ニッポンの社外取締役

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47thさんが、社外取締役の実証研究や理論的モデルについて紹介されてます。
それによると

社外取締役について積極的に導入し、それに対する多くの研究もあるアメリカですら、「社外取締役の存在が企業のガバナンスを向上させる」という命題は、実証的研究という意味では、自明とは言い難い、ということです。

と、されつつも、

ただ、実証研究でサポートされていないということや、理論的モデルにおいて問題を抱えているということだけで、全てが語り尽くされていると考えることも、また早計です。
実際、実務で触れていると、「社外の人が入るとなると、説明資料なども丁寧に作らなければいけないし、そこで気づいていなかったことに気づくこともある」「社外の人たちの顔に泥を塗ってはいけないと思うと、判断が慎重になる」「社内の人間では取り上げにくいことが話題に上るようになった」といったような、非常に主観的・感覚的なものですが、社外取締役制度の導入に対するポジティブな評価を聞くことが多いように思います。

とのことです。
実際、理論的(?)に考えてみても、純粋に取締役会が会社を監督してきた(取締役に対する訴訟も多い)米国と、戦後、監査役制度と取締役会によるミックス型のガバナンスをとってきた日本とでは、社外取締役の意味はまったく違うんじゃないでしょうか。
ボケもツッコミも両方こなします(ツッコまないと外部からツッコまれる)というアメリカの取締役会に対し、日本で取締役会=ボケてばっかり、監査役(会)=ツッコミ担当(だがツッコむことは皆無に近い)という中に外部の風が吹き込むのとでは、まったく意味合いが違うように思えます。
委員会等設置会社(要社外取締役)に移行した会社の方々のアンケートでも、「やらない方がよかった」という会社は皆無に近くて、かなり「やってよかった」という感触が多いようです。47thさんおっしゃるように、やはり「内輪の論理だけで完結できなくなった」ということが大きいようですね。
(追記)
・・・と思ったら、本日の日経一面にソニーの経営陣刷新の話が。

社外役員 変革促す時代に(9面)
中谷巌UFJ総研理事長、小林陽太郎富士ゼロックス会長、カルロス・ゴーン日産自動車社長、宮内義彦オリックス会長ら有力メンバーをそろえ、「内輪の論理」は通用しない。

とあります。
要は、単に制度上「社外」の要件を満たすかどうかじゃなくて、「どこまで執行メンバーにツッコメるか」、がポイントでしょう。統計処理するなると、単に制度上の社外の要件を満たすかどうかで、カルロス・ゴーンも社長の昔からの友達も同列に処理されてしまうでしょうから、どこまで「強力な」メンバーなのかは考慮されないのでは。
補足トリビア:
新会社法で、「委員会等設置会社」は「等」が取れて、「委員会設置会社」という名称になる方向らしいですね。取れると聞いて初めて「そういえば”等”って何だったんだろう?」って方が99.9999%だと思いますが。
(ではまた。)

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7 thoughts on “ニッポンの社外取締役

  1. いつも楽しく拝見させていただいています。
    ところで、「委員会等設置会社」の”等”は、執行役のことではないかと思いますが、いかがでしょうか。。。
    商法特例法
    (委員会及び執行役の設置等)
    第二十一条の五  委員会等設置会社には、次に掲げる機関を置かなければならない。
    一  指名委員会
    二  監査委員会
    三  報酬委員会
    四  一人又は数人の執行役
    2  委員会等設置会社には、監査役を置くことができない。委員会等設置会社を設立する場合についても、同様とする。

  2. 遂に引責辞任(SONY)

    スポニチの記事ですが、「SONY出井会長、安藤社長退任へ」と出ました、トップの責

  3. 確かに条文のつくり的には執行役っぽいと思いつつ、現代化で執行役が廃止されるわけではないので、よく分からないところです。
    風の噂に重要財産委員会が廃止されることの絡みということも聞いたので、とすると、今までの「等」は、「etc」ではなく、単独委員会会社(重要財産委員会を設置している会社)と三委員会会社を区別する単複の区別文言だったけど、今回重要財産委員会はなくなるので、区別の必要はないから「等」をとる、という、物凄くマニアックな話かも知れませんね。

  4. ニッポン企業のガバナンスと社外取締役

    昨日の「社外取締役と企業のガバナンス」について、磯崎さんから「ニッポンの社外取締役」という記事でトラックバックを頂きました。
    磯崎さん曰く
    実際、理論的(?)に考えてみても、純粋に取締役会が会社を監督してきた(取締役に対する訴訟も多い)米国と、戦後、監査脈..

  5. うーん。。。
    2月9日の会社法制の現代化に関する要綱を見る限りにおいては委員会等設置会社との文言があるし、「三委員会等(指名委員会,監査委員会,報酬委員会,執行役)」との記述もあるので本当に「等」が取れるのかな?っと言った感じですね。
    http://www.moj.go.jp/SHINGI/050209-1-1.html

  6. 初めまして、毎日楽しみに見させて貰っています。
    今日のニュースに、榊原英資氏がリーマンのボードメンバーを辞任するというニュースがありました。榊原氏は、いわゆる社外取締役に当たると思うのですがどうなのでしょうか。(アドバイザーという立場のようですが)
    榊原氏が社外取締役に当たるとして、榊原氏がテレビで仰ったニッポン放送株周辺についての話は、客観的中立立場の物であったと思います。それなのに、世間ではリーマン側の人間とか株価操作だとか、氏を悪く言う発言が多いですね。主にマスコミですが。これでは社外取締役が中立な立場での発言すらさせてもらえないような風潮になり、結果的に社外取締役の社会的地位が低下する要因になってしまうのではないでしょうか。
    中立の発言(というより今回は事象説明)が反感を買う世の中なんて息苦しいですね……

  7. 社外取締役について考える 後編 日本における社外取締役の監督機能の理想形を提示してみる

    社外取締役の制度について「社外」の条件(※)などは詳細は専門書にゆずるが、商法・商法特例法・証券取引法等に根拠のある監査で、会社従業員の目から見てぶっちゃけた話、名実ともに監査らしい監査がまともにされたなあと思ったことは一度もない。もっともこれで制度の