民法上の組合に関する課税強化(国際取引)

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本日の日経1面の記事「自民税調方針、国際取引課税を強化、ファンド収益源泉徴収」より。

投資ファンドの一種である民法上の組合を通じて日本に投資をして得た所得は原則、海外投資家が日本の税務署に申告して納税しなければならない。しかし、申告漏れが多発しているため、組合から源泉徴収する形式に改めるべきだとの意見が多い。
 ただ、日本の企業再生などで存在感を増している外資系のファンドや金融機関、欧米当局などからの反発も予想される。

法人税基本通達1-1-1で

1-1-1 法第2条第8号《人格のない社団等の意義》に規定する「法人でない社団」とは、多数の者が一定の目的を達成するために結合した団体のうち法人格を有しないもので、単なる個人の集合体でなく、団体としての組織を有して統一された意志の下にその構成員の個性を超越して活動を行うものをいい、次に掲げるようなものは、これに含まれない。
(1) 民法第667条《組合契約》の規定による組合
(2) 商法第535条《匿名組合契約》の規定による匿名組合

となってますので、民法上の組合は法人税の課税対象とはならず、その利益または損失は、持分に応じて組合員(投資家)である法人または個人の収入として、投資家の側で課税されるのが原則なわけで、原則として組合側に源泉徴収義務は無いわけです。(法人税基本通達14-1-1、14-1-2、所得税基本通達36・37共-19、36・37共-20、後記資料参照)
ただし、(投資顧問(一任)の議論と同じで、)その民法上の組合が、「みんなでわいわい」型の組合なのか、事実上「業務執行組合員」が一任的に投資の判断その他の業務のほとんどをやっているのかということでいうと、通常のファンドでは後者が実態ではないかと思いますので、外国法人の場合には、業務執行組合員がその「外国法人のために契約を締結する権限を有するもの=代理人」、つまり、いわゆる「3号PE」(Permanent Establishment=恒久的施設)に該当するのかしないのか、という議論は、以前からありました。
記事では、「反発も予想される」とありますが、「代理人」とみなされると約40%の法人税率で課税ということにもなりますので、むしろ、法律で20%(例えば)とか、源泉税率を決めてもらった方が、税務リスク+負担も小さくて安心、という外国法人もいらっしゃるかと思います。
(以 上)
以下、資料:

(外国法人に係る各事業年度の所得に対する法人税の課税標準)
法人税法第百四十一条
 外国法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の課税標準は、各事業年度の所得のうち次の各号に掲げる外国法人の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得に係る所得の金額とする。
一 国内に支店、工場その他事業を行なう一定の場所で政令で定めるものを有する外国法人 すべての国内源泉所得
二 国内において建設、据付け、組立てその他の作業又はその作業の指揮監督の役務の提供(以下この号において「建設作業等」という。)を一年を超えて行う外国法人(前号に該当する外国法人を除く。) 次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一号から第三号まで(国内源泉所得)に掲げる国内源泉所得
ロ 第百三十八条第四号から第十一号までに掲げる国内源泉所得のうち、その外国法人が国内において行う建設作業等に係る事業に帰せられるもの
三 国内に自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの(以下この号において「代理人等」という。)を置く外国法人(第一号に該当する外国法人を除く。) 次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一号から第三号までに掲げる国内源泉所得
ロ 第百三十八条第四号から第十一号までに掲げる国内源泉所得のうち、その外国法人が国内においてその代理人等を通じて行う事業に帰せられるもの
四 前三号に掲げる外国法人以外の外国法人 次に掲げる国内源泉所得
イ 第百三十八条第一号に掲げる国内源泉所得のうち、国内にある資産の運用若しくは保有又は国内にある不動産の譲渡により生ずるものその他政令で定めるもの
ロ 第百三十八条第二号及び第三号に掲げる国内源泉所得

(外国法人の置く代理人等)
法人税法施行令第百八十六条
 法第百四十一条第三号(外国法人に係る法人税の課税標準)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
一 外国法人のために、その事業に関し契約(その外国法人が資産を購入するための契約を除く。以下この条において同じ。)を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する者(その外国法人の事業と同一又は類似の事業を営み、かつ、その事業の性質上欠くことができない必要に基づきその外国法人のために当該契約の締結に係る業務を行なう者を除く。)
二 外国法人のために、顧客の通常の要求に応ずる程度の数量の資産を保管し、かつ、当該資産を顧客の要求に応じて引き渡す者
三 もつぱら又は主として一の外国法人(その外国法人の主要な株主等その他その外国法人と特殊の関係のある者を含む。)のために、常習的に、その事業に関し契約を締結するための注文の取得、協議その他の行為のうちの重要な部分をする者

