47thさんに、またコメントいただきました。
鋭い切り返しにたじたじなのですが、
またまた、なにをおっしゃいますやら。
しろーと相手に遊んでいただいて、ありがとうございます。<(_ _)>
SPCの指図で自己株を持っていいのか?
SPCに議決権を指図させるという話で、一つ論点があるのを思い出しました。
というのも、中間責任法人をかませれば、実質的に発行会社が出所となった資金で株式が取得できて、おまけに議決権も行使できるということになると、自己株取得規制を無効化できてしまうんじゃないかという話もありそうです。
なるほど、一般論としては有限責任中間法人をもたせて株を宙ぶらりんにすることができるので、おっしゃるような危惧がなくもないですよね。
ただ、今回の(例えばイー・アクセスさんの)スキームのような場合には、どうでしょうか。
私が、新株予約権でなく最終的なブツである株式自体を株主に交付してしまう方法でイメージしてましたのは、平時の際には、
と、信託に預けられている資産は経済的には第二受益者であるSPCのモノになっているという感じ(この絵では、新株予約権の行使を予定して、鮭の稚魚のようにおなかに現金[数百万円程度を想定]をかかえてます。)で、
有事になって「基準日」が設定されると、
といった感じで、第一受益者である「基準日現在の株主(ただし新株予約権の条件に従い新株予約権を行使できない特定株式保有者等は除く)」に経済的価値が移るという感じのものです。
(注1:このとき同時に「時価」を基準に、第一受益者に課税所得が発生。)
(注2:信託型の場合、その後の株式発行等を予定して、多少多めに新株予約権を発行しておかないといけないと思われますので、第二受益者であるSPCの持分も残ってます。)
ここで、第二受益者であるSPCの指図をトリガーとして、信託が新株予約権の行使を請求。
これであれば、(トリガーはSPCが引くにしても)、「株式」は経済的には第一受益者である発行会社の株主に保有されているわけですから、自己株式保有と同様の(経済的)問題は起こっていない気がします。
買収防衛策の「フェア」さ
なぜ、信託型が「好み」ではないかということについてはエントリーを書いてみましたので、よろしかったらご覧ください。
こちらですね。
信託型ライツ・プランと「好み」
http://www.ny47th.com/fallin_attorney/archives/2005/05/post_17.html
以下、一部引用させていただきますと、
「出口」での審査をどうするのか?
もう一つ、私の「好み」でない理由が、「出口」での審査がどうなるかが、今ひとつよく分からないところです。
「出口」というのは、買収防衛策の導入を「入口」に譬えて、実際に買収がなされた段階でプランを消却するかしないかという判断をする場面のことを指します。
信託型の場合、「入口」(導入時)段階で新株予約権をSPCや信託に発行する段階では不公正発行差止めという形で裁判所の司法審査に訴える余地があるのですが、買収が具体化していない段階では「そもそも取締役が買収防衛をするのは何事か」とか「仕組みとしてできが悪い」といった争い方しかできないので、今ひとつ身のある議論になりにくいところがあります。
そこで、実際に買収者が現れた「出口」段階での司法審査というのが、本来は重要になってくるはずなのですが・・・信託型の場合、誰に対して、どういう訴えをすればいいのか、今ひとつ分かりにくいところがあります。
「分かりにくい」というのも煮え切らない表現ですが、100%「できない」というわけではないものの、会社側の措置が適切かどうかという実体面での争いに入る前に、手続的な面で訴えの組み立て方や適法性にいろいろな論点があって、買収者が経営陣の判断を法廷で争おうとしても、そうした手続的な部分で「門前払い」をくらってしまう可能性があります。
つまり、信託型は一度導入してしまえば、後で具体的な買収の場面で経営陣の判断にチェックをかけるのが難しい構造になっているように思われるのですが、多分、逆にこの「法的安定性」というのは信託型のセールスポイントにもなっているんじゃないかという気がします。
心情的には、「実際に買収者があらわれたときに、消却の判断の適切性について訴訟で争われるかも知れない」というのは、依頼者(=経営陣)の立場からすれば居心地が悪いというのも分かるのですが・・・個人的には、むしろ「出口」段階でいい加減な判断をしたら裁判で負けるかも知れないという緊張感が自己保身目的の買収防衛策維持に対する抑止力となるべきじゃないかと思っているので、信託型は「好み」ではないところがあるわけです。
私も、特にSPC型だと有限責任中間法人という「宙ぶらりんな第三者」の存在を利用しているので、「その”第三者”が何をやろうが勝手だろ?」という論理に持って行かれると敵対的買収者がポイズンピルを解除しにくそうなので、そこがよさそうだな、と思っていたのですが、
逆に、「どんなときも訴訟で争うことができることがフェアなのだ」というお考えなわけですね。
(なるほどなるほど。)
随伴性のある?プラン
で、私の「好み」のプランというところなんですが、外野でわいわい言っていたつけがそろそろ回ってきそうな感じです・・・
(わくわく)
期待しております。
(ではまた。)
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>磯崎さん
こちらこそお付き合いいただきありがとうございます^^
最終的に株主に分配できる分については、タイミング的に一瞬生じる部分をどう考えるかというところだと思うので、問題はやはり手残り部分でしょうねぇ。手残り部分の発生を防ごうとすると、事前に受益権者である一般株主の所在確認や受益の意思表示確認が必要になるので、新株予約権を直接配る場合と実務的に差が少なくなるのかなという気もします。
あと、差止訴訟があるというと多少ネガティブな印象があるかも知れませんが、差止め段階で争われるのであれば、負けても会社としてはプランを撤回すればいいだけで、会社にはほとんど「損害」がないので(プランの設計や維持のコスト?)、代表訴訟で取締役の個人責任が追及される可能性が少なくなるという面では、実は有時の取締役の法的責任という観点からも望ましいところがあるんですよね。これが、争う手段がなくて、プランが発動されてしまった後で、その発動は間違いだったので、買収者や会社に生じた損害について訴訟を提起されるようなことがあると、それはそれで泥沼化してしまったりということもあり得るので・・・まあ、最後は依頼者(=現経営陣)の方の「好み」ということになるわけで、弁護士が「好み」を強制するわけにはいかないのですが^^;