特許権侵害と鑑定人

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青色ダイオードの中村氏の訴訟に代表されるように、特許権に関わる訴訟はこれからますますホットになると考えられます。特許権侵害による損害額の計算などは財務諸表や帳簿を見る力が要求されるなど、なかなか弁護士や裁判官だけでは厳しいということで、平成11年の特許法改正で計算鑑定人制度(特許法第105条の2)が導入され、最近、この鑑定人選定について最高裁判所から公認会計士協会に協力依頼があったそうで、昨日はその研修に出席してました。
その中で、一点だけ。(以下、特許法の計算鑑定人に限らない民事訴訟法上の一般論ですが、)
鑑定人になるのは「学識経験者」の(権利ではなく)「義務」なんですね。
民事訴訟法(第四節 鑑定)
第212条(鑑定義務)
鑑定に必要な学識経験を有する者は、鑑定をする義務を負う。(以下略)

つまり、世の中「裁判所に関わるなんてことは一生なさそう」と思っている人が大半だと思いますが、「真面目に生きてる一般の人」でも何か学識経験がある人が裁判所から指名された場合には、鑑定をしなければならない義務がある(つまり「ちょっと忙しいので」「私の趣味じゃないので」というような理由では断れない)、ということですね。陪審員制度と同じような「国民の義務」ということです。
また、裁判所と鑑定人の関係は、双方の合意に基づく「契約」ではなく、裁判所から国民に対する一方的な「命令」に基づくものということになります。
実際にあるかどうかはおいといて、例えば、
「人工心臓弁の特許侵害に関して、心臓手術に詳しい開業医が鑑定人に指名される」
というようなことはもちろん、
「ソーシャル・ネットワーキングのビジネスモデル特許訴訟に関して、ソーシャル・ネットワーキングの日本での第一人者のネット系ベンチャーの社員が東京地裁から鑑定人に指名される」
とか、
「美少女フィギュアの意匠権侵害に関して、その分野についてチョー詳しいアキバ系オタクのA君が指名された」
というようなことも、法律上は可能性があるということですね。
計算鑑定人などは比較的代替性が高いと思われるので、裁判所から高圧的に命令を受けてイヤイヤ鑑定人になるというわけではなく、時間単価や作業に要する時間などを見積もって合意の上鑑定人になるプロセスを踏むようですが、非常にマニアックな分野で他に代わる人がいないような場合には、より「命令」に近い形でフツーの(オタクな)人などに鑑定人のお鉢が回ってくる可能性もあるということで。
(ではでは。)

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