知恵の晴れ上がり

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(私はオジサンなので一番最初のシリーズしか見てませんが、)機動戦士ガンダムに、「ミノフスキー粒子」という架空の粒子が出てきます。ミノフスキー粒子が散布された空間では、可視光線以外の電磁波が伝わらない、という設定。
現実の宇宙空間では電波ではるか遠くまでが見渡せるので、宇宙空間で戦争するとしたら、相手をレーダーで探知して長距離の誘導兵器をブチ込むことで一瞬にして戦闘が終了してしまい、全く「絵」になりません。モビルスーツが有視界の接近戦を演じるという世界が存在するためには、ミノフスキー粒子は無くてはならない前提なわけです。
現実の宇宙で今から150億年前の宇宙の誕生にさかのぼると、ビッグバン直後の宇宙は非常に高温で、陽子や中性子、電子といった素粒子がすごい勢いで飛び回っていたわけですが、ビッグバン後、数十万年程度経つと宇宙の温度は3000度K程度まで下がり、水素やヘリウムの原子核が電子を捕らえるようによって、今まで電子にぶつかりまくっていた光(電磁波)が自由に空間を進めるようになり、宇宙を遠くまで見渡せるようになったと言われています。
これが「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる現象です。
知識の歴史における「晴れ上がり」
ひるがえって人類の保有する「情報」の空間に目を転じて見ますと、インターネット+Googleなどの検索エンジンの出現は、人類の知識の歴史における「晴れ上がり」に匹敵する出来事かと思います。
つまり、今まで人類の生み出した「知」は、どこに何があるかほとんどわからなかったわけですが、今やGoogleなどの検索エンジンを使うことで地球の裏側の小学生が書いた日記の内容までが見通せるようになりました。
正確には、まだ「知の空間」は完全に晴れ上がったわけじゃなくて、今ちょうど晴れ上がりつつあるところ、といったほうがいいでしょう。まだ、視界が開けつつあるということに気づかない人もいるし、気づいていても開けつつあるということの意味がわからない人やわかろうとしない人もたくさん存在します。
梅田望夫さん渡辺聡さん田中良和さんが取り上げておられるサーチエンジンの各種の取り組みは、こうして人類の知識の世界を晴れ上がらせる営みと位置づけられるかと思います。
「知能」は晴れ上がるか
「すべての知識が見渡せるようになる」ということは、単なる個別の情報だけではなく、「知能」というものの様態にも変化を及ぼすことになります。
渡辺千賀さんが取り上げておられるマイクロソフトの「Ask MSR」というプロジェクトは、自然文の検索の答えを見つけ出す検索ツールだそうですが、例えば、「When was Marilyn Monroe born?(マリリンモンローが生まれたのはいつか?)」という文章を入れると、単語を並べ替えて「Marilyn was Monroe born」とか「Marilyn Monroe was born」とかいう文章をいろいろ生成し、それを検索エンジンで検索すると、当然、「Marilyn was Monroe born」というような文章でひっかかるページはほとんどなくて、「Marilyn Monroe was born」というような正しい文章でひっかかるページの方が多くなるわけで、要は検索エンジンがため込んだデータベースを力ずくで検索し倒す、というシンプルなアイデアです。
ECONOMISTの記事も参照。)
「そんなことオレだって(自然に)やってるよ」という方も多いかと思います。
私も、自分や他人の書いた英語が「ジャパニーズ・イングリッシュ」になってたり、間違った日本語の使い方になってるんじゃないかどうかチェックするのにGoogleをよく使います。
例えば、「利益剰余金」は「profit surplus」とは言わんよなあと思ってgoogleで引くと、確かに全体でも900件、上位に表示される「profit surplus」という句として使っているページは日本企業数社の英文財務諸表のページだけだったりしますので、「こりゃ英語とちゃう」ということがわかります。「retained earnings」で検索すると、25万ページがひっかかりますので、こちらが正しい英語だということがわかる。つまり、検索エンジンは今でももうすでに人工知能的な使い方ができるというわけです。
昔、第五世代コンピュータという人工知能のプロジェクトがあって、その責任者の淵一博氏がおっしゃっていたことで印象に残っているのが「(量より質が大切とか言うが)、圧倒的な量の違いは質の違いになる」ということ。
つまり、ロケットのスピードと赤ちゃんがハイハイするスピードというのは、同じ「速度」という量で表せるが、赤ちゃんとロケットでは同じ速度でも「質」がまったく違う。インターネットと検索エンジンの登場は、「知識」だけでなく「知能」のあり方についても質的な違いを生み出しつつあるのではないかと思います。
当然、こうした環境下で行われるビジネスの様態も、遠くが見通せなかった「接近戦」の世界から、「超長距離からの誘導兵器の攻撃一発でカタがついてしまう世界」に変わりつつあるわけです。今まで「肉体のぶつかりあい」で勝負をしてきたビジネスはもとより、「情報」で勝負してきた証券アナリスト、マスコミといったビジネスも、今、転機を迎えてます。単純な知識でなく「知恵」で勝負しているビジネスは安泰なのか?というのが私の最近の関心事ですが、当然、「知恵」が勝負の鍵になっていくことは間違いないものの、それが今までと同じようにfragmentedで個人の才能に依拠した市場構造になるのか、ポータルやサーチエンジンのように寡占・独占構造に近づいていくのか、というと、明らかに後者。すなわち、情報のオープンな社会の「winner takes all」という構造は、「知恵」の領域まで侵食するのではないかと思います。
以上
(Googleで検索すると、”winner takes all”で61,000件、” winner take all”だと119,000件も出てくるんだけど、なんででしょ?三単現のsを付けなくてもいいのかな?winnerの複数形はwinnersですよね・・・。
まだ、「知恵」の部分は検索エンジンだけではわからないことも多いですね。[苦笑])

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5 thoughts on “知恵の晴れ上がり

  1. たぶんですが、
    seventeen-year-old boy
    と言っても
    seventeen-years-old boy
    と言わないように
    winner-take-all market
    とは言っても
    winner-takes-all market
    とは言わないのではないかと思います。
    そして、なぜかアメリカ人はウェブやメールでハイフンを使いたがらないので、
    winner take all market
    とかになってるのではないかと思います。
    (違ってたらごめんなさいー)

  2. [netculture][english]超遠距離にいるザクの鼻っ面を引きちぎる

    磯崎さんが大変おもしろい記事を書かれています。 これが「宇宙の晴れ上がり」と呼ばれる現象ですが、インターネット+Googleなどの検索エンジンの出現は、人類の知識の歴史における「晴れ上がり」に匹敵す …

  3. サーチエンジン再考

    ここんところ考えないといけない案件が山のようにあって、Blogでの論考に時間が割けなくなっていますが、気になるエントリーがありましたのでコメントします。 いつもの渡辺聡さんのBlog「検索を再定義する」からの引用です。 一言で書くと、サーチの利用履歴から導き出し…

  4. shintaroさん、どうも。
    ははー。「文」じゃなくって「見えないハイフンでつながってる」というわけですね。
    なるほど、なるほど。
    どうもありがとうございます。
    ではまた。

  5. OLD BOY オールド・ボーイ

    タイトル:GOLDBOY  訳:金色の少年
    「金田一少年の家計簿?韓国実写版?謎は解けたの?」
    「いやいや、解けないよ、家計簿っておかしいだろ。」
    ・・・いやいや、あんたら頭、おかしいだろ。
    さて、はて? GW2作目、「OLDBOY」観ました。
    これぎ..