老舗ホテルで見たのはベンチャースピリットだった

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とある事情で、この週末、家にいられないので、疎開することに。
せっかくだから箱根までドライブし、富士屋ホテルに泊まってみました。
午後4時から老ホテルマンが館内のツアーをしてくれるんですが、これが非常にすばらしい。富士屋ホテルが、日本で最も古いリゾートホテルの一つだということは存じてましたが、非常にタメになりました。
kannai_tour.JPG
概要は、以下の通り。
富士屋ホテル創業者山口仙之助は明治維新後、後に津田塾大学創立者となる津田梅子などと同じ船で渡米。3年間米国で辛酸をなめたあとに「日本は今後西欧化するから牧畜業が盛んになる」と考えて、稼いだ金で7頭の種牛を買って帰国するんですが、発想が先を行きすぎていて失敗。(日本はまだ乳製品をみんなが食べるような時代ではなかった。)
「勉強し直しだ」と思って慶應義塾に入り直したところ、さすがは福沢諭吉先生、仙之助のギラギラした感じは学問というより実業向きだと考えて、「これからの日本には国際的な観光業が必要」「箱根に鉄道をひいて開発すべし」というビジョンを仙之助に説き、仙之助は箱根の開発を決意。当時の宮ノ下は、まともな道路もなく宿屋が数軒あるだけの超ド田舎だったわけですが、仙之助は「藤屋」という旅館を買収、名称を外国人にウケのいい「富士」屋に改称して富士屋ホテルの営業を開始した、とのこと。
ちなみに、前身の藤屋は、その昔、豊臣秀吉が小田原城攻めをするときにも宿泊したという、すごい歴史があるとのことですが、富士屋ホテルになってからも、ヘレン・ケラーやアインシュタイン、ネール首相、ジョン・レノンなど、すごい方々が宿泊。
そういえば、昨日の「世界ふしぎ発見」で、ちょうどアインシュタインの訪日を取り上げてましたが、11月末に来て12月末に離日したので、富士屋ホテルに宿泊したのも、ちょうど今頃の時期のはずですね。
建物自体が文化財の固まりで、しかも現在ではとても作れないような細かい意匠にまで凝った作りになっていて、これは一見の価値ありでやんすな。
館内ツアーを聞きながら、当時の箱根の何もない状況から、これだけのものを作り上げることを想像してみると、これはまさにベンチャースピリット以外の何物でもない。今はやりの温泉大浴場とかがあるわけでもなく、部屋にブロードバンドも無いですし、ドアがオートロックでないホテルというのも久しぶりに泊まったわけですが、ベンチャースピリットの息吹を浴びてみたい方は、ぜひ御一泊されることをお勧めします。
おまけ:
朝食のときに出てきた、ゆでたまごのカラを割るやつ。(奥さんが「悪のミッキーマウス」と命名。)
evil_mickey.jpg
おまけ(その2):
気候がヘンなせいか、帰りに西湘バイパスを通ったら、蜃気楼を見た。(生まれて初めて。)
遠くの陸地が宙に浮かんで見える。(相模湾なのでそっちに陸はないはずですが。)
大島らしき島も、すぐ間近に浮かんで見えた。
shinkiro.jpg

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3 thoughts on “老舗ホテルで見たのはベンチャースピリットだった

  1. 子供たちが小さかったころに、宿泊したことがありました。ちょうど夏休みだったので、子供たちも楽しめるようにビンゴゲームなんかもやってくれていた記憶があります。離れみたいになっている六角形だったでしょうか、コロニアル風の部屋に泊まりました。古いインテリアが新鮮で、テーブルにもちょっとした細工がほどこしてあって、細かなところでも楽しませてくれるホテルですね。

  2. おっしゃるとおりで、あれだけの細工を今やろうとしたら、とてつもない金額がかかるというか、そもそも職人さんを集めきれるのだろうか?、という気もしました。
    「鉄筋の本数減らして工期短縮」とかいう世知辛い成熟したフェーズでなく、「黎明期」のたっぷり「遊びを取り入れられる」フェーズの産業の方が(リスクもあるけど)幸せな気がします。

  3. 「システム開発」ってギョーカイも、黎明期から成熟期への移行真っ最中なんでしょうね。
    Ajaxという言葉もないうちからそれを研究するようなGoogleのような会社で働くのは楽しそうだけど、最近何かと話題の某F社みたいなとこで3次請、4次請なんて立場だったらやってられねーだろうなぁ。