昨日の続きですが。
水樹さんからコメントいただきました。
ライブドアが「中小企業型の企業統治」という指摘はその通りだと思います。
しかし、創業して間もない会社は、そうでないと前に進めません。
創業者オーナーの推進力が企業を発展させる原動力です。
そのオーナーのビジネスモデルが、ある時期に壁にぶつかったときに、そこから、企業統治のありようが変わるのだと思います。
「創業して間もない会社は、中小企業型の企業統治でないと前に進めません。」というのは、2つの意味でツッコミどころがあると思います。
1つは、ライブドアは「創業して間もない会社」ではないこと。(水樹さんもライブドアが創業して間もないとは思ってらっしゃらないとは思いますが。)
時価総額が2000億円もあって一日の株式の売買高が日本でもトップクラスになるような会社が、「創業して間もない会社と同じコーポレートガバナンス」でいいんでしょうか?というところに改めて強い疑問を感じているわけです。
2つめは、「中小企業型の企業統治でないと、成長期の企業は前に進めない」というのは世界的に見るとまったく成り立っていないということ、です。
もしそうだとすると、Googleをはじめとしてスタートアップして間もないころから社外取締役の方が多いようなアメリカの会社は、みんな公開前後で成長の限界にぶち当たっててもよさそうなもんですが、むしろ、日本のベンチャーより時価総額が大きくなっている会社のほうが多いんじゃないでしょうか。
かように、(水樹さんに限らず)、日本では「コーポレートガバナンスは”必要悪”ではあるが、経営の足を引っ張る要因」というイメージで捉えられているんじゃないかと思います。かくいう私も、以前のエントリーで、コーポレートガバナンスにおける執行と監督の機能を「アクセルとブレーキ」(平均速度を落とす要因としてではなく、性能のいいブレーキがないとラップタイムも上がらない、という意味でのブレーキではあるものの)に例えたりしましたので、人様のことはあまり言えないのですが。
アメリカの事例で考えてみても、コーポレートガバナンスは投資家が安心して投資できる要素なわけで、より良質な資金を大量に集められる成長要因なんではないかと思います。
「そのオーナーのビジネスモデルが、ある時期に壁にぶつかったときに、そこから、企業統治のありようが変わるのだと思います。」とおっしゃいますが。確かに日本では、壁にぶつかるまで創業オーナー社長が突っ走って、誰も猫の首に鈴を付けられず、結局経営がかなり悪化して破綻寸前になってから、社長を代表権のない会長などに祭り上げて銀行の介入を受けたりする例というのは枚挙にいとまがないかと思います。
(経営者を動物に例えるというのも恐縮ではありますが)、犬も成犬になってから首輪をつけようとしても、いやがって付けないわけです。また生まれつき首輪が大好きという犬もいません。小さい頃から「首輪をするのは当たり前」と教育しないとアカンのではないでしょうか。
スポーツに例えても、体を壊す寸前まで自己流の練習を続けるのではなく、常時、プロのトレーナーや医師のチームが選手をサポートする体制の方が、いい成果が出ると思います。スポーツでもそうなんですから、いわんや経営をや、じゃないでしょうか。
ただ、ライブドアは企業ガバナンスが日本でいわれだしたときに創業し、(ガバナンスの本は、今は本屋に行けばたくさんありますが、1990年代のはじめにはごく一部のところでの議論でしかなかった)
堀江氏はこれらを読みながら、いいとこ取りをしながら、株式市場対策として、常にそれを意識しているわけですから、今度の件が決着すれば、どっちに転んだとしても、他の日本企業よりも進んだ企業ガバナンスの仕組みを組み立てると思います。
その動機は「株価対策」としてだとおもいますが、動機はともあれ、市場を意識して、ガバナンスの仕組み作ることを考えるのは、非常に重要かつ良いことだと思います。
(ライブドアさんがそうされるおつもりなのかどうかはともかく)、
『水は飲むな!』とか『ウサギ跳び校庭二周!』とかいう非科学的な根性論で少年時代から体を蝕むよりは、なるべく小さい頃から科学的なトレーニングを受けるようにしたほうが、選手生命も長くなるし成績も上がると思います。
アマチュアのうちからコーチを付けるに越したことはないですが、少なくともプロ(公開企業)になったら、自己流はやめて科学的なコーチを付けるべきじゃないでしょうか。
同様に、企業も少なくとも公開準備にはいったらいい社外取締役を取締役会に招聘するなど、いいコーポレートガバナンスのしくみを取り入るべきじゃないかと思います。
スポーツならまだ選手が故障してもそいつが困るだけとも言えますが、公開企業は、1株何百円からの小銭を個人投資家からも預かって運営してるわけですから。
(ではまた。)
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。
[経済]isologue
磯崎さんの考え方が、ちょっとずつ分かってきたような気がします。要するに、社外取締役の存在を重視したコーポレートガバナンスを日本に定着させたくて、今回のニッポン放送の件が、その一助にならないかと期待していると言うことなんですね。この裁判で、社外取締役の存…
■どもども、磯崎さん、つっこんでいただきありがとうございます。
ガバナンスに対して、既存の大会社のどれだけが真剣に取り組んでいるのか?
