週刊isologue(第242号)定款で見るzipcarのベンチャーファイナンス

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先週までTwitterやFacebookの優先株の内容を見て来ましたが、今週はシリコンバレーの時価総額数兆円規模のネットベンチャーではなく、もうちょっとオーソドックスな東海岸のベンチャーとして、Zipcarの優先株実務を見てみることにしました。

日本では「法律で社外取締役を強制すべきだ」「社外取締役がいないと、海外の投資家に対しても恥ずかしい」といった議論が行われていますが、「資本主義の中の資本主義」の話であるはずのコーポレートガバナンスが、市場メカニズム以外の要因(つまり法律や規制)で決まるということには、なにか強い違和感を覚えます。

Twitter、Facebook、そして今回のZipcarといった米国のベンチャーのスペクトラムと、そのファイナンスや取締役選任方法を分析してみて、やはりベンチャーやベンチャーキャピタルの機能を強化し、市場の自浄作用によって社外取締役が増えていくというのが、望ましい道筋ではないかと感じました。

「そんなこと言っても、米国と違って、日本じゃベンチャーによる企業の入れ替わりなんて全くないだろ?」「日本の企業は短期的視野の米国企業と違って長命だ」「ベンチャーは社会の例外的な存在であって、マクロ経済に影響を与えるほどの存在ではない」と思われている方も多いかも知れませんが、下記の中小企業庁の資料のとおり、現在の日本でも既に20年で45%もの事業所が起業によって入れ替わっています

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(出所:中小企業庁

さらに、今後ベンチャーへの資金供給額が(1社あたり数千万円から、数億円、数十億円、数百億円と)増えていけば、モニタリングの必要性も増し、自ずと社外取締役も増えていくはずです。そうした社外取締役がいる企業が既存の上場企業をリプレイスしていくことこそが重要なんじゃないでしょうか。社外取締役がいなくてもうまく行っている企業に、社外取締役を入れる必要性は全く感じられませんし、何もしない社外取締役を法律に促されてイヤイヤそろえたところで企業の実質がよくなるわけもありません。どのしくみが優れているかは「競争」でこそ決められるべき話ではないかと思います。


目次とキーワード

  • 企業価値数百億円規模のベンチャーの百億円規模の調達
  • 創業者やCEOの持株と株主構成
  • ファイナンスのラウンドと調達額
  • 優先配当の規定
  • ラウンド別優先株の分配順位
  • 「参加型」の方式
  • みなし清算の規定
  • 経営陣は取締役を選べるか?
  • 日本で社外取締役が増えない理由は何か?
  • ダウンラウンドでの転換価格の調整
  • なぜ優先株を発行しても転換価格が調整されるのか?

ご興味がありましたら、下記のリンクからお申し込みいただければ幸いです。

(ではまた。)

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