今週の週刊isologueは一年の最初なので、昨年の記事を一覧する「総集編」をお届けします。
今年も、何卒よろしくお願い申し上げます。
詳細は、以下をご覧下さい。
(以下、リンクはブログでの紹介にリンクしています。)
(第144号) 謹賀新年(2011年の「週刊isologue」総集編)
2011年1年間を振り返った総集編の回です。
(第145号)エクソンモービル日本事業縮小報道についてのまとめ
この回では、1月4日に各社で報道された、石油最大手エクソンモービルの日本事業の縮小方針について考えます。
石油事業は、この週刊isologueで取り上げることが多いITやネット系の事業とは正反対の「リアル」の極みの事業とも言えますし、アップルとならんで時価総額が世界最大級の会社なので、基礎的なところから事実を確認していきたいと思います。
目次とキーワード:
- 報道された事業縮小スキームの内容
- 石油産業における「川下」とは
- 株価への影響
- 東燃ゼネラル石油の第4位株主「高知信用金庫」?
- エクソンモービルの日本法人は「有限会社」
- 自社株買いの東燃ゼネラル石油への影響
- 東燃ゼネラル石油の現預金はほぼゼロ!? 全体の3割超もの株式を購入出来るのか?
- 株式売却のエクソンモービルへの影響
- エクソンは何で儲けているか?(セグメント情報)
- 設備は世界のどこに分布してるか?(アラブではなかった)
- 東燃ゼネラル石油が連結からはずれると、日本地域の売上はゼロになるか?
- おまけ:時価総額世界一を競うアップルとの財務比較
米国の「secondmarket」等では、未上場株式にも関わらず、FacebookやTwitterなどの株が大量に取引されていると言われています。この回では、そうした状況が日本でも近い将来に出現する可能性があるのか?、出現させた方がいいのか?させない方がいいのか?といった点について考えました。
目次とキーワード:
- 日米の未公開株式取引関連資料
- 米国の未上場株取引の現状
- 日本のグリーンシート銘柄制度の概要
- 日本の未上場会社の譲渡制限の歴史
- 米国の譲渡制限
- 米国ベンチャーの実例
- ストックオプションのベスティングの日米相違
- 未上場株取引が増えると、何かいいことはあるのか?
- まとめ
(第147号)「Femto Startup LLP」はじめました
すでにブログ等でも公表させていただいていますが、今月2012年1月より、株式会社インターリンクと、同社社長横山正氏といっしょに、「Femto Startup LLP」(有限責任事業組合フェムト・スタートアップ)という、ベンチャーをサポートする組織をはじめました。
このLLPを使った少額投資のスキームは、知恵とお金を集めて少額の投資をしながらベンチャーのサポートをしようと考えている人役に立つのではないか、とも思いますので、この回ではこのスキームを作るにあたって考えたことを、いろいろご紹介させていただきました。
この回では、前半の「Femto Startupで考えていること」は投資を受けるベンチャー向けの説明にもなっていますが、それ以降の部分は、どちらかというと、ベンチャーをサポートするための少額投資やインキュベーター的なことを考えている人や、事業会社からの投資を考えている人向けの内容になっています。
目次とキーワード
- Femto Startupで考えていること
- 「femto」とは
- 投資とサポート内容
- CFO的役割は必要とされているのではないか
- ベンチャーをどう応援するか?
- 「相場」の形成
- 応援したいベンチャー
- 運営コスト
- 有限責任事業組合(LLP)を採用
- 「株式会社」じゃダメなのか?
- 金商法上の規制の概要
- どこまで各組合員の関与が求められるか?
- まとめ
(第148号)創業メンバーの中途退任時に株を返してもらう方法
日本では、起業をする際に「友人数人といっしょに起業する」というより「1人で起業する」というパターンが多い気がします。これに対してアメリカで大成功している企業を考えてみると、友人同士でいっしょに起業しているケースが多いですね。
ここで注意する必要があるのが、資本政策です。大きな株式の比率を持つ共同創業者が途中で抜けた場合には、資本政策が大きく想定からはずれてしまいます。(特に、ベンチャーキャピタル等から資金調達をして会社の企業価値が大きくなった後)
こうした状況を乗り切るため、「共同創業者(co-founder)が途中で辞めた場合には、全部又は一部の株式を返してもらう」ということを、会社を始める際に決めておいた方がいいんじゃないか?、というのがこの回のテーマです。
今週の目次とキーワード
- 資本政策上の問題
- インキュベーターにはどのくらいの株式を渡せばいいか?
- 共同創業者には、どのくらいの株式を渡せばいいか?
- Googleの創業者のケース
- 契約の例(日本版Restricted Stock Purchase Agreement)
- リバース・ベスティング(reverse vesting)
- 意外に怖い、返還時の税務
- 「個人→個人」の譲渡のケース
- 「個人→法人」の譲渡のケース
- 会社法上の問題
- 会社が低額で取得した自己株式の計上額はいくら?
- 「株+契約」で一体とみなせないか?
- 種類株式とした場合
先週2月1日に、ついにFacebookが上場申請のために、「Form S-1」をSECに提出しました。 この回ではこのFacebookのS-1を見て、今までの予想との違い、今後の課題等について考えてみました。
今週の目次とキーワード:
- 公募の概要
- Dual Class
- 日本における議決権種類株式の上場制度
- 株主構成は予想通りだったか?サベリンは?ウィンクルボス兄弟は?
- Googleの上場時及び現在の財務内容との比較
- 競合関係
- Zyngaへの依存
- 超豪華役員構成
- まとめ
(第150号)Femto Startupの投資契約を公開します
今年1月からはじめたFemto Startup LLPが、1月30日に第一号案件として株式会社ピースオブケイクに投資をさせていただきました。 このときの投資契約をベースに、設立間もないシード期のベンチャーにエンジェルやインキュベーターなどが投資をする際の投資契約書の「ひな形」を作成してみました。
ひな形本文はFemto Startupのウェブに上げてありますが、「なぜこういった条件にしたか?」といった、ひな形の考え方について、この回で解説させていただきました。
このひな型は、
- 設立間もない「シード」のベンチャーで、
- 近い将来、ベンチャーキャピタルなどからさらに資金を調達する予定があり、
- 上場やM&AでExitを考えている企業に対して、
- いわゆるエンジェルやインキュベーターなどが200万円から500万円程度を投資し、
- 発行済株式数の平均5%程度を取得するような投資
といったケースを想定したものとなっています。
この「ひな形」を作るにあたっては、AZX総合法律事務所の雨宮美季弁護士に多くのご協力を頂きました。また、司法書士松田事務所松田敏明司法書士にも、多くのコメントを頂きました。ありがとうございました。但し、ひな形の内容及び特にコメント部分については、当然のことながらこの記事の筆者に責任があります。
(また、このひな形は一般化をしてありますので、第一号案件株式会社ピースオブケイクの契約書と一言一句同じにはなっておりません。念のため。)
ひな形のpdfはこちらをご覧下さい。 http://femto.st/pdf/Femto_Startup_investment_agreement.pdf
目次とキーワード:
- なぜ投資契約を結ぶのか?
