上場ベンチャー投信とベンチャーの出口戦略

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ちょっと、上場ベンチャー投信について調べてみる機会がありました。上場しているベンチャー投信は、「投資信託及び投資法人に関する法律」「投資法人」を用いてその投資証券を上場しているものです。つまり、上場REIT(不動産投信)のベンチャー投資版、ということですね。
大阪証券取引所に以下の2銘柄が上場しています。
ベンチャービジネス投資法人投資証券(8720、三井住友系)
ベンチャー・リヴァイタライズ証券投資法人8721、ソフトバンク系)
時価が帳簿価格を下回る!
ところが、どちらの投信も、マーケットで付いている時価が、帳簿価格や第三者の算定による参考評価額をはるかに下回っており、時価総額も上記の投信で、それぞれ29億円、28億円にしかなっていません。(下図参照。)
venture-toushin_suii.jpg
(出所:ベンチャービジネス証券投資法人ウィークリーレポート
この理由として考えられるのは、以下のような点でしょうか。
(1) 機関投資家が投資しにくいサイズ
REITだと大半は時価総額1千億円以上になってますので、サイズとして機関投資家も買いやすいですが、ベンチャー投信のように30億円を切ると、ちょっと機関投資家の投資対象として検討しにくいかと思います。
(2) 商品の性質がわかりにくい
またREITは、不動産という安定的なキャッシュフローを生む資産に投資してますので、商品性も非常に分かりやすいのに対し、「ベンチャー株式」となると、その性質もいろいろなので、そのパッケージがどういう性質を持つのかは直感的にはわかりにくい。要は、将来へ向けた成長性に賭けるしかないわけですが、顕在化している指標(利益とか売上とか)ではそれも見にくい。投資しているベンチャーも一般の人は聞いたことが無い企業がほとんど。
つまり、一種の「コングロマリット・ディスカウント」的に、何の寄せ集めかがよく理解できないことによって、評価が実態以上に低くなっているということがあげられるかと思います。
(3) 一般の人の目に触れにくい
上場投信が2銘柄しかないのも一般投資家に性質がわかりにくい理由でしょう。
新聞の株式欄でも、隅の方にちょこっと載ってるのでまず普通の人の目には触れない。
Yahoo!ファイナンスでも、株式のように、ニュース・ 企業情報・ リサーチ・レポートといった情報もなく、ただ、掲示板があるのみ。
(4) クローズド・エンド
クローズド・エンドで期限があるので、どんどん資金調達して投資して、さらに時価総額を上げて、という性質のものではない。(夢のふくらみ方が、その分少ない。)
これでは、なかなか投資しようという気にならないかも知れません。
上場VCは一種の「投信」?
以上のように、時価総額が簿価純資産割れしているような状況を見ると、日本の投資家のベンチャーに対する関心は無いのかなと、悲しい気持ちになりますが、視点を変えれば、例えば、公開しているベンチャーキャピタルは、多数のファンドの運営報酬と、ファンドへの自社出資分からのキャピタルゲインを主な収入源にしており、一種のベンチャー投信的な性質も持ち合わせているかと思います。
(ベンチャーキャピタルが上場しているというところは日本の特徴。)
時価総額も、ジャフコ(2,800億円)、エヌ・アイ・エフベンチャーズ(430億円)など、サイズもそこそこあります。
「一番成功している上場ベンチャー投信」は?
こうした上場ベンチャー投信「的」なものを他にも探してみると、日本では、ソフトバンクや楽天、ライブドア、GMOといった会社が、上場ベンチャー投信的機能を果たしているとも言えますね。
(1) 時価総額もソフトバンク(1.7兆円)や楽天(1兆円弱)、ライブドア(2,800億円)、GMO(1,200億円)(11/12日現在)と、機関投資家が十分注目できるサイズがありますし、
(2) 単なるベンチャー株式のポートフォリオというよりは、それぞれの事業シナジーが考えられた「(超)ハンズオン」型の投資ファンド、とも言えます。
(3) 最近はとみにテレビに見かけることも多くなったので、個人投資家などの注目度も高い。
(4)「オープン・エンド」ですので、(うまく行っている限り)、どんどん資金調達をして、さらに成長する、という夢が広がります。
ベンチャーの出口戦略
以上のような観点から考えてくると、未公開のベンチャー企業のEXIT戦略(出口戦略:会社をどこかの企業に買い上げてもらう「バイアウト」(M&A)か、株式公開するか等)についても考えさせられます。
特に、IT関連のような技術革新の激しい領域のベンチャーは、十年後も同じことをやっていると立ち行かないことが多いでしょう。このため、株式公開してから成長し続けるためには、自分の得意領域を強化・深掘りするというだけではだめで、今後の成長領域を次々に取り込んでいかないといけない。次々に取り込むためには、自社内部の開発では追いつかないことが多いでしょうから、M&Aで他の割安な会社を吸収していく、という(フィナンシャルな)能力も求められることになります。
つまり、公開して100億円程度の時価総額にしかならないようだと、(よほど現在の事業が生むキャッシュが今後増加していく計画でない限り)、「買う側」に回るのはキツいでしょうし、社長が、「企画や技術や営業は好きだけど、財務はあまりよくわからん」ということでも、公開後に生き残っていくのは難しいかも知れません。
そういう「公開してからも成長できる要件」を満たさないようであれば、未公開のうちにどこかに会社ごと売却することを出口戦略とすることが賢明かも知れません。
米国ではたくさんあったREITが統合されて少数の銘柄に集約され総資産が巨大化していっているようで、プライベートな不動産ファンド等の保有する物件の売却先の一つとしてREITの存在があるのではないかと思いますが、日本のベンチャー企業も「上場ベンチャー投信」であるソフトバンクや楽天といった企業が出口として定着しつつある、ということかも知れません。
「上場ベンチャー投信」は成長し続けられるか?
ベンチャーの場合、不動産と違って、個々の投資先の間に強いシナジーが働く(ことがある)というメリットもありますが、一方で、規模大きくなるにつれ管理のspanも広がり、単に量を増やすだけでは成長できない難しさも大きいはず。
このため、時価総額が数千億円レベルを超えると、細かいベンチャーをちょこちょこ買っていくだけでは成長が難しくなるので、結局、電話とか金融(証券、銀行、カード)とか「インフラ」っぽいところに出て行かないといけなくなっていくわけですね。
業態にもよりますが、あまり「現状維持」でうまくいくベンチャーというのも少ないと思いますので、株式公開を考えているベンチャー企業も、公開してから自分の会社がどういう競争に巻き込まれ、どう成長していくのかを考えた方がいいでしょうね。
(ではまた。)

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1 thoughts on “上場ベンチャー投信とベンチャーの出口戦略

  1. ベンチャーの出口戦略

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