オフィスの内装工事がやっと一段落したんですが、ホームページのリニューアルのプロジェクトも同時に進めてたり、おまけに急に仕事がいろいろ入ってきたり、おふくろが帯状疱疹が顔に出て入院したり(山は越したようです)、と、なんだかんだでバタバタしてました。
さて、あまりサボっていてもなんですので、ひさびさに書かせていただきます。
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先日、ビックリしたデータ。
某東大関係の方から「誰か寄付する人がいたら紹介して」と渡された「東京大学基金ご協力のお願い」というパンフレットに書いてあった米国の大学の基金資産規模という表。(下図。)
これを見ると、ハーバードをはじめ第5位のスタンフォードくらいまでは、軒並み1兆円!!を超えるファンドを保有してるんですね。パンフレットによると、ハーバードは「2004年も2,500億円と、東京大学の運営費交付金(国からの補助金)の2倍を超える運用益を挙げ」ているそうで。ファンドサイズもでかいですが、10%もの運用益がでていることになるわけで、率的にもすごい。
(やっぱり、優秀なOBが金融界に散っていると思いますので、委託先の見極めとか、ハズしが少ないんでしょうか。)
プライベート・エクイティ関係の方々が、なぜ、日本のファンドから源泉徴収される制度変更に、ああもピリピリするのか、やっと腑に落ちました。(以前聞いたところによると、米国の大学のファンドはもともと課税されないので、日本で源泉された税額の控除ができないそうですが、日本の大学の資金力の感覚でいたので、「税額控除の対象にならない例外的な投資家のことについて、何をそんなに問題視するのかしらん?」と、ピンと来てませんでした。気づくのが遅くてすみません。<(_ _)>)
これに対して、東京大学は現在100億円ちょっと程度のファンドしか持っていないようで。(そりゃ、国立大学法人に2兆円もキャッシュを抱かせたら、国民から非難ガウガウだと思いますので、いたしかたないところかもしれません。)
小宮山総長の文章はさらに、
スタンフォード、MIT、UCバークレーといった先進大学も、ハーバードに遅れをとるまいと追随しております。これまで比較的悠然と構えていたヨーロッパの大学も、ケンブリッジ、オクスフォードなどを始め、これ以上米国の大学に財務において水をあけられてはならないと、強力な活動を開始しております。私たちは、こうした欧米の大学、さらには、急速に力をつけつつある北京大学、清華大学、インド工科大学、シンガポール国立大学などとも競うことになります。
と続きます。
3倍くらいの資金力の差は「創意工夫」や竹ヤリでなんとかなるかもしれませんが、100倍もの差がついちゃうと、ちょっと厳しいんじゃないでしょうか。日本の教育界はおそらく「教育は金じゃない!」とかいうノリが大勢を占める気がしますし、ファイナンスとかビジネスモデルとかいったセンスがある大学関係者は非常に少なそうであります。
東大ですらその資金力であれば、他の国立大・公立大は推して知るべし。
私立大学は、過去からのファンドが積み上がって数千億円単位くらいにはなってるところもあるのかしらん?(あまり、ヘッジファンドに投資して20%で回しているといった話は聞いたことないですが。)
試しに早稲田のBSを見ると、キャッシュは282億円と、東大よりはマシなようですが、前述の米国の大学の資金から比べると、顕微鏡的な違いです。
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もう10年以上前、昔勤めていたシンクタンクが作った米国の産学連携のレポートを見てたら、「米国で言う産学連携とは、大学の不動産ビジネスのことだ」、と書いてあって、なるほどなあ、という感じがしました。
米国の大学は、大学周辺の空き地がふんだんにあるので、大学が大企業を誘致してくることによって賃料が得られるし、研究施設など優秀な人材が集まる企業施設の集積が高まることによって、土地の収益力が上がり、結果として保有している不動産のバリューも上がる、というポジティブフィードバックが働く、というしくみ。(「ついでに」研究成果も上がる。)