- なぜ5%程度の投資なのか
- 取締役会”非”設置会社をオススメするわけ
- 投資契約書の位置付け
- 投資の目的は何か?
- 投資は、普通株式?種類株式?Convertible Note?
- 資金使途の制約はどの程度付けるのか?
- 表明及び保証の範囲
- ウソなどがあった場合の買取請求権
- その他
(第151号)Facebookのザッカーバーグ氏はちゃんとガバナンスされているのか?
2月1日にFacebookが上場申請資料を提出しましたが、2月8日には、これに関連する契約書などの大量の添付資料を提出しています。 今までも、「Dual Class」普通株を使って経営者が議決権を確保して上場するケースは、Googleなどでもありましたが、Google等では創業者等による相互牽制が効く構造になっていたのに対して、FacebookのザッカーバーグCEOはまさに1人で株主総会を牛耳れる「独裁者」ですので非常にまずいのではないか、といった論調も見られます。(「独裁者」のイメージが強いSteve Jobs氏も、追放された時に株をほとんど売却してしまったので、株主総会を支配できるだけの議決権は持っていませんでした。) この回では、S-1や添付資料から、ザッカーバーグ氏に対するガバナンスが機能しているかどうかを判断できそうな周辺事情、その他について概観してみました。
目次とキーワード:
- 添付資料の一覧
- Facebookの株券
- Facebookの子会社
- Facebookのファイナンス履歴
- ザッカーバーグのお父さんへのオプション
- 新聞社CEOの娘が…
- ザッカーバーグのお姉さん
- 不動産賃貸契約と「ハッカーウェイ」
- Menlo Park市で一番課税資産を持っているのは?
(第152号)Facebook役員の雇用条件はどうなっているか
「週刊isologue(第148号)創業メンバーの中途退任時に株を返してもらう方法」で、日本でも、創業初期の共同創業者などに株を渡す時に、アメリカのRestricted Stockのようなことをやった方がいいのでは、と提案させていただいただきました。 この回ではFacebookを参考に、上場する規模になった企業の役員(officer)の雇用条件(Restricted Stock Unit=RSU等)を見てみました。
目次とキーワード:
- ザッカーバーグへのオファーレター
- 「controlled company」とガバナンス
- ザッカーバーグ氏が昨年私用に使った費用
- 報酬は本当に1ドルになるのか?
- どの程度の株を出せば全米トップクラスのスーパーな人材に来てもらえるか?
- サンドバーグ氏入社のタイミングとリスク
- 「COO」の職務の定義とは?
- 「クビ」は契約で禁止されているか?
- 会社側都合でのクビの場合のベスティング
- 買収の場合のベスティング
- 法務担当Ullyot氏が昨年使った費用
- Ullyot氏の報酬は、なぜかくも高額なのか?
- オフィサー間の報酬のバランスは取れているのか?
米国のレストランなどの口コミサイト「Yelp」社が3月2日金曜日に上場しました。 この回では、このYelpと、ぐるなび、食べログといった日本の飲食系サービスを比べて、ネットの飲食系サービスのビジネスモデルについてざっくり考えました。
目次とキーワード:
- Yelpの概要
- 口コミ、月間ユニークビジター、店舗数
- ビジネスモデル、売上の内訳
- なぜOpenTable社がYelpと提携しなければならなかったか
- 損益の状況
- 赤字と見くびっていいか?
- Yelp Foundationとは?
- 国別の売上
- 未上場段階の調達額、キャッシュ
- 資本政策:創業者でCEOなのに持株比率が…
- PayPalマフィア
- 「食べログ」の業績と、財務的に見たYelpとの違い
- 「ぐるなび」の業績と、財務的に見たYelpとの違い
- なぜ日本の同業は、時価総額でYelpに負けるのか?
- これからの日本のO2Oベンチャーの財務戦略
(第154号)ベンチャーファイナンスの新常識 – 方向転換した新しい上場審査基準
3月7日水曜日、3月8日木曜日の2日間、慶應義塾大学の三田キャンパス東館8階ホールで、「20th Venture Private Conference」というイベントが開催されました。 今回のセッションで各パネラーが訴えたかった最大のテーマは、 「現在の証券取引所の上場審査の考え方は大きく変貌を遂げ、本質重視で柔軟なものになっている」 「上場のための特殊なテクニックではなく、『本質』が重要」 という点だと思います。 (この回は、一般にも内容を公開しています。)
目次とキーワード:
- キャンバス加登住氏の発表内容
- 創薬ベンチャーの財務的特徴
- 「マイルストーン」
- 「マークアップ」
- CFOの役割
- 上場準備の古いパラダイム
- 「マザーズ上場の手引き」がバイブル
- 「反社会的勢力」チェックの負担
- 東京証券取引所 池田氏の発表内容
- 反社会的勢力チェックの考え方の変化
- 事業計画の評価の考え方の変化
- 他
(第155号)日本にも「クラウド・ファンディング」は来るか?(その1)
米国では「クラウド・ファンディング」を可能にする法律が下院を通過して、クラウド・ファンディングの機運が一気に盛り上がりを見せています。
クラウド・ファンディングとは、ネットなどでベンチャー等が直接一般投資家等から資金を集めることを指します。「クラウド」は「クラウド・コンピューティング」の「クラウド(cloud)」と同じではなく、「大衆」の方の「クラウド(crowd)」です。
日本のネット上でも、このニュースが「日本でもクラウド・ファンディングが可能になるんでは?」と期待を持って迎えられていますが、果たして日本ではこのクラウド・ファンディングは可能なのでしょうか?今回から何回か、このクラウド・ファンディングを日本で成立させるためには、どのようなことが必要になるのか、そもそもこんなことをやっちゃって大丈夫なのか?等について考察しました。
目次とキーワード:
- 株式で資金調達を手伝う際の規制
- 株式の公募と私募
- みなし有価証券の公募
- 第一種金融商品取引業者
- 未公開株は原則として取扱い禁止
- 適格機関投資家向け投資勧誘
- 店頭取扱有価証券の投資勧誘
- グリーンシート銘柄
- 方向性まとめ
(第156号)日本にも「クラウド・ファンディング」は来るか?(その2)
前回の週刊isologueでは、日本で「クラウド・ファンディング」を行う場合にどのような制約があるのか、ということを整理してみました。
3月22日木曜日に、ついに!クラウド・ファンディング関連法案「H.R.3606 – Jumpstart Our Business Startups Act」が米国の上院も通過しましたが、この法案が具体的にどのような中身になっているのかを見てみました。
目次とキーワード:
- 法案の目次
- 「零細企業が対象」ではない!
