証取法改正でファンドビジネスの危機は来るか?(速報)に、tobyさんよりコメントいただきました。
今回の政令案を見る限り、やはりPEやVC等の投資事業有限責任組合契約に基づくファンドも、認可投資顧問業とみなされることが確実な様に見受けられますが、ここでよく分かりにくいのが、ファンド(組合)自体が業者となるのか、GP会社が業者となるかです。
何故かと申しますと、今般案の中にある「有価証券に係る投資顧問業の規制に関する法律施行規則」改正案の27条の利害関係人ところで、「ヘ 投資事業有限責任組合の業務執行組合員」となっており、であれば、業者は組合自体なのか?と読めてしまうことです。ただ、ファンド自体を業者にすることは、法24条2の「株式会社であること」に反していますし、実務的にファンドを立ち上げる度に認可をとるのも大変かなとも思えますし・・・。
GPが業者となるのであれば、一部の著名なファンドGPでも、資本金が足りないところも見受けられるので、増資されるのですかね?それよりも、認可投資顧問業者が一気に増加しますね。
ここは非常におもしろい論点ですよね。
今回の証券取引法改正で直接に関わってくるところは、ファンドの持分自体が「証券」として扱われることになるところですが、(それとは別に)、証取法改正で「シリコンバレー的ファンド」等の運営に影響が出るか?でも書かせていただいたとおり、組合が「投資一任」の投資顧問業法の潜脱行為じゃないかという議論も、それと平行して存在する、ということですが、
経産省の解釈では、有責組合法に基づいたファンドであれば、投資一任契約に係る業務にあたらない、となっていました。(http://www.meti.go.jp/policy/sangyou_kinyuu/toiawase.htm)
内容的には以前掲載されていた、旬刊商事法務の記事にあるFSA見解と同じ感じですが、日証協で6月14日に行われた同省説明会における内容(http://www.jsda.or.jp/html/gyouhou/0407/0105.pdf)
を併せて読むと、契約書に投資方針を定め、投資委員会にて一定の監督を行い、運用結果の報告を行う(有責組合法通りの運用と思いますが)であれば、やはり対象外であるとも解釈できます。
ちょっと長いですが、いただいたURLを引用させていただきますと、
http://www.meti.go.jp/policy/sangyou_kinyuu/toiawase.htm
� 有責組合の組合契約は、投資顧問業法の投資一任契約に該当しますか。
有責組合は、法律上、組合員の共有に属する組合財産を、組合員の協同の事業として運用する組合であると規定されており、実務上も無限責任組合員とその他の有限責任組合員が共同で事業を行っていることが一般的です。
このような無限責任組合員の行為は、一般論としては、投資顧問業法が規制する投資一任契約に係る業務にはあたらないものと考えられます。
但し、有責組合の形で組合契約を締結していたとしても、無限責任組合員の業務が実態として投資一任業務を行っている場合は、当該無限責任組合員は投資顧問業法の規制に服するべきものであると考えられます。
個別のケースにおいて、組合契約が投資一任契約に該当するかにつきましては、担当省庁である金融庁にお問い合わせ下さい。
(経済産業政策局産業組織課)http://www.jsda.or.jp/html/gyouhou/0407/0105.pdf
投資事業有限責任組合法(ファンド法)に関する説明会
経済産業省経済産業政策局産業組織課課長補佐篠原倫太郎
日本証券業協会 平16.6.14
その他の論点について
まず、有限責任組合を組成するにあたり、投資顧問業法の認可が必要なのかという話
が出てまいりました。これは、いわゆる投資一任契約に当たるのではないかということ
ですが、要は出資をする有限責任組合員がお金を預けっぱなしで、無限責任組合員が有
価証券の価値を分析して投資をしていくということになると、投資一任契約とどこが違
うのかということになってくるわけです。従来はどうなっていたかということですが、
従来は民法組合の特別法ですから民法組合も一緒ですが、組合というのは、お金や労務