これは、南の島の何もない二束三文の土地を買い占めて、真ん中にホテルを建ててシェラトンとかハイアットとか一流ホテルオペレータを連れてくることによって、土地の値段が上がり、ゴルフ場の周囲の別荘地を分譲するなどで大量のキャッシュを回収、といったバブル期に行われた錬金術的なリゾート開発のしくみと基本構造は同じですね。
日本の大学の方は(良くも悪くも)そういった「ビジネスモデル」は思いつかないでしょうし。そもそも大学周辺に土地も余ってないでしょうし。
(ではまた。)
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こんにちは。いつも読ませていただいております。
ハーバードの資金運用者は、歩合の額が多すぎて
辞めさせられたそうです。(以下のブログで知りました)
俺の職場は大学キャンパス:ハーバード大学の基金運用担当者
http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50158024.html
あと、「精華大学」は、中国の理系最高峰の大学を指しているのでしたら
「清華大学」の誤変換だと思います。
代表的なスタンフォード大学を中心としたシリコンバレーのモデルなど、個人的には、日本の学者もビジネスモデルは思いついている(気づいている)のでしょうが、実行できない日本のしくみがあるように思います。
いつも楽しく拝見させていただいております。
>シンバポール国立大学 ⇒ シンガポール国立大学
のことではないでしょうか。
すみません、自分が出た大学なので、誤字(と思われる)が気になりました。
で、もし上記大学で間違いなければ、現在の大学名は
National University of Singapore
という名前に変わっております。
つまらないところで反応してしまい、すみませんです。
みなさま、コメントありがとうございます。
四十九次様、大木様、
ご指摘ありがとうございます。訂正させていただきました。
大変失礼しました。
(ではまた。)
いつも拝読してます。楽しめるのみならず、会計知識も学べるし、磯崎さんの謙虚なお人柄もしのばれ、素晴らしいブログだと常々思ってます。
さて大学のファイナンスですが、最新のプリンストン大学のニュースレターによりますとPeter Lewis氏(1955年卒)が$101 million (約118億円ですよね?)寄付したとのこと。これで今までの寄付を合計するとなんと$220 million (約260億円)だそうで。さすがアメリカ。びっくりするやら、がっくりするやら(自分の財布と比較して(笑))。
それでも彼は”University’s most generous donor in the mordern era” とのことですので、インフレ等を差し引いて考えると創立以来、この他にも莫大な寄付をした人がいたってことでしょうか。
こんにちは。
エントリと関係ない内容で恐縮ですが、よろしければ磯崎さんのご意見を伺いたく…。
英ボーダフォンが、日本法人をソフトバンクに売却する交渉をしていることを発表したというニュースがありましたが、売却額のうち50億ポンド(1兆円超)を特別配当とするとのことです。
Yahoo!ニュース – ロイター – 英ボーダフォン、日本法人売却後に50億ポンドの特別配当実施へ=英紙
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060306-00000376-reu-bus_all
それのみならず、自社株買いなども含めて93億ポンドもの株主還元を準備しているということですが、「なぜにそこまで!?」と思ってしまうのは日本人だからなんですかね?
翻って、昨年12月末にライブドアが、154億円の黒字があるにもかかわらず無配という結論を株主総会でごり押ししたというのは記憶に新しいところです。
まあ粉飾決算が明るみに出てその黒字自体が疑わしいというのは今だから言えることですが、それは置いておいても、無配で納得してしまった日本人株主に比べ、欧米の株主というのはそこまでとてつもないプレッシャーを企業に対して与えることができるものなのでしょうか?
それともこれは、何らかの法整備の違いによる差なのでしょうか?
