10月31日、日経新聞朝刊 5面
政府系金融機関、格付け最上級に——ムーディーズ、国債上回る
米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスは三十日、日本政策投資銀行など政府系金融機関の格付けを最上級のAaa(トリプルAに相当)にすると発表した。従来は国債と同格のA2(シングルAに相当)だった。市場では「政府系機関の格付けが国債を上回る逆転現象は疑問」(国内機関投資家)との声が出ている。
そうかなあ。
証券化の世界では、なんでもかんでもごっちゃに入ったドンブリより、一部きれいなところを切り出したvehicleのほうが格付が高くなるのは、非常にmake senseですが。
[PR]
メールマガジン週刊isologue(毎週月曜日発行840円/月):
「note」でのお申し込みはこちらから。
元々の問題は、ムーディーズが日本に対してだけ「従来用いていた政府債務格付け(A2)に代えて、自国 通貨建て預金シーリング(Aaa)を用いる」(MDYプレスリリース)ことであり、S&Pなどはすぐさま異論を出してますね。
私、詳しくはありませんが、国債がやばいときっていうのは国が経済的なり、政治的にやばくなるときということを考えると当然政府系金融機関もやばくなるんでは?
証券化とは本体と切り出した資産が、完全に分離(倒産隔離)しているから、リスクが減るわけで。
国と政府系金融機関が、リスク的に完全に分離していることはありえないのではないでしょうか。ある程度連動しているのではないでしょうか。
とすると、市場関係者の疑問の方が、正しい気がします。
記事本文や、なっしゅさんがおっしゃる「自国 通貨建て預金シーリング」というのが何なのかよく存じないので、そこが今回のポイントなのかも知れませんが、以下一般論として。
例えば、日本政策投資銀行は、日本政策投資銀行法に基づき設立された法人で、あって、決算説明資料
http://www.dbj.go.jp/japanese/investor/pdf/060714IR_soa_pr.pdf
によると、債券や借入で調達して、民間中心に貸出を行っていて、日本政府には基本的に貸し出してないんじゃないでしょうか?
格付は、企業の利益や株価ではなく、貸し付けた額の回収可能性を評価するものでしょうから、政府や経済が調子悪くなっても、日本政策投資銀行が返済を滞らせるかと言うと、必ずしもそうではないと思います。記事にもあったように、資金繰りについては、日本政策投資銀行が「銀行」であって、金融システムの安定化に関わる話でもあり、(政府からは独立してマネーを供給できる)日銀からの支援も期待できるかと思います。
一般の民間企業も、「国が政治的や経済的にやばくなる」と影響は受けますけど、だからといって、日本にいるから、国債以上の格付けを誰も取得できない、ということにはならないはずかと思います。
一般論ですが、そもそも政府系金融機関は親方日の丸だから「優良」企業なのであって、そこがトヨタなどの民間企業と違うところです。だから感覚的には国の格付けを上回るというのがしっくりこないのです。
なお、資金繰りだけいえば、みずほや三井住友がAAAになってもおかしくないのではないかと。
ご案内のとおり、この格付けは、一般的にトヨタが「優良企業」というのとは違って、ちゃんと貸した金が返ってくるかどうかの確実性のお話です。
ですから、証券化においては、従業員ゼロのペーパーカンパニー(SPC)でも、高い格付けを獲得することがあります。
国債は国の調子が悪くなったら誰も助けてくれませんが、例えば日本政策投資銀行の政府保証債は、(残高、たった11兆円くらいですし)、同行がに万が一のことがあったら、国も助けてくれるし、日銀も助けてくれるでしょうから、ダブルで保証がついてるようなもんだとすると、国より格付けが高くなってもおかしくないと思うんですけど。
(ではまた。)
平均株価と債券格付けに関する疑問
ムーディーズによる三菱UFJ銀行、みずほ銀行、みずほコーポレート銀行、三井住友銀行が格上げについてぐっちーさんところで触れられています。ところで、債券格付…
トラックバックさせていただきましたnaoと申します。
よろしくお願いします。過去エントリーへのトラバですみません。日本政策投資銀行については議論の余地が残りますが、国の格付けが一番高いというソブリン債の考えに疑問があるというのは激しく同意です。海外を見渡せば、国債のデフォルトは過去に散見されるわけで、その時、その国の一番優良な企業のほうがデフォルトの確率は低かったんじゃないでしょうか。