昨日のエントリに、ユリウス・カエサルさんからコメントいただきました。
私が理解してもらいたいのは、「業者の収益の中には民事上違法な金利に相当する額が含まれている」ことです。
貴方は別の記事で「一部の人のために、上限金利を下げて業界全体の収益性を圧迫することは、闇金の発生等、「市場のゆがみ」を発生させ、社会全体の厚生度を大きく下げることになると思う」と述べていますが、上記の法論理をあてはめると、貴方は「業界が今以上に民事上違法な利息相当額を徴収してもよい」と言っているのと同じなのです。意識されてますか?
私は、法論理を無視して、更なる「違法金利」の徴収を是認させようとする立場からの意見の方が「法論理を無視した、感情的な」意見だと考えています。
もし貴方が「利息制限法は経済学的プロセスにあわない法律だし、こういう法律があるから業界全体の収益性をスポイルしてしまう。だから廃止してしまえ」という意見まで述べるのなら、法論理を踏まえた上での話ということになりますが、いかがですか?そこまで述べられますか?
「もちろんですとも。」と書きかけて、ハタと考えました。
ユリウス・カエサルさんは、「グレーゾーン金利=悪」と考えてらっしゃるようですし、私も完全な「悪」とまでは思わないまでも、「いつかは解消されるべき、決してよろしくはない状態」と思っていたのですが、よくよく考えてみると、これは非常によく出来た制度かも知れないなあ、と思いはじめました。
1月の最高裁判決3連発を受けて、bewaadさんのエントリでも流れはグレーゾーン廃止の方向に進んでいるようですので、「よくできた制度だった」と過去形にしないといけないのかも知れませんが。
高金利の何がいけないのか?
まず、そもそも論に立ち返って、実態として高金利のどこがいけないのでしょうか?
私は消費者金融専業者のローンは利用したことがないですが、社会人になったばかりの時にはお金がなくて、給料日までのつなぎとして、銀行系クレジットのキャッシングは よく利用させてもらいました。
当時、翌月一括払いで3%の手数料だったので、年利36%もの高金利!・・・でしたが、5万円借りたとして手数料が1,500円。ビンボーな若者にとっても、まったく負担可能な額です。会社の同僚に5万円も借りようものなら、後でお礼に飲み代をおごらされたりして、それどころのコストではなくなるわけで。
また、例えば、土曜日にお金がないことに気づいて、月曜の給料日までお金が2万円必要だとします。
仮に普通預金の定期預金があるので銀行からおろした場合の借入は0.1%の金利で済むが、銀行のATMでおろすと105円手数料がかかる。
ところが、消費者金融のATMだと手数料は(たいてい)タダ。
国債や銀行の貸出の金利等を知っている「教養のある人」ほど、年利数十%の金利は「銀行預金の何万倍」の暴利に見えるわけですが、1万円借りて1日あたり十数円のコストなわけです。
上記の例だと、銀行の方が「低利」だが「高コスト」ということになります。
つまり何を申し上げたいかというと、「高金利」のまずいところは、「大量に長く」借りるところなわけです。
消費者金融数社から合計100万円(まともな業者なら通常maxに近い金額)を借りた場合、上限金利規制が適用されて金利が仮に5%下がったとして1年間で5万円の差にしかならないわけです。月に4,000円程度。 1年間元本均等返済ならさらにその半分の月2000円。その程度の金利差で、自殺したり、一家離散したり自己破産したりといった社会問題が防止できるわけがないわけで。
