一昨日、TBSさんから買収防衛策が発表されました。
第三者割当による新株予約権の発行および当社株式にかかる買収提案への対応方針に関するお知らせ
https://www.release.tdnet.info/inbs/45120770_20050518.pdf
(追記:2005/10/13,21:20
上記はリンク切れ?
こちらのpdfをご覧ください。[出所:TBSホームページ])
日興プリンシパル・インベストメンツ株式会社に対して新株予約権を割り当てる「白馬の従者」?型の買収防衛策ということでしょうか。
ちょっとおもしろいのは、当初4,000円という高い株価(19日終値1,750円)の行使価格としておいて、
�当社の発行する株券等について公開買付けが開始された場合(ただし当社が当該公開買付けに対して賛同する旨の意見表明をする場合を除く)または�公開買付けによることなく特定の者またはそのグループの当社に対する株券等保有割合が20%を超えたことにつき公表されたもしくは当社が知った場合には、新株予約権の要項に従い、かかる事由の発生日に先立つ6ヶ月間の各取引日における当社普通株式の終値の平均値に0.9を乗じた額に修正される。
というところですね。当初行使価格を「ハイアップ」にしておくのは、オプションバリューを下げて日興さんに買ってもらいやすくすることと、「平時には何もしないでね」というstandstill的効果を持たせるためかと思います。
ちなみに、「企業買収防衛戦略」の太田洋弁護士の白馬の従者についての解説(P152)には、
いわゆる「白馬の従者(white squire)」に対して一定数の議決権株式を発行し、それとの間に現状維持契約(standstill agreement)を締結しておく方法である。(中略)
「白馬の従者」に対して発行される株式等としては、多くの場合、転換権付優先株式が利用される。これは、新株を引き受けてもらうインセンティブとして、「白馬の従者」に優先配当の支払請求権を付与しておく必要が生じる場合が多いからである。
とありますが、今回、日興さんが6億円出してこの新株引受権を引き受けるインセンティブは何でしょうか。日立製作所さんのハイアップMSCBを利用したHPOのオプション部分と同じで、これだけ行使価格が高くてもエクイティ部門で使いようがある、ということなんですかね?
もう一つ、この「新株予約権プラン」とともに、「株式分割プラン」も用意されてます。
買収者には分割新株が割り当てられない方法と考えられますが、「将来的に法制度や東京証券取引所の諸規則が改正されるなどして、当該プランの設計・仕組み自体に影響が生じる場合には、変更および見直しを行うことといたします。」とされています。(法改正等で使えなくなる可能性もある、ということですね。)
また、�社外取締役2名、�社外監査役2名および�社外の有識者3名(弁護士、会計士
および学識者等)の社外委員のみによって構成される企業価値評価特別委員会が取締役会の諮問を受けて勧告を行うという構成にして、経営陣から独立した判断が行えるように配慮されてます。
TBSさん、なにせ株主構成が下記のように非常に分散してますので、フジテレビさん以上に買収防衛策の整備は急務だったかと思います。
ちなみに、今見たら、Yahoo!ファイナンスのニュース記事に私のコメントが載ってました。
http://charge.biz.yahoo.co.jp/vip/news/kab/050519/050519_mbiz150.html
企業防衛策に詳しい公認会計士、磯崎哲也事務所の磯崎代表によると、「フジテレビのケースと異なり、(1)平時の導入であること(2)社外取締役の監査を経るため、単なる経営陣の保身とならず買収が企業価値向上に貢献するかどうか適正な判断ができることから、米国型防衛策にもっとも近い性格のもの」とポジティブに評価できるという。
提供:株式新聞社
えー、(企業防衛に詳しいかどうかはという点もさることながら)、私が電話でコメントさせていただいたのは、「フジテレビのケースと異なり」というよりは、正確には「ニッポン放送のフジテレビへの新株予約権の割当のケースとは異なり」ですね。フジテレビさん自身の買収防衛策は、「平時」とは言いにくいですが、実際に買収が開始されていたわけではないですし。
また、「平時の導入であること」というのも、正確には「平時の導入は経済産業省の企業価値研究会も求めている要件で」と申し上げた次第であります。
「米国型防衛策にもっとも近い性格」とも申し上げなかったんですが・・・。TBSさんはいろいろ配慮はされているものの、(米国で一般的なライツプランでなく)第三者割当型である「新株予約権プラン」が発動すると、日興さん以外の一般株主の権利が希薄化する危険があるんじゃないの?と思って株価が下がってる面もあると思います。
「社外取締役」だけでもないし「監査」でもないですね。
以上、(細かい)補足でした。
(ではでは。)
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磯崎さん、いつもながら鋭い解説、目からうろこでございます。
今回のTBSの字面だけ追いかけるとアメリカでは割と良く目にするホワイトスクワイアー型の防衛策で、社外に価値判断を任せる機能を作り、あくまでも公平な判断を演出すると言うのもアメリカでは一般的ですね。問題はこのご指摘の通り行使価格の高さ。如何にも高いですが、これも希薄化に対する「文句」が出たときの対策に見えます。日興プリンシパルは文字通りプリンシパルな投資をするところで、今はタワーレコードを弄ってますが、TBSからは将来的な資本対策込みでそれなりのFEEを得ているでしょう。アドバイザリーフィーは年間数億円というケースもあるので、それでチャラ、という可能性も否定できませんが、「囲い込む」ことで将来の収益を計算しているかもしれません。発想は完全にアメリカの投資銀行と同じです。もちろん日興證券と貸し株契約をするのはありですが、いかんせん行使価格が高く、なんとも?な感じです。また遊びにきますね!
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