には何か新しいものが待っているのか?、数式を理解すれば量子力学的な世界を「理解」したことになるのか?、等を考えてみたわけですが・・・。
わかったのは、少なくとも現状では「あまり『理解』してるとは言えなさそうだなあ」、ということだけであります。(苦笑)
(ではまた。)
>数式を理解すれば量子力学的な世界を「理解」したことになるのか?
私の持っている答えは「Yes」でしょうか。
量子力学の世界は絵で書くのが非常に困難です。
電子の衝突の例で言うと、
<ニュートン>
ボールが接近 → 衝突 → 離れていく
<量子力学>
波の塊同士が接近→近づいて2つの波がぐちゃぐちゃに相互作用→離れていく
こんな感じでしょうか。こう理解すると、数式じゃないと書けないというイメージがわくかもしれません。
また、さきほどの「トンネル効果」もその一例ですが、数式を理解しないとどういう結果が起きるかを正しく理解できません。
いろいろな例を考えて見ると面白いと思います。
・電子と電子が衝突するとその結果何が起こるか?決してボール同士が「カキーン」とぶつかるような結果ではなく、まったく違う結果になります。
・真空中を高エネルギーのガンマ線が走るとどうなるか?突然電子と陽電子のペアに分かれたり分かれなかったり、します。
自分たちが生きて生活しているニュートン力学の世界と全く違う世界で、全く違う結果が起きます。どんな結果が起きるか分かるようになることが「理解する」なのかなと思いますがいかがでしょうか。
量子力学を基礎的根拠とした応用分野っていくつかあると思うんですが、たとえば、半導体デバイス製造に携わっている方なんかは(量子力学が使われていなければ、スイマセン)、量子力学をどういう風に理解して、応用分野に生かしてらっしゃるのでしょう?
数学的にのみ理解しているのか。
それとも応用分野の方はそもそも量子力学を理論的には理解しなくてもいいのか(笑)。
量子力学の理解について,個人的に思うところを書いてみました.ご参考までに.
(お返事遅くなりましたが)、
みなさんコメント、どうもありがとうございます!
取り急ぎ。
(ではまた。)