- 新興成長企業(emerging growth companies)の定義
- 開示義務の免除
- 内部統制監査・会計監査関係の免除
- アナリストレポート関係
- 個人と機関投資家と、どちらへの情報開示が重要か?
- 「仲介者(intermediary=クラウド・ファンディングのプラットフォーム)」がいる場合といない場合
- 発行会社や仲介者の義務
- 仲介者は「証券会社」か?
- どのような譲渡制限が付くか?
- 投資家保護や詐欺防止のために、どのような要件が課せられているか?
(第157号)日本にも「クラウド・ファンディング」は来るか?(その3)
この回では、日本でクラウド・ファンディングをはじめとする巷のニーズをすくい取った非上場株式取引が適切に行われるためには、どのように制度を変える必要があるのかについて、今までの非上場株式やクラウド・ファンディング関係の記事をもとに、まとめてみたいと思います。
日本の上場企業は(たった)数千社しかありませんが、非上場会社の数は日本だけで300万社にものぼります。つまり、現在の証券会社の取引の中心となっている上場株式の取引というのは(現状の金額では日本の株式の取引のほとんどすべてを占めていますが)、可能性は極めて限定されてしまっています。
非上場株式を証券会社が取り扱うことは日本証券業協会のルールで現在は原則として禁止されていますので、潜在的な非上場株式の取引ニーズの全体像を把握している人は、現状非常に少ないと考えられます。だからこそ、この非上場株式の取引を「原則自由」にし、多数の人の知見が行かせる市場メカニズムに任せる方向で考えていかないといけないのではないかと考えます。
目次とキーワード:
- 改善の方向性の要旨
- 証券会社の非上場株式取扱い原則自由化
- 既存のルールの枠組み
- 「業務独占する者」の社会的義務
- 日本の取引量は潜在的需要を反映しているか?
- 自由化と投資家保護は両立可能か?
- 具体的な変更イメージ
- 非上場株式取扱の自由化
- セーフハーバー化
- 募集をネットで行いやすくするために
- 「新興成長企業の募集」の要件
- グリーンシート銘柄等の位置付け
- 法律の変更
(第158号)500 Startupsの事例でみる、インキュベーターの資金調達
米国でスタートアップに投資をする「500 startups」が新しいファンドの資金調達を計画しているようです。(TechCrunchの記事、「500 Startups Raising New $50M Fund, Names 4 New Partners, With 250+ Investments To Date)
この回では、この500 StartupsがSEC(米証券取引委員会)に提出している資金調達関連の文書をもとに、アメリカのインキュベーターやベンチャーキャピタルの資金調達について考えてみました。
目次とキーワード:
- 500 startupsとは
- 資金調達の概要
- 資金調達のSECへのファイリング
- 1号ファンドの調達実績例
- まとめ
(第159号)Googleが計画する株式分割は「evil」(悪)ではないのか?
4月12日に、Googleが2012年第1四半期の決算を発表するとともに、「株式分割」も発表しました。
Googleはご存知の通り、今までも一般に流通する「Class A」普通株(1株1議決権)と、Larry Page、Sergey Brin の2人の創業者等が持つ「Class B」普通株(1株10議決権)を発行していました。 今回行う「株式分割」は、それぞれの種類の株式をただ単に2つに分割するのではなく、「Class C」普通株(議決権無し)という新しい種類の株式を、既存の株主の1株に対して1株配当します。
Googleはなぜ、このような一件奇妙な「株式分割」を行う必要があるのでしょうか? またこれは、「Don’t be evil」という社是に反した「evil」な目的は無いのでしょうか?
正式なSECへの開示は今週行われる予定ですが、この回ではまず、創業者からのレターやGoogleによる解説資料から、そのへんを探ってみました。
目次とキーワード:
- 創業者からのレター
- なぜ創業者に権力を集中させる必要があるのか?
- 株式配当で実質「株式分割」となるスキーム
- 無議決権のClass C普通株の導入
- Sergey Brin氏は引退するのか?
- Sergey氏がGoogleを辞めたら、1株10議決権の特権はどうなる?
- この株式分割で、既存の議決権比率が創業者有利に調整されるのか?
- 新「Class C」株の導入は上場後の株式構造の変更にあたるのでは?
- スキーム検討のプロセス
- 新「Class C」株は市場で売却できる?
- 決算説明会でのアナリストからのツッコミは?
- 従業員向けストックオプション等はどういう影響を受ける?
- まとめ:このスキームの「悪さ」具合
(第160号)Google新資本政策の検討経緯が公表された!
4月12日に発表されたGoogleの無議決権「Class C」普通株を使った「株式分割」続報。この回では先週4月20日金曜日に新たに発表されたGoogleのPloxy Statement(株主総会招集通知)に開示されている、ものすごく詳細で長期にわたる、このスキームの検討プロセスを見てみました。
目次とキーワード:
- Googleの株主総会招集通知
- 株主総会の議案
- 基準日
- 取締役候補(≒スキーム検討のメンバー)
- 大株主の状況
- 定款変更の内容
- 検討の経緯
- 特別委員会メンバー
- 種類株式の上場と流動性
- 特別委員会は「ヤラセ」で検討していたか?
- シュミットCEOとプリンストン大学学長の独立性
- 財務アドバイザーによる各種検討
- なぜ2011年8月の検討が飛んでいるか?
- 利益相反が考えられる場合とそうでない場合の落差
- 「信任義務(fiduciary duty)」という美しい名の恐怖
この回では、Googleの創業者支配を続けるための「Class C」普通株の株式配当を使った資本政策の第3回目として、株主総会招集通知に記載されている経営陣からの議案の説明の後半部分について考えてみました。
目次とキーワード:
- 「コントロール・プレミアム」を消す!
