(↑タイトルはヨーダの声でお読み下さい。:-)
「ニレコ型」に続いて、「事前?警告型」の買収防衛策に関する夢真と日本技術開発のバトルが始まりました。こちらの方は、差し止めではなくTOBで正面突破というアプローチ。
日本技術開発の防衛策
15日付日本経済新聞によると、7月7日に両社トップが会談したが議論はかみ合わなかったとのことで、それを受けて、日本技術開発が8日に発表したのが以下の買収防衛策になります。
2005.7.8 大規模買付行為への対応方針に関するお知らせ
http://www.jecc.co.jp/topics/kaituke.pdf
すでに両社のトップが会談して決裂しているところからすると、「平時(事前)」というよりは「有事」っぽい導入ですね。(日経金融の報道によると、5月ごろの証券会社を通じた夢真からの(匿名の?)買収打診に対して、会社側は、主幹事の大和証券から弁護士の紹介を受けて、すでに買収防衛策の策定に着手していたとのことですが、、)
会社が設定する「大規模買付ルール」は、買収者が”氏素性”、目的、資金の裏付け、向こう5年間に想定している経営方針等を開示することを求め、買収者がこれを遵守した場合には、基本的には無抵抗とするとしながら、
当該大規模買付行為が当社株主全体の利益を著しく損なうか否かの検討及び判断については、その客観性及び合理性を担保するため、当社取締役会は、大規模買付者の提供する買付後経営方針等を含む本必要情報に基づいて、独立の外部専門家等の助言を得ながら当該大規模買付者及び大規模買付行為の具体的内容(目的、方法、対象、取得対価の種類・金額等)や当該大規模買付行為が当社株主全体の利益に与える影響を検討し、当社社外監査役2 名を含む監査役の過半数の賛同を得た上で決定することといたします。
としています。
特別委員会等を別途設定するのではなく、監査役に判断させることにした、というところにちょびっと注目。(会社のリリースには社外取締役2名とありますが、昨年6月期の有価証券報告書を見ると社外監査役1名を除いて、取締役を含む役員全員、「社内」役員のようです。おまけに、監査役3名のうち1名が、今年の3月に亡くなってます。代わりの社外監査役の方の記述がちょっと見あたりません。有報にある社外監査役佐々木秀一氏は弁護士かつ公認会計士の方のもよう。日本公認会計士協会に所属する”佐々木秀一”氏は2名いらっしゃるようですが、若い(S40年生まれ)の方のほうのようです。)
「大規模買付者が大規模買付ルールを遵守しない場合」には、
株式分割、新株予約権の発行等、商法その他の法律及び当社定款が認めるものを行使し、大規模買付行為の開始に対抗する場合があります。
とのこと。現金での全株買付の場合には60日、その他の場合には90日間の猶予を設定してます。株式分割の場合は最大5分割。新株予約権の発行の場合の新株予約権の要項も載ってはいますが、A4で1枚程度の非常に大ざっぱな内容で、「新株予約権の行使期間、行使条件、消却事由及び消却条件その他必要な事項については、当社取締役会にて別途定めるものとする。」としてます。
夢真のTOB発表と日本技術開発の反応
これに対して、夢真の取締役会では11日にTOB実施を決議しましたが、
2005年7月11日 公開買付けに関する取締役会決議についてお知らせ
http://www.yumeshin.co.jp/ir/new/press/tob05711.pdf
これに対する日本技術開発の反応は以下の通り。
2005.7.11 当社株式の公開買付けに係る当社の対応に関するお知らせ
http://www.jecc.co.jp/topics/kaituke_2.pdf
「当社は関与してません」というとりあえず第一報のリリース。
2005.7.11 当社株式に対する公開買付決議への対応について
http://www.jecc.co.jp/topics/kaituke_3.pdf
「買付を延期してください。さもなくば買収防衛策を発動するかも知れませんよ」という内容のリリース。
これに対する夢真HDのリリース。(「事実と違うことが書いてあるぞ」、という1ページのもの。)
2005年7月12日 日本技術開発株式会社のプレスリリースに関するお知らせ
http://www.yumeshin.co.jp/ir/new/press/tob050712.pdf
2005.7.15 大規模買付ルールに基づく今後の対応方針について
http://www.jecc.co.jp/topics/H170715.pdf
夢真に提出を要請する資料一覧のリストを掲示するとともに、「夢真HD が誠実な買収者であり真摯に当社の合理的経営を目指すものである限り、大規模買付ルールに従っていただけるものと考えております。」ということで、「やれるもんならやってみやがれ、買収対抗策を発動するぞ」ではなく、あくまで「交渉のテーブルについてくださいよー」という内容になってます。
15日の夢真のリリース
夢真では、14日に買収防衛策の基本方針について2ページほどのリリースを出し、
2005年7月14日 買収防衛策への当社方針に関するお知らせ