行うべきことは、「トイチ」といった年利何万%で貸し付ける出資法違反のヤミ金業者を取り締まることであって、出資法の上限金利を下げることではないんじゃないでしょうか。
昨日ご紹介した早稲田大学消費者金融研究所のペーパー「消費者金融顧客の自己破産−その特徴と原因−」にもありましたが、多重債務に陥る最大の要因は、リストラのような収入の計画が狂うイベントの発生や、他の住宅ローンなどであって、通常サラリーマンが消費者金融で借りられる多くても100万円程度の残高×20%台の金利そのものが社会問題につながる現象を発生させている、とは考えにくいわけです。
グレーゾーン金利の経済的効果
グレーゾーン金利というのは、「民事上は無効だが任意弁済すれば有効」なわけですから、上記のように利用者が「元気」なうちは任意で金利を支払い、いざ、利用者がリストラにあうなどネガティブなイベントが発生して返済不能に陥った場合には、以降の(弁護士さんなどの交渉により「それ以前」の分も含め)金利を利息制限法の上限までに削る効果があるわけです。
つまり、従来の制度は、「いざというときの金利減免オプション付き契約を、法律で義務づける」のと同様の経済的効果があったと言えます。
ところが、グレーゾーンが無くなってしまうと、返済不能に陥った「弱者」は、(交渉の余地が全く無くなるわけではないですが)、民事再生・破産とか、はたまた、夜逃げ、自殺、といった手段とのクッションが薄くなるわけですね。
人権派の弁護士の先生方は、みなさん、「出資法の上限金利を下げてグレーゾーン金利をなくせ」、という主張のようですが、消費者金融業者と債務カットの交渉をする場合にも、「民事上無効」という切り札が無くなることで、交渉はその分大変になるんじゃないでしょうか。
交渉に時間を要すると、その分、債務者のフィーの負担が重くなるか、弁護士さんの収益性が悪くなるかのどちらかなわけですが、「面倒なので、自己破産しましょう」ということが増えるんじゃないでしょうか。
意外なことに、大手のノンバンクや消費者金融業者さんの反応は、「我々は、上限金利が下がってもビジネスは出来るんですよ。リスクの高い人には貸さなければ、収益性は保てるので。」と、あまりあわててないご様子。
しかし、社会全体でマクロ的に見ると、今までは、貸金業者が返済不能に陥った人の債務を切り捨てることで、そういう人たちの生活費補填になっていたわけですが、その資金の流れが断たれると、誰か別の人(国庫や地方自治体等)がそこへの資金供給をしないとバランスが合わなくなるはず。
ということで、一見「善意」に見える金利の引き下げが、ほんとに「弱者救済」につながるのかどうか、非常に不安だ、というお話でした。
(ではまた。)
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僕が21日の記事を見て言ことを見事に分かりやすく書いていただいて感激しています。
1点付け加えるならば、過払い部分に対しては5%ないし6%の遅延損害金まで付いてくることとなっています。
問題があるとすれば、消費者が返還を求めた場合の貸金業者の対応にあると思います。大抵の貸金業者は大手のクレジット会社も含め、かなり非協力的です。特に、本人が交渉してもなかなか全てを返そうとはしないため、結局弁護士に依頼せざるを得なくなってしまい、当然ながらそれが消費者の大きな負担となっているのが現状です。グレーゾーンを廃止するよりも、みなし弁済規定を廃止した上で、貸金業規正法で利息制限法を超過する利息の支払をした消費者から返還の請求があった場合には速やかに返還しなければならないといったような規制を課す方がよっぽどよいと思うのですがいかがでしょうか?