- Class A株(1議決権)とClass C株(無議決権)の取引価格は乖離するか?
- 無議決権株を使った買収を行う場合の、内国歳入法上のスキームへの影響
- 「額面(par value)」と、分割時の会計処理
- 他の取締役会メンバー(John Doerr氏など)のClass B株の扱いは?
「クラウドファンディング」「ベンチャーファイナンス」だけに限らず、非上場株式の取引ニーズ全体を私なりに一通り整理してみましたので、週刊isologueでシェアさせていただきました。
目次とキーワード:
- 非上場株式の取引にはどのようなものがあるか?
- 新規に株式を発行する場合
- 既存の株式を取引するニーズ
- 適合性の原則から見た取引分類
- マクロ的に見た非上場株式取引ニーズ
(第163号)財務・法律好きの方のための「海とベンチャースピリット」
私事で大変恐縮ですが、この回の前週に「一級小型船舶操縦士」の試験に合格いたしました。ということで、この回では(誠に勝手ながらこれを自ら記念させていただきまして)、財務・法律好きの方のための「海とベンチャースピリット」と題してお送りいたしました。
日頃、会計原則とか金融商品取引法とか会社法とか、世知辛いルールに接しているみなさんは、「海のルール」を知ると、あまりのおおらかさ、大雑把さ、大胆さに度肝を抜かれるんじゃないかと思います。
この「海のルール」、一部の人を除いてみなさんのお仕事に直接役立つ可能性は低いと思いますが、海という非常に高いリスクの環境でビジネスをしてきた「ベンチャー」の歴史を反映したものになっていて、数千年規模の壮大なロマンや叡智を感じます。 商社等で輸出入業務などをやってらっしゃる読者の方には常識のことも多いと思いますが、初学者が気付いたことということで大目に見ていただければ幸いであります。
目次とキーワード:
- 「海商」萌え
- 海商法の起源
- 船長の権限
- 航海日誌(Star Trek)
- 「船舶の共有」という投資スキーム
- 共同海損
- 地上の世知辛さとの比較
- 条約を通じて外国と繋がる
- 国旗掲揚権
- 領海
- ボート、ワリカンなら一回4000円前後くらいから
(第164号)Facebookの役員はIPOで巨額のキャッシュを手にしたのか?
この回の前週金曜日についにFacebookが株式を上場しました。 さぞやFacebookの役員には大金が転がり込んでウハウハ・・・と想像する方も多いと思いますが、実際はどうでしょうか?
この回では、このFacebookの上場時の資本政策と、実際にどういう株主にどの程度の金額の現金が入ったのか等について、Facebookの最終版の目論見書をもとに検討しました。
目次とキーワード:
- IPO後の株価推移
- IPOで持株比率や議決権比率はどうなるか?
- Zuckerberg氏の議決権比率を増やす(涙ぐましい?)努力
- 役員にはどのくらいキャッシュが入ったのか?
- Instagram買収で儲けたFacebook株主
- なぜIPOしたのにZuckerberg氏の議決権割合が逆に増えたのか?
- (おまけ)GrouponのIPOとの比較
(第165号)良いクラウドファンディング、悪いクラウドファンディング
「クラウドファンディング」とは、一般の人(crowd)から資金を調達することで、タイプとして、
- 資金を出した対価を求めない「寄付型」
- プロジェクトが成功したら、製品やサービスなどが受け取れる「購入型」
- 金銭的なリターンを求める「投資型」
といった3つのタイプに分類されることが多いと思います。
今までも、この週刊isologueでは、155号、156号、157号、162号などで、「JOBS Act」や「日本での株式によるクラウドファンディングの可能性」について取り上げてきましたが、この回では、「生の株式」ではなく、組合の持分など「みなし有価証券」を用いた投資型のクラウドファンディングは日本でもすでに行えるし、アメリカに比べても投資型クラウドファンディングが行いやすい国なんではないか、その場合に、どういう課題が存在するか、採算性はどうなのか、といったことについて考えました。
目次とキーワード:
- クラウドファンディングの分類
- 株式を使ったクラウドファンディングの可能性
- 「2項証券」なら可能ではないか
- 「プロ」参画の必要性
- あえて「クラウド」から集める意味は何?
- プラットフォーム事業自体の魅力は?
Facebookは、公募価格38ドルでIPOし、この回の前週金曜日の終値では28ドルを割り込んで、27.72ドルで終わっています。 ということで、この回では、上場後株価が低迷しているFacebookの時価総額について考えました。
「Facebookのビジネスから考えて、今の時価総額や株価が適正なのか?」といったことを考えている人はたくさんいらっしゃると思いますが、この回では、発行済株式や潜在株式などを詳細にきちっと見ていき、それをベースにどういったことが言えるのかを考えました。
(数値がたくさん出て来るので、図解を多用してみました。)
目次とキーワード:
- 時価総額のベースとなる株式数は?
- 株式数は最も基本的な数値のはずなのに、なぜバラバラ?
- 公募増資分と売出し分
- 上場直前と直後の株式数
- オーバーアロットメント分はどう考えるか?
- オーバーアロットメントで証券会社はどのくらい儲かった?
- TechCrunchの数字の根拠は?
- Yahoo!、Google、WSJ等の数字の根拠
- 株式数、企業価値と議決権との関連図
- 潜在株や今後の浮動株の株価への重しの度合いは?
- ザッカーバーグの支配は続けられるのか?
この回では、今までやってそうでやってなかったベンチャーキャピタルによる資金供給について、深堀りしてみます。
ベンチャーキャピタルは、ベンチャーへの資金供給の大動脈、というイメージがあります。ところが、日本について言えば、ベンチャーキャピタルは必ずしもベンチャーへの資金供給の中心になっていないんじゃないでしょうか?
以前は2000億円以上あったベンチャーキャピタルによる年間投融資額が、現在では年間450億円程度まで落ち込んでいるという情報もあります。
しかし、逆に450億円もどこに投資されているのでしょうか?