http://www.yumeshin.co.jp/ir/new/press/bouei_050714.pdf
15日に、さらにいろいろ資料をホームページ上でリリースしています。
企業価値向上へ向けた提携の検討資料 (2005/07/15)
http://www.yumeshin.co.jp/ir/new/presen/info_05.7.15.pdf
文字のみのリリースでなく、パワーポイント的に図も使って説明されてます。(が、これだけでは、計数的なシナジーなど、ホントのところはよくわかりません。)
日本技術開発株式会社のプレスリリース(7月11日)への当社対応について (2005/07/15)
http://www.yumeshin.co.jp/ir/new/press/re-.pdf
「日本技術開発からいろいろ資料の提出を要求されたが、これに応じるつもりは無い」という内容のリリースになっています。
松下電器産業株式会社のような世界的規模の企業であり現経営陣も中長期の事業計画を立てている企業であればともかく、日本技術開発自身は、現在、5 年程度の中長期計画はもちろんのこと、単年度の計画すら市場に対して公表しておらず、また、過去8 年間日本技術開発の株価は1 株あたり純資産額を下回る価格で推移しています。このような日本技術開発の現経営陣から、なぜ、提携協議の申入れをする前提として、5 年間の事業計画、財務計画等を提出することを求められなければならないのか、当社としては理解しかねるところです。
と、「なんであんたに言われなあかんの?」と言ってます。(同じく事前警告型の買収防衛策を発表している)松下電器さんの名前も出してますね。
やっぱり、買収防衛する会社は、そもそもちゃんとした経営をしてないといけないとともに、相手に要求する水準のディスクロはやってないとまずいかも知れませんね。
こうした認識が定着していくと、買収防衛がコーポレートガバナンスと表裏一体で発展していくことになるかも知れません。
買収防衛策導入の経緯とタイミングについても、
上記7 月7 日における面談の際、日本技術開発の佐伯社長より、翌週末(7 月15 日)までに回答したい旨申し出があり、当社会長の佐藤から、わかりましたと回答いたしました。
にもかかわらず、翌7 月8 日、日本技術開発は、当社の提案について何ら回答しないまま、「大規模買付ルール」なる買収防衛策を公表し、それに基づき一方的に、理由のない膨大な書面の提出(5年間に想定している経営方針、事業計画、財務計画、資本政策、配当政策、資産活用策)を求めてきております。(中略)
しかしながら、当社との話し合いのテーブルにつくことを拒否するための方便ともいえる日本技術開発からの要請には応じる必要はないと考えております。
とし、また、「2.防衛策の発動が、現経営陣の恣意的判断に委ねられている」として、
現経営陣の自己保身目的ではなく、真に企業価値及び株主共同の利益の向上を図るための合理的な判断が下されることが担保されているとは到底考えられません。
とおっしゃってますし、また、勝手な大規模買付ルールを交渉開始後に設定するのは、「『後出しじゃんけん』で行うことに等しいものといえます。」ともおっしゃってます。
企業買収に関する事実は株価に大きな影響を与えるため、買収交渉は秘密裏に行われることが通常です。買収防衛策においても、買付者の提案に関して一定の検討プロセスが設定される場合には、市場に無用の混乱をもたらさないよう当該提案に関する事項は一般に開示されないことが不可欠な前提であります。
にもかかわらず、本件においては、7月9日(土曜日)の日本経済新聞において、日本技術開発の役員談としてのリーク情報に基づき「夢真HDの『大量保有』原因?日本技開が買収防衛策」と題する記事(朝刊14 面)が掲載されました。日本技術開発は、自ら設定したルールに違反して、当社が日本技術開発の株式を大規模買付けしようとしていることを開示したのです。
この日本技術開発のリークにより、思惑買いで月曜日以降の市場に無用の混乱をもたらさないよう、当社は、やむなく11 日月曜日午前8 時40 分(取引き開始前)、公開買付けに関する取締役会決議についてリリースすることに踏み切らざるを得ませんでした。このように、日本技術開発は、自ら、情報操作により当社を公開買付けの開始の発表に踏み切らせておきながら、他方で公開買付の開始の延期を求めるものであり、自ら設定したルールにも反して市場に混乱をもたらしかねない行為を行ったこととなります。
こうした買収防衛関連情報の取り扱いと、それに関するリークという「戦術」が適切かどうかも要注目点。
(一方、適時開示やホームページ等で、夢真さんのリリースというのが見あたらないのですが。どこかにあるんでしょうか。)
ちなみに、夢真さんは20日に公開買付届出書を提出するとのことです。
関東財務局への上申書
この上申書が、法律的には非常に注目です。
三井法律事務所の三井弁護士以下の連名になっており、
「なお、当職らの意見は、早稲田大学法学部・大学院法務研究科上村達夫(ママ)教授及び同黒沼悦郎教授が意見書で述べるところに沿うものである。」
と、両先生の意見書も取ってらっしゃるようです。(注:[誤]上村達夫→[正]上村達男)
