先日、食器洗い機を買った。
なにを隠そう、私、15年以上前の独身時代から食器洗い機を愛用しておりました。食器の後片づけがめんどくさくなければ、料理するのも楽しいんじゃないかと思ったので。
ところが、初代食洗機は結婚してから調子がおかしくなって、あまり家電萌えしない奥さんにあっさりと廃棄されてしまい、そのくせ食器洗いは私の仕事、という不遇の時代が久しく続いておりました。
で、先日大型家電店を通りかかった際に、ちょうどその日に展示されたばかりという新製品を衝動買い。まさに運命の出会いというか、高値づかみというか・・・。
この食洗機、スイッチを押しても音がしないので壊れているのかと思いきや、「除菌ミスト」と称して、まず約30倍濃縮洗剤の霧が庫内に立ちこめてくるわけです。食事の終わった真っ暗なダイニングルームの中で、発光ダイオードの蒼い光に照らされて静かに霧が立ちこめていく様というのは、すばらしく幻想的。妖しい。妖しすぎる。白物家電がこんなにエッチな雰囲気を醸し出して許されるもんなんでしょうか。
移民政策と家電
先日、御手洗さんと話をしてた時に、「日本は人件費が高いからマニアックな家電が発達したんじゃないか」という説を申し上げたところ意外にウケたので、ここにも掲げさせていただきます。
当ブログにも、過去に何人か香港在住の方からコメントいただきましたが、香港では月に3万円くらい出すだけで お手伝いさんが雇えて、家に帰ると室内がきれいに片づいているとか。・・・・うらやましい。
しかし、そうした低賃金労働が家電と密接な代替関係にあるような国では、蒼く妖しく光る霧を吐く食器洗い機とか、ブルートゥースで制御できる洗濯機とか、スチームとレンジとヒーターを併せ持つ調理器てなマニアックな家電は発達するはずもない。
例えば、日本は第三世代携帯や携帯上のビジネスの充実度ではすっかり世界のトップを走ってますが、1億2千万人というマーケットと、人口密度が高くて1基地局がカバーする面積に潜在ユーザーがたくさん存在するという採算性は、携帯ビジネスの立ち上がりには不可欠だったはず。
また、お抱え運転手が安く雇えれば、カーナビがどの車にも付いているような環境も生まれなかったでしょう。
日本の高価な労働力や人口密度や地価などの悪条件が、(良かれ悪しかれ)、日本独自のマニアックな製品を育んできたと言えるのではないかと思います。
私、従来は、「何事にも競争原理を導入することは重要なので、日本もどんどん移民を受け入れたらどうか」論者だったのですが、最近ちょっと考えが変わりました。
21世紀は必ずや「ロボットの時代」になるはずで、単純でパターン化しやすい労働から徐々に「家電」やオフィス機器に代替されていくはずです。「ロボット」は(日本人的な)細かい気配りのノウハウが重要なはずですし、そうした産業が早く立ち上がりノウハウが知的財産権として蓄積されるためには、代替財である人間の労働力のコストが安くてはイカんわけです。
一方、高度で知的な作業は、「物理的に同じ場所」で働かなくても、ますます「通信」で代替できるようになるはずで、何も(蒸し暑い)日本に住んで仕事してもらう必要もないし、来てもらえる気もあまりしない・・・。
とすれば、日本も移民政策を変更して無理して労働力の供給を増やすなんてことはせずに、「今くらいの感じ」をあえて継続することで、21世紀前半の「ロボット+ブロードバンド社会」の世界のリーダーになるってのはどうでしょうか。あと20年は中国の低廉な労働力とマーケットのデカさにかなう気がしませんが、国家50年の計を考えて。
環境問題とテロというのも、残念ながら21世紀前半の大きな課題になりそう。
日本が第二次大戦に負けていなかったら、おそらく現代の日本は、(旧)植民地の人たちが大量に低廉な労働力を供給してくれていて、こういった「萌える家電の国」には(良くも悪くも)なっていなかったでしょうし、こんなノーテンキなほど治安のいい国にも(良くも悪くも)なっていなかったかも知れません。
象よりもエネルギー消費が多い人間がなるべく少なくて済むしくみを作るのが21世紀前半の課題であるかと思いますし、「物理的に」近くに住むのは見慣れた人だけという環境は、テロにも強い社会かも知れませんね。
(ではまた。)
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。