少し前のヒット書籍「黄金の羽根の拾い方」でも、「上限金利はむしろ悪、撤廃すべき」という主張でしたね。
Amazon.co.jp:お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 — 知的人生設計入門: 本
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出資法と利息制限法(ようやくイントロ)・・・グレーゾーン金利をめぐるブログ界での激論?の行方(^^;)
金融庁の懇談会での中間整理が出たようですが、座長をはじめメンバーを見ていただくと
わたしは、昔消費者金融につとめたことがあり、今は地方公務員です。地方公務員になった当初は貸金業者の検査監督の担当になったため、かなり実態については詳しいと自負しています。
磯崎さんがおっしゃるように、上限金利が下がったところで、多重債務問題は解決しないでしょう。
もし金利が下がれば解決するのであれば、上限金利が109.5%(ほんとにあった)から29.2%に下がった現在、破産者は減少するはずです。しかし、実際は増えていく一方です。理由は多々あるでしょうが、金利を下げたら良いという単純な話ではないでしょう。大手の貸金業者は上限金利が利息制限法以内に収まっても別段困りません。
今までも出来たのに何故そうしなかったかといえば、上限金利が下がらずに、自分だけ金利を下げた場合、貸倒率が上がってしまうおそれがあったからです。なぜなら、金を借りている人は、大概金利の高い方から返すので、金利の安い方が後回しになるからです。
後、検査についてですが、検査は定期的に行っていました。登録期間が3年間ですが、その間に1回は、検査に行き、契約書や領収書がきちんとしているか確認しに行ってました。契約書等がきちんと定められた事項が記載されていない場合、みなし弁済が適用されないので、それを指導していました。
難しい理屈はさておき、全国あまねく、大看板や無人契約機が駅前の一等地にずらりと共に並ぶ。こんな国は日本以外にはない。
偉そうなことをいっている消費者金融業者は、大手銀行の余資を極めて低利で調達し、膨大な数に貸すことによって全くの無審査でもペイできるいわば阿呆なビジネスモデルを確立した。駅前にもあるしさあ、テレビでもやってるしさあ、少し借りてみるかという、実際はキツキツの資金状態の若者や無職人が遊び半分で借りている訳で、もちろん返す計画など考えていない。まずは駅前から無人契約機を一掃すること。当たり前の環境に戻すこと。もとより、違法な高利貸しなどはどんな法律を作ってもなくならない。要はあらゆるところで目に付く消費者金融、というのは異常だと言う感覚を身に着けることです。理論を振りかざしても駄目。言ってみれば、強姦は絶対なくならない。違法な風俗もなくならない。だけどさ、駅前やテレビでレイプ映画の宣伝などありえないっだろう?借りるつもりのない奴まで多重債務で借りさせてしまう、それがこの世界の問題なのだよ。
つまり関係者殿は、グレーゾーン金利が問題ではなく、駅前等への出店規制が無いことを問題視されているということですか?
そのような視点での検証も必要とは思いますが、遊び半分でお金を借る人を救済する為に、高利でもお金が必要な人がお金を借り難い世の中が良いとは思えません。
消費者金融=悪で考えるのではなく、消費者金融の効能を最大化しつつ、副作用をいかに最小化するかという方向で考えたほうが良いのではないでしょうか。
リスクの高い人に金を貸して多重債務者を作ることが問題なんだから、グレーゾーン金利の解消で高リスク者が金を借りれなくなる事は良い事だよね?
それとも多重債務者に高利で金を貸すことが弱者救済になっているんですか?
消費者金融の利便性は銀行のサービスが悪いから目立つのであって、サービス業としてはあれくらい便利で当り前。消費者金融が銀行を買収して銀行のサービスを向上させて欲しい。
駅前立地規制?
バカだねえ。
要は、今のような高利が法的に認められると、総貸し出し件数さえ多ければ貸し倒れは高くても良いからビジネスになるわけ。駅前規制などという国土交通省の発想ではなく、法的に金利規制でビジネスモデルは破壊できるの。消費者金融は、金利がどの水準にあってもゴキブリ的にうまくやってくし、貸し出し件数も拡大する努力はするけどさ、要は、今までのように、不特定多数の消費者を絨毯爆撃するようなモデルはできなくなるの。審査する重要度が増すからさ。今の俺らの仕事は、審査なしにペイできるバカ仕事なわけよ。これ、分からないのなら、一度消費者金融に働く友達に聞いてごらん。数多く貸すからペイできるの。金利が下がれば審査コストかかるし、クレジット業界も競争力増すわけ。税理士やら公認会計士やら田舎の役人みたいに低レベルの金融を知らないエリートには事実関係は見えないだろうけど。
(ま、感情的な表現はなるべく控えていただくこととしてですね、)
今の銀行系、カード系の会社の審査内容を考えると、金利を下げたからといって、審査のクオリティが今の専業者の審査より高まる、という気も、必ずしもしないんですが。
センターのホワイト情報の問題もありますが、(金利の低い)大抵の銀行系、カード系の消費者金融担当者の方々は、「我々の審査ノウハウでは専業者に太刀打ちできない」とおっしゃってますし、だからこそ、都銀が専業大手と共同出資会社をやってるんじゃないですかねえ?