関東財務局に対する上申書の提出についてのお知らせ (2005/07/15)
http://www.yumeshin.co.jp/ir/new/press/zaimukyoku_050715.pdf
趣旨としては、「1 公開買付を行った後に株式分割をされた場合に備えて希釈化防止規定を入れること」「2 買付者が、予め、公開買付けを撤回する条件として対象者が公開買付期間中に株式分割の基準日を設定することを指定し、実際に公開買付期間中に株式分割の基準日が設定された場合に公開買付けを撤回すること」は、認められると考える、という内容になってます。
新株予約権の発行については記述がありませんが、こちらは発行の決議をした後に、差し止めで対抗するということなんでしょうね。
現行の証券取引法に照らして法的にそう解釈できるかどうかはともかく、公開買付を行った後に株式分割が発表されて、買収者側は価格の修正も撤回もできないというのは、確かに経済的にはあんまりではあります。
参考条文
証券取引法第二十七条の六
公開買付者は、公開買付けに係る買付条件等の変更を行おうとする場合には、公開買付期間中に、政令で定めるところにより、買付条件等の変更の内容その他内閣府令で定める事項を公告しなければならない。
2 前項の規定による公告を公開買付期間の末日までに行うことが困難である場合には、公開買付者は、当該末日までに同項に規定する内容及び事項を内閣府令で定めるところにより公表し、その後直ちに同項の規定の例により公告を行わなければならない。
3 買付け等の価格の引下げ、買付予定の株券等の数の減少、買付け等の期間の短縮その他の政令で定める買付条件等の変更は、前二項の規定にかかわらず、行うことができない。証券取引法施行令第十四条
法第二十七条の十一第一項 に規定する政令で定めるものは、次に掲げるものとする。ただし、第一号及び第二号に掲げるものにあつては、軽微なものとして内閣府令で定める基準に該当するものを除く。
一 対象者の業務執行を決定する機関が次に掲げる事項を行うことについての決定をしたこと(公開買付開始公告を行つた日以後に公表されたものに限る。)。
イ 株式交換
ロ 株式移転
ハ 会社の分割
ニ 合併
ホ 解散(合併による解散を除く。)
へ 破産手続開始、再生手続開始又は更生手続開始の申立て
ト 資本の減少
チ 営業の全部又は一部の譲渡、譲受け、休止又は廃止
リ 証券取引所に対する株券の上場の廃止に係る申請
ヌ 証券業協会に対する株券の登録の取消しに係る申請
ル 預金保険法 (昭和四十六年法律第三十四号)第七十四条第五項 の規定による申出
ヲ イからルまでに掲げる事項に準ずる事項で公開買付者が公開買付開始公告及び公開買付届出書(法第二十七条の三第二項 に規定する公開買付届出書をいう。以下この条において同じ。)において指定したもの
両社ホームページ等
■日本技術開発(株)
ホームページ
http://www.jecc.co.jp/
チャート(Yahoo!ファイナンス、JASDAQ:9626)
■(株)夢真ホールディングス
ホームページ
http://www.yumeshin.co.jp/
チャート(Yahoo!ファイナンス、ヘラクレス:2362)
(以上)
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ヘラクレス銘柄なので、大証にリリースが出ます
https://edwwsv01.ednet.ose.or.jp/investor/public/lookweekago.asp
あ、そうでしたね。失礼いたしました。
ご教示、どうもありがとうございます。
敵対的買収か買収防衛策か†
前回の続きです。 夢真は日本技術開発への株式公開買付け(TOB)計画で、 金融庁
よくまとめて下さいました。プレスリリースで上村先生の名前が間違ってますよね(三井お粗末)。達夫→達男 その後も場外乱闘は続き、上村教授の激烈な、論理的なんだか非論理的なんだかよく分からない意見書が、夢真のホームページに掲載されています。
正面衝突ですね。
私のブログでも先日来とりあげているのですが、isologueほど綿密な記載では
ありませんので、読者のためにも、勝手ながらリンクをつけさせていただきました。
よろしくお願いいたします。
それから、もしよろしければトラックバックもつけさせていただければうれしいのですが、
いかがでしょうか?
夢真は、11日,12日と14日にもリリースをしています。
11日 http://www.c-direct.ne.jp/hercules/uj/pdf/10102362/00035581.pdf
12日 http://www.c-direct.ne.jp/hercules/uj/pdf/10102362/00035628.pdf
14日 http://www.c-direct.ne.jp/japanese/uj/pdf/10102362/00035753.pdf
どうもご教示ありがとうございます。
(夢真HP上のURLで)文中に追記させていただきました。
夢真のホームページにも、「IR情報」欄にリリースがのってますよ。