を出資し合って共同で事業をする集まりです。共同で事業をする集まりであって、業務
執行者も出資もするし事業もするということになり、そうすると、これは共同で事業を
することだから一任ということはないということになり、投資一任契約には当たらない
という形式的な論理の組み立てをしていたわけです。
ところが、今般は投資クラブといった形を装った悪質業者が出てきており、有責組合
が悪用される懸念が高まってきています。そこで、従来どおりの通常のファンド運営の
ように、契約書で投資方針をみんなで一緒に決め、投資委員会のようなものを設置し、
同委員会で一定の監視監督も行い、運用結果をきちんとフィードバックして今後どうし
ていくかという話し合いをするという健全な共同事業をしているものであれば、当然投
資顧問業は関係なしでいいのですが、実態に着目して、「100万円を預ければ増やして
きてあげるから、あとはもう何もしなくていいですよ。」という、実態は投資一任契約
のものを組合という名前をつけて契約書をつくったということになると、それはやはり
実態を見て投資一任契約になり、その場合には認可が必要になるというのが今の解釈と
なっています。
・・・とのことです。
以上のように、組合というのは、そもそも「みんなでいっしょに何かやろうぜ」というvehicleですが、実際のVCさんの運営等では、限りなく「一任」に近い形で運営が行われていて、契約書も限りなく業務執行組合員または無限責任組合員に権限を一任する形になっているものがほとんどではないかと思います。
以前も申し上げましたが、ベンチャー投資の判断には、M&A等、非常に高い守秘性を要求されるディールがよくありますし、そういったものを事前に(特に多数の組合員がいる場合)いちいち事前に相談して決定するなんて実務が行われるわけはないわけで。
上記の経済産業省の方のご説明も、(当然、実態はよく把握されてらっしゃりながら)「あくまで、タテマエとしては、『みんなで決めてます』ということにしといてくださいね。」ということかと思います。
こうしたファンドビジネスが過度に規制されることになると、産業再生やベンチャー振興といった経済にプラスになるアクションが萎縮してしまうわけで、経済産業省さんはそこのところが非常によくわかってらっしゃって、従来からも、有責組合法の制定や改正、商法改正などにも、多大な貢献をされてきているわけですが、
一方で、そのへんを緩くしていくと、悪徳業者が投資顧問業法の規制の潜脱行為としてそういったスキームをとってしまう。
結局、行政(経済産業省)の思いは「健全なものはOK、悪質なものはダメ」ということなわけですが、「健全」かどうかを、法律上明確に定義することは非常に難しい。
数年前、日本のファンドビジネスの草分け的大御所の弁護士先生にご相談をしたときも、「今後、ファンドが小口化していったときに、悪徳業者と健全な業者をどう区分するのか、というのが一番の問題」とおっしゃってました。
「みんな投資顧問業者になっちゃえばいいじゃん」と思われるかも知れませんが、米国で(実質的に)運用されているヘッジファンドのvehicleがオフショアに設立されていることを考えると、やはり、行政による「立入検査権」などが認められてしまうと、資金というのは萎縮しちゃうもんではないかという気もします。
(実際、金融庁の検査官が来て、何週間も書類をひっくりかえされたりしたら、数人でやっているファンドは、ほとんど仕事にならなくなっちゃうはず。)
(以前のエントリー「ヘッジファンド規制と日本のオルタナティブ投資」参照。)
監督官庁の「運用」にもよるわけですが、そういう規制のための書類作成コストや検査対応コストというのは、取り出してみると結構馬鹿にならない金額になりますし、小型のファンドだと特に、ファンドの収益性にも大きく影響してくる可能性があります。
一方で、悪徳業者取り締まりの観点からは、そうした業者を罰せられる法的根拠や公平性を確保しておく必要もあるんですよね。・・・・難しいですね。
(ではまた。)
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