「関係者」さんは、ご自分の勤務先のビジネスモデルをなぜ、あえて破壊したいかというのが、よくわかりませんが、(小泉首相が「自民党を破壊する!」というのと同じような、強い問題意識をお持ち、ということでしょうか、)、もし「審査の質」を上げるために金利を下げた方がいいと考えてらっしゃるんだったら、期待はずれなんじゃないでしょうか。
消費者金融というのは、結局のところ、法人向け金融と違って個別の貸出先の財務状況等の詳細データを今以上に入手するのが困難かと思います。今後、社員が自宅や職場まで出かけてちゃんとチェックする、というように新しい情報が加わるなら別ですが、利益率が下がったらそれは逆に行えないはず。「書類が足りないから貸せませんね」ということだと、「そんな堅いこと言うんだったら、銀行で借りるやい」ということにもなりますし、スピーディな貸し出しという、最大の商品性が失われることになります。
利用者から得られるデータの種類を増やせない限り、審査をちゃんとやるといっても、結局、「大数の法則」で処理するしかないですし、貸し倒れ実績の高い属性(勤務先の業種・年齢・性別・年収)の貸し出し限度額を下げる、ということにしかならないと思いますが。
そもそも借金をしてまで消費しよう、という生活態度に問題があるのだと思いますが・・・。
消費者金融のような少額高利のお金は投資や不動産購入のための資金には向いていませんし、使途としては当座の消費行動以外には考えられません。
手元にあるお金の範囲で消費を行えば良いだけの話なのに、そこをいかにも気軽に借りられるように見せかけて過剰な消費を誘い、結果として多重債務者を生んでいる現状はどう考えても肯定されないものだと思います。
消費者金融などという業態そのものが存在する必要のないものだと思えてなりませんがいかがでしょうか。
消費者金融の利用者=生活破綻者、というのは正しい見方ではないと思います。
kumaさんは一度も利用したことないのかも知れませんが、全情連の統計の登録者数を見ると、
http://www.fcbj.jp/f/f_index.html
おそらく、累計ではすでに国民の50%以上は消費者金融専業者を利用したことがあるんじゃないかと思われます。
一部の頭のいい人が、「おまえは不要だ」と決めるのではなく、必要かどうかは基本的には自分で決められる社会であるべきじゃないか、と思うんですが。
Tetsuyaさんの指摘はまぐれかもしれないけど、全面的に当たってるんですね。だけど発想が逆。消費者金融が審査能力を増す努力などはするはずもないわけ。努力が出来ないから衰退するわけ。多重債務はね、テレビのCMやら駅前の無人機を見て利用するようになったからというのが大半よ。そこのところ、フィールドワークしたらどうかなあ。ビジネスモデルがすごいから収益が上がるんじゃないのよ。アイフルへの訴訟案件、調べれば分かるけど、有担保融資でも土地を丸ごと貰うような強引な引っかけをしている(真実は法廷で。要はそう訴えられている)らしいね。だから、無担保であろうと有担保であろうと、審査というのは基本的にない。審査能力がないのになぜ経営ができるのか、それは絨毯爆撃。メガが提携する理由は、畔柳でも西川でも聞いてみれば良いけど、消費者金融の審査能力などではもちろんなく、当然顧客リストでもなく、あくまで連結収益への影響の話。ビジネスモデルで見習うところなんてない。この辺でやめるけどさ、Tetsuさんも、半可通ではなく、一度よく色々な人に話を聞いて、多重債務問題に、「金利は期間の問題である」などと変に喝破しな方がいいよ。人間、勉強だから。
(繰り返しになりますが)、おっしゃっているようなことは金利が下がったからといって、やらない会社は、やらないでしょ?
