週刊isologue(第57号)HFTを含む電子ビジネスと国境について考える(後編)

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みなさん連休いかがお過ごしでしょうか。

連休にふさわしいとはまったく言えないテーマで恐縮ではありますが、今週の週刊isologueは、先週の前編に引き続き、いよいよ本題の「HFT」について考えます。

 

■HFTとは何か?

HFTは「High Frequency Trading」の略で、コンピュータを証券取引所のコンピュータに「直結」し、ミリ秒 (milli second、ミリセック)、つまり千分の1秒オーダーかそれ以下で自動で売買を行なうこと、またその手法を指します。

欧米で盛んになってますが、日本でも東証の新システム「arrowhead(アローヘッド)」が稼働しはじめてから、一般にも脚光を浴び始めています。

こちらの東証さんのプレスリリースによると、

「arrowhead」では5ミリ秒…の注文応答時間、3ミリ秒の情報配信スピードを実現します。売買・市場情報の両面でミリ秒レベルのスピードを実現することで、素早くマーケット動向をキャッチして取引を行うことが可能となり、流動性の向上とともに、新たな取引スタイルやビジネスモデルを生み出すものと考えております。

とのことです。

(引用部、下線・強調は筆者による。以下同様。)

 

■みずほ証券-東証(ジェイコム株誤発注)裁判の影響は?

1000分の1秒というと、素直な方は「速い!」と感嘆されると思いますし、「そんなに急いでどうするのかねえ」と縁側で茶をすすりたい気持ちになる方も多いかもしれません。

しかし、欧米ではすでに取引の中心は「ミリ秒」を切って「数百マイクロ(μ)秒」の世界に突入しています。
(1マイクロ秒は、百万分の1秒です。)

加えて、上記の東証さんのプレスリリースをよく見ると、「注文応答時間」が5ミリ秒と書かれていますが、注文が「」に乗ったり実際に約定するまでの時間が書かれているわけではありません。

 

また、日本の今後を占う上で、昨年12月4日に出た、みずほ証券のジェイコム株誤発注の判決の影響も気になるところです。

東証が負けて、(にもかかわらず)みずほ証券が控訴してるわけですが、こちらのITPROの記事によると、

松井英隆裁判長は東証の責任を認め、次のように述べた。
「取消処理ができない不完全なシステムを提供した。価格と数量が通常でない注文を認識しながらも売買停止権限を行使しなかった。過失は重大であるといわざるを得ない」。
一方で、誤発注をしたみずほ証券にも過失があったとした。その根拠として「初歩的な入力ミスをした」「警告表示を無視した」「発注管理体制にも不備があった」ことを挙げた。

とあります。

みずほ側では取消注文を入れたのに、東証のコンピュータの反応がノロくて取り消しができなかったことが「大事故」につながったわけですから、非常に高速な「アローヘッド」が稼働したことによって、今後、そうしたことは発生しなくなるようにも思えます。

しかし、ジェイコム誤発注時には「なんだ?この注文?」と(人間の)デイトレーダーの方々等が(速くても数千ミリ秒といった、HFTに比べれば千倍ノロいレスポンスで)反応していたのが、取引相手の反応が今後何千倍にも速くなるとすると、誤発注して数十ミリ秒後には、すべて取引は終了している可能性も出てきます。

このため、判決で「価格と数量が通常でない注文を認識しながらも」と、東証側に注文が正常かどうかを判断する義務があるとしていることからすると、アローヘッド時代になっても、注文が正常かどうかを認識させるアルゴリズムをかませる必要はあるかも知れません。

そして、そうしたコンプライアンスチェックのプログラムをかませればかませるほど、当然、注文が「板」に乗るまでの時間は長くなってしまうでしょう。それが数十ミリ秒かかるといったことになると、海外の証券システムに比べて数十倍から数百倍ノロい、ということになるかも知れません。

(アローヘッドになって、「速過ぎて東証では責任持てないから、誤発注は発注者の責任でね」という契約に変更されたりしてるのでしょうか?よく存じませんが。)

 

201005032239.jpg

 

というわけで、今回の目次&キーワードは、

  • 「デイトレーダー」は滅びる運命か?
  • ダイレクト・マーケット・アクセス(DMA)
  • HFTと税に関わる報道(WSJ、日経)
  • HFTのサーバーは恒久的施設(PE)にあたるか?
  • 「独立代理人」を使ったスキームの可能性
  • 問題は税だけか?(ネイキッド・アクセスとHFTの「生態系」)
  • 証券市場は国際的なシステムの戦いに突入している(日本はどうする?)

 

 

ご興味のある方は、下記からお申し込みいただければ幸いです。

 

(ではまた。)

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1 thoughts on “週刊isologue(第57号)HFTを含む電子ビジネスと国境について考える(後編)

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