昨日のエントリー「独占交渉権のオプション価値」に対してLaw Maniacのminoriさんよりトラックバックいただきました。ありがとうございます。大変参考になります。
一点だけ。minoriさん曰く;
「(高裁は)独占交渉権に法的な保護を与える必要はない、といっているのですから。」
というのはどうなんでしょうか。
引用されている高裁の決定理由の要旨では、
「基本合意のうち少なくとも本件条項については、その性質上、将来に向かってその効力を失ったものと解するのが相当であり」
とあります。
たしかにちょっと「むむっ?」という感じはしますが、
高裁は、「将来に向かって」その効力を失ったと解しているわけで、過去については効力があったと考えているということでしょうし、他の損害賠償請求権などについては含みを残した形になっているかと思いますので、少なくとも「独占交渉権に対する法的保護の可能性を全否定している」のではないと思います。
例えば、
「『差し止め請求権の観点からは』将来に向かってその効力を失ったものと解するのが相当であり」
というように、差し止め請求権についてのみのお話だよ、と高裁が言葉を足してくれていれば、もうちょっと腹に落ちやすかったのではないかと思いますが。
−−−−−
さて、昨日、
「独占交渉権のように、信頼関係が崩れると契約で縛っても経済的な意味があまりない条項については、(可能なら)違約金を条項に盛り込んでおく」
「違約金は、独占交渉権のオプション価値として考えられるのでは?」
というようなご提案をした私めでございますが、
奇遇なことに、たまたま本日、依頼されまして基本合意書的なものの素案を作成いたしておったのですが、昨日、「この高裁決定等のおかげで違約金条項も盛り込みやすくなるのでは?」というようなことを申し上げたにもかかわらず、いざ自分で書いてみると、やはり「違約金」というのは躊躇しますし、オプション価値としていくらか、というようなとんでもない金額を盛り込むのもかなり抵抗がありますね。(苦笑)
基本合意書で、投資とかM&Aとかを検討していこうという段階では、まだ、先方の会社さんと当方との間に、ちゃんとした「心の架け橋」ができていないことも多いので、いきなり「違約金○億円」なんてことは、トゲトゲしくて非常に書きづらいのが一般的ではないかという気もしてきました。(特に日本においては。)
当方と先方の力関係によっては、「オプション価値」といった仰々しい額を違約金に盛り込めるケースというのも全く無いわけではないでしょうが、ほとんどの場合では、
「独占交渉権が期間内に破棄された場合、(破棄された側が支払った)正式契約書策定までのデューデリ費用等の全額を(破棄した側が)負担する」
くらいのことを費用分担に関連して盛り込むのが関の山かも知れません。
実際に、例えば投資を専業としているような会社であれば、破棄による損害といっても、直接費用としてはそんなもんでしょうし・・・。(機会費用は大きいかも知れませんが。)
(ではまた。)
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独占交渉権≠損害賠償請求権
磯崎さん、トラックバックありがとうございました。
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