磯崎@比叡山、です。
「ハードディスクビデオと電通の未来」に対して、赤羽さんからコメントいただきました。
この記事を読んで、僕がNAで実現しようとした「いつでもTV」というビジネスを思い出しました。
「いつでもTV」はひとことで言うと「録画機能付きストレージ貸しサービス」。優れたTV番組(地上波TV・衛星放送、CATV)を、インターネットを使って、世界中から、いつでも、手軽に見られる環境を実現しようというもの。ハードディスクビデオとの大きな違いは、
・インターネット接続環境さえあればどこでも見れる
・見たいけど、自分の地域は放送されない人(地方、海外の人)も見れる
・見たいと思ったら終わってた(見逃した)番組も見れる
です。
過去番組は、過去番組流通用のP2Pプラットフォームを組む予定でした。
最終的には、著作権法のある条項をクリアできずにプロジェクトは停止してしまいました。
著作権法何条だったか忘れましたが、個人で楽しむための個人による録画は許されているので「ハードディスクビデオ」は合法なんですが、「録画機能付きストレージ貸しサービス」はなんと違法になってしまうのですよ、残念ですが。。
著作権法第30条、でしょうか。
(私的使用のための複製)第30条
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
1.公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
2.技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
(以下略)
特許
そのアイデアは、著作権だけでなく特許権的にもナニかも知れませんね。
公開番号 : 特許公開2002−305703(出願日:2001年4月5日)
発明の名称 : 放送番組配信装置、放送番組配信方法、そのためのプログラム及び記録媒体
上記の特許は、あくまで「ユーザーが」ディスクを借りて自分で録画の指示を出す、というものだと思います。が、それでも著作権法に触れちゃうのかしらん?上述の「公衆の使用に供することを目的」とした複製装置には必ずしも該当しない気もするのですが・・・。
競争の構造
昔、プッシュホンが始まったときに、電卓のサービスってのがありました。プッシュホンでボタンを押すことで、かなり複雑な計算もできる電卓機能を(なんとセンター側の大型コンピュータで)やってくれる、という(今思えばゼイタクな)もの。
その後、電卓が超低価格化していくことで、当然、そんなサービスを使う人は誰もいなくなるわけです。
それから、Oracleの「NC」とか「thin client」ってな構想もありましたね。
ということで、ローカルでも似たことができることを集中的に行うビジネスモデルは、要注意かと思います。
「オークション」とか「検索エンジン」とか「コミュニティ」とか、何か「集積のメリット」や「ネットワーク外部性」が働くような構造を作らないと、ね。
「いつでもTV」も、たとえ著作権法をクリアできたとしても、
・ハードディスクは今後も死ぬほど安くなっていきますので、地方のTVは見られないにしても、ハードディスクビデオでほぼ同じ機能は達成できる、
・P2Pでタダで番組を(違法に)ゲットするのとも競合、
・同様のサービスが出てきたときに、(特許権等以外で)参入障壁を構築したり、差別化するのが難しそう、
・・・ということで、ビジネスモデルとしては、かなり問題アリアリだったんじゃないかと思います。
やんなくてよかったですね。:-)
(ではでは。)
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。
録画機能付きストレージ貸しサービスですが、実際にやっちゃった人がいますよね。
テレビ局が東京地裁にサービス停止を求める仮処分申請を行ない、申請は認められたようです。ご参考まで。
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/10/08/4924.html