この回では、2000年以降上場した時価総額の大きい主立ったベンチャーの目論見書と、その株主の状況や増資の内訳をひもといて、実際に、どういったベンチャーキャピタルが、どういう会社にどの程度投資をしてきたのかを見てみました。
目次とキーワード:
- 楽天株式会社
- 株式会社ディー・エヌ・エー
- 株式会社ミクシィ
- グリー株式会社
- 株式会社スタートトゥデイ
- ライフネット生命保険株式会社
- まとめ
この回では、米国シリコンバレーでも大手のベンチャーキャピタル「Kleiner Perkins Caufield & Byers」(KPCB)の開示資料などを中心に、日米のベンチャーや証券ビジネスについて取り上げました。
目次とキーワード:
- KPCBの概要
- KPCBのベンチャーキャピタリスト
- VCと予言の自己成就
- セクハラ事件と非公開パートナーシップの危機管理対応
- John Doerr氏のコメント
- KPCBのファイナンス面
- 「KEIRETSU」と「ZAIBATSU」
- Appleの金融子会社の住所?
- アメリカの大量保有報告書
前回のKPCB編に続いてこの回ではSequoia Capital(以下「セコイア」)編です。
セコイアの開示資料などを元に、「どこに投資したか」といった視点とは別の観点から、米国のベンチャーキャピタルをながめてみました。
目次とキーワード:
- セコイアの概要
- セコイアのベンチャーキャピタリスト
- セコイアのファイナンス面
- サイドファンドを使ったインセンティブ構造
(第170号)上場株式の譲渡益等の税率はなぜ10%がいいのか?
ネット証券大手4社が、上場株式のキャピタルゲイン税率10%の延長の署名を求めていたので、この回ではこの上場株式等のキャピタルゲインの税制について考えました。
目次とキーワード:
- なぜ「金持ち」の税率は低いのか?
- 「金持ち」とは何か?
- キャピタルゲイン課税の整理
- キャピタルゲインには「努力」の要素は無いのか?
- 基本書では何と言っているか?
- 金融税制研究会のレポート
- 「株をやってるやつはデイトレーダーまたは金持ち」…ではなかった
- 原則に戻すことで、どの程度の増収になるのか?
- 資金循環とキャピタルゲイン課税
(第171号)米国では金融出身者はベンチャーキャピタリストにはなれないのか?
「日本のベンチャーキャピタリストは新卒入社や金融業界出身者ばかりだが、アメリカのベンチャーキャピタリストは全員エンジニアや経営の経験者だ(→日本のベンチャーキャピタリストはイケてない)」 といったことをおっしゃる方もいらっしゃいますが、本当にそうなのでしょうか?そもそも、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストというのは、どういう人がなっているのでしょうか?
この回では、第168号「ベンチャーキャピタル研究(KPCB編)」でも取り上げた、米国シリコンバレーでも大手のベンチャーキャピタル「Kleiner Perkins Caufield & Byers」(KPCB)の「Digitalチーム」のメンバーの略歴から、ベンチャーを取り巻く生態系の重要な一部であるベンチャーキャピタルの人材について考えました。
7月17日にYahoo!(ヤフー)のCEOに、元Googleの従業員マリッサ・メイヤー氏が就任しましたので、今回はこのYahoo!を素材に、ネット系企業の財務について考えました。
目次とキーワード:
- Yahoo!の財務内容は、ボロボロ?
- ネット系企業はなぜ大量の現金を持つのか
- ネット企業と「勢い」
- 次回、マリッサ・メイヤー氏就任で事態は変わるのか?
この回は、7月17日にYahoo!(ヤフー)のCEOに就任したMarissa Mayer氏へのオファー・レターの内容を分析してみました。
目次とキーワード:
- 年間ベースサラリー
- 株式インセンティブ(RSUとストックオプション)
- 前CEOスコット・トンプソン氏との比較
- マリッサは合計いくらもらえるか?
- なぜ1年目だけボーナスがデカい?
- Yahoo!はどのように「企業価値」を上げるのか?
(第175号)何がヤフーを変えたのか?:創業者持分とアクティビスト
Marissa Mayer氏がYahoo!(ヤフー)のCEOに就任したのは、Forbesの記事で、アクティビストのDaniel Loeb氏が動いたからだ、と書かれていますが、今回は、このDaniel Loeb氏の素性やYahoo!の上場前からの資本政策の問題について考えました。
目次とキーワード:
- Yahoo!の未上場時の驚きの資金調達額
- ネットバブルとベンチャー生態系の変化
- ソフトバンクのYahoo!出資と楽天のPinterest出資を比較する
- ジェリー・ヤン氏の持株比率推移
- 共同創業者デビッド・ファイロ氏の驚きの持株比率
- Yahoo!とGoogleの資本政策の対比
- Yahoo!は最初から創業者にCEOをやらせるべきだったのか?
- Daniel Loeb氏の買い増し
- Daniel Loeb氏の華麗な家系
- Daniel Loeb氏は、どんな投資をする人なのか?
(第176号)アクティビストはYahoo!にどう変革を迫ったか?(前編)
今回は、アクティビストのLoeb氏が、Yahoo!をどう追いつめていったのかを見てみました。
目次とキーワード:
- 宣戦布告
- Yahoo!取締役会のガバナンス
- 尊敬されているアジアのパートナー(respected Asian partners)
- 株価の推移と、買付けの経過
- Loeb氏はCarol Bartz解雇を見て、Yahoo!株を買い集めたのか?
- Loeb氏の見るAlibaba Groupの価値
- ジェリー・ヤン氏とプライベートエクイティ
- 「leveraged recapitalization」の問題点
- プレーンバニラなYahoo!のガバナンス vs dual class
(第177号)アクティビストはYahoo!にどう変革を迫ったか?(中編)
アクティビストLoeb氏率いるThird PointがYahoo!に自らが選んだ取締役を選任することを要求し、委任状闘争(前哨戦)が開始された件について。
(出所:Proxy Statement Pursuant to Section 14(a) )
目次とキーワード:
- Loeb氏が要求した「プロセス・レター」とは?
- Loeb氏のコーポレート・ガバナンス感覚
- アクティビストのインサイダー取引防止態勢
- 取締役候補の豪華さと人材の層・流動性
- 委任状闘争開始
- 委任状闘争には、どのくらい費用がかかるのか?
- Yahoo!株式取得の全履歴(60日分だけじゃない)
(第178号)アクティビストはYahoo!にどう変革を迫ったか?(後編)
今回は、委任状闘争モードに突入したアクティビストLoeb氏率いるThird PointがYahoo!に対して広報合戦を繰り広げ、ついに和解に至ります。
目次とキーワード:
- Loeb氏はなぜ3月4日以降、買増しをやめたのか?
- アクティビストにも「ソーシャルメディア」の波がやって来た
- Scott Thompson元CEOの学歴詐称を発見
- 「Corporate Governance Experts Speak Out」
- アクティビストはどういう「落とし前」を付ければ納得してくれるのか?
