専門家が非常に高いクオリティで質問に答えてくれるというので、日本でも一部でちょっと盛り上がりつつあるSNS「Quora」。
専門性の高いことをやってる人なら誰でも、
世界中の一流の専門家が、さっと自分の質問に答えてくれたらなあ。
という夢を持っているんじゃないかと思いますが、Quoraが盛り上がっているのも、もしかしてそういう夢を叶えてくれるサービスになるかもしれない、という期待があるからじゃないかと思います。
創業者はフェイスブック元CTOのAdam D’Angelo氏。
アメリカではすでに、FacebookやTwitterのアカウントがあれば、そのアカウントを使ってログインできるようになってるそうですが、私が数日前に(日本で)アカウントを作ろうとした時には、まだ下記のように、
「Sorry, you must have an invitation to create an account on Quora.」という表示が出て、招待状無しでは入れませんでした。
ツイッターで「誰かinvitationを送ってくれる人」と募集したところ、(invitationのお願いが殺到するとご迷惑だと思うので伏せ字にさせていただきますが)氏から送っていただき、アカウントを作ることができました。ありがとうございます。
ちなみに、Quoraを数日ながめてみた感想としては「確かに、クオリティの高い質問や回答もある」という感じです。
例えばTakuji Hashizume氏による質問
「How can a movie like The Social Network be legally written and filmed?」
([意訳]あんな「ソーシャル・ネットワーク」なんて生きてる実在の人物の映画作っちゃって、訴えられないの?)
は、まさに「それ!聞きたかったところ!」という感じですが、それには、この方が、
After the Supreme Court decided New York Times v. Sullivan (1964), any claim of slander/libel/defamation by a “public figure” (which Mark Zuckerberg qualifies as) needs to prove “actual malice” to prevail.(以下略)
と、最高裁判決で示された要件に、今回の映画のケースが合致するかどうか、といったコメントを行ってくれてます。
(もちろん私はアメリカの法律の専門家ではありませんので、これが「質の高い」回答なのかどうかというのを判断することはできないのですが)、「ふむふむ」という感じです。
ただし、「しょーもない質問もそれなりにあるなあ」という気もします。
「しょーもない」かどうかはもちろん人によって感じが方が違うわけですが、Quoraではツイッターと同じように、「フォローする人」や「フォローするテーマ」を決められるので、今後、私が慣れてくれば(またはシステムもよくなって行くでしょうから)、自分に最適なクオリティの情報を絞り込んでいけるのかも知れません。
さて、このサービスをビジネスとして見てどうなのかというところですが。
下記は日本のQ&AサイトであるOKWaveとAllAbout とQuoraのトラフィック(リーチ)を比較したものです。
ご覧の通り、Quoraは伸びてはいるものの、まだOKWaveやAllAboutよりも少ない人にしかリーチしてないんですよね。
(追記、注:Alexaのデータは、ツールバー等をインストールして集められているため、統計的に正確なデータと考えるのは難しいのかも知れません。ただし、Quoraのアクセスが、創業者が元いたフェイスブックのトラフィックよりははるかに少なそうだ、とか、急激に増加しつつある、とか、今、広告モデルで攻めてもフェイスブックやグーグルといった企業と正面から戦うほどの収益の獲得は厳しそうだ、といったおおざっぱな傾向をつかむ役には立つのではないかと思います。)
株式会社オールアバウト(2524)の昨年度(2010年3月期単体)の売上は36億円、当期利益2千万円、
株式会社オウケイウェイヴ(3808)の 昨年度(2010年6月期連結)の売上は14億円、当期利益3千8百万円、です。
Quoraはまだ広告もついてないようなので、今後、sustainableに、この「質」をキープした運営ができるのかどうかは、まだ未知数という感じであります。
また、トラフィックが少ないというのは、まだそれだけ「質の高い専門家の密度が濃い」ということになるのかも知れません。
ネットのコミュニティでありがちなのは、
最初は”質の高い”人たちが集まっていて、いい感じで情報が飛び交っていたのに、後から、より素人な人たちが集まって来てド素人的なことを言うのが『ノイズ』となって、情報のクオリティが落ち、残念な感じになっていってしまう。
という現象であります。
つまり、まだ人数が少ないからうまく行っているだけなのかも知れません。
今後、ビジネスとして成立するくらいの規模まで拡大し、世界中の人がどんどん流れ込んで来て、しょーもない質問をヘタな英語でする人が増え、一流の専門家にとってはノイズが増えて、いい回答をする人が少なくなっていっちゃうといった展開になるのか、それとも一流の質問を一流の人が回答するというスクリーニングのしくみがうまく機能して、「世界の知の中心」的な存在になっていくのか。
・・・引き続き、ウォッチしていきたいと思います。
(ではまた。)
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同じAMNブロガーでありインターネット視聴率の専門家として、気になったことをお伝えしておきます。文脈的な問題点がある訳ではないのですが、Alexaのデータを使って、米国サイトの絶対値の評価を日本のサイトと比較することは大変危険です。Alexa自体が人気投票的な偏った統計であることはご承知だと思いますが、米国の他の同様のサイトとQuoraを比較した方が、まだよいと思います。比較するベンチマークが日本のドメインの方が身近に感じるということでお使いだと思いますが、データリテラシーの高い人は日本には少ないので、ミスリードしかねません。
Alexaよりは精度が高いと思われるHitwiseのデータが公開されてますが、2011/1以降に急増しているという傾向は同じですね。今後が楽しみではあります。失礼しました。
http://weblogs.hitwise.com/heather-dougherty/2011/02/quora_gaining_momentum_1.html
お返事遅くなりました。
Alexaについてはいつもなるべく注釈を入れるようにはしておりますが、今回も追記しておきました。
コメントありがとうございます。
(ではまた。)