について、大きな疑問を持っています。
形式的には、いろいろと取り組みだしたことは事実ですが、
実質がどれだけあるのか、非常に疑問に思っています。
−
>かように、(水樹さんに限らず)、日本では「コーポレートガバナンスは”必要悪”
>ではあるが、経営の足を引っ張る要因」というイメージで捉えられているんじゃないか
>と思います。
−
磯崎さんのいうように、この通りの現実があると思います。
(もっとも、私自身は、ガバナンスをもっとまじめにやるべきだと思っています。)
例えば、今回、フジのTOBに応じることで名前が挙がった、
東京電力のガバナンスは実に形式的なものでしかありません。
核燃料再処理工場への投資についての都合の悪いことは、ウソだらけです。
(再処理工場は操業が目的ではなく、付属施設の高放射能廃棄物貯蔵施設
が欲しいための方便として作られている。)
正しく情報を開示するつもりはなく、形式的社外取締役を導入しています。
(社外取締役は原発関連・取引会社の役員を選任しています。)
形式は渋々整え出すが、中身がないのです。
もっとちゃんとしたガバナンスの体制を取らないと、大問題が起きてくると
思います。
−
■ライブドアのガバナンスを擁護するつもりはありませんが、
既存大企業のガバナンスのお寒い現実を思うとき、
ライブドアをあまり非難できないとも思っています。
私が、言いたかったのは、ライブドアは少なくとも市場の反応を気にして、
経営体制を考える姿勢があるように思えるだけマシだです。
−
>「中小企業型の企業統治でないと、成長期の企業は前に進めない」というのは
>世界的に見るとまったく成り立っていないということ、です。
>もしそうだとすると、Googleをはじめとしてスタートアップして間もないころから
>社外取締役の方が多いようなアメリカの会社は、
>みんな公開前後で成長の限界にぶち当たっててもよさそうなもんですが、
>むしろ、日本のベンチャーより時価総額が大きくなっている会社のほうが多い
−
これは、リスクマネーの投資のありようが、日本と米国では全く違う事に、
大きな原因があると思います。
ベンチャーに投資する投資家層が厚い米国では、彼らから資金を引き出すことが
重要です。そのため、彼らが求めるガバナンスの取り組みが必要になります。
また、米国の成功の方程式のようなものによれば、
(新しい技術力ある若者のアイデア)+(経営経験者)
の組み合わせが有効で、この組み合わせを投資家層が要求するし、
アドバイスも行うわけです。
ガバナンスは、これら投資家層の要求する仕組みになっています。
−
一方、日本の場合、リスクマネーの投資家層は薄く、ベンチャーファンドにしても
付和雷同する状況にもあり、ベンチャーが立ち枯れる環境がありました。
最近、状況は変わりつつあるのでしょうが・・・・・・・
このような創業環境の違い、投資家が要求する会社のありようの違いが
大きいと思います。
−
私自身はライブドアの「うさんくささ」については危惧するところもあるのですが、
日本の閉塞感の中で、あのようなエネルギーを見せられると、
走れ走れ走れ、とも思います。
同じように感じている人も多いのではないでしょうか。
−
>アメリカの事例で考えてみても、コーポレートガバナンスは
>投資家が安心して投資できる要素なわけで、
>より良質な資金を大量に集められる成長要因なんではないかと思います。
−
投資家層の厚みの違いが大きいとおもいます。
直接投資する小規模の個人投資家は、ガバナンスについて
実は日米ともに気にしていないように思います。
−
違うのは、年金資金やその他のファンドのありようです。
彼らは、顧客の代理人としてガバナンスにうるさいわけです。
なぜなら、長い投資経験の中で、顧客に対して説明のできない投資を
行ったときのリスクがあるからです。説明責任が果たせない投資はできない。
このことが、米国でのガバナンスを発展させたのだと思います。
−
>『水は飲むな!』とか『ウサギ跳び校庭二周!』とかいう非科学的な根性論で
>少年時代から体を蝕むよりは、なるべく小さい頃から科学的なトレーニングを
>受けるようにしたほうが、選手生命も長くなるし成績も上がると思います。
>アマチュアのうちからコーチを付けるに越したことはないですが、
>少なくともプロ(公開企業)になったら、自己流はやめて科学的なコーチを付ける
>べきじゃないでしょうか。
>同様に、企業も少なくとも公開準備にはいったらいい社外取締役を取締役会に
>招聘するなど、いいコーポレートガバナンスのしくみを取り入るべきじゃないかと
>思います。
−
確かに、これは正論ですが、日本はまだ過渡期にあります。
マスコミに出てくるコメンテーターの低レベルなコメントがつっこみを受けることなく
垂れ流されるのは醜悪です。「馬鹿なコメント」と「まともなコメント」が、
専門家同士での対立点のように編集して流される。
これらを見るとき、プロの専門家層がまだまだ薄いと思います。
投資家層も薄い。素人のような年金ファンド。
社外取締役にしても数少ない有名人を取り合っていたりが現実ではないでしょうか。
−
とはいうものの、磯崎さんの正論の方向に進むことを期待しています。
ルールとモラル
■基本的にライブドアは「ルール」は犯していない(ようだ)。 確かに「ルールの抜穴
社外取締役
磯崎哲也事務所さんの『isologue』で、今回のFL騒動に関する、かなり専門的でもありかつ中立公正な意見が連日掲載されている。
そのなから最新の重要記事をいくつかリンクしておこう。
February 24, 2005『レブロン基準と「ライブドア vs フジテレビ戦」』
February …
事例3-2-4(P.187) 地域社会を積極的にステークホルダーに取り込み、企業価値向上に取り組んでいる企業
神戸電子パーツ?は企業理念の明確化、法令等の遵守により、コーポレートガバナンス構築に取り組む。過程ではコスト負担が発生するが、ステークホルダー評価・企業価…