(任意組合から受ける利益等の帰属の時期)
法人税基本通達14-1-1 法人が組合員となっている組合の利益金額又は損失金額のうち組合契約又は民法第674条《損益分配の割合》の規定により利益の分配を受けるべき金額又は損失の負担をすべき金額は、たとえ現実に利益の分配を受け又は損失の負担をしていない場合であっても、当該組合の計算期間の終了の日の属する当該法人の事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。ただし、組合が毎年1回以上一定の時期において組合事業の損益を計算しない場合には、当該法人の各事業年度の期間に対応する組合事業の損益を計算して当該法人の当該事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。
(注) 同業者の組織する団体で営業活動を行わないものは、この取扱いの適用はない。

(任意組合から分配を受ける利益等の額の計算)
法人税基本通達14-1-2 法人が、組合員となっている組合から分配を受けるべき利益の額又は負担すべき損失の額を14-1-1により各事業年度の益金の額又は損金の額に算入する場合において、次のいずれか一の方法により継続してその利益の額又は損失の額を計算しているときは、これを認める。
(1) 当該組合について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員に分配又は負担させることとする方法この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について、受取配当等の益金不算入、所得税額の控除、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。
(2) 当該組合の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
 この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について受取配当等の益金不算入、所得税額の控除等の規定の適用はあるが、引当金の繰入れ、準備金の積立て等の規定の適用はない。
(3) 当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
(注)1 (1)の方法による場合において、当該組合の支出金額のうちに寄附金又は交際費の額があるときは、当該組合を資本又は出資を有しない法人とみなして法第37条《寄付金の損金不算入》又は措置法第61条の4《交際費等の損金不算入》の規定を適用するものとしたときに計算される利益の額又は損失の額を基としてその分配又は負担させる金額の計算を行うものとする。
  2 (2)又は(3)の方法による場合には、組合員に係るものとして計算される収入金額、支出金額、資産、負債等の額は、組合員における固有のこれらの金額に含めないで別個に計算することができる。

(任意組合の事業に係る利益等の帰属の時期等)
所得税基本通達36・37共-19 任意組合(民法第667条《組合契約》の規定による組合をいう。以下36・37共-20において同じ。)の組合員の当該組合の事業に係る利益の額又は損失の額は、当該組合の計算期間を基として計算し、当該計算期間の終了する日の属する年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。ただし、当該組合が毎年1回以上一定の時期において組合事業の損益を計算しない場合には、その年中における当該組合の事業に係る利益の額又は損失の額を、その年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する。

(任意組合の事業に係る利益等の額の計算)
所得税基本通達36・37共-20 36・37共-19により任意組合の組合員の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する利益の額又は損失の額は、次の(1)の方法により計算する。ただし、その者が継続して次の(2)又は(3)の方法により計算している場合には、その計算を認めるものとする。
(1) 当該組合の収入金額、支出金額、資産、負債等を、組合契約又は民法第674条《損益分配の割合》の規定による損益分配の割合(以下この項において「分配割合」という。)に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
(2) 当該組合の収入金額、その収入金額に係る原価の額及び費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について非課税所得、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はあるが、引当金、準備金等に関する規定の適用はない。
(3) 当該組合について計算される利益の額又は損失の額をその分配割合に応じて各組合員にあん分する方法
この方法による場合には、各組合員は、当該組合の取引等について、非課税所得、引当金、準備金、配当控除、確定申告による源泉徴収税額の控除等に関する規定の適用はなく、各組合員にあん分される利益の額又は損失の額は、当該組合の主たる事業の内容に従い、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得のいずれか一の所得に係る収入金額又は必要経費とする。

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2 thoughts on “民法上の組合に関する課税強化(国際取引)

  1. ファンドの外国人投資家への課税「強化」、ですって?

    「ファンドの外国投資家への課税強化」についてのあちこちで盛り上がってるようなので、遅ればせながら参戦。 (しかし、こんな投資ファンドの税務というようなマニアックな話でブログ界が盛り上がるとは、半年前には想像もつきませんでしたが・・・。日本のブログ界もなぎ..