投資単位の引き下げとボラティリティ

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昨年末はライブドアの100分割が話題になりましたが、本日は投資単位の引き下げについて。
平成13年9月に、「株式投資単位の引き下げ促進に向けたアクション・プログラム」が発表され、全ての上場企業はその投資単位を時価ベースで50万円未満とするよう努めることとされ、その後、各証券取引所等の規定の中でも、そうした努力義務が盛り込まれています。
実際に株式分割等を行うと、市場はそれを好感して株価が上がることが多いですが、株価でなくボラティリティ(変動率)にはどういう影響を与えるのでしょうか。
ちょっと古いですが、昨日webでちょっとおもしろい論文を見つけました。
株式投資単位の引き下げがボラティリティに与える影響
奥山 英司 星野 真智子
http://home.hiroshima-u.ac.jp/jea2002/okuyama.pdf
要旨:
東京証券取引所に上場する41 銘柄の株式について,株式売買単位の変更(くくり直し)が,株式収益率のボラティリティに与える影響について分析を行った.

というものですが、この論文では、分析対象について、
「株式分割は発行株式数が変化するため,株価自体に影響を与える.さらに日本の企業は,株式分割後も配当を据え置く例が多く,実質的な増配が行われる.従って,株式分割後の正確な株価を計算するのが非常に困難であり,それによるボラティリティの増大が予想される.
一方でくくり直しに関しては,売買単位を引き下げるだけで,株式自体の性質を変えることはない.さらに,株式分割を行った株式よりもくくり直しを行った株式の方がはるかに多い.従って,くくり直しが行われた株式を分析対象とすることは,多くのサンプルに基づいて,個人投資家の参入が容易になった影響を分析することが可能であると期待される.」

ということで、純粋に投資単位変更の影響を分析するために、株式分割の事例は除いて、単元株の引き下げ(くくり直し)の事例のみを扱っています。
結論として、
くくり直しを行った銘柄のボラティリティは,多くの場合くくり直し前後で有意には変化が見られなかった.
しかし,TOPIX を用いた市場全体のボラティリティの変化と比較すると,1999 年度以前にくくり直しを行った銘柄ではボラティリティが増大する傾向にあるものの,2000 年度にくくり直しを行った銘柄ではボラティリティが低下していた.
このような違いは,1999 年10 月の株式売買委託手数料完全自由化や,それに伴うインターネット等を活用した低料金の取引機会の拡大が影響しているのではないかと思われる.全国証券取引所や日本証券業協会が推進している個人投資家の株式市場参入拡大は,現時点では株式市場の安定化をもたらす方向に作用していると考えられる.

としています。つまり、オンライン証券でデイトレーダーなどの個人投資家の売買が活発化することにより、価格変動がより激しくなってるんじゃないかというギワクがあるわけですが、データを見るとそうした個人投資家の活発な売買は逆にボラティリティを低下させており、価格形成を滑らかにする「潤滑油」の効果を果たしていると言えるのではないか、ということですね。
おもしろいですね。データがちょっと古いので、最新の研究があったらぜひ拝見したいところです。
(以下、参考URL、条文)
投資単位の引き下げと単元株制度導入の動向(あずさ監査法人2002.02)
http://www.azsa.or.jp/b_info/ipo/200202/ipo_200202_02.html
商法第221条(単元株制度)
 会社ハ定款ヲ以テ一定ノ数ノ株式ヲ以テ一単元ノ株式トスル旨ヲ定ムルコトヲ得但シ一単元ノ株式ノ数ハ千及発行済株式ノ総数ノ二百分ノ一ニ当ル数ヲ超ユルコトヲ得ズ
� 一単元ノ株式ノ数ヲ減少シ又ハ其ノ数ノ定ヲ廃止スル場合ニ於テハ第三百四十二条ノ規定ニ拘ラズ取締役会ノ決議ヲ以テ定款ノ変更ヲ為スコトヲ得
(以下略)

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