「審査をもっとちゃんとやれ」ということであれば、それ自体を明確に法令等で強制して、コーポレートガバナンス・内部統制の構築義務の強化や、金融庁検査強化で、モニタリングする仕組みを作る方が、金利を下げるというような隔靴掻痒な方法より、はるかに「直接患部に効く」と思うわけです。
おっしゃっていただいたように、固定観念で決め付けずに、いろんな人にこれからも意見を聞いて、引き続き勉強させていただきます。
(ではまた。)
グレーゾーン金利問題、とか
アイフルの営業停止処分なんかを受け、突如として一般に耳慣れてきた
「グレーゾーン金利」。
ちょっと落ち着いて考察してみようかと。
本…
[economy][law]グレーゾーン金利に関する見方について・後編:売るのは誰、売られるのは何?
47thさんによる「貸金業者が売っているものは何なのか?」や磯崎さんによる「グレーゾーンの効用」において消費者金融からの借入れに係る消費貸借契約をどのよう…
グレーゾーンを認めるか否かの議論はさておき、現在の消費者金融業では、18%以下の金利にして、だれも営業することができなくなるという経済実態を忘れてはならない。
利息制限法以内の金利で借入れができる消費者は、信販、カード、アットローン、キャッシュワン、モビットなど銀行資本で営まれる貸金業との共同会社から借入れる。利息制限法適用金利で借入れができない信用状況の債務者が、消費者金融や、日本信販、オリコやアプラス、ライフその他の信販カードのキャッシングを利用している。貸金業の金利を18%以内にすり合わせれば、彼らのうち、8割以上はどこからも借り入れることができなくなるだろう。その数は、700〜800万人あるいはそれ以上か。
大手上場貸金業者の収益構造は、知られているように、事務関連の販売管理費用が貸付資産比8.5%、信用費用(貸倒回収前のグロス貸倒率とすれば)が6.5%、金利が2005年には2.5%で、総額17.5%。それに対して、収益はモノラインのため金利だけで、約定金利を25%とすれば、1週間以上の延滞率が5%あるため、実質金利24%。したがって、約定金利や費用の金額によるが、6〜8%の利益がでる。だから、1.5兆円を有する大手では、1000億円以上の経常利益となる。
さてこれが18%にされると、貸金業者の1/3以上が金融庁事務ガイドラインのコンプライアンス違反して、100万円超のローンで占められているので(金融ビジネス4/25号、拙者)、平均約定金利は、18%ではなく17%。延滞があるので、実質金利は16%となる。
さてそうすると、現状の費用構造では、17.5%で、かつ金利はすでに、5年物で0.9%あたり上昇しているので、長期固定金利でない部分は、上昇していくので、金利費用は増加して、販売管理費合計で18%かかり、グレーゾーンを撤廃し、金利を一本化すれば、資産保有により得られる利益は、マイナス2%となる。すなわち大手は一年営業して、300億円のマイナスとなる。もっとも宣伝広告費を2/3減らせば、マイナス幅は、60-80億円。さらに貸倒費用を削減するため、まずは9%以上の信用費用がかかる債務者への貸付を辞めて、信用を引き締めて、貸倒費用を5%にするように努めるであろうから、所得に対する専業者借入れ総額が5割以上の債務者や、借入れ件数が4件以上で所得が小さい債務者には貸さなくなるだろう。そうすると、信用モニターや回収の人手も減るし、貸付の信用評価にかかる人件費も減少する。ただ資産は、2割くらいの減少になるだろうから、1.2兆円となる。
宣伝広告費、人件費を削減して、販売管理費を、8%まで下げるとして、金利が3%、貸倒5%と目標どおりにいっても、総費用は、16%。貸倒は、金利が一本化されてもすでに過去に貸して発生しうる過払い金請求があるので、これ以上にへることはないだろう。 これでは利益がないが、資産保有で赤字が出るかでないレベルになるので、株価は、現在の8割減か。
もし赤字がでるとなれば、株価は、現在の1割までいくのか。
さてそれだけならともかく、それ以上の2%の赤字が出るようであれば、借入金と社債は返済可能であろうか。しばしば、ジャーナリストは資本が厚いから大丈夫というが、現金は全部営業貸付金で運用されており、マイナス資産となってしまう。