もし何かご存知のことがあれば、isologueで取り上げていただけると大変うれしゅうございます。
エントリーを拝見して、海外の大学がこれほど大きなファンドを持っていることのただただ驚きです。
直感なのですが、日本の大学の場合、たとえ同規模の基金があったとしても、相応のリスクテイクをして高い運用益を得るという形になるのかどうか・・・・若干疑問に感じます。なんだか「大学基金が“元本割れ”の可能性が高い株式投資で運用するなんてけしからん!」なんて意見が出てきそうな感じですが・・・・(^^;;
日本で最も進んだ(というか昔から)資金運用をしている学校法人は、慶応義塾じゃなかったかな。何十年か前に、慶応の先生のアメリカの大学の資金運用についてのリサーチか何かを読んだ記憶があります。BS,PL等はHPに載っていますので見てみてください。国公立は仕方ありませんが、日本の私立学校(主に大学)の運用に対する保守的な姿勢は残念ですね。結構どの学校法人もそれなりに基金はもっているのに・・・。少子高齢化時代ですし、補助金も削減方向ですから、もう少し資金運用で収入を増やし、生徒さんの負担を少しでも減らす努力をすべきでしょう。以前仕事で調べましたが、確かハーバードあたりは総収入の20から30%くらいは運用収益じゃなかったかな?(間違っていたらゴメンナサイ)
先日はコメント有り難うございました。
一昨年某私立大学の運用担当者に聞いた話では、日本の大学の運用資産は、1位 日大、2位慶応、3位早稲田だそうです。サイズは、ハーバードなどよりずっと小さく最大の日大でも数千億円の下の方だそうです。運用スタイルは、ハーバードがオールタナティブ中心に突っ込んで全盛期30%以上で回したの比べると、日本は国債中心で非常に保守的です。なぜかと聞くと(バブル時やられたこともありますが)、日本の大学は米国と異なり、「寄付金」を運用しているのでなく「学費」を運用しているので、やられるわけにはいかないとのことです。(確かに寄付したことはありませんが(笑)) また、数々の資産運用理論の研究者を輩出している米国と異なり、日本の大学ではそうした研究者(特に実務にも詳しい)が少なく、発言権も弱く、理事会・教授会なども決してファイナンシャル・リテラシーが高くない、という事情があるので、ハーバードは理想ですが、現状では夢の又夢、の状態のようです。
いつも楽しく拝見させていただいております。日本の大学の運用資金とは、一般的に第3号基本金の額がそれに相当すると思います。日大が800億円くらいで、慶応350億円、早稲田250億円くらい。。。第2号基本金とかは校舎建築などに当てられるので、株で運用するのもどうかと思います。。。確かに少ないですね。
数年前、週刊誌でも基金運用の実績比較が出ていましたが、これらの大学に加えて青学、国際基督教大学など、パフォーマンスが他行と比べても良かった記憶があります。たしか、各校0.5%-2.5%くらい。最新のデータを軽くまとめると面白そうですね。
なお、慶応の小松隆二教授あたりが、私立学校の資産運用についての権威です。
米有名私大の学費収入ってどんな具合なんでしょうね。学費自体は日本の私大に比して相当に高いのでしょうが、私の虚ろな記憶によれば米有名私大の場合、学生の成績上位3分の1程度(!)は何らか学費を免除されていたと思いますから、学生さんは上位30%以内なら自分にもと諦めずにその特待を狙って頑張る、そしてそれなりのモノを身につけて巣立ち、大学は彼らの恩返しを助力に資産運用にも励みますます学舎は充実して行く、と。やっぱりかの地の大学と我が国の大学との間には「意識」の差が大きいような気がしますね。
ファンドと大学
興味深いブログエントリーをみつけたので、紹介しておきます。
isologue −by 磯崎哲也事務所[http://tez.com/blog/]の記…
大学と資金運用
世界の大学のファイナンス力格差
ハーバード大学の基金運用担当者
大学基金
上記参照。
私の通ってる大学と運用資金が違いすぎるなぁ。
これだ…
今更なのですが、広島地方紙「中国新聞」のblogというのがありまして、村上ファンドの絡みで“大学財団”というキーワードが出てきたので、この記事を当該URLで紹介しました。
ご報告が遅くなりまして申し訳ございません。
中国新聞の当該URLは
http://blog.chugoku-np.co.jp/fureai3/?date=20060606
です。
大学財団
承前:いわゆる村上ファンドへの“アメリカの大学財団”による投資についての疑問のヒ