(金額、取締役の数)
(第179号)スタートアップの資金調達は「転換株式」で決まり!?
先週から「convertible equity」というコンセプトが一部で話題になっています。
米国のベンチャー支援組織とシリコンバレーの大手弁護士事務所の弁護士が協力して、このconvertible noteの欠点を補った「convertible equity」のひな型を8月31日に発表し、同日、TechCrunch、Forbes、Fortuneといったメジャーな媒体でも取り上げられました。
今回はこの「convertible equity」が日本でも使えるかどうかについて考えてみました。
目次とキーワード:
- convertible equityの、ひな型
- convertible noteのメリット・問題点
- 日本版convertible noteの問題点
- convertible equityのメリット
- 「convertible security」は「転換株式」か?
- 「負債」「資本」とは何ぞや?
- 日本でのインプリ上の課題
・受贈益?
・DESできるか?
・金融商品取引法上、どういう扱いになるか? - 日本版convertible equityのタームシート案
(第180号)電子出版戦争前夜:Amazonと楽天の戦いを財務面から考える
日本ではAmazonのKindleに先行して楽天が「Kobo」をリリースしました。
しかし、「『世界のAmazon』が日本でKindleをリリースしたら、楽天のKoboなんてイチコロでしょ?」と思ってる方も多いかもしれません。
今回は、この戦いがどうなるか、テクノロジー等ではなく、財務的な観点からざっと考えてみました。
目次とキーワード:
- Kobo社買収の概要
- Koboのネット上でのポジション
- 楽天は「ネットショッピングの会社」か?
- Amazonと楽天はどちらが儲かってる?
- 本当の敵は誰か?
秋の連休シーズンなので、日常の陸の世界からちょっと離れて、商法の「海商編」を取り上げてみました。
司法試験でも公認会計士試験でも、商法第三編「海商」の部分は試験範囲から除外されてますので、私は「試験範囲に入ってないということは、よっぽどショーモナい法律なんだろな」と思ってました。(すみません)
ところがよく読んでみると、(特に昔の)海商というのは「ベンチャー」そのものです。極めてリスクの高いビジネスにおいて、リスクにもめげずに資金調達をしたり、そのリスクの中で意思決定したり、リスクをコントロールしたりする工夫の積み重ねが法律という形に結実しているわけで、その昔のベンチャーの、荒削りだけど本質的なしくみを見ることは、現代のベンチャーに関わる人達にとっても、大いに刺激になるのではないかと思います。
(すべての法律の中で、最もロマンをかき立てられます!)
海商の歴史を考える上で「ベンチャー」以外のもう一つの隠れたキーワードは「情報通信」です。今は世界中どこにいても衛星等を使って即座に陸地と連絡が付きますが、電信の発明される前は、せいぜい旗などで通信していたわけで、船長は本社(船舶所有者)や「上司」などに相談する「サラリーマン」ではなく、荒れ狂う海の中で強い権限と責任を持って独立して判断を下す「ベンチャー経営者」としての存在でした。
現代の船舶は、GPSや衛星通信等の通信装置で、台風の位置や船の居場所もわかるしコミュニケーションも取りやすくなっていますが、こうした情報通信技術の発達により、この50年ほどで船長の位置付けや海のビジネスのリスクの構造などは大きく変わって来ました。
今週と次週の2回にわたって、この「海商」編の条文をもとに、法律の解説というよりはビジネスやファイナンス的な観点から考えてみたいと思います。
目次とキーワード:
- 非常に金額がデカくてリスクが高い設備投資
- 「ファンド」の元祖?:船舶の共有
- 手厚い買取請求権、exit可能性の保護
- 船長の「誰の命令も受けずに独立して判断する権限、責任」
先週に引き続き、今週は「旅客運送」から商法海商編の最後までを取り上げます。
現行の海商編の条文が明治の商法施行後にどのくらい変わってきたかですが、「体系海商法」(P27)によると、
明治四四年の商法改正に際して海難救助に関する一章が新設追加されたほかは、昭和五〇年に「船舶の所有者等の責任の制限に関する法律」(船主責任制限法)の制定に伴い関係諸規定が改廃されたこと、および昭和五四年に民事執行法の制定に伴い商法六八九条の船舶仮差押に関する部分の規定が改正されたことぐらいで、それ以外の数次の改正は、単に法規の体裁を整備するための形式的な改正にすぎなかった。
とのことなので、なんと、この商法海商編の条文はほとんど明治から変更されて無いようです。古代の地層がたまたま地表に表れている場所を見つけた古生物学者が小躍りして喜ぶように、この海商編を読むと、一種のタイムスリップを体験することができるんじゃないかと思います。
目次とキーワード:
- 「タイタニック」とほぼ同時代にできた「旅客運送」の規定
- 「何かを助けるために意図的に何かを犠牲にする」—共同海損!
- 海難救助のインセンティブと制度設計
- 海から生まれた「保険」
- 船舶を目的物とする先取特権
昨年8月にパチンコホール運営の「株式会社ダイナムジャパンホールディングス」(以下「ダイナムHD」)が香港証券取引所に上場しました。
パチンコ産業については、巷では「暴力団との繋がりがあるのではないか」「パチンコ自体の適法性がグレーなのではないか」「他国に資金が流出しているのではないか」等、いろいろなことが言われて来ました。(実際、業界全体として見ると、そうしたことも皆無ではないと思われます。)
しかし、私もいろいろな「パチンコ業界に詳しい」という人から話を聞いてきましたが、よく考えてみると、実際にパチンコホール会社に勤務したり、監査や融資などで決算などを見たことがある人以外は、実際にパチンコホールの資金の流れや詳細なビジネスモデルは見た事がないはずです。
今回、ダイナムHDが香港市場に上場して500ページ超の目論見書を公開しましたが、これは未だかつて無いほど詳細なパチンコホール・ビジネスの資料ではないかと思います。今回は、この資料を中心に、主として財務的な観点から、パチンコホール事業や、香港を始めとする海外証券取引所への上場などについて考えてみたいと思います。
目次とキーワード:
- 530ページの目論見書
- ダイナム・グループのホームページ体系
- ややこしい社名の変遷の整理
- 資本構成
- グループ構造変遷と税務上のスキームの謎(問題意識)
- パチンコホール業界の競争構造
- パチンコホール業界と相続税
- ダイナムは香港証券取引所に上場した初の日本企業?