赤字資産となれば、回収を急ぐため、債務者は返済だけになり、貸倒が急増することになる。
現在債務者は、月次の最低返済金(通常は100万円以上のローンで当初借入れ金に対して3.2〜3.5%、50万円で4%)で10万円くらいは返す必要がある。現在であれば、リボが可能なので、月2.4%の金利以上の返済はどこからか買い入れて、実際には残高を維持できるが、それができなくなるから、急速に信用悪化が始まる。
結果として業界全体の貸倒率が、10%を超えることもありえる。
早いもの勝ちの回収で、回収総額が、社債や銀行借り入れをまかなうことができなければ、最終的には銀行借り入れや社債返済がまかなえないときがくるだろう。
金融庁は、利息制限法を適用する決定をすることはよいが、自らの判断で法律リスクをとって貸金業者に貸付けた銀行に対し、決して資本不足に陥った殻という理由で、公的資本を提供することは許されない。破綻してもらおう。
さてもうひとつの問題jは、たぶん400〜500万人は、返済ができずに、また職もあり、安定した所得もある債務者は破産による免責も受けられず、給与差し押さえに追い込まれ、生活破綻がでることである。
救済制度がなしに、利息制限法金利に貸金金利を引き下げれば、社会問題になるであろう事態を無視できないだろう。
すでに債務は、専業者貸付だけで11兆円、信販カードの18%以上も数兆円あるが、これらの債務者のうち、いずれにしても7割が行き場がなくなる。
知らなければならないのは、消費者金融を利用して、毎年健全に返済をしている9割の人を議論しないで、1割未満の、50万人もの惨めな生活破綻者の破産申請予備軍(実際に破産による免責が認められるのは年間20万人だが)のことばかり、消費者側弁護士といわれる法律家のいうまま検討することだ。パチンコなどギャンブル依存、躁鬱、性格破綻などになったものは、弁護士や司法書士人口一人に対して、年25人もの相手しなければならないが、それは消費者金融利用者の5%にも満たないことだ。
継続した貸付ができなくなったとき、残りの95%を社会問題にしたとき、国民は貸金信販業者に貸し込んだ銀行の尻拭いを含め、社会費用として、数兆円の税金をつぎ込むことを覚悟しなければならない。
金融庁懇談会の決定は、一人当たり、3-5万円の負担の国民的コンセンサスを作ったということだ。
金融庁 大森参事官、市川健太 貸金業室長
懇談会で引き下げ主導者 池尾和人慶応大学経済学部教授、上柳敏郎弁護士早稲田ロースクール教授、野村修也中央大学法学部教授ほか国民代表メンバー
多重債務の構造
金利が下がったら、貸金業と債務者はどう行動するのか
返済能力がある債務者の借入れ金額はどのようにきまるだろうか。これは月の返済可能な約定返済額によって決定される。たとえば、月収30万円の債務者が、10万円の返済余力があるとしよう。この事実は信用評価をする上で決定的基準となる。貸付金額は、金利水準でなく、支払能力で決定される。返済額が10万円として、それが4%にあたるとすれば、250万円。3.5%だと286万円。
金利の問題は2次的で、29.2%か18%かは、支払う4%の10万円のうち、2.433%かそれとも1.5%が金利に充当されるかという問題になる。2.433であれば、借入れ返済当初においては、金利が返済額の60%を占めるが、1.5であれば、37.5%を占める。すなわち、金利が高ければ、毎月同額を返済しても、返済期間がそれだけ長くなることになる。金利差は、完済するのに39ヶ月係るか、32ヶ月かの違いに過ぎない。%
ところで金利18%で、同じ月次金額を返済しても、それが借入れの3.5%の286万円を借りても、38ヶ月で完済になる。
もし返済期間を同じだけ払う気で借りるなら、借入れ額は、36万円大きくなることを知らなければならない。
同じ10万円を返済できる能力があるとき、金利が40%だったとき、月約定返済率を5%とすれば、総額200万円借りることができ、34ヶ月で返済できた。金利引き下げにより、50万円借り入れられる負債が増加したことを意味する。25%多重債務が進むことを意味する。今回では14%多重化することになる。
これは理屈でなく、貸す側の論理であり、与信方針を反映していることを知らなければならない。
