(「会社法下の転換社債」について書きかけなんですが、あちこち確認しながら書いているので、なかなか進みません・・・というわけで、ちょっと目先を変えて、遅ればせながら、新日本製鐵さんの買収防衛策についてのメモです。)
今月号のMARR(2006年6月号)
に、
という特集があって、新日本製鐵さんの買収防衛策について、導入側と批判側という2つの面から考察されているので、非常に興味深かったです。
当社株式の大量買付けに関する適正ルール(買収防衛策)の導入及び新株予約権の発行登録に関するお知らせ(2006/03/29)
http://www0.nsc.co.jp/data/20060330100129.pdf
新日本製鐵 西川氏のご発言
一言でいえば、事前警告型で有事株主意思確認型です。事前にルールを示し、当社の株式の一五%以上を取得しようとする者に、守ってもらいます。
発動時に株主の意思を確認する防衛策は日本で初めてです。これまで、日本では防衛策導入時に株主の承認をとるものが多かったのですが、導入時に株主の承認をとったとしても、現実に買収がかかったときの株主構成はちがっています。買収がかかった時点での株主に、防衛策を発動するかどうかを確認するのが、一番株主を尊重することになります。
というお考えのようです。
また、法的側面とは違いますが、鉄鋼業界のおかれている環境として、
世界的にみて、メーカー数が多いのです。世界で一一億トンの市場で、日本のシェアは一〇%。新日鉄は三%です。鉄からみて、上流や下流の資源会社、自動車メーカーと比べると集中度ははるかに少ない。
・・・ゆえに、ミタルのような会社が上流・下流と交渉力をつけるために買収を使ってシェアを高める戦略に出ているのだ・・・と、現在の世界の鉄鋼業界が置かれているM&Aの環境を一言で言い表されているのではないかと思います。
TMI総合法律事務所 宮下弁護士のご意見
上記の西川氏の話を聞くと、「株主に決めさせるというのは、株主のことを考えててよさそうな防衛策じゃない?」と思われるかと思いますが、宮下弁護士は、以下のような点から、この防衛策を批判されてます。
1.検討期間の不遵守と不公正発行
ニッポン放送の高裁決定を引用して、「株主全体の利益の保護という観点から新株予約権の発行を正当化する特段に事情がある場合」でない限り、原則として不公正発行にあたる、という可能性を示唆しつつ、
100%現金買収以外は18週、買収提案者が有価証券報告書等の提出者(5年以上)でない場合にはさらに+4週、加えて、検討期間満了から株主総会まで合計+約9週間が加算され、買収者を合計約31週間も待機させるというのは、「合理性には疑問が残るといわざるを得ない。」とされてます。
2.実質株主の確定方法に係る問題
保管振替機構から実質株主の通知を受けることができる場合は法律上一定の場合に限定されているので、新日鐵さんのルールどおりうまくいくかどうか「なお不明確であると考える」とされてます。
3.株主が判断することに係る問題
買収時点の株主に判断させるのであれば、防衛策を使わなくてもTOBに応じるかどうかに委ねればいいのではないか?
経営の専門家が少数株主を含めた利益を考えなくて本当に株主の利益が保護されるのか?
買収者は15%までの株式は持っているわけだが、議決権は制限されていないようなので、相当の影響力を持つのではないか?
そもそも新日鐵は持ち合い等をしているので、こうした方法が取れるのではないか、
等の疑問を呈されてらっしゃいます。
4.防衛策が持つ売却阻害効果の問題
株主が、半年以上も有利な価額での売却機会にあずかれないというのは問題ではないか?という疑問を呈されてらっしゃいます。
「注」だけでも49もありますので、詳しくは、MARR 6月号 をご覧ください。
ちなみに、チャートは、あまりこの買収防衛策を好感しているようには見えません。
(出所:Yahoo!ファイナンス)
(以上)
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