- 香港証券取引所の上場審査
- 役員の経歴
- “社長”の肩書き表記の「ゆれ」
- 「唯一の上場企業」と他のホールの受け皿財務戦略
(第184号)パチンコホール事業の上場を考える(ビジネス編)
今回は先週に引き続き、今年8月にパチンコホール運営の「株式会社ダイナムジャパンホールディングス」(以下「ダイナムHD」)が香港証券取引所に上場した際の目論見書から、そのビジネスとリスクについて考えてみたいと思います。
特に、パチンコホールが違法性を回避するための「三店方式」は、適法性や反社会的勢力の関与がなければ、それで問題が無いのか?経済的・会計的にはどうなのか?というあたりを考えます。
目次とキーワード:
- パチンコ景品の基本と規制
- ダイナムHDのパチンコ:パチスロ比率
- 一般景品の品目数に対する規制
- 特殊景品「G-Prize」
- 換金目的の客の比率はどのくらい?
- 「小売業」としてのパチンコホールの実力
- 景品流通業者に依存するリスク
- ホールのビジネスモデルの根源的な経済的・会計的リスク
ソフトバンクが発表したSprint Nextel Corp(以下「スプリント」)の買収について。
目次とキーワード:
- スプリントの財務状況
- MetroPCSの財務状況
- (参考:クリアワイアの財務関係資料)
- ライバルAT&Tの財務状況
- ライバルVerizon Communicationsの財務状況
- ソフトバンク自身の財務状況
- ソフトバンクモバイルの財務状況
- 買収したイー・アクセスの財務状況
- 買収スキーム
(三角合併で対価が現金・株式混在) - 会見の概要
- Vodafone買収と比較してどうか?
- 携帯電話会社における「規模」の意味
- NTT、KDDIに打つ手はあるか?
- 「電波オークションが無い」ことの国際競争上の意味
- Dan CEOは「話が通じる」相手だった。
SECに提出されていた、ソフトバンクとSprint Nextel Corp(以下「スプリント」)の買収に関する契約書をベースに、ソフトバンクのスプリント買収に死角は無いのか、どういう要因によって失敗する可能性があるのかを考えてみました。
目次とキーワード:
- 165ページもの買収契約書
- スプリントはカンザス法人。新スプリントは?
- 資本金は800円
- 買収の失敗を契約書からケース分けする
- ソフトバンク+スプリントがクリアすべき規制の数々
- NTT、KDDIはスプリントを買わないの?
- 「浮気」の違約金の額
- 当局から合併の許可が下りなかった場合の違約金の額
- スプリントにとっての最善シナリオ
- ソフトバンクにとっての最悪シナリオ
(第187号)ソフトバンクのスプリント買収への道のり(前編)
この回は、ソフトバンクのスプリント買収の契約書から、今後両社にどんな義務や手続きが課せられるのかについて考えてみました。
目次とキーワード:
- スプリントからソフトバンクへの報告義務
- “抜け殻”を掴まされないために
- ソフトバンクの許可が無いとできないこと
- 買収完了前にソフトバンクがスプリントを完全にコントロールする契約はアリか?
- 浮気防止条項
- SEC等への登録
- 株主総会はいつ開催するか?
- 対抗買収者が現れた場合の検討プロセス (どういう手続きを踏めば、ソフトバンクを”振れ”るか?)
- おまけ:先週のスプリント
(第188号)ソフトバンクのスプリント買収への道のり(後編)
ソフトバンクのスプリント買収への道のりの(後編)です。
目次とキーワード:
- 「ソフトバンクのイー・アクセス買収後の仰天展開」報道についてのコメント
- 許認可等への対応(Regulatory Approvals and Related Matters.)
- NISPOM(National Industrial Security Program Operating Manual=米国防省の民間企業等が国家機密に接触する際のマニュアル)への対応
- 「合理的な最大限の努力(reasonable best efforts)」とは何か?
(第189号)インテルの時価総額を抜いたクアルコムは、なぜ儲かるのか?
(この回は、週刊isologue史上初めて、配信が2日遅れになりました。)
この回では、インテルの時価総額を抜いたクアルコム(QUALCOMM Incorporated)について取り上げました。
ARMホールディングス(同じくスマホ・タブレット時代を象徴するCPUベンダー)やインテルなどとの比較や、クアルコムの年次報告書(10-K)などから、このクアルコムとはどんな会社なのか、なぜそんなに儲かってるのかを考えてみたいと思います。
目次とキーワード
- クアルコム、インテル、ARMの株価推移と各社の時価総額
- 各社の財務内容比較
- クアルコムのビジネス
- セグメント別にみた業容
(QCT、QTL、QWI、QSI、他) - 驚きの役員構成
- クアルコムのビジネス・戦略の何がよかったのか?
(10-Kからの推測)
(第190号)アーリーステージ向けベンチャーキャピタルの研究
(「Femto Startup LLP」もその一つですが)、日本にも設立したばかりのベンチャーに数百万円程度を投資するエンジェルやインキュベーター、アクセラレータといった投資家はかなり増えて来ました。また、あと数年で上場できそうという「ミドル」から「レイト」ステージの企業を中心に投資するベンチャーキャピタルも以前から存在しました。
しかし、エンジェルやアクセラレーター・ラウンドの終わった次のステップ、すなわち、「アーリーステージ」に数千万円から数億円規模を投資して、ベンチャーの成長を支援するというレイヤー(層)が日本ではイマイチ薄いのではないかという気がしています。
日本のベンチャー投資環境における次の課題が、ここではないかと思ってますので、今回は、この点アメリカはどうなのか、日本への示唆は?といった点について、米国のVCの実例をベースに考えてみました。
目次とキーワード
- アーリーステージ向けベンチャーキャピタル「ff Venture Capital」の実例
- チームの概要
- ファンドサイズ
- ソーシングのスタイル
- 投資の特徴
- アーリーステージのハンズオン投資の難しさ
- アーリーステージ以降の成長資金投資
- exit事例と成功報酬
- オフィスはバブっているか?
- 投資のポリシー
- 投資対象、投資金額等のイメージ
- VCがパートナー等の並行投資を禁止しないのはなぜか?