さて、住宅ローンはどうして年収の5倍も借りられるかわかるだろうか。
金利を年3%(月0.25%)とすれば、同じ10万円を月に返済するとし、当初借入額に対して、それが0.5%だとすれば、278月間かかれば、完済できる。もっとも年利3%でも、消費者金融流に評価して、10万円が借入れ額の3%で設定すれば、333万円買い入れができ、35ヶ月で完済される。
金利が下がれば、借入れ可能額が増えるにすぎない。さらに多重債務は、約定返済率=満期を伸ばせば、ますます貸せることになる。業者は収益率が減る分、債務の長期化を選択するであろう。
4.00% 100,000 4.00% 100,000
2.433% 2,500,000 1.50% 2,500,000
1 60,833 2,460,833 1 37,500 2,437,500
2 59,880 2,420,714 2 36,563 2,374,063
3 58,904 2,379,618 3 35,611 2,309,673
4 57,904 2,337,522 4 34,645 2,244,319
5 56,880 2,294,401 5 33,665 2,177,983
6 55,830 2,250,232 6 32,670 2,110,653
7 54,756 2,204,987 7 31,660 2,042,313
8 53,655 2,158,642 8 30,635 1,972,948
9 52,527 2,111,169 9 29,594 1,902,542
10 51,372 2,062,541 10 28,538 1,831,080
11 50,188 2,012,729 11 27,466 1,758,546
12 48,976 1,961,706 12 26,378 1,684,924
13 47,735 1,909,441 13 25,274 1,610,198
14 46,463 1,855,904 14 24,153 1,534,351
15 45,160 1,801,064 15 23,015 1,457,366
16 43,826 1,744,890 16 21,860 1,379,227
17 42,459 1,687,349 17 20,688 1,299,915
18 41,059 1,628,408 18 19,499 1,219,414
19 39,625 1,568,032 19 18,291 1,137,705
20 38,155 1,506,188 20 17,066 1,054,771
21 36,651 1,442,838 21 15,822 970,592
22 35,109 1,377,947 22 14,559 885,151
23 33,530 1,311,477 23 13,277 798,429
24 31,913 1,243,390 24 11,976 710,405
25 30,256 1,173,646 25 10,656 621,061
26 28,559 1,102,205 26 9,316 530,377
27 26,820 1,029,025 27 7,956 438,333
28 25,040 954,065 28 6,575 344,908
29 23,216 877,280 29 5,174 250,081
30 21,347 798,627 30 3,751 153,832
31 19,433 718,060 31 2,307 56,140
32 17,473 635,533 32 842 0
33 15,465 550,998 33 0
34 13,408 464,406 34 0
35 11,301 375,706 35 0
36 9,142 284,848 36 0
37 6,931 191,780 37 0
38 4,667 96,446 38 0
39 2,347 0 39 0
上限金利は引き下げない方がいいと思うんだけど
今までは銀行系消費者金融などが利息制限法(15〜20%)、貸金業者は出資法(29.2%)と分かれていて、クレジットカード会社や貸金業者が貸し出す金利帯を「…