本日の日経朝刊31面の経済教室で、東大の坂村健教授が、「ユビキタス・コンピューティング、各国の独自性に配慮必要」という文を書かれていました。
いつものご意見にたがわず「日本は日本独自の」というお話で、(その本筋の是非はともかく)、「へぇ」と思ったのは、以下の2点。
米国では出荷された商品が販売されるまでに抜き取りにより三割無くなるという。(中略)三割無くなる原因は従業員の反抗や業者の不正で、RFIDなら電波を常にあてて紛失を監視できる。
つまり、年間600億ドルとも言われる被害を「原資」としてRFID(無線識別用の微小チップ)を導入できる国と、日本のように従業員のモラルが高い国では、RFIDにかけられるコストが違ってくるだろう、というお話。
(注:かけられるコストでチップのレベルが違ってくるという話に、ではなく、流通で3割も在庫を盗まれるアメリカって大丈夫かいな、って意味で「へぇ」)
ラテン語由来の宗教用語である「ユビキタス」の本来の意味は「神様がいつでもどこでもご覧になっている」というもので、だから行いを正しくしなさい、という外部化されたモラルにつながるといわれる。
そのような言葉であるユビキタスが監視の図式を欧米人には思い浮かばせるのかも知れない。そう考えると、欧米でRFIDについてプライバシーの侵害を理由に強固な反対運動があり、多くの実験が中止にまで追い込まれているのもうなずける。
坂村教授がいう反対運動とは、ご案内のとおり、ジレット社の替え刃の盗難防止実験やベネトンのRFIDタグの実験に対して、消費者団体CASPIAN(*)が不買運動を展開して実験中止に追い込んだことなどを指しています。
(*: 「スーパーマーケットのプライバシー侵害とナンバリングに反対する消費者の会」Consumers Against Supermarket Privacy Invasion and Numbering http://www.nocards.org/)
確かに、商品コードが入ったRFIDが商品についたままになっていたりすると、コイツはどんな本を読んでいてどんな思想の持ち主と考えられるのか、とか、女性が(男性でも)どんな色のどんな形の下着をはいているのか、などが電波で確認されてしまうリスクがあるというようなことが言われているわけですが、
値札を付けたままのパンツをはいてるヤツというのもかなり間抜けだなあ(笑)ということで、「なんでそんなことでギャーギャー言うのかしらん?取りゃいいじゃん。」と今まで思ってたんですが、なるほど従業員の盗難防止となると、簡単には取れないように商品にガッチリ(こっそり)組み込んだものが導入される可能性があるわけですね。
また、ユビキタスが「神の遍在」の意味だと言うのは存じておりましたが、それが欧米人にとってどう響くのかはあまり考えてませんでした。
「おまえは、神かよ!」
とRFIDにツッコミを入れたくなる人が多い、ということでしょうか。
このへん、坂村先生のご想像なのか、多くの欧米人が本当にそう感じるのか、興味があるところです。
(ではまた。)
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こんにちは。zerobaseの石橋と申します。
以前「RFIDはプライバシーの脅威?」という文章を書いたことがあるので、よかったらご覧ください。
http://www.myprofile.ne.jp/blog/archive/zerobase/6
ここで紹介した「固有IDのシンプル・シナリオ」という文章には価値があると思います。わかりやすく危険性を示しています。
http://www.hyuki.com/techinfo/uniqid.html
石橋様
はじめまして。よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。http://www.tez.com/blog/archives/000057.html
に続きを書きました。
(石橋さんのblogの内容と重複しますが・・。)
ではでは