- 利益相反の防止策
- インセンティブとの関係
- シグナリング効果
- 情報の非対称性
(第191号)アーリーステージ向けベンチャーキャピタルの研究(その2)
この回は、このff Venture Capialの創業パートナーJohn Frankel氏が書いたTechCrunchの記事に関連して、LP投資家のアノマリーや、ベンチャー投資に関わる調査資料を作っている「カウフマン財団」とは一体どういう財団なのか、について見てみました。
目次とキーワード
- TechCrunch記事の概要
- ハチの飛行とベンチャーキャピタル
- 大きなファンドのデメリット
- VCの利益の最大化と投資利回りの最大化
- ファンドの「格付」効果と日本の現状
- カウフマン財団
- 財団の資金運用の内訳
- ベンチャー関係レポート
(第192号)パチンコホール事業の上場を考える(日本逆上陸布石編)
今年8月にパチンコホール運営の「株式会社ダイナムジャパンホールディングス」(以下「ダイナムHD」)が香港証券取引所に上場し、週刊isologueでも、第183号「パチンコホール事業の上場を考える(導入編)」と、第184号「ビジネス編」で、日頃あまり目にすることが無いパチンコホールビジネスの実態を垣間見てみましたが、今度は先週木曜日(11月29日)、同社の株主が日本国内で売出しをするため、日本で有価証券届出書が提出されました。
香港上場の際の目論見書は英語でしたので、イマイチとっつきにくいと思われた方も多かったかと思いますが、今度は日本語ですし、読み慣れた有価証券届出書のフォーマットに沿っています。今回は、この有価証券届出書をベースに、同社の実像や、売出しの狙いを考えてみたいと思います。
目次とキーワード
- 売出しの内容
- 売出しを希望したのは誰か?
- 日本逆上陸の布石
- 香港市場での株価推移、財務状況
- 大株主の状況
- 売出される株式は、いつどうやって手に入れられたのか?
- ダイナムHDのコーポレートガバナンス
(第193号)アーリーステージ向けベンチャーキャピタルの研究(その3)
本日は、アントレプレナーシップ関連の活動をはじめとして、カウフマン財団が公開しているレポート「WE HAVE MET THE ENEMY… AND HE IS US 」を、ご紹介したいと思います。
このレポートは、副題が「Lessons from Twenty Years of the Kauffman Foundation’s Investments in Venture Capital Funds and The Triumph of Hope over Experience」となっており、カウフマン財団の20年間にわたるベンチャーファンドへの投資実績データをもとに行った分析になっています。
ファイナンスやベンチャーの常識に反するデータがいくつも出て来るので、ベンチャーに関わっている方には、かなり面白いんじゃないかと思います。
目次とキーワード
- タイトルの意味は?
- 実は米国のファンドのパフォーマンスは悪かった
- 目立つイベントに目を奪われてはダメ
- 「金を生まないVC」への構造変化
- 「Jカーブ」でなく「nカーブ」
- カウフマン財団の提言
- まとめ
本日は、TechCrunchの記事や、エンジェル投資に関するレポートから、米国を中心とするエンジェル投資の実際について見てみました。
目次とキーワード
- 「エンジェル投資家は、投資の専門家ではないので投資の成績は低い」は正しいか?
- 元本が回収出来ない可能性の割合
- 全体で2.5倍のリターン
- エンジェル投資家はなぜ儲かるのか?
- エンジェル投資家とは、どんな経歴の人か?
- エンジェル投資家が生み出されるメカニズム
- エンジェル投資のデータは、どこから持って来たのか?
- エンジェル投資時のvaluation、投資金額規模
- 利回りが高いカラクリがあるのではないか?
クリスマスイブにふさわしいのはエンジェルだろうということで、先週に引き続き米国を中心とするエンジェルの活動について取り上げます。
目次とキーワード
- Angel Resource Institute (ARI)の活動
- Startup America Partnershipの活動
- Angel Capital Associationの活動
- エンジェル活動の地域分布
- ベンチャーキャピタル投資はより偏っている
- シードステージ投資ビジネスはどこから来たか?
- エンジェル無くしてベンチャー生態系は成り立つか?
- 「エンジェル」とは、どんな人のことなのか?
- 制度の差異の影響
(以上)
以下、目次一覧:
(第144号) 謹賀新年(2011年の「週刊isologue」総集編)
(第145号)エクソンモービル日本事業縮小報道についてのまとめ
(第147号)「Femto Startup LLP」はじめました
(第148号)創業メンバーの中途退任時に株を返してもらう方法
(第150号)Femto Startupの投資契約を公開します
(第151号)Facebookのザッカーバーグ氏はちゃんとガバナンスされているのか?
(第152号)Facebook役員の雇用条件はどうなっているか
(第154号)ベンチャーファイナンスの新常識 – 方向転換した新しい上場審査基準
(第155号)日本にも「クラウド・ファンディング」は来るか?(その1)
(第156号)日本にも「クラウド・ファンディング」は来るか?(その2)
(第157号)日本にも「クラウド・ファンディング」は来るか?(その3)
(第158号)500 Startupsの事例でみる、インキュベーターの資金調達
(第159号)Googleが計画する株式分割は「evil」(悪)ではないのか?
(第160号)Google新資本政策の検討経緯が公表された!
(第163号)財務・法律好きの方のための「海とベンチャースピリット」
(第164号)Facebookの役員はIPOで巨額のキャッシュを手にしたのか?
(第165号)良いクラウドファンディング、悪いクラウドファンディング
(第170号)上場株式の譲渡益等の税率はなぜ10%がいいのか?
(第171号)米国では金融出身者はベンチャーキャピタリストにはなれないのか?
(第175号)何がヤフーを変えたのか?:創業者持分とアクティビスト
(第176号)アクティビストはYahoo!にどう変革を迫ったか?(前編)
(第177号)アクティビストはYahoo!にどう変革を迫ったか?(中編)
(第178号)アクティビストはYahoo!にどう変革を迫ったか?(後編)
(第179号)スタートアップの資金調達は「転換株式」で決まり!?
(第180号)電子出版戦争前夜:Amazonと楽天の戦いを財務面から考える
(第184号)パチンコホール事業の上場を考える(ビジネス編)
(第187号)ソフトバンクのスプリント買収への道のり(前編)
(第188号)ソフトバンクのスプリント買収への道のり(後編)
(第189号)インテルの時価総額を抜いたクアルコムは、なぜ儲かるのか?
(第190号)アーリーステージ向けベンチャーキャピタルの研究
(第191号)アーリーステージ向けベンチャーキャピタルの研究(その2)
(第192号)パチンコホール事業の上場を考える(日本逆上陸布石編)
(第193号)アーリーステージ向けベンチャーキャピタルの研究(その3)
(ではまた。)
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