結婚以来13年、お皿洗いは私の仕事です。食器洗い器を買おうと思ったこともありましたが、この皿洗いという仕事、かみさんの愚痴を聞かずに過ごせる私にとっては至福の時なのです。
いそざきさん、お久しぶりです。引き続き鋭い切り口で感服致します。
今回のそのお考え、そのとおりだと思いますよ。車だってそうですもの。ただの乗り物としか考えて無かったアメリカ人にとっては車をあんな高級な内装にしてあれこれつけちゃうなんて考えもしなかったんですよ。私は家がせまい日本人がせめて便利で落ち着ける空間と乗り心地を追求しなければあの日本車は生まれなかったと思います。で、結局アメリカ人もこっちがいいや、となった訳で100%アグリーであります。またちょくちょく遊びに参ります。
移民政策を、磯崎さんがかかれているような単純なレベルで考えていいものなんでしょうかね〜〜〜。
すごく疑問です。移民政策は一歩間違うと、何世代(何世紀)にもわたって国内での大きな民族問題を派性させる問題だと思うのですが。ギリシャ・トルコ問題、汎スラブ問題、。。。
>移民政策は一歩間違うと、何世代(何世紀)にもわたって国内での大きな民族問題を派性させる問題だと思うのですが。
だから、今以上に移民を呼び込むなんて政策は採らない方がよろしいんじゃないか、と申し上げているわけですが。
ローマをはじめ、他民族の力を借りて楽しようと思って滅びた国は枚挙にいとまがないんじゃないかと思います、です。
(では)
本文の方にある「最近ちょっと考えが変わりました。」とある部分ですね。磯崎さんの主旨を誤解して、大変失礼しました。ロボット工学の面からみれば、2本足でかつ、ヒューマニティロボットというカテゴリを研究しているのは日本だけという話、ロボット系の研究をされている大学の先生方(複数)からうかがっております。欧米の学者にはどうも日本のアプローチ(こだわり)は理解しにくいという話です。
絶対、間違いなく、「鉄腕アトム」とかの影響ですよね。:-)
はじめまして。
日本で深刻化している人手不足は、磯崎さんのような鋭い方でないと気づかないお手伝いさんの問題でなく、公認会計士様や弁護士様に代表される、まさに高嶺の花の知的ワーカーな方々ですよね? これからはお手軽価格で通信で代替していただけるのでしょうか? 個人的には、お安く済むのであれば移民な方でも… ^_^; 。
私事ですが、SEに代わってバグのないプログラムを書いてくれるロボットの登場も当分なさそうですね…。
このエントリでは、「労働力の輸入(つまり移民)」で代替できる労働力の話をさせていただいているのであって、「輸入」しても補えない労働力不足をどうするか、という話ではありませんので、念のため。
(ではでは。)
強電弱民
isologueさんのこのEntry、実につっこみどころ満載につき何回かに分けてつっこませていただくことにします。
isologue −by 磯崎哲也事務所 Tetsuya Isozaki & Associates: 家電萌えと同時爆破テロ移民政策と家電
まずは
先日、御手洗さんと話をしてた時に、「日本は人件.
しばらく咀嚼してたんですけど・・・「高嶺の花の知的ワーカー」ってすごい表現ですねえ(^^;)。
情報通信あれやこれや
isologueさんとこで面白い話してたんで、今回はそれに便乗。 家電萌えと同時爆破テロ 一方、高度で知的な作業は、「物理的に同じ場所」で働かなくても、ますます「通信」で代替できるようになるはずで、何も(蒸し暑い)日本に住んで仕事してもらう必要もないし、来て…
[経済・社会]「家電萌えと同時爆弾テロ」(isologue – by 磯崎哲也事務所)
コメント 食器洗浄機やカーナビのようなマニアックな製品が日本で「うける」のは日本の人件費が高いからであり、低賃金労働と家電が代替関係にある場合にはそのような家電は発達しない。国家50年の計を考える場合、日本の移民政策を変更し無理をして労働供給を増やすこと…
胡桃さん、韓国も研究してます。
強想弱筆
というわけで、前回予告どおり。
404 Blog Not Found:強電弱民つづく…
強老弱若
ガテン系な忙しさにかまけてだいぶEntryが遅れてしまったが、
論争・少子化日本
404 Blog Not Found:強想弱筆まだつづく
この本と絡めながら、
isologue −by 磯崎哲也事務所 Tetsuya Isozaki & Associates: 家電萌えと同時爆破テロとすれば、日本も移民政策を変